経営計画とは?メリットや策定手順からポイント・注意点まで

経営計画とは?メリットや策定手順からポイント・注意点まで
目次

経営計画のメリットや作り方を詳しく知りたい!

経営環境の急激な変化に対応していくためにも、経営計画の重要性は年々高まっています。経営計画は、会社の将来的な目標である経営ビジョンに基づき、経営目標を設定してから作成していきます。

経営計画は、企業の将来性を見据えた目標達成や経営陣・現場双方が共通の目的意識を持って業務に従事していくためにも必要不可欠な計画といえます。

そこで、そんな経営計画の意味・メリットや作り方などを紹介していきます。経営計画の作り方では策定の際のポイントも紹介していきますので、経営計画を策定する中で重要なポイントをしっかりと押さえながら、経営計画の重要性を知っていきましょう。

経営計画の意義と必要性

会社のビジョンや目標に基づいて策定される経営戦略

経営計画とは、会社の将来的ビジョンである経営方針や経営戦略を基に策定される具体的な経営戦略をいいます。経営計画を策定することで、会社内の限られた経営資源を有効活用し、事業環境の変化に柔軟に対応できる事業展開を目指していくことができます。

事業戦略との違い

経営戦略と事業戦略の違いについて理解しておきましょう。 この二つの戦略は、同じ意味のように解釈しがちですが、少しニュアンスが変わりますので、注意が必要です。

経営戦略は、経営上必要となる企業全体からの視点で策定する戦略の総称です。事業戦略は、経営戦略を基に企業内の各事業部の視点から策定する経営戦略を指します。

経営計画の必要性①企業の存続や成長に必要となる

社会的責任のために、企業は不確実性が常につきまとう将来に向け、企業が安定的に成長し続けていくことを求められています。

そういった社会的責務を果たすためにも、経営計画を策定することで、将来的に起こる可能性がある経営環境の変化を予測し、ビジネスチャンスをいち早く取り込むことや経営危機を回避することを目指していきます。このように企業の存続・成長のために経営計画は必要なものです。

経営計画の必要性②経営理念や経営目標の明確化に必要となる

企業は、経営理念や経営目標を立てて経営を行います。そのため、目指すべき将来の姿を実現させるために、経営計画を策定していきます。

経営計画を策定することで、経営陣・現場など企業全体でこの計画を共有し、目指すべきビジョンが明確になります。そして、企業全体で統一された経営計画の目標達成に向けて事業を展開していくことを可能にしていきます。

経営計画の必要性③利害関係者との関係性強化に必要となる

経営計画は策定されたあと、対外的に公開されます。これは、自社との顧客などをはじめとする利害関係者との関係性を強化することに繋がっていきます。

経営計画を公開することで、大企業では、取引先や投資家との良好な関係性を保つ役目を、中小企業であれば、金融機関からの融資を好条件で得ることができる材料の一つとして役立つからです。。

経営計画の種類

種類①長期経営計画

経営計画は、計画期間によって分類されます。5年から10年程度の計画を長期経営計画と呼ばれ、設定された経営ビジョンに基づき、今後の経営方針・将来的に事業展開する分野を定義します。

昨今では、事業環境の変化が著しいために、長期的な変化を予測、経営計画までに落とし込むのが難しくなりつつあります。しかし、長期経営計画を作成することで、企業における将来の経営ビジョンをしっかりと位置づけるために重要視されている計画の一つです。

種類②中期経営計画

多くの場合、3年から5年以内に達成する具体的な目標数値が明示され、目標を達成するための方法や方針が定められているのが中期経営計画です。中期経営計画の内容は、中期的に目指す事業の方向性が定められています。

例えば、深刻な経営難に陥っていた大手自動車メーカー日産自動車が、発表した「日産リバイバルプラン」は3年の中期経営計画でした。このように、大企業では、策定された中期経営計画を株主などの利害関係者を含めて広く公開されることが殆どです。

