メンバーシップ型雇用・ジョブ型雇用とは?メリット・デメリットも

メンバーシップ型雇用・ジョブ型雇用とは?メリット・デメリットも

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の意味を知りたい!

グローバル化や産業構造の変化、新型コロナウイルスなど、かつてない社会の変動に揺れる日本型雇用。今の時代にふさわしい雇用形態は、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用のどちらなのでしょうか?

今回は、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の言葉の意味や違い、メリット・デメリットを紹介します。また、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用を実際に導入した企業の事例なども紹介するので、合わせて確認してみましょう。

メンバーシップ型雇用やジョブ型雇用とは?

メンバーシップ型雇用の言葉の意味

メンバーシップ型雇用の意味とは、企業が終身雇用の総合職として社員を採用し、人事異動を繰り返しながら経験を積ませる従来の日本型雇用システムです。メンバーシップ型雇用は、日本独自の正社員の雇用システムであり、職務を限定せずに企業の社員となり、勤務地や職種などに関しては会社の命令次第になります。

また、日本型のメンバーシップ型雇用は、業界ごとに労働組合を形成する外国企業とは異なり、企業ごとに労働組合を保有します。そもそも現在では広く浸透しているメンバーシップ型雇用とジョブ型雇用という言葉は、2009年に労働政策研究所長の濱口氏が著書の中で提示した分類方法です。

ジョブ型雇用の言葉の意味

ジョブ型雇用の意味とは、企業の従業員に対して職務を明確に定義し、労働時間ではなく成果で評価する雇用制度です。ジョブ型雇用は、日本企業に古くから定着している「年功序列」などを採用せず、あくまで「仕事基準」での雇用形態にあたり、人材を採用する際は、職務経歴書に基づいて、現状必要とされるスキルを持つ人材を採用します。

ジョブ型雇用は海外ではメジャーな雇用システムであり、日本でも導入する企業が増えてきました。リモートワークなど時代に合った働き方に適用するために、ジョブ型雇用が推進されています。

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違い

仕事における違い

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用には、仕事における明確な違いがあります。メンバーシップ型雇用は、先に人材を採用してから仕事を割り振ります。一方、ジョブ型雇用は、仕事に対して人を割り当てます。

具体的には、メンバーシップ型雇用は、職務や勤務地、勤務時間などを限定せずに、会社に合った人材を採用します。ジョブ型雇用は、あらかじめ職務や勤務地などがジョブ・ディスクリプションによって定められており、仕事内容は限定的であり、専門性を必要とします。

報酬や採用における違い

報酬や採用についても、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用には違いがあります。メンバーシップ型雇用は、「職能給」を採用しており、職務の専門性だけではなく、人材の人柄重視で採用する傾向が強いです。職能給の意味は、従業員個人の「職務遂行能力」を基準とした賃金制度になります。

一方、ジョブ型雇用では、「職務給」を採用し、専門的なスキルや能力を保有しているかで採用を検討します。職務給の意味は、担当する職務の内容や専門性の高さにより報酬が決まる賃金制度です。

解雇における違い

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用では、職務が必要なくなったら、従業員を解雇できるかどうかという点で異なります。欧米諸国でよくみられるジョブ型雇用では、業績の悪化や会社の都合によって担当する職務が必要なくなったら、従業員を解雇できます。通常、ジョブ・ディスクリプションには、「会社の都合上で従業員を解雇してはいけない」と明記されません。

一方、正社員制を採用するメンバーシップ型雇用は、社員の解雇が容易ではないです。従来のメンバーシップ型雇用を採用する企業は、一般的に労働者を解雇するには、合理的な理由が必要であるという考え方があります。

メンバーシップ型雇用のメリットとデメリット

メリット①雇用が安定している

メンバーシップ型雇用は、雇用が安定している点が最大のメリットです。メンバーシップ型雇用を採用している企業は、年功序列と終身雇用を前提としており、労働組合を保有しています。

そのため、不当な解雇はされず、その企業に長く働き続けられる点がメリットといえます。安定した環境で仕事をしたい人は、メンバーシップ型雇用を採用している企業を探すとよいでしょう。

メリット②忠誠心の高い人材を育成することができる

メンバーシップ型雇用の場合、忠誠心の高い人材を育成できるというメリットが考えられます。先にも紹介したとおり、メンバーシップ型雇用の企業は、年功序列賃金や終身雇用を採用しているので、雇用が安定しており、そこで働く従業員は精神的な安心感を得られるでしょう。

