就業規則の意見書を書くときのポイントなどを紹介!
常時10人以上の労働者を雇っている事業所は、労働基準法により就業規則の制定や変更において労働者代表から意見を聴いた意見書を労働基準監督署に届ける必要があります。
就業規則は労働条件についてよく知ってもらうために大変有効です。労使双方が納得する就業規則の作成は今後の労使関係に重要な役割を果たします。記入例などを参考に意見書の書き方のポイントを知って、今後の会社の経営を良好にしていきましょう。
就業規則の意見書とは?
労働者側の意見を聞いた証明になる書類のこと
労働基準法によると、就業規則を新しく作成したり内容を変更したりする際には労働基準監督署にその就業規則が労働者側の意見を聞いたという証明になる書面が必要になります。それが就業規則意見書です。
労働者の過半数が加入する労働組合のある事業所ではその労働組合の意見書、過半数で組織する労働組合がない事業所では労働者の過半数の意見を選出された代表がまとめた方法で意見書を記載します。この意見書は事業所ごとに作成する必要があるので、複数の事業所を持つ企業ではその事業所の数だけ必要です。
就業規則に意見書が必要な理由
様々な考え方を持つ人が集まる事業所では小さな認識の違いからトラブルが発生することがあります。そのため事業所の就業規則で明確な労働条件を明記することは経営者と労働者双方が良好な関係を築くために非常に重要です。
意見書を求めることは、労働者に就業規則の内容について知ってもらうことで雇用内容について納得してもらい、労使間のトラブルを防ぐために有効な手段です。
就業規則に意見書が義務づけられた背景
労働条件の最低基準を定めた労働基準法は昭和22年に制定されました。その際には意見書の作成や届け出の義務がなかったため、労働者の意見や同意を得られない方法で就業規則を制定することが多く、労使関係が悪化した状態の事業所が多く見受けられました。
そこで労働者に会社のルールや社内の環境を明確にした就業規則の内容を知ってもらい、労使関係を良好にする方法として、労働基準法第90条において労働組合又は労働者の代表の意見を記載した意見書が義務付けられるようになりました。
就業規則の意見書が必要な会社
就業規則の意見書は労働基準法により常時10人以上の従業員を使用している事業所が作成し、提出しなければなりません。これは会社の秩序を保つとともに、労働者の権利を守り、労使間のトラブルを防ぐために必要とされています。
常時10人以上とは基本的に10人以上の従業員を抱えている事業所のことで、普段は10人未満の態勢で繁忙期のみ短期のアルバイトなどを雇って10人以上になる場合は常時10人以上にはなりません。
基本的に抱えている常時10人の従業員は正社員のみでなく、非正規社員も含まれます。しかし、派遣労働者は派遣元の会社と雇用契約を結んでいるので派遣先の常時10人の従業員には含まれませんので注意しましょう。
意見書が必要となる単位
就業規則の意見書は常時10人以上の従業員を使用している事業所に提出義務がありますが、その単位は事業所ごとになります。そのため一つの企業で複数の意見書を提出しなければならない場合もあるでしょう。
一部労働者を対象とした場合も意見書が必要
従業員が常時10人未満の事業所は基本的には就業規則の作成義務はありませんが、雇用関係の助成制度を利用したい場合は作成しなければなりません。その場合は意見書の提出も必要になります。
就業規則の意見書を書くときのポイントと記入例
就業規則の意見書に書き方や記入例は特に決まっていません。インターネットで検索すると書式や記入例がありますので、ダウンロードして作成に利用できます。
労働組合の有無を記載する
就業規則の意見書は、労働者が事業所側が作成した就業規則の内容を確認していることを証明するために、提出が義務付けられています。従業員の過半数で組織する労働組合のある事業所の場合は、その労働組合の意見を聴いて意見の内容を記載します。
そのため、意見書には労働者の過半数が加入している労働組合が事業所内にあるかどうかの有無を記載しなければなりません。
労働組合名や労働者代表名を記載する
前述のように事業所内に従業員の過半数が加入している労働組合がある場合、その労働組合の意見を聴いて意見の内容を記載しますが、その際労働組合の名称の記載も必要です。
