インバスケット思考の意味や活用法を解説!
ビジネス本として出されたり、多くの企業やセミナーで活用されている、インバスケット思考とはどのような思考なのでしょうか?
ここでは、インバスケット思考の意味やインバスケット思考を活用する場合のメリット、そしてインバスケット思考を実際に活用するにあたって、仕事の優先順位をどのように判断するか、などについて詳しく紹介します。また、インバスケット思考の活用法や大切なポイントについても分かりやすくまとめていますので、ぜひご覧ください。
インバスケット思考とは?
未処理の仕事を効率よく片付けるための思考方法
インバスケットとは、英語でIn-basketと書きますが、電子メールの受信箱を意味する”in-box”と概ね同じ意味とされており、メールの受信箱のように、未処理の仕事が溜まっている状態のことをいいます。すなわち、インバスケット思考とは、未処理の仕事を効率よく片付けるための思考方法という意味です。
ビジネスにおいては、多くの仕事を抱えたり、突発的なトラブルに見舞われるシーンが発生することがあります。そのとき、どの仕事から手をつけていくか、つまり優先順位を適切に定め、限られた短い時間の中で適切に仕事を処理していくための有効な思考方法として、多くの企業から評価され、セミナーなどでも活用されています。
インバスケット思考を身に付けるべき人
インバスケット思考は、ビジネスにおいて幅広く活用できる思考方法で、仕事をする人なら誰でも活用できるものですが、特に、この思考方法を身に付けるべき人は、次のタイプでしょう。
まず、昇任・昇格した人は、インバスケット思考を身に付けた方がいいかもしれません。上司という立場では、自分の仕事だけでなく、部下などの仕事も広くまとめなければならないため、より多くの仕事を処理していく必要があるからです。昇任時の研修・セミナーなどを活用して、インバスケット思考を学ぶといいでしょう。
それから、本人に課題があり、仕事のやり方を改善する必要がある人などは、インバスケット思考を身に付けるべき人と言えます。仕事の管理や進め方、あるいはそもそもの業務遂行能力に問題があるなど、多くは新人にもあてはまりますが、仕事をする力を向上させる意味では、このような人が対象となるでしょう。
インバスケット思考のメリット
メリット①問題発見能力が身に付く
仕事が山積みで、きちんと整理されていないと、どこに問題が潜んでいるかが分かりづらいという問題があります。しかし、インバスケット思考を身に付けることで、与えられた仕事を適切に整理し、まとめ直すことができるかもしれません。
仕事が整理できれば、どの仕事に、どんな問題があるのかを発見する力が身に付きます。そのため、問題を見落とすことが防げるというメリットがあるでしょう。
メリット②優先順位をつける力が身に付く
多くの仕事を抱えていると、どれから手を付けていいかが分からなくなることがあります。また、仕事は手当たり次第に取り掛かるものではなく、重要な案件、緊急な案件などは、至急取り掛かるべき仕事として取り組まなければなりません。
インバスケット思考を身に付けることで、ひとつひとつの仕事の重要度、緊急度を判断できるようになり、結果として、仕事の優先順位をつける力が身に付きます。
メリット③問題を分析し解決する力が身に付く
仕事には様々な内容が含まれており、対処方法もまた様々です。時には解決困難だと思われる事案もでてくるでしょう。しかし、解決が困難でも、相手は解決を求めてきます。
インバスケット思考を身に付けることで、取り組むべき仕事に内包される問題を的確に分析し、それを解決する力が身に付きます。
メリット④意思決定能力が身に付く
仕事をするにあたっては、数々の意思決定をしなければならないシーンが多く発生します。簡易なレベルの決定であれば比較的容易に行えると思われますが、重要かつ高度な意思決定が求められる事案も出てくるでしょう。
インバスケット思考を身に付けることで、仕事を適切に整理し、問題を分析し解決できるようになり、進むべき方向性を決められるようになるでしょう。すなわちそれは、意思決定能力が身に付くといえるものです。