そもそも人間とは現状維持を好むものなので、安定志向を持った従業員ほど企業に依存します。そのため、メンバーシップ型雇用を導入すると、長期的に忠誠心の高い人材を確保し育成することができるのです。

メリット③会社の都合で条件を変更できる

メンバーシップ型雇用のメリットとして、会社の都合で条件を変更できる点が挙げられます。メンバーシップ型雇用は、職務や勤務時間、勤務場所が契約で限定されていないので、企業側の都合で臨機応変に条件を変更できます。

そのため、人が足りないプロジェクトに人材を異動させるなど、スムーズにジョブローテーションを実施できる点はメンバーシップ型雇用の大きなメリットといえるでしょう。

デメリット①生産性が低い

メンバーシップ型雇用のデメリットの一つ目は、生産性が低いという点です。メンバーシップ型雇用はジョブ型雇用とは異なり、仕事の成果ではなく労働時間に対して賃金が支払われます。そのため、従業員は生産性を上げようとするモチベーションが低い傾向があり、企業全体の生産性が上がりにくいです。

また、メンバーシップ型雇用を導入することで、当然労働時間が長くなり、時間外労働手当などの人件費が肥大化していくでしょう。そうなると、企業の利益が出ずらくなってしまうので、企業として大きなデメリットといれるでしょう。

デメリット②年功序列制度の風習が残りやすい

メンバーシップ型雇用のデメリット二つ目は、年功序列制度の風習が残りやすいことです。現状、組織内で中高年が増えて、社員の給料に不平等が生まれるという課題を抱えている企業が多く存在しています。

具体的には、メンバーシップ型雇用を採用すると、給与に見合った活躍をしていない中高年が、優秀な若手の従業員よりも給料が高いという事態が起こりやすいです。それでは、モチベーションの高い優秀な社員が会社を離れてしまうことが考えられます。こうした問題は、メンバーシップ型雇用のデメリットといえます。

ジョブ型雇用のメリットとデメリット

メリット①優秀な人材の獲得に繋がる

ジョブ型雇用のメリット一つ目は、高い専門性を持った優秀な人材を獲得しやすくなることです。企業がジョブ型雇用を採用することで、人材側はスキルアップが収入に直結したり、専門性を追及できたりするメリットが受けられ、このような考えを持つ優秀な人材と企業とのマッチング精度が上がります。

そのため、ベンチャー企業や小規模な企業でもこれから雇う従業員との希望が一致していれば、優れた専門スキルを持つ人材を獲得することも可能です。

メリット②イノベーションの創出や生産性向上に役立つ

ジョブ型雇用のメリット二つ目は、イノベーションの創出や生産性向上に役立つことです。ジョブ型雇用では、リモートワークなど自由度が高い働き方を実現でき、基本的に転勤などが発生しません。

そのため、通勤やフルタイムでの勤務が難しい女性や障害者などの多様な人材を雇用することができるので、イノベーションの創出や生産性向上につながります。また、ジョブ型雇用は報酬が仕事内容に基づいているため、「同一労働同一賃金」を実現し、人事評価の公平性を高めることも可能です。

メリット③パフォーマンス向上に繋がる

ジョブ型雇用のメリット三つ目は、パフォーマンス向上に繋がることです。仕事内容や責任の範囲、報酬などが明確になっているジョブ型雇用であれば、従業員は自分のやるべき仕事が明確になります。やるべきことが明確になれば、目的意識を持ちやすくなるので、パフォーマンスが向上します。

任せられた仕事に必要な情報が不足していると、仕事への満足度やパフォーマンスが低くなってしまうのです。また同様に、他のメンバーの役割も明確になっていれば、お互いの相互理解も深まるので、ジョブ型雇用を採用すると、チーム全体の生産性も向上します。

デメリット①導入に時間と手間がかかる

ジョブ型雇用のデメリットとして、導入するのに時間と手間がかかることが挙げられます。ジョブ型雇用を導入するには、各組織の職務範囲やその職務に必要な能力、権限や責任の範囲などが明確にして、ジョブ・ディスクリプションを作成する必要があります。

また、ジョブ型雇用の導入にあたって、報酬や評価制度、人事制度の見直しも必要です。このような制度の見直しには多大な時間と手間を要するので、企業側のデメリットといえるでしょう。

