コンピテンシーモデルとは?メリットや作り方・活用例も紹介

コンピテンシーモデルとは?メリットや作り方・活用例も紹介

コンピテンシーモデルの意味や作り方を知りたい!

人口減少による労働力不足やテクノロジーの急激な変化により、優秀な人材の育成が企業の健全な経営を支えるために非常に重要視されるようになってきました。

そのため、ハイパフォーマーと呼ばれる高い業績を残す人材の思考や行動をモデル化して人材育成や評価基準、採用面接などに活用するコンピテンシーモデルが注目されています。コンピテンシーモデルの意味や作り方を知ることで、企業の業績アップに繋げてください。

コンピテンシーモデルとは?

コンピテンシーの概念を実務で使うためにモデル化したもの

コンピテンシーモデルとは、「高い業績を残すハイパフォーマーの行動にはいくつかの共通点がある」というコンピテンシーの概念を企業が人事などの実務で使うためにモデル化したものです。

アメリカで1970年代に誕生した考え方で、日本では1990年代から人事評価などに取り入れられています。コンピテンシーモデルは主に企業の採用面接、人事評価、人材育成に活用すると効果を発揮するでしょう。

コンピテンシーの言葉の意味

仕事において優秀な成果を上げているハイパフォーマーと呼ばれる人達の共通してみられる行動特性をコンピテンシーと言います。

コンピテンシーは、職種や業種によって様々なため、それぞれの組織に合ったコンピテンシーの分析が必要です。コンピテンシーモデルが明確になるとハイパフォーマーな従業員が増え、組織の生産性が上がり、企業の業績アップに繋がるでしょう。

日本におけるコンピテンシーの捉え方

日本においてコンピテンシーモデルが注目され始めたのは、1990年代のバブル崩壊後です。それまでの日本企業は学歴や資格を重視した採用や年功序列による人事評価を行っていました。

しかし、少子高齢化による市場の変化でグローバル化を余儀なくされ、欧米諸国と同様の能力主義の人事が必要不可欠となってきます。そのため、ハイパフォーマーの行動特性によって作成されたコンピテンシーモデルで人事評価を行う形へと変化していきました。

コンピテンシーモデルのメリット

コンピテンシーモデルの一番のメリットは、評価基準が明確化されているので、上司の主観に頼らない客観的な評価ができることでしょう。評価に公平感があるため、部下のモチベーションが上がり、生産性の向上に繋がります。また、評価する側も基準に沿って評価するので評価しやすく、業務の効率化が図れるメリットもあるでしょう。

また、従来の人事評価は仕事をどれだけこなしているかでしたが、コンピテンシーモデルによる評価はどれだけの業績に繋がる仕事をしたかになります。そのため、部下はただ仕事をこなすのではなく、効率の良い仕事をするように工夫するようになるメリットもあるでしょう。

コンピテンシーモデルの作り方

組織の中で実際にコンピテンシーモデルを活用するためには、その組織ならではのモデルを作成する必要があります。作り方の手順を解説しましょう。

作り方①必要な要素を洗い出す

コンピテンシーモデルの作り方として、まずその業種や職種で目標となる、業績が良く効率的に業務をこなすハイパフォーマーでチームを作ります。

そして、必要なコンピテンシーを洗い出して様々な業種や職務で使えるように包括的かつ体系的に整理した「コンピテンシー・ディクショナリー」からその組織に必要な要素を慎重に洗い出します

作り方②ハイパフォーマーへの聞き取り調査を行う

コンピテンシーモデルの作り方として要素の洗い出しの次に行うのがハイパフォーマーへのインタビューです。ハイパフォーマーが行っている行動モデルや考え方、達成動機などを洗い出した要素に沿って聞き取り調査します。

そしてその聞き取り調査から、ハイパフォーマーと一般社員との違いを検証し、業績アップのためにはどの部分をどのようにすると良いかを、必要最低限のレベルから卓越したレベルまで段階的にモデル化しましょう。

作り方③組織の将来像とすり合わせる

コンピテンシーモデルは組織の将来像と一致していなければなりませんが、短期的な目標設定でコンピテンシーの要素を洗い出すと、組織の経営ビジョンと乖離している可能性があります。

そのため作り方の手順として、コンピテンシーモデルがある程度固まった後に組織の将来ビジョンとすり合わせる必要があるでしょう。

作り方④社員が取るべき行動の指針にする

コンピテンシーモデルの作り方で最後に大切な作業が、組織内での周知や共有です。せっかくモデルを作成しても、社員に伝わらなければ意味がありません。そのため、コンピテンシーモデルを社員が取りべき行動の指針として丁寧に周知徹底する必要があるでしょう。

