企業が重視する「インテグリティ」とは?意味や事例を解説!

企業が重視する「インテグリティ」とは?意味や事例を解説!
目次

インテグリティの意味を知りたい!

誠実さを意味するインテグリティの概念は、現代の日本企業が迅速な企業運営を行うために、リーダーやマネジメントに必要な資質として重要視されています。

SNSが普及し企業イメージが企業経営に影響を与える現代、社会的に信用される企業にはインテグリティが必要不可欠です。そのためリーダーのみならず、従業員全てがインテグリティの意味を研修や書籍で学んで理解し、組織運営に活かしていきましょう。

インテグリティとは?

インテグリティの言葉の意味

インテグリティの由来はラテン語で、「全体の」「整合性」「健全性」などの意味を持っています。日本語では「誠実」「真摯」「高潔」の意味で訳されますが、個人の資質を表すことなので明確な定義で示すことは困難です。

欧米では優れた能力を持つという意味で使用され、企業の経営者が示す経営方針や重要院への行動規範に文言が頻繁に用いられます。

インテグリティが注目されている背景

高度成長期からの競争社会による過度な成果主義や経営ビジョンの腐敗が原因で、数年前から企業の不祥事が目立つようになってきました。また、SNSの普及で従業員の安易な投稿が企業のイメージを崩しかねなくなり、個人のモラルも重大な問題です。

そのため信頼される企業になるための組織の在り方やマネジメントにインテグリティの概念が重要視され始めました。インテグリティの概念は倫理的な不正をしないことはもちろん、社会貢献やCSRの面でもこれからの企業にとって必要不可欠な考え方となっています。

人事採用においてインテグリティが重要な理由

ビジネスにおいて信頼関係を構築することは最重要課題です。企業が社会的な信頼を得るためには、社員個人個人が相手に信用される人間であることが大切です。

社員の誠実さの欠如は信頼関係を揺るがす問題に発展することもあり、組織の運営に大きな影響をもたらすので、人材採用においてその有無はその組織の将来を見据えた優秀な人材を確保するうえで非常に意識すべき概念と言えるでしょう。

インテグリティを定義した人物

インテグリティの定義は、まず「投資の神様」と呼ばれる投資家ウォーレン・バフェットが提唱した概念です。会社組織が正常に運営されるためには、人材の採用においてインテグリティが重要であると説きました。

その後、「マーケティングの父」と呼ばれる経営学者ドラッカーがその考えに賛同し、誠実さが経営に必要な要素であるとして「インテグリティ」の言葉の普及を推進しました。

しかし、ドラッカーはインテグリティは抽象的な概念であるため、具体的に定義することは難しいとも語っています。

インテグリティとインティマシーの違い

ビジネスに必要な概念としてインテグリティに似た言葉でインティマシーという言葉があります。インティマシーの意味は親密性、密接な人間関係などで、ビジネスシーンでは、顧客との親密な関係を築く「カスタマーインティマシー」という言葉が頻繁に用いられます。

「カスタマーインティマシー」とは顧客との関係を強固にする事で長期的に良好な関係を築き、戦略的優位性を構築してビジネスを成功に導くとした考え方です。

インテグリティとインティマシーはどちらを重視するかは、国の文化や企業の理念により様々であり、臨機応変に重視するポイントを変えていけることが求められるでしょう。

インテグリティとコンプライアンスの違い

インテグリティ同様、企業運営において重要な意味を持つ言葉にコンプライアンスがあります。コンプライアンスの意味は法令や規則を守るという法令遵守ですが、ビジネスにおいては企業が法律や道徳を守りながら組織として活動することを意味します。

SNSが普及している昨今、従業員の炎上による企業の信頼の失墜などのコンプライアンス問題も、インテグリティの概念が備わっていれば解決できるでしょう。

インテグリティを持つ人の特徴

先述のようにインテグリティの概念は抽象的なため、インテグリティを持つ人の定義も多種多様ですが、主な特徴を紹介します。

公正で正義感が強い

インテグリティを持つ人の特徴は、正義感が強いため常に正しさを考え、何事に対しても公正な価値観で行動をすることです。

特に組織のリーダーでインテグリティを持つ人は、部下の能力を公正に評価し、一貫した行動をとることで企業の信頼感を高めて社会的責任を果たします。

他人を優先して考えることができる

企業のリーダーが求めるべきことは、自分の私腹を肥やすことではなく、会社の利益を上げることです。会社の経営には、社員をはじめ非正規労働者、取引先、株主に至るまで多数の人が関わってきます。

