デザイン思考のメリットや欠点などを解説!
アメリカのアップル社やGoogleなど、世界を先導する企業が採用している、デザイン思考という言葉をご存知でしょうか?デザイン思考とは、ユーザーも気づかないような本質的なニーズを見つけ出し、デザインプロセスの手法を活用して解決策を練るアプローチの事です。
本記事では、デザイン思考が求められた背景や主なプロセス、成功事例をまとめています。おすすめの書籍も紹介しているので、デザイン思考について詳しく知りたい方は参考にしてください。
ビジネスにおけるデザイン思考とは?
デザイン的な手法で解決策を見出す思考法のこと
デザインと聞くと、世間一般的にファッションデザインやグラフィックデザインを想像するほど、装飾というイメージがあります。しかし、ビジネスにおけるデザイン思考とは、設計を意味し経営やマーケティングなど、様々なビジネス、職種で活用できるデザイナー的思考を指します。
簡単に説明すると、デザイナーがデザインの業務で使う思考方法を活用して、ビジネスでの問題や課題を解決するための思考法です。
デザイン思考の提唱者
ハーバード大学デザイン研究所のハッソ・プラットナー教授が提唱している「デザイン思考の5段階」という物があります。この5段階は共感、定義、概念化、試作、テストです。大切な事は、5段階を1から連続した手順で行うのではなく、問題を解決するために同時に行ったり、繰り返し行う事です。
デザイン思考と言っても定義が広く、ここで紹介したものは1つの思考モデルと考えてください。この5段階については、記事中盤で詳しく説明しています。
アート思考との違い
デザイン思考とアート思考の違いを説明します。デザイン思考は、需要や必要性を考えそれを基盤としアイデアを創出します。アート思考とは、相手側の需要や必要性など関係なく自分を軸にして自由に表現、発想する事でアイデアを創出します。
ビジネスにおいてのデザイン思考は「課題の解決を目指す考え方」で顧客起点としています。それと違い、アート思考は「達成したい物事の目標設定やオリジナルのアイデアを発想する」と自分を起点としているのが大きい違いです。
デザインとの違い
デザインとは一般的に、ファッションデザインやゲームデザイン、webデザインなどのクリエイティブな作業です。それと違い、デザイン思考はデザインで行う過程や考え方をビジネスにおいて活用し、問題を解決するためのアイデアを出す考え方を指します。
デザイン思考が求められる背景
これまでは「仮説検証型」が重要視されていた
新製品やサービスを取り扱う場では、これまで顧客調査(マーケティングリサーチ)が重要とされていました。仮説検証型でマーケティングリサーチを行うためには、ある程度の正確な情報と問題を知っておく必要があります。変化が激しい現代社会では、需要が多様化し仮説検証型で問題の核心を捉えるのは、難しくなってきています。
VUCA時代の到来
仮説検証型が難しくなり、VUCA時代の到来します。VUCAとはVolatility(変動)Uncertainty(不確実)Complexity(複雑)Ambiguity(曖昧)の頭文字から取った言葉です。予想困難となっている今の世界経済環境は、この4つが要因となっています。
VUCA時代になった事により、顧客のニーズや課題の本質が速く分析できる方法が必要となります。それの解決法として、デザイン思考が注目されるようになりました。
第4次産業革命による社会構造そのものの変化
第4次産業革命という言葉を目にする機会が増えてきました。第4次産業革命とは、人工知能を利用することにより起こる製造業の革新と言われています。国外では既に、製造業を人工知能とインターネットを用いた自動化の動きが加速している地域があります。
時代が変化していく中で、デザイン思考に注目が集められています。デザイン思考により、これまでの価値観にとらわれる事なく、課題解決する事が可能になります。
デザイン思考のメリットと欠点
メリット①新しい発想を生み出すことができる
デザイン思考には、メリットがたくさんあります。一つ目は、従業員の考え思いを仕事に活かせる事、二つ目は、思考力が身につく事、三つ目は、顧客の視点に理解する力が身につく事です。身についたメリットは、他のビジネスにも活かせる事が出来ます。
