労働者派遣事業について解説!派遣の種類の違いについても!

労働者派遣事業について解説!派遣の種類の違いについても!

労働者派遣事業の仕組みを詳しく知りたい!

これまでに、派遣労働者保護のため、多くの規制改正がされてきた派遣法。労働者派遣事業を行う企業の経営者や人事担当者は、トラブルを防ぐためにも、労働者派遣事業の内容を把握しておくことが重要です。

そこでこの記事では、労働者派遣事業の言葉の意味や種類や違い、メリット・デメリットについて解説します。労働者派遣事業の仕組みや申請する際のポイントをしっかり理解しましょう。

労働者派遣事業とは?

まずは、労働者派遣事業の言葉の意味やこれまでの労働者派遣法の更新履歴について紹介します。

派遣先の指揮命令下で労働に従事させる事業のこと

労働者派遣事業とは、派遣元の事業主が自社で雇用する従業員を派遣先の指揮命令の下で労働に従事させる事業のことを指します。労働者派遣事業の事業主は、社員に雇用を斡旋するだけでなく、教育訓練をする義務も生じます。

労働者派遣の言葉の意味

労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることを業として行うこと」と労働者派遣法に定められています。

労働者派遣の場合は、雇用契約を労働者派遣事業会社と結びますが、正社員は企業と直接雇用契約を結んで働くことになります。しかし、指揮命令については派遣先の事業会社から受けることになります。

労働者派遣と請負の違い

請負とは、発注主が請負会社と請負契約を結び、請負会社が特定の成果物を発注主に納品する形式です。労働者派遣と請負は、企業と労働者との雇用契約の関係に違いがみられます。

労働者派遣の場合、「雇用契約は労働者派遣事業会社、指揮命令は派遣先企業」というように、三者間での契約になります。一方請負は、 雇用契約と指揮命令のいずれもが請負業者です。

労働者派遣と出向の違い

出向には、「在籍出向」と「移籍出向」という2種類の雇用形態が存在します。一般的に出向として扱われることの多い「在籍出向」とは、従業員が雇用先企業との雇用契約を結んだまま、別の企業に異動し、出向先の企業の指揮命令で勤務する雇用形態です。

労働者派遣が派遣先の事業主とは雇用契約を結ばないのに対し、「在籍出向」は、出向元と出向先のどちらの事業主とも雇用関係にあるという違いがあります。

派遣労働者の雇用関係

派遣労働者は、直接雇用の場合と同じように、労働者派遣事業を行う企業と雇用契約を結びます。派遣事業主との間で雇用契約を許可する際は、労働条件や派遣料金などの開示を行います。

そして、この雇用契約には労働基準法が適用されます。派遣元事業主の責務として、雇用管理や賃金の支払い、保険等の加入が挙げられます。

派遣労働者と派遣先事業主の関係

派遣労働者と派遣先事業主との間にある雇用関係について説明します。前提として、派遣元事業主と派遣先事業主との間には「労働者派遣契約」が締結されます。

この契約後、派遣元事業主が派遣先の企業に対して労働者を派遣するのです。派遣先事業主は派遣元から委託された指揮命令の権限にもとづき、派遣労働者を指揮命令します。

労働者派遣法の歴史

労働者の保護という目的から、労働者派遣法は1986年7月1日に施行されました。1999年には原則自由化され、派遣受入期間(1年間)の制限が設けられます。2004年には派遣受入期間の制限が撤廃され、受入期間が最長で3年間に延長されました。

そして、2015年に新たな派遣法改正がありました。もともとは年に2回、年度報告書と状況報告書という2つの労働者派遣事業報告書を申請していました。そしてこのタイミングでこの2つの報告書が一本化され、年に1回に報告書を申請することになりました。

労働者派遣事業の種類の違い

続いて、労働者派遣事業の種類とその違いについて解説していきます。労働者派遣事業はもともと許可制で行う一般労働者派遣事業と、届出制で行う特定労働者派遣事業という形態がありました。

しかし、2015年の法の更新されたことによって、この2つの労働者派遣事業が一般労働者派遣事業に一本化されました。また、法改正への対応の1つとして、派遣社員の就業規則の改訂の検討が必要になります。