種類③短期経営計画

中期経営計画に基づき、1年間の具体的な行動計画として策定されるのが、短期経営計画です。会社全体の短期経営計画に基づき、各事業部・各部門別に計画が練られ、最終的には各従業員の行動計画まで細かく落とし込んでいきます。

この短期経営計画における数値計画は、月別、組織別に細分化して設定されます。そのため、経営計画の進捗状況を図るものには有効なものとなっています。

ここで注意しないといけないのが、短期経営計画を予算と混同してしまう可能性があることです。この場合の予算は、短期経営計画で落とし込まれた行動計画を基に、予実管理を行うために組み立てるものです。経営計画には様々な数値が記載されていますので、混同しないようにしましょう。

経営計画を作ることのメリット

メリット①売上アップに繋がる

経営計画を作ることで生まれるメリットに売上アップに繋げることが可能です。なぜなら、経営計画では、目標となる数値が具体的に記載されています。

その数値を目標に、経営陣はもちろん従業員もその目標数値を達成するためにどのように業務に従事すればいいか具体的に考え、行動に移すことができるからです。

これは、中小企業庁が公開しているデータでも立証されており、経営計画を作成したことがある事業者の方が作成したことがない事業者に比べて売上高が増加傾向にあることが明らかになっています。

メリット②課題を明らかにして改善することができる

経営計画を作成するメリットとして、課題を明らかにし改善することが挙げられます。日々の業務が忙しく、目の前にある小さな問題をそのまま放置しておくと、後に深刻な問題に発展してしまうケースも少なくありません。また、改めて考えてみることで気が付くことができる課題が発見できることもあります。

このように、経営計画を作成することで将来性のビジョンに向けて業務を進めていくだけでなく、今までの業績から自社の強みや弱み、競合他社との現状はもちろん、今後の市場展開など企業を取り巻く環境を把握することができる重要な機会となります。

そこで、経営計画を作成していく過程のなかで、企業にとって深刻な問題となる前の課題が浮き彫りになり、早めにに浮き彫りとなった課題に対して対策・業務改善を行うことが可能になります。

メリット③長い目で目標や経営戦略を考えることができる

経営計画を作成するメリットには、ロングスパンでの目標や経営戦略を考え、企業を成長させることができます。企業を存続させるには、企業の成長が必要事項です。どんなに大きな利益を上げて成長してきた企業であっても、時代の流れに合わせて変化できなければ、倒産に追い込まれてしまいます。

そのためにも、常に時代の先を見据えながら、企業にとって新しいビジネスチャンスとなるものを開拓し、企業を成長させていかなければいけません。経営計画の作成をすることで、目の前の業務だけをこなすだけでなく、将来の事を考える機会を得ることが可能になります。

メリット④自社の未来について従業員と共有することができる

経営計画を作成するメリットとして、企業の未来について従業員と共有することができることが挙げられます。これは、組織として統一した目的・目標を持つことが出来るために、その目的・目標達成に向かって全員が一丸となって、業務を行うことができるからです。

経営陣を担っている人のなかには、自分の頭の中にイメージがあり、それを口頭で伝えるだけでよいと考える人もいます。しかし、それだけでは従業員はどのようなことを意識しながら業務を行っていけばいいかわかりません。

しかし、具体的な目標や企業のビジョンを示した行動計画を盛り込んだ経営計画を策定し、従業員と共有することで、意志統一を図るだけでなく、モチベーションアップにも繋げることができます。

メリット⑤国から支援を受ける時の有益な資料となる

経営計画を作成するメリットとして最後に紹介するのは、国の支援を受けたいと考えたときに有益な資料として活用できる点が挙げられます。次に紹介する二つの計画は、経営計画を作成・申請することで、国から様々な支援を受けることができます。

中小企業・小規模事業者などが申請することで、税制面の優遇や各種金融支援を受けることができる「経営力向上計画」、国や都道府県に認定されることで、政府系金融機関による低利融資制度や企業支援ファンドからの投資などの支援策対象になる「経営革新計画」があります。

また、民間の金融機関から融資を受ける際にも、経営計画を作成・提出することで信頼度を上げることができます。このように、経営計画を作成しておくと、金策面で有利に動くことができます。

