コーポレート・ガバナンスの目標や効果を解説!強化方法や問題点も

コーポレート・ガバナンスの目標や効果を解説!強化方法や問題点も
目次

コーポレート・ガバナンスを実施して企業を成長させたい!

コーポレート・ガバナンスという言葉があります。日本では「企業統治」という言葉に訳されます。ビジネスにおいて「会社は経営者だけでなく、資本を投資している株主のものである」という目的から企業経営を管理・監視をおこなう仕組みのことを指します。

そのようなコーポレート・ガバナンスについての仕組み、目的、効果の解説はもちろん、強化方法・問題点や今後の課題についても解説していきます。コーポレート・ガバナンスを導入し、よりよい企業へと成長させていきましょう。

コーポレート・ガバナンスとは?

コーポレート・ガバナンスの言葉の意味

コーポレート・ガバナンスは、日本では「企業統治」という言葉に訳され、ビジネスにおいてよく使われます。企業経営において管理・監督する仕組みのことで、株主の利益を守り、公正な判断・運営、企業内で不祥事を防ぐ目的のために、社外の管理者が経営を監視・統制をおこないます。

コーポレート・ガバナンスの概念が生まれた背景

コーポレート・ガバナンスが生まれた背景には、バブル崩壊後の1990年代以降の「失われた10年」と呼ばれる日本経済の停滞期に、企業統治を担っていた銀行の弱体化が進んだことで、大量の不良債権が生まれました。

その際、各企業は自社に不良債権は無いという形を装うために、不正経理、粉飾決済など企業内部での隠ぺい工作が多発、場合によっては公的資金の注入を行うなどの不祥事が相次ぎました。

その結果を受け、ビジネスにおいて資本を投資している株主の利益を守る目的のために、企業の不祥事の発生を防ぎ、公正な判断を下し、企業経営を監視・統制するという役目を担う、コーポレート・ガバナンス仕組みに注目が集まりました。

日本でコーポレート・ガバナンスが注目されている理由

資本主義の経済において、株式会社という組織は大きな地位を占めています。企業には、会社の所有者である株主だけでなく、多くのステークホルダーと呼ばれる利害関係者が株式会社には存在します。

コーポレート・ガバナンスの仕組みに注目されている理由には、株主の利益を守る目的だけでなく、取引先や従業員などを示すステークホルダーという企業にとっての利害関係者の利益を守る目的も含まれています。ステークホルダーについては、後ほど詳しく紹介していきます。

日本のコーポレート・ガバナンスと海外の違い

コーポレート・ガバナンスは、日本と海外で意味合いや目的、仕組みが異なる点があります。まず日本では、コーポレート・ガバナンスについての法律は定められていません。次に、日本では、コーポレート・ガバナンスの対象は株主だけでなく、従業員などの社会全体も対象という概念です。

しかし、アメリカやイギリスのビジネスにおけるコーポレート・ガバナンスは、企業の経営者が株主価値の最大化を追求していくことのみを目的とし、ステークホルダーは生産の要素の一つに分類されています。

ドイツなどのヨーロッパ諸国では、コーポレート・ガバナンスは法律によって定められています。会社は株主と従業員双方のものという概念のもと、従業員以外のステークホルダーについても法によって目的や役割が示されています。

コーポレート・ガバナンスと内部統制との違い

コーポレート・ガバナンスと内部統制は、企業の情報開示の透明性や財務報告の信頼性を確保するという目的では共通した方向を示しています。企業の不祥事を防ぎながら健全な企業経営をおこなう目的のためにも、コーポレート・ガバナンスと内部統制は、企業にとって問題点を解決する重要な制度です。

しかし、注意しなくてはいけないことは、コーポレート・ガバナンスと内部統制の目的は同じでも仕組みが違うことを理解しておかなくてはいけません。

内部統制は、法令尊守のための社内向けの仕組み、コーポレート・ガバナンスは株主の権利を守ることと組織内での不祥事防止を行うための経営監視の仕組みです。この違いをしっかりと把握した上で、コーポレート・ガバナンスと内部統制の仕組みを企業内に導入していきましょう。

コーポレート・ガバナンスとコンプライアンスとの違い

内部統制と同様に、コンプライアンスとコーポレート・ガバナンスの意味や目的の違いについても理解しておく必要があります。コンプライアンスは「法令遵守」と訳され、企業が法律・社会倫理・企業倫理を守ることを意味します。