インテグリティを持つ人は、それらの人々を優先した考えができ、自分の能力を組織に還元するために使える人でしょう。

法令順守の意識や倫理基準が高い

物事に対して誠実で真摯に向き合うインテグリティを持つ人は、法令順守の意識や倫理基準が高い人が多く見られます。法令順守の意識が高いと法的義務をしっかり守り、倫理基準が高いと道徳的に間違った行動をしないため誠実な経営を行えるでしょう。

企業のリーダーが法令順守の意識を持っていてその精神を従業員に伝えていれば、従業員の倫理基準は高くなり、誠実な組織となります。

相手の人格を尊重することができる

人や企業が信頼関係を築くためには、相手に信用してもらうことが重要です。周りからの信用が得られるインテグリティの高い人は、相手の人格を尊重することができ、また同じように誠実な人を見抜くこともできます。

組織のリーダーがメンバーの人格を尊重できる人であると、その組織の雰囲気は良くなり、働きやすい職場となるでしょう。

自分や会社に対して高い視座を持っている

インテグリティの高い人は、高い視点から物事を見ることを意味する高い視座を持っています。常に客観的な視点でに自分や会社を厳しく評価し、高い基準を自分に課します

誠実さや真摯さは、組織の成長に欠かせません。そのため、組織のリーダーは常に真摯に自分や会社に向き合う姿勢を持つことが必要でしょう。

企業におけるインテグリティのメリット

誠実さや真摯さは、人や企業が信頼関係を構築するために重要な要素です。そのため、インテグリティがあることは企業の組織運営や社会に貢献できる企業への成長に、多くのメリットがあります。どのようなメリットがあるか具体的に見ていきましょう。

メリット①コンプライアンスを遵守する従業員が育ちやすい

組織のリーダーがコンプライアンスを遵守する人物であると、経営者が掲げた企業理念に基づいて職務を行う組織の従業員は、自然に同じような意識を持ちます。そのため、会社全体がコンプライアンスを遵守する企業として育つでしょう。

そのような会社の理念は採用の際にも活かされ、コンプライアンスを遵守する人材が登用されるようになり、会社全体が高いインテグリティを持つ企業となります。このような企業は社会でも信頼され、社会に貢献する企業として成長するでしょう。

メリット②地域社会に貢献する組織の構築に繋がる

市場の変化に伴い急激に進むグローバル社会では、様々な価値観を持つメンバーが組織の構成員となるため、全世界共通の価値観であるインテグリティは非常に重要な概念です。

現在、世界的信頼されている企業は、地域社会への貢献にも尽力している企業です。そのような組織を構築するために、誠実さを基礎とした価値観が必要不可欠でしょう。

メリット③企業イメージや信頼の向上に繋がる

経営者のみならず従業員も高いインテグリティを持つ企業は、コンプライアンスを遵守し、地域社会へ貢献をしているため企業価値の高い企業として評価されています。

企業理念とインテグリティを結びつけることで、人を大切にする企業であるということが社会に伝わり、他者との優位性を確立する事も可能です。インテグリティの価値観で組織運営を進めると、企業のイメージが高まり信頼関係の向上に繋がるでしょう。

インテグリティの有無を見極めるポイント

組織マネジメントに必要不可欠でありながら、定義が抽象的であいまいなインテグリティの有無を見極めることは非常に困難です。しかし、ドラッカーはその著書のなかで見極めポイントを記載していますので紹介します。

人の強みに焦点を合わせているかどうか

インテグリティを持つ人は他人の強みを見つけてそこを伸ばそうとしますが、欠けている人は他人の弱みに焦点を合わせがちです。

インテグリティが高い人は、もしその人の弱い部分を見つけてもそれを補う行動を起こします。そのような行動の積み重ねが、よい組織運営へと結びつくでしょう。

何が正しいのか認識しているかどうか

インテグリティが高い人は、物事を判断する時、誰が正しいのかではなく何が正しいのかという点に注目します。言い換えれば、上司からの命令であっても間違っていることには「NO」と言える誠実さが重要です。

