人事考課とは?目的とメリット・運用手順や自己評価の書き方も!

人事考課とは?目的とメリット・運用手順や自己評価の書き方も!
目次

人事考課の意味やメリットなどを解説!

企業運営において社員を評価するための基準が必要です。そういった社員を評価するための基準として人事考課というものがあります。人事考課の仕組みを設置する意味やメリットについて解説するので、企業運営の中で参考にしてください。

人事考課とは?

人事考課の言葉の意味

まずはその言葉の意味から確認していきましょう。人事考課というのは、従業員を様々な判断材料で査定する仕組みです。また、その結果から従業員を適切に処遇することも重要な意味を持っています。

人事考課の方法

従業員を査定する意味や目的のある人事考課ですが、その方法はどういったものがあるのでしょうか?人事考課の方法として、社内で設定した基準との比較や、他の社員との相対的な比較、人物評価などが挙げられます

また、評価報告は定期的に行われることが基本となっており、半年か一年に一度のペースです。それぞれの項目の意味や目的などを含めて、詳しい仕組みを確認していきましょう。

人事評価制度の違い

似た意味や目的のものとして人事評価が存在します。人事考課と人事評価の意味や目的の違いを明確に設定していない企業も多いです。

人事考課の場合は先程のような意味や目的があり、従業員本人の企業貢献度やスキルを査定します。そして、それを昇給や昇進などに人事に反映されることが大きな目的です。人事評価の場合は結果を重視するような形になっており、他者評価などは加味しないことがあります

そのため、人事考課のほうが様々な要素を汲み取って査定するため、従業員の満足やモチベーションをアップする意味があります。人事評価において結果だけで判断されると不満を感じることもあるでしょう。そうならないために人事考課の仕組みが大きな意味を持つのです。

人事考課の主な変革

人事考課の変革①年功主義時代

そもそも日本の人事はどのような形で変革してきたのでしょうか?人事考課の主な変革を時代をおって解説していきます。経済が右肩上がりだった1980年代は年功主義時代でした。

年齢が勤続年数が上がると給料も増えて職位も上になっていく時代です。そのため、基本的には長期雇用を前提とした定期採用や年次管理が行われていました。

この時代の問題は年齢や勤続年数が上がれば、能力が低い人物でも評価される可能性があった点です。人事考課もしっかりと機能しておらず、上司が一方的に部下を評価することが多くありました。評価項目も正しく設定しておらず、若手からすれば無能なベテランだけど給料が高い時代だったのです。

人事考課の変革②成果主義導入時代

年功主義時代はそういった精査されていない評価項目でも許された時代でしたが、バブル崩壊後は見直しを迫られました。1990年頃からは成果主義導入時代となり、人事考課の役割が重視されるようになったのです。

長く勤めているだけで給料が高い人間に人件費をかける余裕がなくなり、より有能な人材に対して報酬を払う形に変化しました。この頃になると目標管理制度というっものが導入され、人事考課が成果主義を導入しています。

新しい評価項目を導入していく中で、旧態依然な組織文化が改革を妨げ、結果的にそういった企業は衰退していくことになりました。人事考課の意味や目的を理解した企業は新しい有能な人材を他社より早く獲得出来たのです。

人事考課の変革③ポスト成果主義時代

2010年頃になるとさらに評価項目も精査されて、ポスト成果主義時代が訪れました。この頃になると多くの企業が人事考課の意味や目的を理解し、人事評価制度の見直しを行ったのです。

人材を適材適所に配置し、テレワークなども適宜取り入れ、より働きやすい状態に整えて評価するようになりました。また、海外ではノーレーティングという仕組みを取り入れて、業績に応じてランク付けするような形を廃止したのです。そのため、実際の企業貢献度に応じた評価制度を定期的に開催するような形も注目されています。