さらにデザイン思考では、先ほど紹介した5つの段階により得ることが出来た結果を、仲間内でレビューしあいます。レビューを繰り返し行うことで、新しいアイデア、発想が生む事が可能になります。
メリット②組織の強化に繋がる
チームに所属している方が自由に考えを発表し、意見を話し合う事で仲間内で絆ができ信頼できるようになります。プロジェクト内の主要のメンバーの絆が強くなると、組織の強化に繋げる事が可能です。そして組織が強化されると、品質向上に繋げる事が出来るのです。これは大きいメリットになると言えます。
デザイン思考の欠点
デザイン思考には、メリットだけでなく欠点も存在します。まだユーザーが決まっていない状態で、製品を創出するにはデザイン思考は不向きになると言えます。ユーザーが決まっていない、将来需要が出る可能性ある製品を開発する場合は、顧客の思考を一番に考えるデザイン思考には欠点になります。
デザイン思考の欠点は、今紹介した例だけではありません。顧客のニーズを無視する、ブラッシュアップをやめてしまうなどの欠点があります。
デザイン思考の主なプロセス
デザイン思考のプロセス①共感
デザイン思考の5段階を詳しく説明していきます。デザイン思考は人間を中心とした考え方が原則です。この共感の過程では、人々がどのように行動し、どんな需要があるのかを観察やインタビューを通じて収集します。そして、人が求めている事を理解し、見つけ出します。
ユーザーの思考を理解しニーズを探ることは、ビジネスの基本中の基本です。しかし「ユーザーに共感する」のと、「ユーザー第一主義」は別物だという事を注意してください。
デザイン思考のプロセス②問題定義
共感の過程から得ることが出来た意見や情報から、潜在的なニーズを探り出し最適解を考えます。問題定義の段階では、問題を解決するための要素について、より良いアイデアを集める事ができます。問題定義は、次に紹介するアイデアの創造の下地となります。そのため、慎重に決めていく必要があります。
デザイン思考のプロセス③アイデアの創造
デザイン思考の3段階目は、アイデアの創造です。アイデアの創造では、先ほど定義したユーザーのニーズをどのように満たしていくか、アイデアを出し合います。ブレインストーミングと呼ばれる、複数人で行う会議手法を使って具体的な物事を抽象化し、体系的に整理していきます。
より良いものを作るために、できるだけ多くのアイデアを出し合う事が大切です。ある程度アイデアが出てきたら、それを分類して絞り形にしていきます。
デザイン思考のプロセス④プロトタイプ化
4段階目のプロトタイプ化では、出したアイデアを基に試作品を作っていきます。ここでの目的は、一度作ってみて、新たな問題点や改善点を浮き彫りにする事です。そのため、あまり時間とお金をかける必要はありません。低品質の製品で大丈夫です。
重要なのは、必ずアイデアを基にした試作品を完成させる事です。アイデアを活かした製品が完成したら、次の段階に移ります。
デザイン思考のプロセス⑤テスト
5段階目のテストでは、前段階で作った試作品を市場でリリースして、実際にユーザーに使ってみてもらいフィードバックを貰いましょう。ユーザーの反応で、定義したニーズは正しかったか、概念化とプロトタイプ化の段階でニーズに合った製品になっているかが分かります。
さらにこのテストの段階で、得られたフィードバックを十分に活用します。今までの段階が正しいかを確認し、もう一度定義の段階から行うことで、ユーザーがより満足する製品を作ることができます。
デザイン思考の成功事例
成功事例①アップル社
アップル社は、iPadを開発するためにデザイン思考を適用しました。11ヶ月もかからない、とても短い期間で開発が行われました。開発体制は、社内開発者と社外の専門家を合わせた総勢35人で開発されました。デザイン思考を利用した過程は、競合している他社の製品を分析し、音楽の聴き方について観察するとことから始まりました。
