「人時生産性」とは?意味や計算式・向上させるためのポイントも!

「人時生産性」とは?意味や計算式・向上させるためのポイントも!

人時生産性の意味や計算式などを解説!

近年では働き方改革によって、働き手を増やすことや労働生産性について取り組むようになりました。働き方改革の中でも、生産性の評価基準に含まれる「人時生産性」があります。この「人時生産性」とはどういう意味や目的を持っているのでしょうか?

そこで本記事では、人時生産性の意味や計算式をまとめました。人時生産性を向上させるためのポイントもまとたので、ぜひ参考にしてください。

人時生産性とは?

人時生産性の言葉の意味

人時生産性(じんじせいさんせい)とは、従業員1人が1時間にどれだけの粗利益を上げたかを示す指標のこと。人時生産性の数値が高い企業は、効率的に会社が動いているという意味合いが含まれています。

この値が高い企業は、高品質なサービスの提供やたくさんのクライアントとの契約、短時間で大量の製品製造などが可能です。人時生産性を向上させるというのは、企業同士の競争力やその企業でしかないものを高める上でとても重要になるでしょう。

人時売上高との違い

似たような言葉に、人時売上高という指標があります。従業員1人が1時間にどれだけの売上高を上げたかを示す指標です。人時売上高は売上のみを示しており、人時生産性はコストを一緒に含めた結果が示されているという違いがあります。

人時売上高は人時生産性と同様に、その企業がお金をいかに獲得することができるのかを比較するときによく使用され、企業の規模を知る等の目的で多く活用されているのが人時売上高です。

労働生産性との違い

人時生産性と同じような意味を持つ指標である、労働生産性。労働生産性は、労働量に対してどれだけの成果があるのかを示しており、総労働量に対して従業員1人の成果量で計算されます。

しかし、人時生産性は1人の従業員が1時間でどれだけの粗利益を上げたかという数値になっているので、労働生産性よりも人時生産性のほうが細かく指標を確認が可能です。

日本企業における生産性の実態

戦後から長い期間にわたって長時間労働が当たり前だった日本は、徐々にその限界が見えてきたところで働き方の改善が進められ、生産性についても目が向けられるようになりました。

2017年に公益財団法人日本生産性本部が発表した「労働生産性の国際比較2017年版」で、日本はOECD加盟国35か国中で20位、主要国(G7)では常に最下位という状況です。政府はこの状況を打破するためにも改善しようと力を入れており、多くの企業も生産性を向上させようと対策を考えています。

人時生産性の向上が求められている理由

労働時間の短縮に繋がるため

人時生産性の工業が求められている理由の1つとして、労働時間の短縮があります。長時間働いていると疲労や判断ミスが起こり、人時生産性が下がります。また、人時生産性が低いのに給料も多く払っていることになるため、良いことがありません。そのため、労働時間を短くして生産性の維持や向上を目指すようになりました。

人材不足の問題を解決することができるため

日本では少子高齢社会が進み、どの企業も平均して人材不足が深刻化しています。人材不足を打破すべく、AIやロボットを利用した新システムの導入などの取り組みを実施している企業が多いです。

こういった取り組みは人材不足の解決ともに、従業員の労働時間の短縮や人件費の削減、効率的な働き方にも繋がります。効率的な働き方になることで、人時生産性の向上にも期待が持てることでしょう。

人時生産性の計算式と具体例

人時生産性の算出方法

人時生産性の計算式は「従業員全員での粗利益高÷従業員の総労働時間」です。この計算式は、その企業全体の平均的な人時生産性が算出できます。また、それぞれの項目で従業員1人当たりの正確な数字がわかるのであれば、その従業員1人当たりの人時生産性についても算出が可能です。

大きい工場で大人数での製造やチームで動く仕事の場合だと個人の数字を出すことが難しいため、企業全体での平均的な人時生産性を算出するほうが良いでしょう。

人時生産性の主な具体例

人時生産性の計算式の具体例として、競合のレストランであるA店とB店を例に比較してみましょう。まずは条件の確認です。どちらの店も従業員15人働いていると仮定して、次の条件で比較します。

A店では従業員15人が30時間の勤務、売上高が300万円、粗利益高が250万円でしたが、B店では従業員15人が50時間の勤務、売上高が400万円、粗利益高が300万円でした。