コンピテンシーモデルを運用する時の注意点

コンピテンシーモデルは優秀な人材育成には欠かせませんが、その運用にはいくつかの注意点があります。注意点に留意して、より効果的に活用して下さい。

注意点①適切な構成要素の選定を心掛ける

先述のようにコンピテンシーモデルの作り方で最初に行うのが必要な要素の洗い出しです。この時、適切な要素を選定しなければコンピテンシーモデルが活かせなくなります

漠然とした要素や経営者の好みで構成すると目標達成が難しくなるでしょう。構成要素の選定はできるだけ具体的に客観的に行うように心掛けます。

注意点②高いレベルを求めすぎないようにする

コンピテンシーモデルはハイパフォーマーの行動特性を基に構成しますが、あまりにも高いレベルの行動特性を求めると実行するのは非常に困難になり、かえって社員のモチベーションを下げてしまいます。

最低要件から高いハイパフォーマーまで尺度を設け、それぞれの社員のレベルに合わせたコンピテンシーを構成要素に選定するようにしましょう。

注意点③定期的な見直しを怠らないようにする

現代社会は目まぐるしく変化しているため、コンピテンシーモデルも変化が必要です。そのため、定期的に見直しをし、時代に合ったコンピテンシーモデルであるか、経営ビジョンとコンピテンシーがマッチングしているかの検証を怠らないように注意しましょう。

コンピテンシーモデルの活用例

コンピテンシーモデルは、様々なビジネスシーンで明確な基準を元に平等な評価ができるメリットが注目されています。コンピテンシーモデルの実際の活用例を紹介しましょう。

活用例①コンピテンシー面接

競争や変化が激しく、より優秀な社員の採用が求められている現代社会では、評価基準が明確で面接官の主観が入りにくいコンピテンシーモデルを使う採用面接が注目されています。

コンピテンシーモデルを活用した面接では、公募者がこれまで取り組んできた経験をハイパフォーマーの行動特性と比較して評価するため、応募者の本質を客観的に見抜くことができます

そのため、企業側はその組織で活かせる人物であるかを判断でき、求職者は学歴や経歴以外の面で自分の長所を理解してもらえます。

活用例②コンピテンシーによる人事評価

近年、客観的な評価ができるとしてコンピテンシーモデルを人事評価に活用する企業が増えています。モデルによる明確な評価基準が公開されると、従業員は自分の足りない部分を分析することができ、成長へと繋がります。

評価する側も自社が必要としているハイパフォーマーの行動特性がわかるので評価がしやすいです。コンピテンシーモデルを取り入れた評価は明確で平等なため、職場の雰囲気もよくなり、生産性が向上するでしょう。

活用例③IT業界におけるコンピテンシー

最近では業界全体の統一したコンピテンシーモデルであるコンピテンシー・ディクショナリーを作成する業界があります。IT業界では、急激な国際競争とテクノロジーの変化に伴い、優秀な人材育成が急務となったため、2014年に試用版、2015年に正式版のコンピテンシーディクショナリーが公開されました。

IT業界で活用されているコンピテンシー・ディクショナリーは、タスクディクショナリーとスキルディクショナリーに分けられ、それぞれに紐づけされています。企業はこれらのディクショナリーの中から自社に必要な項目を選択し、最適なコンピテンシーモデルを作成することができるでしょう

活用例④看護や介護におけるコンピテンシー

現代社会において人材不足が特に課題となっている看護や介護の分野でも、コンピテンシーモデルの活用が必要に迫られています。働く人達の離職を防ぐためには、コンピテンシーモデルによる客観的で平等な人事評価は非常に重要です。

看護や介護の仕事はその職務により必要とされる行動特性が異なるため、モデルの細分化が求められます。それぞれのレベルに合わせたコンピテンシーモデルでの人材育成を行い、コンピテンシーの概念を活かしましょう。

コンピテンシーモデルを人材育成に役立てよう!

人口減少による人材不足や市場のニーズの変化による競争の激化、急速なグローバル化やテクノロジーの進化など、現代社会は様々な課題を抱えています。そのような社会で重要とされているのが優秀な人材の育成です。

ハイパフォーマーの行動特性を明確化したコンピテンシーモデルのメリットを人材育成に役立てて生産性を向上し、企業の成長や業績アップに繋げていきましょう。

ビジネスカテゴリの最新記事