メリット⑤組織を動かす力が身に付く
インバスケット思考を身に付けることで、仕事を適切に処理できるようになれば、知識や経験と合わせて職務遂行能力が向上し、職場においてリーダーシップを発揮すべき場面も出てくるでしょう。周りの信頼も得られ、自らの意思決定によって仕事が進むようになれば、自分が組織をまとめ、動かす力も身につくことが期待されます。
昇任・昇格した人は特に、インバスケット思考を身に付けることで、しっかりと組織をまとめ、動かしていくこともできるようになるでしょう。
インバスケット思考における優先順位の判断基準
優先順位の判断基準①重要度
インバスケット思考において仕事の優先順位をつける際、判断基準となるものの一つに、仕事の重要度があります。会社にとってその仕事がどれだけ重要であるかを示す度合いですが、会社が求めるものをきちんと理解していないと、重要度の判断すら十分に行えません。
そのため、会社の求めるもの、目指すもの、会社にとって何が利益となるのかなど、自らが日頃から把握しておくことが重要です。
優先順位の判断基準②緊急度
インバスケット思考における仕事の優先順位の判断基準として挙げられるもう一つの要素は、仕事の緊急度です。すぐに着手し解決を図らなければならないような、相手方とのトラブルや重要な契約に関する支払い、処理期限が非常に短いなど、条件は様々ですが、残された時間が少ないほど、処理にかけられる時間もまた少ない傾向にあります。
優先順位の判断基準③二軸で考える時間管理
仕事の優先順位を決める判断基準には、重要度と緊急度があることを述べましたが、ではそれぞれの度合いが異なる場合に、どのように判断すればいいでしょうか。
この場合には、縦軸と横軸、この二軸で考えるとよいでしょう。ただし、重要度が高い、低い、または緊急度が高い、低い、このように考えた場合、二軸において、4つのゾーンが生まれます。つまり、「重要度が高く、緊急度も高い」「重要度が高いが緊急度が低い」「重要度が低いが緊急度が高い」「重要度も緊急度も低い」の4つです。
この場合、会社にとって大切なのは、重要度です。そのため、重要度の高さを第一優先として、優先度を判断するとよいでしょう。つまり、「重要度が高く、緊急度も高い」仕事を最も優先することとし、次に「重要度が高いが緊急度が低い」、そして「重要度が低いが緊急度が高い」、最後に「重要度も緊急度も低い」の順となります。
インバスケット思考の活用法
活用法①管理職登用試験で活用する
インバスケット思考を身につけることによって、適切な管理能力や、業務遂行能力などが向上することから、部下などの仕事も管理しなければならない管理職に求められる能力と定義される会社もあるようです。そこで、会社の管理職として登用する際の試験で活用する方法が採用されています。
活用法②社員の能力開発に活かす
インバスケット思考を活用して多くの仕事を適切に処理していくことは、管理職に限らず、新入社員や、すでにビジネスマンとして働く様々な職種や職位の人に求められる能力でもあります。そこで、会社に在籍する社員の能力開発に、セミナーなどを通してインバスケット思考を学ばせる事例も出てきています。
インバスケット思考を行う時のポイント
ポイント①架空の人物になりきる
セミナーなどでインバスケット思考を行う際は、まず4つの手順があります。最初のステップは「架空の人物になりきる」というものです。つまり、架空のある人物を想定し、自分がその人になりきって、その立場で抱えている仕事・課題を解決します。
この考え方は、自分や自分の立場を客観的に把握し、理解するのに役立ちます。多くの仕事に振り回されていると、周りが見えなくなるばかりか、自分の立ち位置も分からなくなることもあるからです。
また、管理職にとってみても、この「架空の人物になりきる」という考え方が役立ちます。部下の仕事を管理する立場にあるため、部下の視点に立って物事を考える際に有効です。
ポイント②制限時間を設ける
インバスケット思考を行う時は、時間の縛りなく漫然と行っては意味がありません 。またトレーニングの効果も得にくいでしょう。現実の業務では、多くの仕事を限られた時間内に処理する必要があります。それを想定して行うため、インバスケット思考によるトレーニングの際は、制限時間を設けることが大切です。