一般労働者派遣事業(登録型派遣)

許可制の一般労働者派遣事業(登録型派遣)とは、「労働者派遣事業会社に派遣社員を登録しておき、 派遣依頼の申請があった時に労働者との間に雇用契約を結んで派遣する」という労働者派遣のことを指します。派遣依頼が発生するごとに雇用契約を労働者と結び、派遣契約が終わったら給料も発生することはありません。

一般労働者派遣事業(常用型派遣)

許可制の一般労働者派遣事業(常用型派遣)とは、「労働者派遣事業を行う企業が派遣会社の社員として常時雇用契約を結ぶ」という労働者形態です。

登録型派遣との違いは、派遣先との契約期間が終了しても、派遣元企業と労働者の間の雇用契約は継続するという点です。もちろん、新たな派遣先企業が見つかるまでの期間でも給料が支払われます。

特定労働者派遣事業

特定労働者派遣事業とは、「派遣会社で常時雇用している労働者を他社へ派遣する」という労働者形態です。この特定労働者派遣事業を行う際は、厚生労働大臣へ申請する必要があり、必要書類として履歴書などがあります。

しかし、特定労働者派遣事業は2018年に廃止され、すべての派遣事業は一般労働者派遣事業となりました。新たに労働者派遣事業を始める企業や特定労働者派遣事業を行っていた派遣会社も許可を受けなければなりません。もし許可を得ないまま派遣事業を行った場合、厳しい罰則が科せられます。

紹介予定派遣

紹介予定派遣とは、「最長6カ月の派遣期間を終えた後、労働者と派遣先企業、両者の契約更新の合意があった場合、直接雇用される」形態のことを指します。紹介予定派遣は一定期間、派遣として働くことで実際の仕事内容や職場を見極められ、未経験でも希望の仕事に就けるチャンスがあります。また、派遣先企業と労働者との間のミスマッチを防ぐことができるというメリットがあります。

労働者派遣事業のメリットとデメリット

ここからは、労働者派遣事業のメリット・デメリットについて紹介します。

企業側のメリット

労働者派遣事業の企業側のメリットは、人件費を削減できることです。派遣を利用すると、派遣先企業は雇用保険や社会保険などの保険関連や労務などの業務を行う必要がありません。その結果、正社員を雇うよりも人件費を削減することができます。

また、年末調整や決算などの定型業務や高度なスキルが求められる業務の人手不足を補うことができます。定型業務を行う時期に合わせて派遣労働者を雇うことで、正社員は他の業務に専念できるだけでなく、ミスや残業の削減にもつながるでしょう。

労働者側のメリット

労働者派遣事業の労働者側のメリットは、多種多様なスキルを積むことができることです。常用型派遣の場合は、労働者は安定した雇用環境の中で多種多様な業務を経験できます。その結果、自身が目指すキャリア形成を実現するためのスキルを積むことも可能なのです。

また、登録型派遣の場合には、入社困難な大企業などに勤務することもできます。能力や評価次第ではありますが、直接雇用への道が開けることもあるでしょう。

企業側のデメリット

労働者派遣事業の企業側のデメリットは、従業員の育成コストがかかることです。派遣社員を活用すると、派遣社員が会社に慣れるまでの指導や説明などの育成にかかるコストが発生します。

さらに、数年の間育成してきた派遣社員であっても、受入期間の更新日がきてしまえば、その社員は企業から離れる可能性もあります。そのため、新たな派遣社員を受け入れるたびに、教育や育成のコストが発生することを認識しておきましょう。

労働者側のデメリット

労働者派遣事業の労働者側のデメリットは、雇用が不安定になることです。登録型の派遣の場合、契約期間が一般的に数日~1年などの短い期間とされることが多いでしょう。そのため契約が終了し派遣先企業との更新次第では、無職になってしまう恐れがあります。

常用型派遣の場合であれば、突然無職になる可能性は少ないでしょう。しかし、派遣先との契約期間が終了し、新たな派遣先で業務をすることになります。数年単位で環境が大きく変わることになるため、環境の変化が激しく、ストレスを感じやすくなるデメリットもあります。

