リーンスタートアップとは何か?手法や導入事例も解説!
みなさんは「リーンスタートアップ」という言葉を知っていますか?リーンスタートアップとは、最低限にコストを抑えて製品・サービスの試作品を短期間でつくり、顧客の反応を見ながら開発を進めていくマネジメント手法のことを指します。
現在、さまざまな企業がリーンスタートアップを取り入れていますが、一方で「時代遅れ」「変化の激しい現代では使えない」という意見も存在します。この記事では、リーンスタートアップの手法やメリット・デメリット、リーンスタートアップの手法が時代遅れと言われる要因、実際の導入事例について紹介します。
リーンスタートアップとは?
新規事業を創出するためのマネジメント手法
リーンスタートアップとは、コストをかけずに最低限の機能を持ったプロトタイプを作成し、顧客の反応を見ながら、顧客がより満足できる製品・サービスを開発していくマネジメント手法のことです。需要につながらない製品・サービスを開発してしまう際に発生するムダを省くためのマネジメント手法だといわれています。
何事も本質を理解していないと、意思決定や理解が表面的になってしまいます。そのため、情熱のみで製品・サービスを作ったり、プロセスに固執しすぎたりすれば、不十分となってしまうでしょう。リーンスタートアップはムダを出さないための手法で、自己満足で終わらない新規事業の開発を可能とするものです。
リーンスタートアップの言葉の意味
リーンスタートアップとは「リーン」と「スタートアップ」を掛け合わせた言葉です。まず「リーン」とは、生産効率にフォーカスすることでムダを排除するという意味になります。
また「スタートアップ」とは、短期間で顧客ニーズを満たすモデルを作成して、エグジット戦略によって高い報酬を狙う手法を指す言葉です。つまり、リーンスタートアップとは「ムダを徹底的に排除し、効率に焦点を当てて完成した、前例の無い革新的な新規事業やイノベーション」のことを指します。
リーンスタートアップとMVPの関連性
リーンスタートアップ時にはMVPという手法が役立ちます。新規事業を構築しても顧客のニーズに合っていなかったら、無駄なコストだけが掛かってしまいます。
それを解消してくれるのがMVPなのです。MVPとは「必要最小限の価値の製品」のことを指します。MVPを利用することによって、限られた時間で顧客のニーズに基づく製品・サービスを構築することができるため、無駄なコストの削減にもつながる手法として注目されています。
リーンスタートアップの手法
手法①構築
最初の手順は構築です。具体的な流れは、まず、実現したい新規事業や製品・サービスの企画を作成します。重要なのは「顧客ニーズに合わせて、どのような製品・サービスを市場に出すべきか」という仮説を立てることです。
その仮説をもとに新規ビジネスのアイデアを練りましょう。そして、練り上げたアイデアをもとに製品・サービスを、なるべくコストや時間をかけることなく開発するのです。製品・サービスを開発したら、顧客に試してもらってフィードバックを受けましょう。
手法②計測
次の手順は計測です。構築の手順によって作成された製品・サービスのプロトタイプが、顧客にどのような反応を与えるのかチェックしましょう。
具体的には、開発された試作品を「アーリーアダプター」と呼ばれる、流行に敏感な人々に提供して、実際に製品・サービスを活用してもらって、その反応を見るのです。あまりに機能を盛り込みすぎると実験にはならないので、最小限の機能だけをつけた試作品を提供することが望ましいでしょう。
手法③学習
次の手順は学習のフェーズです。計測結果をもとに、一般顧客にも受け入れてもらえるように改善をしていきましょう。
思ったように結果が出なかった場合、迅速に製品・サービスの改良に取り組み、軌道修正しましょう。新規事業の構成自体を見直す必要もあるかもしれません。
計測が失敗しても、学習を積むことで経験を次に活用できます。これが新規事業の成功確率を向上させる秘訣だといえるでしょう。
手法④再構築
最後の手法は再構築。どうしても新規事業の導入が上手く行かない場合は、できるだけ早い段階で構築からやり直しましょう。
顧客ニーズを満たす製品・サービスが作成できるまで、市場の反応を確認しながら「構築→計測→学習」のサイクルを繰り返します。この経営戦略は、新規事業の成功率を劇的に高める効果があるのです。
リーンスタートアップのメリットとデメリット
メリット①コストや時間をかけずに計測することができる
リーンスタートアップの一つ目のメリットは、コストや時間をかけずに計測できることです。一般的な製品・サービスの開発には莫大なコストや時間がかかります。
しかし、リーンスタートアップならばコストや時間を最低限に抑えられます。その結果、製品やサービスのリリースを早めることができるのです。
メリット②市場で優位に立つことができる
リーンスタートアップのメリットの二つ目は、市場で優位に立つことができることです。リーンスタートアップは顧客に価値を提供できる最小限の製品や、それを使ったアプローチをします。
その結果、先行者利益を獲得することができ、その分野の市場では優位に立てます。そして、うまくアプローチをすれば市場に競合が参入したとしても、市場の認知度に差をつけることができるのです。
メリット③顧客のフィードバックを早く拾うことができる
リーンスタートアップのメリットの三つ目は、顧客のフィードバックをいち早く拾うことができることです。リーンスタートアップは製品・サービスを短期間で作成するため、市場に早く製品・サービスを出せます。その結果、顧客からのフィードバックを早く拾うことができるのです。
そして、そのフィードバックをもとにPDCAサイクルを回して製品・サービスの向上に努めれば、顧客ニーズに合ったものを生み出すことができるでしょう。その結果、自社の信用も高まります。
デメリット①上手く行かない可能性がある
リーンスタートアップのデメリットの一つ目は、上手く行かない可能性があることです。このデメリットが「時代遅れ」だと言われる大きな要因の一つでしょう。
