企画業務型裁量労働制について解説!対象業務や注意するポイントは?

企画業務型裁量労働制について解説!対象業務や注意するポイントは?
目次

企画業務型裁量労働制の意味や具体的な導入手順を知りたい!

企画業務型裁量労働制は、一定範囲内の対象業務や職種に就く労働者に対してみなし労働時間で労使契約を結んで業務を行う勤務形態です。企業側としては、残業代を原則支払う必要がない、労働者は自分の裁量で業務を行えるなどメリットもありますが、長時間労働になりやすいなど問題点もあります。

また、企画業務型裁量労働制は労働基準監督署への届出も必要としているため、導入については検討時間を含めてしっかり吟味する必要がある働き方です。そこで、この企画業務型裁量制の意味や具体的な導入手順、メリット・デメリットを紹介していきます。

他にも、混同されやすいフレックスタイム制との違いについても紹介していきますので、企画業務型裁量労働制についてしっかりと知識を身に着けていきましょう。

企画業務型裁量労働制とは?

企画業務型裁量労働制の言葉の意味

企画業務型裁量労働制とは、企業の各部署にて対象業務に従事する職種の労働者が、業務の進め方や時間配分などを会社ではなく、労働者自身が決定できる労働形態を指します。

企画業務型裁量労働制では、事前にみなし労働時間を決定し実際に働いた時間とは関係なく、労使協定で定めたみなし労働時間で賃金は計算され支払われます。

この企画業務型裁量労働制を導入するに当たっては、「労働者と企業の間で労使協定を結ぶ」「厚生労働省が定めた特定の職種(または業務)」などの条件を満たすこと、所轄の労働基準監督署へ届出を提出する必要があります。

また、企画業務型裁量労働制の対象業務は、企業でも限定された職種に就いているという条件もあります。詳細については後程紹介していきますのでそちらで確認してみてください。

みなし労働時間制に分類される

労働基準法では、企業が労働者を働かせていい時間を、1日8時間・週40時間までと定めています。業務や職種によっては、この労働時間を企業側が管理するのが難しいケースがあるため、労働基準法が規定した時間分労働者が働いていると「みなし」て働くことが、みなし労働時間制です。

このみなし労働時間には、「裁量労働制」と「事業場外みなし労働制」の2つに分類されており、企画業務型裁量性はこの裁量労働制に該当します。

みなし労働時間制を導入している企業の割合

みなし労働時間制を導入については、厚生労働省の調査によると、企業全体としては14%、そのうち企画業務型裁量労働制は1%と、少数の割合です。企画業務型裁量労働制を導入している企業は全体的にみて見ると少ないです。

しかし、従業員の人数が1,000人以上の企業を限定して注目してみると、みなし労働時間制を導入している企業は28%、そのうち企画型裁量労働制は5.9%の割合で採用されています。このことから、小規模よりも大規模な企業で運用されていることが伺えます。

専門業務型裁量労働制との違い

裁量労働制には、企画業務型裁量労働制の他に専門業務型裁量労働制があります。この専門業務型労働裁量制は、企画業務型裁量制と同様に企業の各部署に勤める一定範囲の対象業務に従事する職種の労働者を対象に、業務の進め方や時間配分を労働者自身で決定できるのが特徴です。

企画業務型裁量労働制との違いは、対象業務もしくは職種が異なるという点です 。専門業務型裁量労働制では、新聞記者・デザイナー・建築士・弁護士など専門的な知識を求められる職種で適応されます。

フレックスタイム制との違い

求人案内などを見ていると労働時間をフレックスタイム制と定めている企業があります。労働者が日々の始業・終業時刻を決めて業務を行えるのがフレックスタイム制です。企業によっては、コアタイムとして必ず勤務しなければいけない時間を決めている場合もあります。

企画業務型裁量労働制は、一日の中で合計8時間勤務するのに対し、フレックスタイム制は、始業・終業時刻は自分で定められますが、業務を開始したら休憩も含めて8時間勤務しなくてはいけません。

フレックスタイム制に比べると、企画業務型裁量労働制の方が時間の使い方に対して自由度が高い労働勤務形態と言えます。

企画業務型裁量労働制の対象となる業務や事業場

企画業務型裁量労働制の対象業務

企画業務型裁量労働制を導入する場合、対象業務や職種が限定されています。これは、労働基準法で規定されており、厚生労働省でも指針が示されているので、しっかり把握しておきましょう。