労働者派遣事業を行う時のポイント

最後に、労働者派遣事業を行う時のポイントについて紹介します。労働者派遣事業を営んでいる企業は必ず労働者派遣事業報告書を申請しなければなりません。報告書の申請に必要な資料を確認していきましょう。

派遣社員は同じ会社で3年以上の就業ができない

2015年の法の更新によって、派遣社員は同じ会社で3年以上の就業ができなくなりました。そのため、契約更新のタイミングで派遣社員を直接雇用に切り替えるかどうか検討する必要があります。

ただし、同じ派遣先で他部署への異動をした場合は、更新後も3年の期間は派遣労働者として受け入れることが可能です。労働者派遣事業を行う企業は、契約期間の更新時、新しい派遣労働者を受け入れるかなどの選択が迫られることを認識しておきましょう。

派遣業務を確認する

労働者派遣事業を行う際は、あらかじめ労働者派遣法に該当する派遣業務を確認しておきましょう。ちなみに、労働者派遣法には、港湾運送業務、建築業務、警備業務、医療業務、士業への派遣は禁止されています。

しかし、全てが禁止という訳ではありません。例えば、建築業務でも事務員やCADオペレーターなどは派遣可能です。そのため、受け入れようとしている派遣業務が派遣適用業務であるか確認しましょう。

基本契約書と個人契約書を作成する

労働者派遣事業を行う際は、派遣社員などとトラブルにならないよう基本契約書と個人契約書を作成しましょう。契約書は、派遣会社との取引における基本事項を記載する基本契約書と、派遣労働者に対する個別の契約事項を記載する個別契約書の2種類になります。

基本契約書では、契約期間、派遣料金、休日・休暇の取得、契約解除、守秘義務などを記載します。また、個人契約書では、労働契約期間、就業場所、業務内容、就業時間、時間外労働、雇用安全措置、賃金の詳細などが記載されます。

派遣先責任者を設置する

労働者派遣事業を行う際は、派遣先責任者を設置する必要もあります。派遣責任者の業務内容として、派遣元との連絡・報告や派遣先管理台帳の管理を行います。

労働者派遣を行う際のルールとして、派遣先責任者は派遣社員100人につき1人設置しなければなりません。また、派遣社員と派遣先の社員が5名以下の場合、派遣先責任者を設置しなくても良いです。

派遣先管理台帳を作成する

派遣先企業は、派遣先管理台帳の作成・更新・保存と派遣元企業への通知が義務付けられています。この台帳の目的は、派遣社員が適切な労働環境で就業できているかどうか確認するためです。

このような労働者派遣事業の報告書は義務化されているため、提出期限をすぎる場合や、報告書が事実と異なるなどあれば、罰則が設けられているので注意しましょう。

均衡待遇に対する配慮義務を怠らない

労働者派遣事業を行う際は、賃金、福利厚生施設、教育訓練に関しての均衡待遇に対する配慮義務を怠らないように注意しましょう。賃金に関しては、派遣先企業は給与や求人条件などを派遣会社に申請します。

福利厚生施設は、派遣先企業の食堂やロッカールームなどの施設を派遣労働者も使用できるようにしましょう。教育訓練に関しては、派遣元企業からの教育申請があれば、派遣労働者の教育訓練の受講も許可する配慮が求められます。

派遣を受け入れる前に違法派遣でないか確認する

派遣を受け入れる前に、違法派遣でないか確認するようにしましょう。例えば、派遣禁止の業務で派遣社員を受け入れた場合や無許可・無申請の派遣元事業主から派遣労働者を受け入れた場合が違法行為となります。

また、派遣受入期間を超えても派遣労働者を業務させた場合や、偽装請負で受け入れていた場合が指されるので注意しましょう。

労働者派遣事業の許可を得るために必要な知識を身に付けよう!

これまで、労働者派遣事業の言葉の意味やメリット・デメリットについて解説してきました。派遣元企業や派遣社員とも良好な関係を築いていくためには、今回紹介したポイントに注意して事業を行う必要があります。

労働者派遣事業報告書などは、正確に漏れなく記載することはかなりの労力を要するでしょう。労働者派遣事業の許可を得るために必要な知識を身に付けることが重要です。

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