人事考課の目的とメリット

社員に求める行動を可視化することができる

人事考課の目的とメリットを再確認しましょう。この仕組は評価される側だけに意味があるのではなく、企業側の姿勢を明確にする目的もあります。

つまり、会社が目指す方向性や求めるものがはっきりと可視化されるので、社員がどのように働いていけばいいのかが分かりやすくなるのです。社員に求める行動を可視化できれば、意思統一につながり、それぞれのチームごとの協力体制も強固なものになるでしょう。

社員の成長を促すことができる

様々な項目から評価される人事考課が設定されれば、社員は自分の長所や短所を見つめ直すことができます。上司や同僚、部下などから評価されている部分や改善を求められている部分を知ることは重要です。

キャリアアップだけでなく、人間的な部分での成長を望めるため、社員は自然と成長していきます。こういった多面的な評価項目も人事考課のメリットなので参考にしてください。

社員のモチベーションの向上に繋がる

成長を促すことと連動して、社員のモチベーション向上にもつながります。人事考課で良い評価が得られれば達成感や満足感が得られるためです

また、そういった評価の項目もさまざま設定されているため、アピールもしやすくなっています。リーダーシップを持って目立つ人間だけが評価されるのではなく、地道にコツコツと結果を出す人間にとってもモチベーションが上がるのがポイントです。

上司とのコミュニケーションが円滑になる

古い人事評価とは異なり、人事考課は上司が一方的に部下を評価するわけではありません。そのため、上司と部下が面談する場を設けられることも多く、双方のコミュニケーションが円滑になります

上司がどのように部下を評価していて、部下が上司に伝えたいことを話す中で相互理解を深められるのです。日頃からこういったコミュニケーションが取れていると、自分の働き方を前向きに捉えることができ、精神的な負担が減らせます。

セクハラだけでなく、パワハラやモラハラが問題として取り上げられる現代社会において、人事考課は上司と部下の関係を良好にすることにつながるのです。

人事考課のデメリット

導入時の準備に手間取ってしまう

多くのメリットがある人事考課ですが、少なからずデメリットも存在します。公正な評価を目的としていますが、導入するための準備は手間取ることが多いのです

変革の歴史を紹介しましたが、日本の人事考課は長い年月をかけて変遷してきました。評価項目を設定する場合、業種によって内容は様々です。その項目を決めるだけでも期間が必要で、適切に機能しているかを確認することも重要になります。

社員から不満が出る可能性がある

評価項目の設定の仕方によりますが、ABCや5段階評価を行った場合、どうしても順位による差がうまれます。このような数値などによる上下付けを好ましく思わない社員もいるのです。

いくらしっかりとした評価項目から出た結果とはいえ、そのことに不満を感じて離職する人もいます。大事なことはこういったデメリットに対して、会社側がアフターケアやフォローを行って、次につなげていくことが重要です。結果を出したあとのフォローを忘れないようにしてください。

社員の理解が必要になる

設定する上では社員に理解してもらうことが必要です。どういった理由で設定された制度なのかを説明し、目的を理解してもらいましょう。目的を理解してもらえていないと、良い評価を受けるためだけに動くような人物も出てきます。

不正が行われる可能性もある

残念ながら自分が良ければ他人を貶めても良い、と考えている人もいます。そのため、他の社員の評価を下げることで自分が相対的に上がるように不正をする人がいるのです。

こういった不正防止をすることも人事考課を設定する上では注意したいポイントになります。しっかりと評価の目的を理解させて、不正を行わなくても良い部分は認めてもらえることを理解させましょう

人事考課の主な項目

人事考課の項目①業績考課

評価を行う上で主な項目を確認していきましょう。どのような項目を設定すれば正しい評価を行えるのでしょうか?まずは、業績考課が必要です。

この項目は社員が出した成果や業績について評価する部分です。目標達成率などを基準にし、売上額や貢献度など数字による評価がメインになります。結果が重要視される項目となっており、プロセスは別の項目で判断してください。

人事考課の項目②能力考課

社員が持っている知識や能力を評価するのが、能力考課は業務を遂行する過程で身についた能力を評価します。そのため、先程の業績考課が結果を重視するのに対し、能力考課では過程をメインに判断してください