共感の過程で観察したことにより、潜在的なニーズが分かりそこから斬新的なアイデアを具現化していきました。試作や評価などをなんども繰り返し行い、2001年10月に今までにない新しいミュージックプレイヤーを発売し、注目されました。
成功事例②任天堂
次に紹介する成功事例は、任天堂のWiiです。任天堂は新製品開発にまず社員に協力を求め、観察する事から始めました。そこで、「ゲーム機があることでリビングにいる時間が短くなり、親と子の時間が少なくなる」、「鍋を囲む家族は仲がいい事」などが分かりました。
ニーズが明らかになったとこで、家族が楽しめるゲーム機という明確なコンセプトが生み出され、アイデア創出とプロトタイピングを繰り返しました。開発されたWiiは観察から始め、これまでのゲームの常識を覆したデザイン思考を適用した成功事例と言えます。
成功事例③Yahoo! JAPAN
Yahoo!JAPANは「UPDATE JAPAN」をミッションに掲げており、ユーザーファーストを意識したサービス作りに取り組んでいます。この考え方に賛同し、デザイン思考を広げるために社員が集まりデザイン思考ワーキンググループとして、デザイン思考のワークショップの開催などの活動しています。
Yahoo!JAPANは、デザイン思考の導入を試行錯誤しながら全社に組織的に広めており、この過程はデザイン思考を利用しています。
成功事例④サムスン電子
サムスン電子では、ユーザーを中心に考えたデザイン経営を行っています。サムスン電子は1994年頃から10年余りで、凄まじい革新を遂げており新製品開発やイノベーションにデザイン思考を利用してきました。改革は、ソフトやデザインに関する取り組みや試行錯誤を中心に繰り返し行われました。
デザイン経営の活動では、技術革新や製品開発過程を主にデザイン思考を置いています。そして、デザインセンターが中心となって牽引した事がサムスン電子の成功要因です。
成功事例⑤LINE
デザイン思考の成功事例、最後に紹介するのがLINEです。LINEでは、新しいゲームやサービスを開発する時に、ユーザーの行動を観察、把握するためにあることを行っています。それは、複数のカメラが置いてあるユーザーリサーチルームを設置し、行動分析する事です。
想定されているユーザーに実際にサービスを使ってもらい、操作画面や表情を観察してそこで見つけたニーズをサービス改善に役立てています。
デザイン思考のおすすめ書籍
デザイン思考が世界を変える イノベーションを導く新しい考え方
始めに紹介するおすすめの書籍は「デザイン思考が世界を変える イノベーションを導く新しい考え方」です。書籍の内容は大きく2つに分けられており、デザイン思考とは何か?とこれからどこへ向かうのか?が書かれています。ビジネスをしている方にぜひ読んでほしい1冊で、価格は単行本で2,200円程、電子辞書で2,000円程で購入することが出来ます。
まんがで分かるデザイン思考
この書籍のおすすめしたいところは、まんがで描かれているため、文章が苦手な方でも読みやすく、記憶に残りやすくて覚えやすいところです。デザイン思考を学ぶ際に最初に読んでおくことで、人に説明できるくらいには理解することが出来ます。
まんが内には多くのノウハウや活用法が登場し、しっかり解説もされています。単行本が1冊1,400円程で、電子書籍の場合は1冊1,200円程で購入することが出来ます。
デザイン思考の先を行くもの
「デザイン思考の先を行くもの」は起業や独立を考えている方にぜひ読んでほしい1冊です。デザイン思考とは、1→10の改善するための考えですが、この書籍は0→1を作る方法をまとめています。実際にハーバードデザインスクールが教える方法を紹介しており、見立てる力の鍛え方なども紹介されています。単行本が1,600円程、電子辞書が1,400円程で購入する事が出来ます。
デザイン思考を身につけてビジネスに活かそう!
デザイン思考のメリットや欠点、主なプロセス、成功事例について詳しく解説しました。デザイン思考は、メリットがとても多く、日本でも採用する企業が増えています。そしてこの考えは、問題を解決するための方法なので、ビジネス以外にも活用する事ができます。デザイン思考について学び、身に着けてビジネスに活かしましょう。