経営計画の基本的な作り方

作り方手順①内部環境の分析

経営計画を策定するための第一歩として、内部環境の分析を行います。内部環境分析を行うときは、企業のとりまく状況や経営資源を客観的に分析を行います。

内部環境の分析を行うことで、企業の長所・弱点を把握するだけでなく、企業として発展していくために、どのような戦略を組み立てていくかを考えていくベースとなります。

作り方手順②外部環境の分析

内部環境の分析と同時に行うことは、企業の取り巻く状況である外部環境の分析を行いましょう。外部環境では、世の中の流れだけでなく、法改正、市場規模、競合他社との状況を分析していきます。

外部環境を分析することで、将来的に起こりうる可能性がある事項を予測し、起こりうる問題について対策を練ることができます。

作り方手順③使命感とミッションの作成

企業の内部・外部環境の分析が終わると、次に着手するのが企業が社会・世の中で実現させたいことを、使命感・ミッションとして言語化させていきます。

使命感・ミッションの作成では、企業の存在理由を定義し、企業の行動指針として位置づけるものとなります。企業の将来的ビジョンにも繋がるものなので、時間をかけて考えていきましょう。

作り方手順④経営理念の作成と経営計画書発表会の実施

経営理念は、経営者の考えに基づいて会社の基本的な価値観・考え方を示しています。この経営理念をベースに、企業の将来的ビジョンを構築していきます。そのため、経営計画を考える前に、経営理念をしっかりと作成していきましょう。

経営理念を作成した後に、経営計画を策定していきます。経営計画を策定したら、経営者と従業員への意志統一や利害関係者に企業の方向性を示すために、経営計画発表会を実施していきます。発表会を実施することで、経営陣の方向性を知り、従業員も企業へのコミットメントが変化していく大切なポイントです。

作り方手順⑤短期利益計画と販売計画の作成

経営計画発表会を実施した後は、その目標に向かって企業全体が一丸となって業務に励むことになります。そこで必要になるのが、その目標に向かって数字を確保するためには、どれだけの利益が必要か、目標とする利益を確保するためにどれだけの売り上げが必要かを数値化する必要があります。

そのため、目標とする売上高・経費計算の数字を出した短期利益計画と、利益計画で作成した目標数値をどのような商品で達成していくかなどの目標ビジョンを示している販売計画を作成していきます。

作り方手順⑥中期事業計画と経営基本方針の作成

次に行うのが、中期事業計画と経営基本方針を作成していきます。中期事業計画では、5年後のあるべき企業のビジョンを現実のもとするために、売上・利益額・社員数などの目標数値を落とし込んでいきいます。

同時に、事業において何を重視して業務を進めていくかを社員に伝えるために、経営基本方針を作成していきましょう。

作り方手順⑦従業員の未来像の定義化

目標とする将来の企業ビジョンを作成した後は、将来の従業員ビジョンも描いていきます。社員の給与を将来的にどのようにしていくかを決め、社員一人一人が将来進む人生のモデルプランニングを行い、企業として考えている未来の従業員の姿を見せていきます。

従業員は、自分の未来像を明確に描くことが出来ます。そのため、企業の目標数値を達成するとに、自分の未来像に近づいていけるという考えに繋がるため、モチベーションアップに最適です。

作り方手順⑧長期事業構想の作成

長期事業構想を作成するには、自身が経営もしくは勤めている企業が、世の中の変化を見据え、10年~20年先に生き残るために行う必要がある事項をまとめていきます。

将来を予測することは非常に難しいことです。しかし、経営を行っていくなかで時代を読みながら事業を展開していくことは、企業の将来を守るためにも大切なことです。しっかりと、長期的な視点で会社の将来的ビジョンを見つめていきましょう。

作り方手順⑨行動指針と戦略の作成

行動指針の作成では、企業が大切にしていること、企業が従業員全員に大切にしてもらいたいこと明文化していきます。これは、目標達成に向かって従業員が行動するための指針となります。

