自己申告制度とは?メリット・デメリットから導入事例まで!

自己申告制度とは?メリット・デメリットから導入事例まで!
目次

自己申告制度のメリットやデメリットを解説!

従業員の意向や本音が知りたいときに活用できるのが、自己申告制度です。自己申告制度を活用することで、従業員一人一人の適性やキャリア意向を踏まえた人事異動の検討や企業としての在り方を考えることができます。

さまざまなシーンで活用することができる自己申告制度ですが、導入するにあたってどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?

そこで本記事では、自己申告制度の意味や目的などをまとめました。また、自己申告制度を導入する際のメリットやデメリットも説明します。自己申告制度を活用した導入事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

自己申告制度とは?

自己申告制度の言葉の意味

自己申告制度は、社員自身が関わった業務の自己評価や今後のキャリア・異動・転籍等の意向などを企業に申告できる制度です。自己申告制度の言葉の意味の中には企業への不満や意見、職場での人間関係なども含まれており、人事管理や人材育成を目的としています。

自己申告制度が活用される場面

自己申告制度を導入している企業は約8割です。その中でも主に人事管理や人材育成、社員の能力開発や評価の補填に自己申告制度を活用している企業が多いですが、近年では社員の満足度の向上や職場環境の改善のために自己申告制度を導入して活用している企業もあります。

また、主に書類で事前アンケートを取ってから面談をする企業が多いですが、近年ではWEBアンケートを活用して実施する企業も増えてきました。

自己申告制度の目的

従業員に関する情報を収集するため

自己申告制度の目的の1つは、従業員に関する情報の収集です。自己申告制度を活用することで、従業員が感じている考えや仕事の状況を主観的・客観的に情報を得ることができ、企業に対する満足度や社内の雰囲気調査に活用することもできます。

その他には、自己申告制度の活用によって現場状況の確認や自己評価、企業が定める等級制度や賃金制度の見直しや改善にも有益な情報が得られるでしょう。

従業員の意向を汲み取るため

自己申告制度の2つ目の目的としては、従業員の意向を汲み取る目的があります。仕事状況を見ているだけでは、従業員の意向は分からないことが多いでしょう。

そんなときに自己申告制度を活用することで、従業員自身が思い描くキャリア志向を知ることができ、今後の配置替えにも役立ちます。また、賞与や年俸制による給与配分、退職金制度の支払い方法などの希望にも活用可能です。

直属上司の評価が適正かどうかを判断するため

自己申告制度の3つ目の目的は、直属上司の評価が適正かどうかを判断するために活用されます。経済がグローバル化する現代では従業員への公正で公平な評価を行うために、自己申告制度が欠かせないといっても良いでしょう。

また、ジョブ型雇用やの導入や同一賃金同一労働が推奨される現代社会では人事考課制度の在り方が問われており、企業としてだけでなく従業員も「働きやすい職場環境」の整備や改善、システム構築に必要な情報も収集可能なのが自己申告制度です。

人材育成やキャリア開発を行うため

自己申告制度は、人材育成やキャリア開発のための定期的な人事異動の情報収集にも活用できます。自己申告制度を活用することで、従業員が過去に携わった業務から身に付けた能力や技術がどんなものかを把握することが可能です。

また、異動後も自己申告制度を活用して従業員の担当業務の進捗状況をヒアリングすることで、従業員自身の目標と現状のすり合わせが可能になり、今後のキャリア形成についても本人の希望を汲み取りやすくなるでしょう。

自己申告制度を導入するメリット

メリット①自社の組織課題に合わせた運用ができる

柔軟性のある自己申告制度の大きなメリットは、自社の組織課題に合わせた運用ができることです。例えば成果主義のの企業の場合、人材開発のためのキャリア育成や能力、適性を考えて自己申告制度と目標管理を組み合わせて活用している事例があります。

また、専門的なスキルや資格が重要視される企業では、スキルや資格、適正のことを考えて職務能力適正評定と自己新高精度を組み合わせて自己申告制度を活用している事例もありました。このように自社の人事評価制度に合うように活用できるのが自己申告制度の大きなメリットです。