企業が何かしらの不祥事を起こしたことは、コンプライアンスを違反していることになります。このコンプライアンスを強化する目的で、外部から企業を統治する仕組みがコーポレート・ガバナンスです。

コーポレート・ガバナンスとCSRの関係性

CSRとは企業の社会的責任を意味で、企業自身が事業を行うことで自社の利益を追求します。その活動を通じて社会に何かしらの影響を及ぼす場合、企業はその責任を果たさなければなりません。

この企業の社会的責任を果たす目的で、コーポレート・ガバナンスの仕組みを導入していきます。CSRは、コーポレート・ガバナンスとの相互関係性を認識し、目的を果たすためにも具体的に対応していくことが今後の課題として挙げられています。

コーポレート・ガバナンスの目的

企業経営の透明性を確保するため

企業の現状を知るには、経営戦略・課題・リスクマネジメントなどの情報は重要な資料となります。コーポレート・ガバナンスは、企業運営の透明性を示すためにも第三者にこのような情報を開示することで、自社の企業経営が適切なものであることを証明する目的があります。

株主の権利と平等性を確保するため

ビジネスにおける企業の責務として、株主の権利や信頼関係を保つことは重要な課題です。その際、平等性などの問題点を解決する目的として、コーポレート・ガバナンスは重要な役目を果たす大きな役割を担います。

例えば、企業は、株主の関心や目的、問題点としている課題をしっかりと受け止め、明確でわかりやすい説明をおこなう必要があります。また、企業と株主双方に利益がでるような経営戦略を提示し、株主からの理解を得られるように努力するしなくてはいけません。

ステークホルダーの権利や立場を尊重するため

ステークホルダーとは、従業員・顧客・債権者・地域社会など、株主以外に企業と関わる権利者を指します。コーポレート・ガバナンスの目的には、ステークホルダー達とも良好な関係かつ健全な事業活動をおこなうことで、社会・経済全体に利益をもたらすことも重要な目的として含まれています。

企業が継続的に成長・発展を遂げるには、株主だけでなくこのステークホルダーも多く関係してきます。そこで、ステークホルダーの権利や立場も尊重し、力を合わせて働いていくことも、コーポレートガバナンスの重要な目的です。

取締役会等の責務を果たすため

コーポレート・ガバナンスを導入する際に、株主の権利を代弁する目的として第三者として取締役会などを設置するケースが多くあります。コーポレート・ガバナンスにおける取締役会は、取締役会が責務を果たすという義務も含まれます。

取締役会はこの責務を果たす目的で、企業から独立した立場として経営陣の監視や株主からの要望を企業側へ説明などをおこなっていきます。

株主との対話を実現するため

ビジネスにおいて、企業は経営者だけで成立していません。そのため、経営者は一方的な企業経営にならないように努める必要があります。そのためにも、株主との対話は双方の良好な関係を保つだけでなく、企業の持続的な成長に必要不可欠です。

株主総会以外でも株主の建設的な意見交換を行えるような体制を整える取り組みを行う目的で、コーポレート・ガバナンスを導入することは、目的を果たす手段の一つといえます。

ビジネスにおけるコーポレート・ガバナンスの効果

一部の経営陣による経営の暴走を防ぐことができる

ビジネスでコーポレート・ガバナンスの仕組みを導入ことで、経営陣による経営の暴走を防ぐ効果があります。バブル経済崩壊後に、ビジネス界では経営陣の独断で行った隠ぺい工作を引き金に様々な不正が多数起こりました。

ビジネスでは、企業が起こした不祥事は、株主だけでなくステークホルダーからの信頼関係を失う結果となりかねません。その損失は大きく、最終的には日本経済の悪化に繋がってしまいます。

株主やステークホルダーからの信頼を失わないためにも、企業経営が適切におこなわれているかを監視する目的として、コーポレート・ガバナンスは重要な仕組みです。

利益重視に偏らない健全な経営を実現することができる

ビジネスにおいて社会的に認められる企業になるには、利益ばかりを追求するような偏った経営ではなく、需要に見合った商品・サービスを提供していく必要があります。利益重視に偏らない目的を果たすためにもコーポレート・ガバナンスの導入は大きな効果を発揮します。

長期的に安定した経営を続けていく目的を果たすためにも、組織全体でビジョンや目的を共有しておくことが大切です。コーポレート・ガバナンスを整備することで、企業理念から外れることなく、全ての従業員が企業価値を高めるように最善を尽くすことが可能になります。

長期的な企業価値の向上に繋がる

コーポレート・ガバナンスは、株主の権利を守る目的だけの仕組みではありません。企業に関わる全てのステークホルダーの権利や利益を保護する目的も兼ねています。その結果、企業への信頼度は高まるため、長期的な目線で企業価値を向上させることになります。

長期的な企業価値が向上することは、企業の継続的な成長も見込めることになります。そうすれば、株主からの信頼度が上がるだけでなく、金融機関からの融資も受けやすくなるため、将来的な企業戦略を練りやすくなります。

コーポレート・ガバナンス・コードが制定された背景

コーポレート・ガバナンス・コードとは?