具体的には「リーンスタートアップやMVPは先行きが見えないし、不確定な要素が多い」「軌道修正や顧客のフィードバックが上手く行かないと、目的を見失うこともある」「多くのコストと時間を割いて市場に参入したものの、顧客にプロトタイプが受け入れられない」などが挙げられます。リーンスタートアップは素早く市場に出せるのですが、失敗も多い手法なのです。
デメリット②目的がずれてしまうことがある
リーンスタートアップのデメリットの二つ目は、目的がずれてしまうことがあることです。MVPを繰り返していると、こういった目的がずれることはよくあること。
製品・サービスの目的は「顧客のニーズを満足させる」ことです。その目的から外れて、MVPを繰り返すことが目的と化してしまう恐れもあります。
リーンスタートアップが時代遅れと言われる要因
SNSによって顧客離れが進んでいるため
リーンスタートアップが時代遅れと言われる要因の一つに、SNSによる顧客離れがあります。2021年現在ではInstagramやTwitterなど幅広いSNSが登場していますよね。中でも「インフルエンサー」と呼ばれる世間に与える影響力が大きい人も増えてきました。
その結果、SNSの投稿1つでもサービスの評判があっという間に拡散して、最悪の場合、企業の価値が下がってしまうこともあるのです。実際にリーンスタートアップで効果を検証をしている間に評判が下がってしまい、信頼を取り返せない、という批判的な意見もあります。
ピボットによって信頼が失われるため
リーンスタートアップが時代遅れと言われる要因の二つ目は、ピボットによって信頼が失われることです。ピボットとは、企業の方向転換や路線変更などを指します。
リーンスタートアップによって製品・サービスの機能などが変化しすぎることは要注意です。そうしないと「基盤が定まっていない製品だ」「地に足がついていないサービスだ」という意見が出てしまいますよ。
技術力がイノベーションのカギを握るようになったため
リーンスタートアップが時代遅れだと言われる要因の三つ目は、イノベーションや技術力が経営のカギを握るようになったからです。リーンスタートアップはコストや時間を最低限に抑えて、早く市場に製品・サービスをリリースすることがメリットでした。
しかし、現在は「スタートする段階で多額のお金を使ってイノベーションを起こした方が良い」という考えもあるのです。実際に資本力が大きい海外の大企業では実践されていることなので、ぜひ確認していみましょう。
リーンスタートアップの導入事例
ここでは、リーンスタートアップの企業事例を5つ紹介していきます。リーンスタートアップは時代遅れだと言われていますが、現在でも活躍している企業やサービスがこの方式によって生み出されてます。では、導入事例について詳しくみていきましょう。
導入事例①トヨタ自動車株式会社
リーンスタートアップの一つ目の企業事例は、日本の大手自動車メーカーである「トヨタ自動車株式会社」。同社はリーンスタートアップの先駆けともなった「かんばん方式」を生み出しました。
この「かんばん方式」とは「必要なものを必要なときに必要な分だけ作る」というものです。徹底的にムダを省いた効率的な方式として注目されていましたが、大量生産に向いていないというデメリットがあることから、大幅なコストカットが困難という一面もあります。
導入事例②ヤフー株式会社
リーンスタートアップの二つ目の企業事例は、日本の大手インターネット会社である「ヤフー株式会社」。同社は社内の新規事業の活発化を目的として、アプリ開発などに「リーンスタートアップ」を導入しました。
具体的には、出来上がったアプリを公開して利用者からフィードバックを受けます。そして、そのフィードバックを参考にしてブラッシュアップしていきました。このプロセスを繰り返すことによって、メンバーも満足する仕上がりを実現でき、ユーザーにも飽きられないプロセスが実現できました。
導入事例③Instagram
リーンスタートアップの三つ目の企業事例は、写真・動画共有ソーシャル・ネットワーキング・サービスとして大人気の「Instagram」。もともとInstagramは「Burbn」という位置情報アプリとしてリリースされていました。しかし人気が出なかったことから、リーンスタートアップで改良し、今のInstagramを誕生させたのです。
具体的には、写真投稿をメインにしたSNSに方向転換し、「コメント」「いいね」の機能の取り込みました。Instagramはリーンスタートアップによる新規事業の成功事例として有名な事例です。
導入事例④食べログ
リーンスタートアップの四つ目の企業事例は、日本最大のグルメレビューサイトとして有名な「食べログ」。食べログも、もともとは今のような飲食店のレビュー機能が存在していなかったサービスです。
食べログがスタートしたのは2005年。リーンスタートアップの実践があったからこそ、現在のように巨大なサービスとなったのです。
導入事例⑤Airbnb
リーンスタートアップの五つ目の企業事例は、観光活動のためのオンラインマーケットプレイスを運営している「Airbnb」。Airbnbは、宿泊したい人と宿泊施設を提供したい人を結びつける画期的な新規事業といえます。同社もイノベーションからリーンスタートアップのプロセスを繰り返すことによって、急速に成長した企業の代表的な存在です。
リーンスタートアップは現在の企業にとって必要な考え方!
ここまで、リーンスタートアップの手法やメリット・デメリット、時代遅れと言われる要因、実際の導入事例について紹介してきました。リーンスタートアップは新規事業を創出するためのマネジメント手法として、企業には必要な考え方です。
また、SNSによる顧客離れやイノベーションや技術力の重要性によって、リーンスタートアップは時代遅れという意見もあります。しかし「顧客の声を重視する」というビジネスの基本は変わりません。自社に合った手法を取り入れていきましょう。