メリット②従業員と企業側とのギャップを把握することができる

従業員の意向や適性、企業側の経営方針や人事制度について認識のギャップを把握することができるのが、自己申告制度の2つ目のメリットです。

従業員と企業との間に認識のギャップがあることで、従業員が不安や不満を抱きながら仕事に取り組むことになり、モチベーションや生産性の低下に繋がります。そのような状況を改善するためにも、従業員の声を直接聞くことができる自己申告制度を導入することは有効と言えるでしょう。

メリット③モチベーションの向上に繋がる

社員の意向や適性を把握することができる自己申告制度を導入することは、適材適所の配置替えにも活用でき、従業員のモチベーションアップに繋げることができるのもメリットの1つです。

ビジネスの中では「やりたいこと・できること・やるべきこと」が3つ揃った状態が、モチベーションを維持できる仕事と言われています。自己申告制度を活用することで、「やりたいこと・できること」を自己申告することが可能です。

そこで自己申告制度で得た情報を元に、企業側が「やるべきこと」のバランスを見ながら従業員の適正な配置を心がけることで、従業員のモチベーション維持やモチベーションアップに繋げることができるでしょう。

メリット④キャリア意識の向上にも役立つ

自己申告制度を活用することで将来のキャリアについて考える機会が増え、キャリア意識の向上にも役立ちます。キャリア意識を持つことで自分が何をするべきか明確になり、自身の成長のために欠かせない行動を促すことが可能です。

自己申告制度を導入することは、従業員の意識の向上や仕事へのモチベーションアップ、キャリアアップへの意識の向上にも役立てることができるでしょう。

自己申告制度を導入するデメリット

デメリット①情報を集めただけで終わってしまう

自己申告制度を導入するにあたって、得た情報をどのように活用するのか決まっていない状態では情報収集しても全く生かされることがなく、企業側の自己満足で終わってしまう可能性があります。

自己申告制度を導入・活用したいと考える場合は、自己申告制度をどのように活用するのかを明確に設定し、企業側と従業員がその認識を共有し合い、合意を得たうえで自己申告制度による情報収集を行うようにしましょう。

デメリット②従業員の不満に繋がることがある

自己申告制度を活用して従業員がキャリア意向や配属希望を申告したとしても、必ず申告通りに叶うわけではありません。人事管理の中で従業員の希望が参考にされることはありますが、従業員全員の希望が叶うことは実質的に不可能です。

ですが、自己申告制度によって希望を出してもその希望が叶わないことが続いてしまうと、「自己申告制度は無駄」という意識になってしまい、結果従業員の不満に繋がってしまうことがあります。

デメリット③自己申告と届け出が混同する可能性がある

自己申告制度には、家族状況の変更や従業員本人の健康状態などのプライベートな部分も含まれるため、自己申告と届け出が混同する可能性があります。

自己申告制度で聞き取るプライベートな部分に関しては従業員のプライバシーにかかわる情報なので取り扱いが難しく、自己申告制度と企業への届け出をどこで分けるのか、企業側は考えなければなりません。

自己申告制度の内容

内容①対象者と運用頻度

自己申告制度の対象者は一般的には全社員が対象です。しかし、企業によってはジョブローテーション対象者や管理職以下の一般社員など、自己申告制度の利用を限定している場合があります。

自己申告制度の運用頻度は年に1回としている企業が大半です。ですが、企業によっては評価時期に値する3月と10月頃の年に2~3回行っている企業もあります。

異動の時期などに活用する企業も多く、自己申告制度を導入するときはいつ行うのか、自社の状況を考えて決めるのが良いでしょう。

内容②一般的な運用フロー

まずは、自己申告制度を行う日よりも前に人事が従業員に自己申告書を配布します。自己申告書を受け取った従業員は自己申告制度が行われる前に自己申告書の記入・提出をし、人事が自己申告書の回収。そのあと従業員が所属している上司と面談し、希望者には人事との面談も可能です。