コーポレート・ガバナンス・コードは、金融庁と東京証券取引所が共同でコーポレートガバナンスのガイドラインとして公表されています。内容は、株主の権利保護やさまざまなステークホルダーとの良好な関係性、取締役会の目的などの組織の在るべき形や適切な情報開示について記されています。

コーポレート・ガバナンス・コード制定の背景

コーポレート・ガバナンス・コードが制定された背景には、冒頭でも紹介したように日本は1990年代に起こった、企業の内部隠ぺい工作による不祥事が相次いだことから始まります。

この不祥事をきっかけに、アメリカなどで浸透しつつあった、コーポレート・ガバナンスの導入について日本でも活発に議論されるようになりました。

そして1999年にOECD(経済協力機構)が「コーポレート・ガバナンス原則」を公表されたことに続き、2004年に東京証券取引所が「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」を策定、2015年3月に「コーポレート・ガバナンス・コード」の公表・運用に至りました。

コーポレート・ガバナンス・コードの改正内容

改正内容①取締役会の多様性

2018年6月に、コーポレート・ガバナンス・コードは一度改定されました。改定内容には、取締役におけるジェンダーや国際性の多様性について触れられています。他にも、監査役については、財務・会計・法務に関する知識を持つだけでなく、適切な経験と能力を有する者が専任されるべきと強調されています。

改正内容②経営トップの選解任

コーポレート・ガバナンス・コードの改定内容には、取締役会におけるCEOの選解任について「客観性・適時性・透明性のある手続きの確立」という原則が追加されました。

日本のビジネスにおいて、社長などの経営者には大きな決定権が集中していました。そのため、コーポレート・ガバナンスで謳っている透明性などに欠けるという問題点があったため、この課題を解決する目的でこの内容が追加されています。

改正内容③政策保有株式の縮減

主にビジネスで関係を築くために取得した取引先企業の株式の事を政策保有株式といいます。コーポレート・ガバナンスでは、これまでこの政策保有株式を保有する企業に説明を求めるのみでしたが、改定では縮減の補充原則が追加されています。

コーポレート・ガバナンスの強化方法

強化方法①内部統制を強化する

コーポレート・ガバナンスを導入し、その仕組みを強化させる目的として、内部統制を強化させる方法があります。コーポレート・ガバナンスの目的である透明性の高い情報開示と財務状況の報告を行うためには、内部統制の仕組みをしっかりと機能させる必要があります。

内部統制を強化するには、日々の業務中に違反行為や背任行為が起こらないよう、適切な監視体制を整備することが必要です。監視体制を強化し、社内での不正やリスクを未然に防ぐことで、コーポレート・ガバナンスの目的を果たすための機能が形成されていきす。

強化方法②第三者的な視点からの監視体制を整える

コーポレート・ガバナンスを強化する目的として、一部の経営陣による不正を防ぐため第三者の立場として社外取締役や監査役による委員会を設置し、監視体制を整える必要があります。

例えば、監査委員会・報酬委員会、指名委員会などの社外取締役を設置し、ステークホルダーの代弁者として重要な役割を担わせることで、コーポレート・ガバナンスを強化させます。

強化方法③執行役員制度を導入する

コーポレート・ガバナンスを強化する目的には、執行役員制度を導入する方法有効です。執行役員は、取締役と別に専任され、業務執行の責任・権限を持つことになり、第三者的立場を確立することが可能です。経営における決定を行う取締役と分離させることにもなるので、企業の管理体制の強化を可能にします。

日本では、取締役会の構成員が多い反面、社外取締役が少ない、取締役としての機能が果たされていないという課題が多くあげられています。企業の内部監視が十分に機能できていないという問題点もあり、現在では多くの企業ではコーポレート・ガバナンスの仕組みを機能させる目的で執行制度を導入しています。

強化方法④社内の判断基準を明確にしておく

コーポレート・ガバナンスを強化させる目的として、株主だけでなく、従業員をはじめとするステークホルダーに対しても企業の考え方や方向性を示すことも重要な課題の一つです。特に社内での内部統制は、業務遂行や意思決定などの判断基準に関係するため明確にしておかなくてはいけません。