デメリット②人材が定着しにくい

ジョブ型雇用では、「人材が定着しにくい」というデメリットもあります。ジョブ型雇用にすると、人材が流動的になるので、チームの連帯感や組織への帰属感が低下しやすいです。また、条件や報酬が明確なので、より良い職場を見つけた人材が転職してしまう恐れがあります。

こうした問題は、ジョブ型雇用のデメリットです。そのため、チーム主体のプロジェクトが主体の企業は、ジョブ型雇用システムが適さない場合もあるので、導入前には慎重に検討するしましょう。

メンバーシップ型雇用の研修事例

研修事例①新入社員研修

メンバーシップ型雇用を採用している企業におすすめの研修事例の一つ目は、新入社員研修です。メンバーシップ型雇用は、「新卒一括採用」を前提とするシステムです。入社してから間もない期間で退職し人材が定着しないのは、人事担当者としては大きな問題になります。

人材を定着させるためにも、早期離職の防止に効果的な新入社員研修をしましょう。具体的には、ビジネスマナーやコミュニケーションスキル、専門知識の習得といった一般的な内容から、自社の企業風土にいち早くなじむような研修やPDCAサイクルの習慣作りを盛り込むと効果的です。

研修事例②メンタルヘルス研修

メンバーシップ型雇用を採用している企業におすすめの研修事例の二つ目は、メンタルヘルス研修です。現代のような変化の激しく情報量の多い社会では、従業員はストレスを感じてしまい、精神的な負担が大きくなります。

心の病気を発症してしまうと、本人はもちろんのこと、企業側にもさまざまなデメリットを及ぼします。そのため、まずは、部下のメンタル面をケアする基本的な知識を学ばせるために、マネージャーや上司を中心にメンバーシップ型雇用の新人研修を受講してもらいましょう。

研修事例③リーダーシップ研修

メンバーシップ型雇用を採用している企業におすすめの研修事例の三つ目は、リーダーシップ研修です。メンバーシップ型雇用のリーダーシップ研修は、ジョブ型雇用を採用している企業にも有効な研修といえます。

リーダーに求められる力とは、適切な判断力や課題を認識する力、調整力など多岐にわたります。柔軟性をもったリーダーシップを発揮するためにも、リーダーシップ研修は大いに役立ちます。紹介した3つの事例を参考にして、社員のスキルアップを目指しましょう。

ジョブ型雇用の企業事例

企業事例①日立製作所

ジョブ型雇用の企業事例の一つ目として、日立製作所が挙げられます。世界でも有数の総合電機メーカーである日立製作所は、全職種の職務履歴書を作成し、「2024年度までにジョブ型雇用への移行を目指す」と発表しました。

ジョブ型雇用への移行理由として、グローバルでの競争力の向上や選考時、中途採用が多くを占めている点が要因です。今後も、デジタル人材の採用や新卒一括採用ではなく通年採用の強化も行う予定であり、日立製作所という会社を存分につかって、「自分らしいライフスタイルを切り開いてほしい」という思いがあるそうです。

現状コロナ禍によるテレワーク推進が追い風となり、ジョブ型雇用はさらに注目を浴びています。この事例は世界の市場を相手にイノベーション事業を行うグローバル企業の例として最適です。

企業事例②メルカリ

ジョブ型雇用の企業事例の二つ目は、日本最大のフリマアプリを運営しているメルカリです。メルカリは自社独自の等級基準を採用しており、従業員の効果的な評価や能力開発を行っているそうです。この企業は、個人の成長を促進することに重点を置いており、従業員を正確に評価し、そのフィードバックを効果的に従業員に伝えています。

社員全員がその分野のプロフェッショナルとして責任をもち、実績を残すために日々、自己投資を重ねています。そのほかにもソニー、富士通などの大企業もジョブ型雇用の事例として有名です。

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の意味を覚えておこう!

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の意味やメリット・デメリット、そして、実際に導入している企業の事例について紹介してきました。今後は欧米諸国に習って、メンバーシップ型雇用よりもジョブ型雇用が浸透していくでしょう。

予測のつかない変化の激しい時代で企業の競争力を維持するためには、「社員が自己研磨しつつ、知識やスキルを常にアップデートする」という変革が必要です。今回紹介したメンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の言葉の意味や事例などを参考して、ぜひ効果的な研修を行いましょう。

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