企画業務型裁量労働制の対象業務は、「事業の運営に関する業務」「企画・立案・調査及び分析業務」を担っている職種の労働者です。

また、これに付け加えて「該当する業務を行うには労働者の裁量に委ねる必要があること」「該当する業務を行うためには、労働者に手段や時間配分の決定について企業側が具体的な指示をしないこと」なども条件に含まれています。

企画業務型裁量労働制の対象事業場

企業で企画業務型裁量労働制を導入するには、対象業務だけでなく対象事業場も定められています。対象事業場とは、「本社や本店である」「企業の事業運営に大きな影響を及ぼす支社や支店」「事業場そのものの運営に独自決定権をもっている事業場」でなくてはいけません。

また、「個別の営業活動のみを行っているような事業場」では、企画業務型裁量労働制の導入ができる事業場として該当しませんので、注意しましょう。

企画業務型裁量労働制の対象労働者

企画業務型裁量労働制の労使協定を結べる対象労働者は、「対象業務を適切に遂行するための知識・経験を有する者」「対象業務に常態として従事している者」となっています。

対象業務や職種に対してある程度年数を重ねて従事していることや、知識・経験を有する労働者に対して適応されていきます。未経験や年数が浅い労働者に対し、企画業務型裁量労働制で労使協定を結ぶことはできないので注意が必要です。

企画業務型裁量労働制のメリットとデメリット【企業側】

メリット①人件費のコスト管理がしやすい

企画業務型裁量労働制では、みなし労働時間を1日8時間・週40時間など設定して企業と従業員が労使協定を結びます。そのため、実労働時間に関係なく原則残業代を支払う必要がないため、人件費のコスト管理がしやすいことが企業側のメリットとして挙げられます。

残業代について、原則支払う必要はありませんが、条件によっては支払うケースもあります。残業代を支払うケースについては後程紹介しますので、確認しておきましょう。

メリット②生産性の向上に繋がる

企画業務型裁量労働制で労使協定を結んでいると、前述したように原則残業代が支払われません。そのため、労使協定を結んだ従業員者側はみなし労働時間内に業務を遂行させようと努力します。

そのため、通常の労働勤務形態に比べて企画業務型裁量労働制の方が業務効率化や生産性の向上を期待することができます。

デメリット①労働管理が難しい

企業側のデメリットとしては、従業員一人一人の配分で業務を行っているため、いつ誰がどのような業務を行っているか従業員全体の労働管理が難しくなります。

そのため、企画業務型裁量労働制では、長時間労働が常態化しやすく、従業員のモチベーションの低下・健康面の悪化・業務効率の低下などの問題点が発生しやすくなります。

他にも、従業員の成果を適正に評価するシステムを整備、運用していかなければ、従業員間の公平性が保てなくなる危険性もありますので、企画業務型裁量労働制を導入の際には注意が必要です。

デメリット②文化醸成や組織作りがあまり進まない

企業は従業員が集まることによって意志統一や文化醸成を図っていきます。しかし、従業員個人の判断で業務を行う場合、ミーティングの設定など一同に集まる機会が極端に減ってしまうため、組織づくりが難しいという一面があります。

労働管理者は、組織を一つにまとめ上げていくためにも、この問題点を解決するためにコミュニケーションの場を設けるなど、社員同士が直接会う機会を作るなど対策が必要です。

企画業務型裁量労働制のメリットとデメリット【従業員側】

メリット①仕事の自由度が高くなる

企画業務型裁量労働制を導入した場合、従業員側の裁量で業務を行うため、職種としての仕事の自由度は非常に高くなります。一定の労働時間に縛らずに業務の進行にあわせて動いていくため、効率的に働くことが可能です。

更に、これまで以上に業務の成果が重視されていくので、 企画業務型裁量労働制では能力の高い従業員ほど正当な評価を受けやすい環境へと変化していきます。

メリット②労働時間の短縮に繋がる

企画業務型裁量労働制で支払われる賃金は、みなし労働時間で計算されます。そのため、一日の業務内容を規定の労働時間内に終わらせることができれば短時間勤務でもみなし労働時間と同じ賃金が支払われることが企画業務型裁量労働制の魅力です。

