労働力人口とは?意味や計算方法・近年の日本の推移をリサーチ

労働力人口とは?意味や計算方法・近年の日本の推移をリサーチ

労働力人口の意味や近年の日本の推移を解説!

人口に関する統計数値を見るときに、「労働力人口」という言葉を聞くことがあります。言葉からはなんとなく「働いている人の人口」であることは分かりますが、具体的な定義などはどうなっているのでしょうか。また、景気の波や日本の政治や経済の情勢によって、労働力人口はどう推移していくのでしょうか。

ここでは、労働力人口の意味や生産年齢人口との違い、労働力人口の計算方法について詳しく紹介します。また、日本における労働力人口について、近年の推移についても詳しく紹介しますので、ぜひチェックしてみてください。

労働力人口とは?

労働する能力と意思を持つ人口のこと

総務省統計局によれば、労働力人口とは、「15歳以上の人口のうち、『就業者』と『完全失業者』を合わせたもの」と定義されています。

ここでいう「就業者」とは、給料や賃金などの収入を得られる仕事に就いている者、あるいは、仕事を持ってはいるが、一時的に仕事を休んでいたまたはしていなかった者を指します。

また、「完全失業者」とは、仕事がなく全く仕事をしていないが、仕事を探していた、または仕事の準備をしていて、仕事があればすぐに就ける者を指します。すなわち、労働力人口とは、「労働する能力と意思を持つ人口」のことを指しているのです。

非労働力人口の定義

労働力人口と対比して用いられるのが「非労働力人口」ですが、非労働力人口とは、15歳以上の人口から労働力人口を除いた数と定義されています。すなわち、就業者でも完全失業者でもない者の人口を指していて、主に、家事を行っている者や学業についている者、高齢のため働けない者などを含んでいます。

なお、この非労働力人口には、仕事を探していて、見つかればすぐではなくても2週間以内に仕事に就ける者や、仕事を探していないが、働くことを希望し、仕事が決まればすぐに仕事に就ける者を含みます。

生産年齢人口との違い

労働力人口と同じように、人口統計においては「生産年齢人口」という言葉もよく用いられますが、生産年齢人口とは、15歳以上65歳未満の、いわゆる生産活動の中心となる年齢層の人口と定義されます

労働力人口と生産年齢人口との違いは、15歳以上であることは共通しますが、労働力人口は年齢の上限がないことや、働く能力と意思を持つことが条件となるのに対し、生産年齢人口は、年齢上限が65歳未満であること、家事や学業についているなどの非労働力人口も含む点が異なります。

労働力人口の計算方法

労働力人口の算出方法は、次のように定義されています。労働力人口は、就業者と完全失業者を合わせたものなので、労働力人口 = 就業者 + 完全失業者 です。あるいは、15歳以上人口から、非労働力人口を除いたものなので、労働力人口 = 15歳以上人口 ー 非労働力人口となります。

近年の日本における労働力人口の推移と今後の見通し

労働力人口の推移

総務省統計局の統計によると、戦後から、労働力人口は右斜め上に増加の一途をたどっていましたが、平成10年頃をピークとして、それ以降は減少傾向が続いていました。これは、日本の高齢化が主な背景とされており、労働力人口の比率が低い高齢者年齢層人口の増加に伴って、労働力人口も減少していったのです。

一方で、景気の回復によって就業の機会が増え、労働力人口は一時的に増加したものの、平成20年以降、いわゆるリーマンショックを経て、景気が徐々に後退し、労働力人口も減少している状況です。

今後の労働力人口の見通し

現代にいたるまでの日本における少子化問題は、いまだ十分に改善されておらず、医療技術の発展に伴う高寿命化と併せて、日本社会において少子高齢化は今後も続いていくと予想されています。この少子高齢化の問題が、労働力人口に影響を及ぼしています。

国立社会保障・人口問題研究所が2017年に公表した「日本の将来推計人口」を基に作成された「人口統計資料集(2017改訂版)」では、2014年の労働力人口は6,351万人ですが、2030年には、6019万人に減少すると推計されています。そしてその後も、少子高齢化は進み、労働力人口も減少していくことが予想されています。

