集団浅慮(グループシンク)の意味や対策を解説!
集団浅慮(グループシンク)とは、集団で何かの合意形成をする際に、意見や結論の正当性やリスクなどを適切に判断し評価されることなく愚かな決定をしてしまうことを意味します。集団浅慮(グループシンク)によって、企業は大きなダメージを受け、ビジネスに失敗することもあるので対策案を講じることが大切です。
今回は集団浅慮(グループシンク)の意味や原因と対策方法について紹介します。基本的な知識を身に付けて、集団浅慮(グループシンク)にはまらないように注意しましょう。
集団浅慮(グループシンク)とは?
集団で決定した方針が個人で考えたものよりも劣る現象のこと
集団浅慮(グループシンク)とは、1972年に集団的意思決定の研究で有名なアメリカの社会心理学者のアーヴィング・ジャニスによって提唱された概念です。集団浅慮(グループシンク)は、集団で決定した方針が個人で考えたものよりも劣る現象のことを意味します。日本語では「集団思考」とも呼ばれています。
組織の意思決定の場では、早急に結論を導き出そうとすると、その判断が正しいかどうかを適切に評価する能力が欠如するといった現象が起こります。その結果、危険性が高い方針を決定してしまうのです。集団浅慮(グループシンク)は、個人で考えれば判断がつくようなことを集団で議論することで、かえって判断能力が欠如してしまって、間違った判断につながるという考え方です。
日本における集団浅慮の事例
日本における集団浅慮(グループシンク)の事例として有名なのは、2011年に起きた東日本大震災とそれに伴って発生した福島原発事故です。この事故は、「原発事故など起こるはずはない」という間違った解釈をして、事故が起きた場合の危機管理の対策を十分に行っていなかったことが原因であるという見方もあります。
組織の中には原発に対して疑問を抱えていた社員もいたと思いますが、集団の決定に異議を唱えることが許されない雰囲気があったのでしょうか。日本特有の「場の空気を読む」ということによって集団浅慮(グループシンク)が起こった事例です。
集団浅慮(グループシンク)が起こる原因
原因①集団凝集性や秘密性が高い
集団浅慮(グループシンク)が起こる原因の一つ目は、集団凝集性や秘密性が高いことです。集団凝集性が高い集団では、反対意見を言うとその集団のよい雰囲気を壊すことになるので、組織のメンバーは自分の意見を発言しません。さらに、参考としなければならない外部からの意見を聞き入れなくなる傾向もあります。
また、秘密性が高い組織では、会議の中身を外部に公表しないので、外部からの確認作業や情報提供が行われません。そのため組織独自の決定がなされ、集団浅慮(グループシンク)が発生する可能性があります。
原因②強力なリーダーが存在している
集団浅慮(グループシンク)が起こる原因の二つ目は、組織内に強力なリーダーが存在することです。このような組織では、社員がリーダーの顔色を見ながら立ち回ってしまい、反対意見が控えられてしまいます。勇気をもって反対意見を発言したメンバーに対して何らかの制裁が下る場合もあるので、個人の意見が尊重されない組織体系になりがちです。
原因③大きなストレスがかかっている
集団浅慮(グループシンク)が起こる原因の三つ目は、大きなストレスがかかっていることです。大きなストレスを抱えたメンバーが多い集団では、人間関係や意思決定のプレッシャーなどから逃れたいので、十分な検討をしないまま意思決定してしまいます。
そもそも大きなストレスを持った状態で意見を出し合ったとしても、よい意見など出るはずもありません。集団浅慮(グループシンク)を防止するためにも有効な対策を考える必要があります。
集団浅慮(グループシンク)を防止する方法
異なった意見を受け入れる体制を作る
集団浅慮(グループシンク)を防止する対策方法として、まずは、異なった意見を受け入れる体制を作ることが大切です。集団に属する個人のメンバーが独自の意見を持って発言することを受け入れて、お互いに尊重し合いましょう。
ポイントとしては、あるメンバーの発言が気に入らなかったとしても、まずは受け入れて意見を出したことに感謝することです。その後に反対意見を言って議論しあいましょう。そうすることで、活発に意見が発言されるようになり、集団の雰囲気も良くなります。
批判的な視点を持つ
集団浅慮(グループシンク)を防止するために、批判的な視点を持つようにしましょう。打ち合わせ時に、ただ話を聞くだけではなく、「この発言にどこか矛盾している内容がないか」などあえて反対意見を言う立場をとることも大切です。もし組織や集団にとって有益な批判があれば、しっかりと組織内のメンバーに意見を述べましょう。
外部の意見を取り入れる
集団浅慮(グループシンク)を防止するためにも、外部からの意見を積極的に取り入れましょう。外部の専門家を参加させると、第三者目線の客観的な意見を受けられます。組織内だけで会議をすると、どうしてもその集団に都合のいい結論になりがちなので、集団浅慮(グループシンク)を防ぐためにも外部の意見に耳を傾けましょう。
リーダーは裏方に回る
集団浅慮(グループシンク)を防止する対策方法として、リーダーは裏方に回るという方法もあります。集団のリーダーは常に議論の中立の立場をとって、たくさんの意見が出るように働きかけられるとよいです。
集団のリーダーが先に意見を言ってしまうと、どうしてもほかのメンバーが反対意見を言える雰囲気になりません。最初のうち、リーダーは自分の意見を言うのは控えて集団浅慮(グループシンク)を防止しましょう。
集団浅慮(グループシンク)を未然に防ごう!
これまで、集団浅慮(グループシンク)の言葉の意味や発生する原因、集団浅慮(グループシンク)の防止策について解説してきました。集団浅慮(グループシンク)を防ぐためにも、集団において、個人の意見を尊重して活発な意見が飛び交うような雰囲気づくりが重要です。
集団凝集性を高めて労働生産性の向上や離職率の低下を図るためには、集団浅慮(グループシンク)につながる組織を作るのではなく、チームの目標に対してさまざまな意見が受け入れられる心理的な安全の高い組織を作って、集団浅慮(グループシンク)を未然に防ぎましょう。