常に物事に真摯に向き合い、何が正しいのかを公正な視点で適切に判断することができる人が誠実さを持っている人と言えるでしょう。

頭の良さではなく誠実さを重視しているかどうか

インテグリティが高い人は、人の評価をする際に頭の良さではなく誠実さ、真摯さを重視します。いくら頭が良くて能力があっても誠実さに欠ける人は、組織マネジメントに悪影響を与え、業績をダウンさせてしまいます。

特に採用の場面では資格や経験、能力を重視しがちですが、その人物が誠実さを持つ人物であるかどうかに注目する人事担当こそが、インテグリティを持つ人と言えるでしょう。

仕事への高い基準を持っているかどうか

インテグリティが高い人は、向上心の高い人です。向上心の高い人は自分の仕事に対し高い基準を設定し、責任感を持って職務を行います。そのようなリーダーが率いる組織は、メンバーのモチベーションがアップし会社の業績も上がるでしょう。

向上心を持って仕事をしている人は社会的信頼を得ることができます。そのような人物こそ誠実さを持つ人と言えるでしょう。

インテグリティが学べる研修事例

現代社会で生き残りを図るためには、組織運営に重要な概念としてインテグリティを学ぶことが必要不可欠です。実際の研修事例を紹介します。

研修事例①株式会社ビヨンド

全国の「地方創生」を支援する総合マーケティング企業の株式会社ビヨンドでは、組織の中堅クラスの役職者を対象に行うマネジメント研修「インテグリティ」を行っています。ドラッカーの提唱するインテグリティの概念を実践的に解釈し、植え付けることで効果的なマネジメント能力を身に付ける研修です

具体的なプログラムでマネージャーとして必要なインテグリティを学び、部下へのマネジメントや自身の行動改善に役立てます。

研修事例②株式会社コアインテグリティー

ビジネススキル系研修を中心に手掛けている株式会社コアインテグリティーでは、インテグリティに基づいた研修を提供しています。

特にインテグリティの概念を軸にした「ビジネスインテグリティー事業」の全ての研修は、概念を学ぶと共に日常生活でも活かすことのできる誠実さ、真摯さを持つ人材育成プログラムを提供しています。

また、企業の誠実さを高めるコンサルティングとして「コーポレートインテグリティー事業も行っています。

研修事例③スリーロック株式会社

医療業界に特化したワークショップ形式の研修や戦略コンサルティングなどを手掛けるスリーロック株式会社では、インテグリティの概念を軸にしたプログラムも行っています。

「インテグリティ・プログラム」では営業向け、マネージャー向け、リーダー向けに課題に合わせた内容を選択でき、8週間のトレーニングでインテグリティを実践的に学びます

インテグリティを推進している企業事例

欧米の企業を中心に用いられていたインテグリティの価値観ですが、昨今日本の企業でも取り入れることで社会の信頼を得られるとして積極的に推進する企業が増えてきました。実際に取り組んでいる企業事例を紹介します。

企業事例①花王株式会社

グローバルで社会に貢献する会社となるために、花王株式会社では持続可能性への貢献に向けた取り組みを「花王サステナビリティ」として冊子にまとめ、法令順守とインテグリティな事業活動を行うことを表明しています

すべての従業員に公正で平等な職場環境を提供することを重要視し、継続的なインテグリティ研修やコンプライアンス研修を行っています。

創業以来の企業理念である「正道を歩む」という概念を通じて、「よきモノづくり」をする企業として社会に貢献することを指名としているのです。

企業事例②AGC株式会社

AGC株式会社では「易きになじまず難きにつく」という経営理念を基に情熱・チャレンジ・革新・インテグリティ・巻き込む力の5つのキーワードを持つ人物を求める人物像として新卒採用において掲げています。