判断基準を明確にさせ周知を徹底させることで、従業員の意識改革や企業価値の向上につながり、コーポレート・ガバナンスにおいても透明性の高い情報を開示することができます。

強化方法⑤CEO不参加で取締役会を実施する

ビジネスにおいて、CEO(最高経営責任者)は大きな決定権を持つ存在です。その意思決定の強さからCEOの独断で企業の経営方針を決定し、偏った方向へ向ってしまう問題点があります。

こういった独断を防止する目的でコーポレート・ガバナンスを導入し、CEO不参加の取締役会を実施することも可能です。

CEO不参加の取締役会を実施することで、CEOの意見に左右されずに客観的な意思決定が可能なります。企業の透明性を強化する目的としても、このようにコーポレート・ガバナンスの仕組みを導入していくことは有効な手段といえるでしょう。

コーポレート・ガバナンスの課題と問題点

コーポレート・ガバナンスの主権者が不明確

日本でコーポレート・ガバナンスを導入する際の課題の一つに、誰が企業を統治すべきなのかという問題点が指摘されます。会社法上、会社は株主のものです。しかし、日本では終身雇用や年功序列などの慣例がある影響で、従業員などのステークホルダーのものという認識が根強くあります。

そのため、日本でのコーポレート・ガバナンスには株主と企業の関係に留まらない独自のコーポレート・ガバナンスを導入する必要があります。

社外取締役や社外監査役の人材不足

コーポレート・ガバナンスを導入する際の課題として、社外取締役や社外監査役の人材不足という問題点もあります。社外取締役や社外監査役には、様々な経験と専門知識をもった人材が適任とされています。

しかし、そういった人材がただでさえ少ないのに、外国人や女性など多様性も含めると更に適した人材が少ないという課題に直面しています。これは、コーポレート・ガバナンスを導入する点にあたり、問題点となっています。

社内体制構築にコストがかかる

コーポレート・ガバナンスを導入するには、社内体制の構築が必要です。しかし、コーポレート・ガバナンスの効果は、定量的ではないため、コストや労力をどこまで費やすべきかわからないという問題点があります。

ルールと取り組みにギャップがある

日本でコーポレート・ガバナンスを運用における企業の課題は、コーポレート・ガバナンスのルールをどのように解釈し、企業内で運用していくためのギャップを埋める必要があります。

コーポレート・ガバナンスは、企業が遵守すべき原則が定められています。しかし、法律として定められていないため、運用内容については各社の裁量で判断されているが日本の現状です。

グループ会社に対するガバナンスの欠如

コーポレート・ガバナンスを運用するにあたり、勤めている企業にグループ会社がある場合は、グループガバナンスと呼ばれています。このグループガバナンスにおいて、各グループ会社のガバナンスに対する意識が欠如している点が近年議論に上がっています。

なぜなら、グループ会社には上場子会社や海外子会社など様々なため、統一したコーポレート・ガバナンスの制度の導入が難しくなっています。しかし、内部統制やコーポレート・ガバナンスの欠如が不正につながる事例もでてきているため、早急の対応が迫られています。

コーポレート・ガバナンスの企業事例

企業事例①株式会社みずほフィナンシャルグループ

みずほ銀行を筆頭に金融系の企業を子会社にもつ株式会社みずほフィナンシャルグループでは、指名委員会・報酬委員会は全員が社外取締役であることが特徴です。これは、企業としての透明性を示す目的を果たしており、コーポレート・ガバナンスが有効に運用されています。

企業事例②株式会社良品計画

無印良品のブランドで知られている株式会社良品計画は、ステークホルダーとの良好な関係と企業価値の向上をめざすことで、信頼を獲得していく目的としたコーポレート・ガバナンスが運用されています。取締役会・監査役会など、コーポレート・ガバナンスを運営する主要な委員会には、社内と社外取締役がそれぞれ設置されています。

コーポレート・ガバナンスの仕組みを理解しておこう!

コーポレート・ガバナンスは、ビジネスにおいて企業の透明性を示す目的を果たす重要な仕組みです。その反面、内部統制やコンプライアンスと混同されがちなので、その違いや目的について理解しておくことも大切です。

他にも、コーポレート・ガバナンスの仕組みだけでなくを導入する際には、企業内での運営に問題点や課題が起こりにくいように目的をしっかりと定めて導入していきましょう。

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