自己申告制度によって得た情報を人事が取りまとめて、異動の検討や決定をします。その後、人事と上司がフィードバックを兼ねて面談し、最後に人事が制度の振り返りと次回の改善案をだして、自己申告制度は完了です。

自己申告制度の導入方法

自己申告書を活用する

自己申告書は、各企業で目的に合わせて自由に変えることができ、自己申告制度で従業員に記入してもらう書類のことです。従業員全員に同じ書類を使用している企業が多いですが、管理職と一般社員で内容を少し変えている企業もあります。

自己申告書を活用するポイントとしては、しっかりと目的を踏まえた項目作りをすることです。不要な項目は削除し、目的に合った項目のみを残すと良いでしょう。また、どのように自己申告制度が利用されるのかを明確にするために、書類の呼び名を変更している企業もあります。

現在の職務状況や仕事への適性を確認する

現在の職務状況や内容について自己申告制度でヒアリングする必要があります。しっかりとヒアリングすることで、仕事の量や質、満足度、問題や不満点について知りえることができ、今後の業務改善や異動に役立てることができるでしょう。

また、従業員一人一人の仕事の状況や問題点、不満点などを聞くことでその従業員の仕事の適性を知ることができます。仕事の適性を知ることで今後のキャリア形成や意向を踏まえた異動や職務変更にも役立ちます。

将来のキャリア意向や異動希望を確認する

将来にキャリア意向や異動希望を確認することも、自己申告制度では重要です。自己申告書に自由記述欄を作成し、自分の言葉で内容を記入してもらうことで、その従業員のキャリア意識がどれほどなのかが分かります。

また、異動に関しては自己申告制度利用時に具体的に希望理由などを聞くことで、その従業員の異動が検討しやすくなるでしょう。さらに、希望だけでなく短期的から長期的なキャリア意向を聞くことで、その従業員が考えているキャリアプランがしっかりしているのかを確認することができます。

自己評価や人間関係の状況を確認する

今期の自身の取り組みについての自己評価や課題、現在の人間関係の状況や改善方法を自己申告制度でヒアリングします。職場での満足度は、人間関係が大きく左右しているといっても過言ではありません。仕事内容が問題なくても、人間関係がうまくいっていないと仕事にも不満を抱えてしまいます。

職場での人間関係の場合、何かしらの不満があっても詳しい内容を申告書に記載しにくいので、職場の雰囲気や上司・同僚の対応や関係性について段階評価ができるようにしておくと良いでしょう。

自由意見欄や健康状態についての項目を設ける

自己申告制度における自由意見欄は、経営や他部門への要望や意見など、特に申告しておきたい内容について自由に記載することができる項目です。この項目があることで、従業員は自由な意見を述べることができます。

ですが、「自由意見欄」と書かれているだけではどのような内容を書いたらいいのか分からない人が出てきてしまうため、どのようなことを記述すればいいのかを詳しく記載すると良いでしょう。

また、従業員本人の健康状態や趣味についての項目を設けることで、従業員が現在どのような状態で業務にあたっているのかが自己申告制度によって把握できます。

健康状態までしっかりと把握することで従業員は企業側に対して信頼し、企業側は職務の量や質などを考えて異動などに活用することができるでしょう。

自己申告制度の企業事例

企業事例①イオン株式会社

さまざまな企業の中でも、幅広く人材育成施策を実施している事例が多いのがイオン株式会社です。自己申告制度はもちろん、人事教育制度として資格登用制度や社内公募制度、イオンビジネススクールなどの独自の施策も導入して活用しています。

自己申告制度については1年間で1回の自己申告です。内容としては今行っている業務の職場状況や満足度、今後のキャリアについて、家族の状況などをヒアリングして人事評価に活用しています。

企業事例②キヤノン株式会社

キヤノン株式会社では自己申告制度の他に、留学制度や海外トレーニー制度などの教育研修にも力を入れている企業です。入社時の研修は数カ月間、その後は分野別の専門研修を行い、その後専門家として正式な所属となります。