「他者から学び、誠実な行動により、信頼してもらえる人材になる」というインテグリティにおける規範も定めています。

企業事例③伊藤忠商事株式会社

国内有数の総合商社である伊藤忠商事グループは、2015年にインテグリティを意識した企業経営を応援する「インテグリティ・アワード」を受賞しました。

従業員に「先見性、誠実、多様性、情熱、挑戦」の5つの質問を掲げ、自らの行動を毎日確認するように働きかけています。また、「使命」と「価値観」を企業理念とし、個人だけでなくチームとしてのあり方を問い直す研修を行っています。

企業事例④ダイムラー

ドイツの自動車メーカーであるダイムラーは、企業価値の基本に「情熱・規律・尊重・誠実」をおき、インテグリティを最優先課題として、法律や企業で作成された規則を遵守し公正な企業理念に従って経営を行っています。

従業員には義務感で持つのではなく、自分の意志で持つことを促し、実践的に仕事で活かすように定めています。

企業事例⑤ゼネラル・エレクトリック

全世界で電気事業を展開する他国性コングロマリット企業であるゼネラル・エレクトリックの組織運営のベースは誠実さであり、その上に企業価値を置いています

すべての従業員に誠実な行動を最上位に進めていますが、特にリーダー育成においてインテグリティを浸透させ、企業価値を共有した組織づくりを目指しています。

企業事例⑥シスコシステムズ合同会社

ITおよびネットワーキングにおいて世界的リーダーであるシスコシステムズ合同会社は、「ゆるぎないインテグリティ」を掲げ、どのような状況下でも誠実さ、真摯な姿勢を貫くことを行動規範としています。また、困難な状況を乗り切るための倫理的意思決定ツールがあり、自分の行動指針を決定する際に役立ちます。

企業事例⑦株式会社滋賀銀行

自分に厳しく、人には親切、社会に尽くす」という近江商人の精神をインテグリティとして経営理念にしているのが株式会社滋賀銀行です。地域社会において共存共栄に努め、個性を尊重し、働き甲斐のある職場づくりと地球にやさしい会社づくりを目指しています。

企業事例⑧東レ株式会社

繊維事業を中心に、医療機器や医薬品開発などの分野で世界26か国でグローバルな事業を展開する東レ株式会社では、企業倫理、法令順守、安全・防災・環境保全を最優先とした経営を遂行しています。

また、地球環境問題への取り組みや新素材の開発・提供を行って社会貢献にも尽力しています。

インテグリティに対する理解を深めることができる本

昨今、組織マネジメントに重要な概念として注目されているインテグリティですが、その定義は抽象的で困難と言われています。特に組織のリーダーには不可欠な資質ですので、学べる書籍を紹介します。

現代の経営

マネジメントの父と呼ばれる経済思想家ピーター・ドラッカーの著書で、マネジメントについて概念上の基本的枠組みを理解できるように体系的に解説している書籍です。

また、経営におけるインテグリティの重要性や欠けている人の具体例などを紹介しており、ドラッカーは管理職である人間に誠実さが欠けていると組織は腐敗すると記しています。

リーダーの人間力 人徳を備えるための6つの資質

組織のリーダーにとって、仕事の能力以上に大切なのは人間力です。その要素であるインテグリティを育むために必要な6つの資質を経験に基づいた事例を含めて紹介しています。

インテグリティを身に付けるための資質を段階ごとに6つのステップに分けて解説しているので、実践的に学べるワークブックとして理解を深めることができるでしょう。

やっぱり「誠実な人」がうまくいく 丁寧にいきるためのヒント

人々が明るく元気になる著述活動をしている植西聡氏が、インテグリティを表現する要素の一つである「誠実さ」の重要性を説いた書籍です。

他人に対して誠実な態度で接することで他人との信頼関係が生まれ応援してくれる人が増えるなど、仕事と人生を好転させる9つの秘訣を記しています。インテグリティを学ぶことで、仕事だけでなく生き方にも役立てたい人にお勧めの書籍です。

インテグリティを企業に浸透させよう

グローバル化が進み、企業間競争が激しくなっている現代社会で、インテグリティの概念である誠実さや真摯さは、人間関係を築く上で重要な価値観とされています。特に組織のリーダーや管理者には必要不可欠な資質です。

誠実さを持つ人や企業は社会から信頼を得ることができるため、非常にメリットがあります。インテグリティの概念を企業に浸透させて組織マネジメントに活かしていきましょう。

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