労働力人口の減少がもたらす主な影響

さまざまな産業で働き手が不足する

労働力人口が減少することによって、直接的に問題となるのが、様々な業種において働き手が減少することです。特に、人々の生活のうえで必要なものが生産される産業において、働き手が不足することが懸念されます。これは、人々の生活だけでなく、日本全体の生産性の低下につながってしまいます。

介護離職が大きな問題となってくる

高齢社会の進展により高齢者が増加することは、介護のニーズが増加することに繋がります。まさに、「大介護時代」を迎えることになるのです。

そして、さらに少子化も進み、高齢者一人を支える若者の数が減ることで、大きな問題となるのが、家族介護の課題です。家族が親を介護しなければならないため、仕事ができなくなる、いわゆる介護離職が大きな問題となっていきます。

日本経済の低迷に繋がる可能性がある

労働力人口の減少に伴い、生産性が低下することは、日本の経済が低迷することに繋がる可能性があります。労働力人口が減少することで、生産の担い手が減ることを示すと同時に、労働力人口に位置する人々は、消費の中心でもあることから、国内総生産(GDP)の低下に繋がることが懸念されています。

労働力人口の減少における主な対策

女性が働きやすい職場を作る

労働力人口の減少という課題の裏面には、働きたくても働けない環境が課題となります。特に、女性の働き方に合わせた雇用環境を工夫する必要があるでしょう。たとえば、出産のために女性が一旦離職しても、復職できることや、子どもを預けて仕事ができる環境を整えることが大切です。

高齢者の就業拡大と企業によるヘルスケアを実施する

医療技術の発展などにより長寿命化が進むことにより、以前よりも元気な高齢者が増えることが想定されることから、このような高齢者が働ける環境を整えることが大切です。しかし一方で、高齢により病気にかかる割合は高まることから、適切な健康管理も必要です。企業側における、ヘルスケアの実施も重要な取り組みとなるでしょう。

非正規雇用者を正規雇用する

総務省統計局の労働力調査で2013年と2019年の統計数値を比較すると、非正規の職員・従業員数は2013年で約1,706万人だったものが、2019年では1,777万人と、徐々に増加傾向にあります。

非正規雇用は人件費をなるべく抑え、必要な労働力に限定した働きを求める企業には都合が良い雇用形態ですが、賃金が低いことや、雇用の不安定さが課題であり、景気の悪化により非正規雇用が減少する可能性があります。

労働力人口減少への対策の一つとしては、労働の安定化が必要であり、非正規雇用者を正規雇用へ切り替えることも有効であると考えられます。

雇用のミスマッチを解消する

働きたい人がいても、自分のニーズに合った仕事が見つからないと、職に就けません。同様に、企業が求人募集を行っても、欲しい人材が見つからなければ雇用者は増えません。これらの原因の一つに、いわゆる雇用のミスマッチがあると言われています。

労働力の需要と供給がマッチングするためには、雇用のミスマッチ対策が急務となるでしょう。具体的には、求人側の求める能力や労働条件を明確にすることや、職業紹介事業者による適切な求人情報の提供、求職者にとって求人情報がより入手しやすくなるツールの提供などが考えられます。

イノベーションの創出に投資する

ITインフラやデジタル機器が普及してきた現代においては、市場における新たな価値の創出・創造、いわゆるイノベーションの創出が求められてきています。文部科学省によれば、日本の科学技術指標において日本企業の研究開発費は2017年において約13.8兆円で、世界の中でもトップレベルです。

今後もIT関連におけるイノベーションの創出は増加していくと見込まれており、そこには労働力も必要となるため、それに見合った投資も必要となっていくと思われます。

労働力人口の減少に備えておこう!

景気の後退や市場の悪化、さらに日本における将来に続く少子高齢化の問題によって、労働力人口が減少していくことは、日本経済において大きな課題となっていきます。人口構造の変化や社会のニーズの多様化など、今後の日本社会の変化に対応し、労働力人口の減少に適切に備えていきましょう。

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