売上高や粗利益高の数字だけを見れば、B店のほうが良いように思うかもしれません。ですが、人時生産性の計算式に当てはめて計算してみると、本当にどちらが良いのかが分かります。

A店は「250万円(粗利益高)÷450時間(総労働時間)=約5,500円(人時生産性)」となり、B店は「300万円(粗利益高)÷750時間(総労働時間)=約4,000円(人時生産性)」となります。

こうして見てみるとA店のほうがB店よりも平均的に人時生産性が高く、効率的・良い勤務体制ということが分かりました。これは例としてあげましたが、人時生産性の高い・低いというのは人件費などの費用でも左右されます。そこで、粗利益高だけにとらわれず人時生産性の計算式に当てはめて計算すると良いでしょう。

人時生産性を向上させるポイント

ポイント①適材適所の人材配置を心掛ける

人時生産性を向上させるためのポイントの1つである人材配置。あまり得意でない分野の仕事に付いている人がいると、それだけでも人時生産性が落ちてしまいます。そうならないためにも対策の例として、配置した従業員の意味や従業員1人1人の生産性、得意な仕事、特性などを注視して配置する必要があります。

ポイント②無駄な業務を洗い出す

無駄な業務を洗い出して改善することは、人時生産性を向上させる上で欠かせません。意味のない業務をずっとやっていると従業員の人件費の無駄に繋がり、それでもまた人時生産性が落ちてしまいます。そうならないための対策の例としては、業務のやり方や必要な手順かどうか、連携がしっかりと取れているのかを確認するようにしましょう。

ポイント③人件費を削減する

人時生産性の中でも粗利益高に関わる人件費。勤務人数や勤務時間を見直すことで総労働時間を減らすことができますが、給料を下げただけでは意味がありません。人件費を削減するための例としては、人員整理や新システムの導入、従業員1人1人の評価の見直し、競合する企業の平均的な給料などの方法があります。

人時生産性を向上させる時の注意点

注意点①コストを削減しすぎない

コストの中で大きい人件費ですが、人件費ばかりを削ってしまうと会社に貢献している人材まで削ってしまい、成果が落ちてしまうということになりかねません。

働き方改革が進み始めたころに人件費の削減と騒がれましたが、意味のあるコストを削減しすぎてしまうことで成果が落ち、またコストの削減をするという負の連鎖が続いてしまいます。

そうならないための例として、人時生産性を向上させるポイントで説明した人員整理や従業員1人1人の評価の見直し、競合企業の給料の平均などの調査も重要になるでしょう。

注意点②販促強化の施策に頼りすぎない

販促強化ばかりに頼りすぎないことも人時生産性を向上させる上でとても重要です。販促強化をすることで一時的な売上や粗利益高の向上が見られるでしょう。ですが、販促強化によって経費の増大などのデメリットもあります。

例としては、「これが会社のやり方だから」「ずっとやってきたことだから」と販促強化を続けている企業があるとします。ずっとやってきたことを続けるのは良いかもしれませんが、日々変わる日常に対応できているのでしょうか。本当にずっと需要があるものなのか疑問が残ります。

そのため、販促強化をするのであれば予め効果や結果を予測し、平均的な目標や撤退する基準を設定、結果の把握をすることがとても重要です。

注意点③経営陣や現場管理職が手本になるようにする

会社の中でもとても重要な存在である経営陣や現場管理職の人が手本になるのも、人時生産性を向上させる上で重要です。部下に任せているだけの会社では、馴れ合いや妥協などが生まれてしまい、人時生産性が落ちてしまいます。

ですが、経営陣や現場管理職の人が手本として動くことで、部下も付いていこうと必死に動くようになり、人時生産性も上がることでしょう。世の中の変化があっても会社のリーダーが手本になっていれば、自然と会社の従業員も付いてきて会社全体で改革が起こります。

人時生産性を向上して働きやすい企業にしよう!

働き方改革で重要な人時生産性について解説しました。人時生産性を向上させることで、企業の特徴としてのアピールや生産性の向上などに繋がります。

紹介した人時生産性を向上させるポイントや注意点を参考に削減できるところは削減し、会社全体の見直しをしてみてください。正しい方法で人時生産性を見直すことは、従業員のモチベーションアップや企業としての成長にも繋がり、良い方向に働き方改革を進めていきましょう。

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