ポイント③多くの課題を設定する
現実の会社では、数々の課題が発生します。時には、まとめて一度に大量の仕事が舞い込んでくることもあるでしょう。そういった事態を想定し、インバスケット思考を行うにあたっては、多くの課題を設定することが望ましいです。
多くの課題を効率よく短時間で整理し、優先順位をつけ、課題の解決を図ることによって、インバスケット思考のトレーニングの効果が表れます。
ポイント④自由回答にする
インバスケット思考のトレーニングを行うにあたり、課題に対する解決内容を回答として作成するにあたっては、選択肢形式ではなく、自由回答方式を採るべきです。
これは、様々な課題に対する解決策が、単一の行動に限らず、一連の作業の流れになることが想定されることや、注意事項、補足事項など、処理をするにあたって、様々な処理内容が含まれるます。また、自由回答にすることで、必要な内容を簡潔にまとめる能力も身につくでしょう。
インバスケット思考が学べる書籍
人材アセスメント受験者、管理職のためのインバスケット演習
西山 真一氏著、三省堂書店出版の本で、管理職を目指す人におすすめの実践トレーニングの本です。課長レベルに求められる能力として、仕事の優先順位付けや意思決定、実行計画の立て方、部下の動かし方などがまとめられており、演習を通して学べます。なお、演習の回答も付録になっていますので、セミナーなどにも活用できそうです。
管理能力開発のためのインバスケット・ゲーム 改訂版
槇田仁氏、伊藤隆一氏、荒田芳幸氏、伯井隆義氏、岡耕一氏の共同著。金子書房による出版で、定評のあるロングセラーの本です。
パーソナリティや管理能力について最初に述べられ、インバスケット技法の概要や特徴、活用法が詳しくまとめられており、さらに、インバスケット技法を用いて管理能力を開発するためのインバスケット・ゲームが紹介されていますので、セミナーなどで活用できそうです。
究極の判断力を身につけるインバスケット思考
鳥原隆志著、WAVE出版のインバスケット入門書とされている本です。著者は、株式会社インバスケット研究所代表取締役を務めるインバスケット・コンサルタントとして活動しており、インバスケット思考に関する著書も多数出されています。
この本は、架空の人物を題材に、会社で突然の課題を突き付けられ、非常に短い60分という制限時間の中で20件の案件を処理しなくてはならない、というインバスケット・ゲームに取り組めるものとなっています。こちらも、セミナーの教材として活用できそうです。
一瞬の判断力があなたを変えるインバスケット思考2~中級編
前述の「究極の判断力を身につけるインバスケット思考」の続編となる本です。著者は同じく鳥原隆志氏で、前作よりも難易度が高くなった、新たな20件の案件を解決する内容に。
なお、この本で取り組めるインバスケット問題の回答を簡易採点できる公式サイトがあり、実際にインバスケット思考を体感できます。こちらも、前作と同様、セミナーなどで活用できそうです。
インバスケット演習と面接演習の実践
西山真一氏著、ラーニングス出版。内容は、インバスケットの演習と面接の演習を実践し、マネジメントを疑似体験するというものです。演習では、管理職としての思考や行動についてまとめられており、さらに面接演習では問題を抱えている部下の面接という設定で、マネジメント力、コミュニケーション力を伸ばすのに効果的な一冊です。
インバスケット思考を身に付けて仕事の効率を上げよう!
インバスケット思考を身につけることで、多くの仕事を効率よく整理することや、仕事の優先順位を決めること、課題の解決方法や実践方法などが適切に判断できるようになることが期待されます。このことは、職場のリーダーとしてだけでなく、ビジネスマンとして必要な、数多くの仕事を適切に処理する能力が身につくことを意味します。
ぜひ、社内でもセミナーなどを活用し、インバスケット思考を身に付けて、これまでの自分の仕事の処理方法を見直して、仕事の効率を上げていきましょう。