また従業員の過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者の労働者代表者名と、その人が代表になった選出方法の記載が必要となります。過半数代表者の選出には、使用者の移行に基づき選出されたものでないことが要件として明記されています。
意見の詳細を明記する
就業規則の意見書は労働組合や労働者の過半数に選出された代表者などの労働者側に内容を理解してもらい、意見を聞くことが目的です。書き方として意見がある場合はその意見の詳細を明記し、特に意見がない場合は「異議なし」と記載します。
意見書の作成日を記載する
意見書の書き方は、労働者が就業規則を確認し確実に意見を聞いたという証明のために、作成した日付の記載が必須です。
意見書の記入例
意見書
○○株式会社
代表取締役 ○○○○ 殿
令和○年○月○日
令和○年○月○日付をもって意見を求められた就業規則案について、下記のとおり意見を提出いたします。
記
次の追記が必要と存じます。ご検討お願いいたします。
第○条 特別休暇については、5日としていただきたい
従業員代表:職名○○
氏名○○○○ 印
(選出の方法 ○○による)
https://meetsmore.com/services/employment-regulation-and-contract-consultant/media/22485
就業規則における過半数代表者選出方法
前述のように労働者の過半数で組織する労働組合がない事業所が就業規則を制定する場合、従業員の過半数代表者を選出してその代表者に内容を確認し意見書を記載してもらう必要があります。その選出方法を確認していきましょう。
選出方法①就業規則届け出の旨を周知する
就業規則の制定や変更をする場合、経営者は行政に届ける前に全ての労働者にその旨を周知してもらう必要があります。そして、確認した内容について意見を求め、意見書に記載してもらうために代表を選出することを伝えましょう。
選出方法②代表者の選出方法を明示する
就業規則を確認し意見書を求めるための代表を選出する際、選出方法としては投票や挙手などの方法があります。経営者側はあらかじめどのような方法で選出するかを決めて、労働者側に流れを明示しておきましょう。
選出方法③代表者を選出する
代表者の選出方法を明示した後は、実際の選出作業です。労働者の人数が少ない場合は全従業員を集めて挙手や投票箱に投票などの方法が労働者全員の同意を得やすく有効です。
しかし、労働者のの人数の多い部署ではかなりハードな作業になってしまうので、候補者名を明示して同意を得る方法や部署ごとの代表者による挙手や投票による選出などの方法がよいでしょう。メールや対話をして選出する方法は不公平感が出やすいので、同意を得やすい選出方法を選びましょう。
就業規則の意見書の主旨に同意してもらえない場合の対処法
労働基準法では就業規則の意見書の記載の義務付けにより労働者の意見を聞くことは求められていますが、同意を得ることは定められていません。
しかし、従業員の意見を尊重しない就業規則では労使関係が悪化してしまいます。また、労働組合から交渉を申し込まれた場合は団体交渉義務も生じます。意見書の主旨に同意をしてもらう対処方法を紹介しますので、円滑な労使関係を築くために役立ててください。
対処法①従業員と話し合う
就業規則の意見書の主旨に同意してもらえないときに、最も大切な対処方法は従業員と納得がいくまで話し合うことです。できれば制定前や変更する前に納得が得られるように働きかけておくとよいでしょう。
就業規則は労働契約書でもあります。一方的に意見を聞くだけではなく、話し合いで従業員と使用者の双方が納得できる落としどころを探すことによって、良好な労使関係が生まれるでしょう。
対処法②報告書を提出する
法律上、労働者の意見を聴いたことが証明できれば意見書を記入してもらえない場合でも、就業規則を行政に受理してもらうことは可能です。
その場合は、一定の期限を決めて労働者側に意見書の記入を求めたにもかかわらず、期限を過ぎても回答が得られなかった旨を時系列に記した報告書か、過半数代表者から得た意見書を提出しないという書面を添付します。
就業規則の届出に必要な意見書の書き方を覚えておこう!
健全な労使関係の構築のためには、労働契約書としての役割を果たす就業規則を労働者側に確認し、意見を聴くことが必要です。そのため届出には意見書を添付することが義務付けられています。
就業規則の届出に必要な意見書の書き方を記入例などを参考にしっかり理解し、労働者と経営者が納得する就業規則を制定することで良好な会社経営に結び付けていきましょう。