このように行動指針を定めることで、商品やサービスにおける事業の方向性やターゲット層をしぼることが可能になり、他企業との差別化を図るなど戦略を練っていきます。

作り方手順⑩組織図と企業方針の作成

企業は、自社が策定した経営理念・使命感を達成するために、各従業員の役割分担を明示した組織図を作成していきます。組織図を作成することで、将来的にどのような組織を目指していくかを考えていきます。

最後に企業方針を作成していきます。これは、各企業の状況に応じて内容が異なりますので、企業にとって大切な方針をまとめていくといいでしょう。

経営計画を策定する時のポイント

ポイント①テンプレートを活用する

経営計画を策定する際のポイントを紹介します。一つ目は、テンプレートを参考にすることです。いきなり自力で経営計画を策定しようとすると、完成させることなく挫折したり、実効性の低い経営計画になってしまうなど失敗してしまうことが多いでしょう。

そこで、確実に経営計画を策定するために、他社の経営計画を参考、テンプレートを使いながら実際に作り始めるのがおすすめです。テンプレートを基に、他社の経営計画を参考に作成すると、自社にとって必要・不要なものも取捨選択が出来るようになり、修正を繰り返すことで自社オリジナルの経営計画を完成させていくことを可能にします。

ポイント②具体的な記載になっているかチェックする

経営計画の内容をチェックする際は、具体的な記載がされているかをチェックすることが大切です。なぜなら、抽象的な記載では、内容を明確に理解できない人がいるかもしれません。そうなると、経営陣と従業員との目標共有は難しくなるでしょう。

そこで、経営計画の内容は、具体的で目標に向かった行動をしっかりと取っていくためにも、誰が読んでも理解することができるように具体的な記載を行うことが大切です。

ポイント③量より質を重視する

経営計画では、量より質を重視して作成することが大切です。企業によっては、経営計画を100ページ前後作成している場合があります。

他企業の経営計画を参考にすることは大切ですが、いきなる膨大な量の経営計画を参考にしてしまうと、途中で挫折してしまう可能性が高くなることはもちろん、どういった目的を持っているか、どういった目標数値を掲げるかなどが解らなくなってしまいます。

初めて経営計画を策定する際は、自分自身の明確な目標を定めるためにも、必要最低限な項目を入れ込み、量より質を重視して作成していきましょう。

経営計画を実行する時の注意点

注意点①改善を加えていくようにする

経営計画の策定が終わると、遂に経営計画を実行に移します。実行の際に注意しなくてはいけないのは、経営計画の内容について改善を加えていくことです。経営計画は、最初から完璧に作る事は難しい作業です。

また、時代の流れや企業内外の取り巻く環境は、予測しても必ず正解するものとは限らず、予想外の出来事が起こる場合もあります。そこで、経営計画に無理が生じたらその都度、柔軟に修正を行うなど改善していきましょう。

注意点②予材管理を意識する

予材管理では、目標の2倍の予材を事前に仕込むことで、目標の未達成を防ぐことができます。目標が達成できなかった場合のリスク管理に最適ですので、目標を達成させるために予材管理を意識してみましょう。

注意点③進捗管理を怠らないようにする

経営計画を実行する中で、進捗管理は重要な作業です。せっかく経営計画を立てても、計画通りに実行できているか管理が出来ていなければ、目標を達成することが出来ません。

定期的に経営計画の進捗を管理することで、目標が未達成にならなないように調整することが可能になります。進捗管理をしっかり行うことでPDCAを回し、小さなリスクが大きなリスクにならないように問題を未然に防ぐことにも役立てることができます。

経営計画を作って会社や組織の経営を安定させよう!

経営計画は、時代の流れを読みながら企業を存続させるために、企業の将来進むべき方向性を具体的に示したものです。経営計画があることで、経営陣と従業員が共通の目標に向かって業務をすすめていくことが可能となります。

また、予期せぬ事態にも迅速に対応していくなど、リスク回避対策にも役立てることができますので、安定した経営を行うためにも、経営計画をしっかりと作っていきましょう。

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