能力に該当するものとして、判断力や企画推進力、職務知識、技能、指導力などを設定しましょう。こういった項目があることで、いわゆる裏方に回りやすい社員も評価できます。数字にはあらわれない縁の下の力持ちのような社員も評価できるのが大きなメリットといえるでしょう。

人事考課の項目③情意考課

情意考課では、「規律性」、「積極性」、「責任性」、「協調性」などから仕事への姿勢や態度を評価します。いわゆる勤務態度に関する項目であり、若手でも結果を出しやすいのが特徴です。

まだまだ経験は浅いけど、会社のために一生懸命働いてくれる若手社員は情意考課で良い評価が得られます。また、内面や気質などを判断する項目であり、丁寧に評価しましょう。そのため、同僚や部下、上司など幅広い人物から情報を集めて主観的になりすぎないようにしてください。

人事考課の運用手順

運用手順①企業基準を策定する

実際に運用していくための手順を確認しましょう。運用手順として企業基準の策定がスタート地点になります。重要なことは企業ごとに基準が異なるため、他のモデルケースにこだわりすぎないようにしましょう。

策定のポイント

策定する上で、まずは企業理念や企業戦略をベースにすることがおすすめです。自社の重視する要素や平均値を定めることがポイントになります。ここでしっかりと基準を定めることで、評価者の主観に影響されにくい状態になるのです。

また、企業基準を策定する上ではどのような水準に達すれば評価が「A」や「5」になるのかを決めてください。基準値の根拠を明確にすることで、社員も判定に納得してもらえます。

運用手順②目標を設定する

適切な目標を設定してください。目標を高く持つことも重要ですが、あくまで現実的な実現できるレベルに設定することがおすすめです。高すぎる目標は社員としても「どうせ無理だよ」となってしまうので、さじ加減が重要になります。

設定のポイント

目標を設定する際は経営者だけでなく、様々な立場の人間を集めて決めましょう。目標も簡単に達成できるものから、努力によって達成できるものなど、複数のものを用意するのがベストです。企業の状態やチームの熟練度などを踏まえ、数値化できる目標を考えてみてください。

運用手順③企業基準に従って評価する

評価設定は企業基準をしっかりと設定して決めましょう。評価をするのは個人の好き嫌いや関係性ではなく、公平性が求められます。期待している若手にあえて厳しい評価を下したり、仲の良い部下を甘く評価したりするのはNGです

評価のポイント

主観的な評価を削るためには、過去の業績や脂質を正しく判断する企業基準が必要です。そして社員自身も自己評価を行う仕組みを設定しましょう。この自己評価に対して評価する側の人間も判断を鑑みる必要があります。

このように評価は誰が行っても公平になるように設定しましょう。客観性を保ち、社員が納得できるような評価基準を検討してください。

運用手順④フィードバック面談を実施する

どれだけ公平性がある評価でも、それを突きつけられるだけでは社員のモチベーションは上がりません。評価を出した後はフィードバックを実施しましょう

実施のポイント①評価の具体的な根拠を示す

評価を行ったあとは社員に対してそれぞれ面談を行い、具体的な根拠を示してください。このときに良かった点と改善点の両方について話すことが大切です。

人間は良いことよりも悪いことの方が記憶に残りやすいため、話す順番や量も気をつけましょう。人事考課によって社員がモチベーションを上げて、より良い結果を出せるように自分を振り返ってくれるのが理想です。相手が人事考課で投げやりにならないようなフォローの時間を取ってください。

実施のポイント②社員が話しやすい環境をつくる

人事考課に対して社員側が話しやすい環境を作ってあげましょう。評価に対して理由を聞きやすい環境を作り、納得できる状態が求められます

相手が萎縮するような環境では、せっかくの公平で丁寧な評価も苦痛にしかなりません。人事考課は社員にダメ出しをするためのものではなく、企業が社員を成長させてより良い結果につなげるためのものにしましょう。