そのため、企画業務型裁量労働制で働くと、業務効率化を自然と行うことになるので生産性が高まり、労働時間の短縮につながります。さらに、ライフワークバランスの管理を自分で行うことが可能です。

デメリット①残業代が支払われない

企画業務型裁量労働制で労使協定を結んだ場合、規定のみなし労働時間で働いていると判断され、労使協定で定めた以上の勤務を行ったとしても原則残業代は支払われません。従業員自身で業務裁量を行う分、残業代が支払われないため、賃金にみあった働き方をする必要があります。

デメリット②高い自己管理能力が必要になる

残業代がでないということもあり、企画業務型裁量労働制で働くと自己管理をしっかりと行うようになり、効率よく短時間で業務を終わらせることができます。

しかし、自己管理能力が低い従業員の場合は、企画業務型裁量労働制で勤務すると長時間労働を強いられる可能性が非常に高くなるという問題点があります。仕事の自由度が非常に高い分、高い自己管理能力を要求されるのが企画業務型裁量労働制での働き方です。

企画業務型裁量労働制の具体的な導入手順

導入手順①労使委員会を設置する

企画業務型裁量労働制を導入する手順について紹介していきます。導入する際の最初の手順としては、労使委員会を設置から始まります。

委員会の総数・任期については、労働基準法や指針について特に定めてられてはいません。ですが、厚生労働省の通達で「労使各1名の計2名で構成する委員会については、労使委員会とは認められない。」「過度に長期にわたるものは適当でない。」と示されています。

そこで、労使委員会を発足させる際には、ある程度の人数で構成し、数年の任期で入れ替わるような運用を行う方がいいでしょう。労使委員会では、企画業務型裁量労働制の導入にあたり、5分の4以上の多数により決議を取っていくことで、準備を進めていきます。

導入手順②対象業務や対象労働者の具体的な範囲を決める

企画業務型裁量労働制として労使協定を結ぶことができる従業員を絞り込むために、対象業務や対象労働者の具体的な範囲で決めていきます。

例えば、「職務経験5年以上かつ主任以上」など、経験と技術を兼ね備えた従業員に限定するような具体的な範囲を決議していきます。

導入手順③労働時間数を決める

企画業務型裁量労働制で必ず決議しなければならないのが、1日あたりのみなし労働時間です。一般的には、労働基準監督署が定めている所定労働時間である8時間や7時間などで設定していきます。

所定労働時間を超えたみなし労働時間を設定すると、企画業務型裁量労働制の労使協定を結んでいても残業代を支払う必要がありますので注意しましょう。

導入手順④健康や福祉を確保するための措置を決める

企画業務型裁量労働制で労使協定を結ぶ従業員に対して、企業は勤務状況の把握だけでなく、健康や福祉の確保するための具体的な方法を労使委員会で定めていきます。

例えば、タイムカードやIDカード、出退勤管理システムなどで勤務時間を把握していきます。労働時間数が多いものに対しては、ヒアリングの実施を行うなどして業務改善に取り組むようにします。

また、定期的に健康状態の申告を求め、症状によっては健康診断を受診させたり、特別休暇を付与するなどして従業員の健康を健やかに保つように努めていく措置をとっていきます。

導入手順⑤苦情処理に関する措置を決める

企画業務型裁量労働制で契約を結んだ従業員から、企画業務型裁量労働制の労使契約に関する苦情が出た場合の苦情受付窓口や担当者も労使委員会で決議しなくてはいけません。更に、窓口で受付を受理する苦情の範囲などについても労使委員会で決議します。

企画業務型裁量労働制の苦情窓口は、担当者を決める以外に、事業場内ですでに活用してある苦情処理システムを利用して対応することも可能です。

導入手順⑥同意しなかった労働者に対する措置を決める

企画業務型裁量労働制で従業員と労使契約を結ぶ場合、個別に同意を得る必要があります。そのため、企画業務型裁量労働制の労使契約に同意しなかった従業員に対して、解雇・降格など不利益になるような扱いをしないことについて労務委員会で決議していかなくてはいけません。