また、自己申告制度の導入事例の内容としては、現在行っている業務についてのヒアリングです。ヒアリングの内容によっては、部署や職種変更を行える制度も導入されています。

企業事例③株式会社資生堂

株式会社資生堂での導入事例では、人事施策の方針として自己申告制度を活用した「資生堂グローバル人事ポリシー」があり、評価処遇などのルールやガイドラインが定められています。内容としては1年に1回以上、自己申告制度を活用して従業員と評価面談を実施。

自己申告制度を活用するにあたって、成果や業績のみならずプロセスも重視した育成型の能力評価に活用しています。また、評価や昇格などの基準を全従業員へ開示し、評価結果も全従業員にフィードバックすることで、明確で納得のいく結果に繋がるよう工夫している企業です。

企業事例④アサヒビール株式会社

アサヒビール株式会社の導入事例では、自己申告制度の内容として自分の強みや弱みを振り返ることで、短期から長期に渡るキャリア形成の認識に相違がないかを確認しています。

アサヒビール株式会社の自己申告制度は年1回の義務があり、人事評価では対話重視の運用なので社内でコミュニケーションが取りやすい環境です。

企業事例⑤トヨタ自動車株式会社

「モノづくりは人づくり」という考え方のトヨタ自動車株式会社は、創業以来からトヨタの教育・人材育成の理念は変わらず継承されています。その中でも、自己申告制度を活用した導入事例では、自己申告による本人の意思や意足の確認を行い、業務経験を通して育成目的のローテーションを実施。

自己申告制度を活用して意欲の高い・優秀な従業員に関しては、将来のリーダー候補として長期的な計画で人材育成をしています。

企業事例⑥TDK株式会社

TDK株式会社では、グローバル人材マネジメントに力を入れている企業です。そんなTDK株式会社の自己申告制度の導入事例では、社員1人1人のキャリア開発や能力開発のサポート、職務と合っているかなどの内容で年に1回を目安に自己申告制度を活用しています。

企業事例⑦ピジョン株式会社

ピジョン株式会社では、育児・介護用品の製造や販売を手掛けている企業です。ピジョン株式会社での自己申告制度の導入事例は、社員のモチベーションアップの一環として独自で掲げている「キャリア意識の醸成サポート」があります。

詳しい内容としては、現在の職務状況の把握や希望する職務・異動希望の情報収集のために自己申告制度を活用して、キャリアアップを支援するというものです。

企業事例⑧栗田工業

栗田工業の導入事例では、自己申告制度が話題になり始めた1970年代にどこよりも早く制度を取り入れた企業です。自己申告制度で得た内容をキャリアの意向を人材育成に活かすだけではありません。

自己申告制度の満足度調査で得た現場社員の不満などを企業全体で周知し、管理職研修に活かすなどの独自での活用をしています。その他、通信教育講座などの自己啓発の機会提供も行っている良い例です。

企業事例⑨東京ガス株式会社

古くから自己申告制度を導入している東京ガスは、社員の能力開発などの内容を中心に自己申告制度を活用しています。教育や研修などの人材育成制度が充実している東京ガスは組織内にキャリア開発部を設置するなど、人材育成に積極的に取り組んでいる企業の1つです。

それだけでなく、自己申告制度をフリーエージェント制度や人材公募制度と組み合わせて異動計画やキャリア開発に活用している事例もあります。

自己申告制度を人事管理に役立てよう!

自己申告制度の意味や目的などを紹介しました。自己申告制度をうまく活用することで、従業員の仕事に対するモチベーションアップや仕事への満足度アップに繋がります。従業員が抱えている不満や不安を吸収し、職場環境の改善をすることも可能です。

そのためにも、自己申告制度を導入するにあたってのメリットやデメリットをしっかりと理解し、紹介した通常フローや導入事例を参考に取り入れるといいでしょう。自己申告制度行ってみて改善するべきことがあれば、適宜改善していくようにしてください。

職場内の環境や従業員のモチベーションに悩んでいる方は本記事を参考に自己申告制度を活用し、人事管理に役立てましょう。

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