評価時に注意したい主な人事考課エラー

人事考課エラー①ハロー効果

評価字に注意したい人事考課エラーについて解説します。しっかりとルールや基準を設定していても、感情が影響を与えることは避けられません。こういったものを人事考課エラーと呼びますが、それぞれのエラー項目を確認して出来る限り失敗を減らしてください。

たとえばハロー効果も代表的なエラー要素の一つです。ハローというのは挨拶ではなく、「後光」を意味します。つまり、相手の良い面が他の悪い部分を隠してしまって、全体的に評価ポイントが高くなってしまう状態のことです

同様に第一印象効果というものもあり、最初に感じた影響が評価に影響を及ぼすものになります。初めての評価のときは特に注意したいエラーです。

人事考課エラー②先入観で生じるエラー

かつての学歴社会や年功序列主義が和らいだとはいえ、先入観によるエラーは存在します。これは性別や学歴、年齢などが該当し、先入観によるエラーと表現されるのです

特に近年は性別による先入観は差別につながる問題であり、パワハラやモラハラ問題にも関係します。評価者がこういった先入観を持たないように気をつけましょう。

人事考課エラー③帰属によるエラー

帰属によるエラーに該当するのは外的要因です。社員自身の努力で結果を出したのに、それを外的要因のおかげだと判断するような状態を意味します。

つまり、結果を出した社員の能力を評価せずに「これは景気が良かったから偶然だ」という判断の仕方です。もちろん景気などの要素は結果を左右しますが、社員の努力を判断要素に含まないことは不満の原因になります。

人事考課での自己評価の書き方と例文

人事考課の例文①営業職の場合

今季の目標は120%達成できた。

顧客への継続的なアプローチが実を結んだ結果といえる。

来季は売上単価のアップを目指し、新たな顧客獲得に励んでいきたい。

https://kigyolog.com/article.php?id=826#4-1

人事考課における自己評価の例文をいくつか紹介します。例文にあるように自身が達成したことをしっかりと明記し、次への目標も記しておきましょう。例文に追加して、チームリーダーとしての功績や後輩への指導に関する成果も書くのもおすすめです。

人事考課の例文②技術職の場合

需要が増加している○○の開発については、作業の分散化により工数の30%削減が可能となった。

一方で中間テスト工程を追加したため、バグの発生率は20%減少した。

後工程での出戻りがなくなり、スピードアップにもつながった。

https://kigyolog.com/article.php?id=826#4-1

技術職の場合は例文を参考に、作業効率の向上や品質管理体制に関する自己評価を書きましょう。例文ではどのような取り組みで改善されたのか、その結果なども含めて記しています。

人事考課の例文③事務職の場合

セキュリティ事故への注意喚起として、社内メールで具体的事例を月に一度配信した。

結果、セキュリティ事故は前年より○件よい△件減少し、一定の効果が感じられた。

来年度は勉強会を開くなどして、社員のセキュリティに関する意識を高めたい。

https://kigyolog.com/article.php?id=826#4-1

事務職の場合は事務作業の効率化や社員リテラシーの向上をメインにすると良いでしょう。例文ではセキュリティ関係に関する改善に取り組んだことが記されています。

例文を参考に前年との比較をメインに自己評価を行ってみましょう。他の職種と違って達成率などでは表現しにくい部分があるので、前年との比較と来年度に向けての取り組みをアピールしてください

人事考課を活用して社員とのチームワークを高めよう!

人事考課の目的やメリットを解説しました。また、その導入のやり方や自己評価の例文についても紹介しています。評価者はもちろん、評価される側もその目的や意味を理解しておくことが大切です。

主観的な要素をできる限り省いて、同僚や部下など様々な人物からの話も参考にしながら評価しましょう。そして人事考課によって社員が自分を知り、より良い結果につなげたいと思えるようなものにしてください。人事考課を活用して、社員のチームワークやモチベーションを高めましょう!

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