導入手順⑦就業規則を変更する

企画業務型裁量労働制を導入するには、労働時間や賃金などが就業規則にも関係してきます。そこで、労使委員会で必要な決議を行うだけでなく、就業規則改定もおこないます。企画業務型裁量労働制についての内容を就業規則に盛り込むことで、従業員へ企画業務型裁量労働制の周知を行っていきます。

導入手順⑧労働基準監督署への届出を行う

労使委員会で決定した内容については、所定の書式により所轄の労働基準監督署へ書類を提出します。この届出を行うことで、企画業務型裁量労働制を労使協定として実行することが可能となります。

導入手順⑨対象労働者から同意を得る

企画業務型裁量労働制を導入する場合、労使協定を結ぶ対象となる従業員に適用されるには、労働基準監督署への届出を提出するだけでなく、個別に対象従業員からの同意を得なくてはいけません。

同意を得るためには、労使委員会で決議した内容を事前に説明を行い、同意するか否かは書面などにより確認を行います。同意を得たことで、従業員と労使協定を結ぶ手続きを適正に行ないます。

導入手順⑩制度実施に伴う手続きを行う

導入手順の①から⑨までが完了した段階で、遂に企画業務型裁量労働制を企業内で実施することが可能になります。そして、労使委員会で決議した措置を、労使契約を結んだ従業員に対して実行していく流れになります。

また、企画業務型裁量労働制を実施している間は、労使契約を結んでいる従業員に対して適正に運用されているかを、労働基準監督署へ定期報告を行わなくてはいけません。定期報告は、労使委員会で決議が行われてた日から起算し、6か月以内に1回、所定の書類で提出を行います。

企画業務型裁量労働制で注意するポイント

対象業務や対象事情場を確認しておく

企画業務型裁量労働制を企業で導入した場合、注意しなければならないポイントがあります。企画型業務裁量労働制の対象となる職種や業務についている労働者については、労働基準法や指針などに示されています。

しかし、対象業務・対象事業場については、規定に合致していなければ企画型裁量労働制を適用することができないため確認が必要です。もし、判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士などに確認を取りましょう。

労働時間の管理を怠らない

企画業務型裁量労働制を導入した際の問題点としてあげられるのが、従業員の労働時間の管理です。企業は、労使契約を結んだ従業員の健康・福祉、労働時間を管理する義務があります。労働基準監督署への定期報告も怠らないようにしましょう。

残業代の支払いが必要な時がある

企画業務型裁量労働制を導入している場合、みなし労働時間を1日8時間・週40時間と定めている場合、実労働に対しての残業代については、原則支払いが発生しません。

しかし、みなし労働時間より勤務時間が超えている場合は、その分の残業代を支払う必要があります。更に、時間外労働を可能にするには、36協定を従業員との間に労使契約として結ぶ必要がありますので注意が必要です。

休日や深夜の割増賃金の支払いが必要な時もある

企画業務型裁量労働制で労使契約を結んでいる従業員であっても、法廷休日や深夜(22時から5時まで)の労働については、通常の労働時間制と同様に割増賃金が発生します。法廷休日の労働を可能にするには、時間外労働と同様に36協定の締結を行わなくてはいけません。

長時間労働への配慮を忘れない

企画業務型裁量労働制をはじめとするみなし労働時間制は、個人裁量で業務管理を行うため長時間労働を常態化しやすいという問題点があります。

しかし、長時間労働を常態化させてしまうと、労使協定を結んでいる従業員の健康状態を悪化させてしまうことになります。そこで、企業側としては対象となる従業員の労働状況・健康状況を常に管理するなど、労使委員会で決議した措置を適切に実行していかなくてはいけません。

企画業務型裁量労働制の仕組みを理解しておこう!

企画業務型裁量労働制は、通常の労働時間制やフレックスタイム制に比べて理解しにくい印象があります。また、導入するに当たっては誰しもに適応できる働き方ではないため、希望する従業員がいる場合、従業員のキャリア・労働時間・残業代などしっかりと検討しなくてはいけません。

しかし、導入次第では、業務効率化やモチベーションの工場など企業側・従業員側双方に大きなメリットを生み出すことができる効率の良い働き方ともいえますので、積極的に仕組みを理解して認知を広めていきましょう。

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