ワークライフインテグレーションの意味やメリットを解説!
近年、ワークライフバランスに代わる言葉として、「ワークライフインテグレーション」が注目されています。ワークとプライベートを切り離して考えるワークライフバランスとは異なり、双方を統合することで人生を充実させようという考え方です。
この記事では、ワークライフインテグレーションの言葉の意味やメリット・デメリットを実際にワークライフインテグレーションを導入した企業事例を交えて紹介します。
ワークライフインテグレーションとは?
生活の質を向上させる取り組みのこと
ワークライフインテグレーションとは、ワーク(仕事)とプライベート(個人生活)を対立するものとして考えず、どちらも人生を充実させるための大切な要素であるという考え方であり、生活の質を向上させる取り組みのことを指します。
ワークライフインテグレーションを実施すると、従業員の仕事に対する満足度が向上し、メンタルヘルス維持にも期待できるといわれています。
ワークライフインテグレーションが注目されている背景
近年の日本では、政府が掲げる「一億総活躍社会実現」に向けて、働く人々の労働環境を見直す「働き方改革」という取り組みが実施されました。その背景には、少子高齢化による労働人口の減少や、日本企業特有の長時間労働やサービス残業といった社会問題があります。
このような状況の中では、日本の労働者がより長く健康的に仕事に従事できるような対策が必要になるでしょう。そこで、従業員の人生そのものの充実を重視するワークライフインテグレーションが注目されるようになったのです。
ワークライフバランスとの違い
ワークライフインテグレーションとワークライフバランスを比較すると、仕事とプライベートを対立するものと捉えるかどうかに違いがあります。
ワークライフバランスは、双方を相反するものと捉えられており、どちらか一方に偏ることのないようバランスをとることが重要とされてきました。しかし、ワークライフバランスでは人生の充実に繋がらないという問題が出てきたのです。
そこで、仕事とプライベートを一体に捉えて総合的な人生の充実を図る概念として、ワークライフインテグレーションが登場しました。
ワークライフインテグレーションのメリット
メリット①社員の生産性が向上する
ワークライフインテグレーションの一つ目のメリットは、社員の生産性が向上することです。ワークライフインテグレーションを実践することによって、企業の従業員は心身ともに健康的な生活を送ることができるので、より集中して仕事に取り組むことができます。
その結果、個人の業務効率が向上することが期待できるでしょう。
メリット②ダイバーシティを実現することができる
ワークライフインテグレーションの二つ目のメリットは、ダイバーシティを実現できることです。ダイバーシティとは、「多様性」や「相違点」という意味を持ちます。
ワークライフインテグレーションを取り組む企業は、リモートワークやフレックス制度など、より柔軟な働き方を実現するために、多様な労働形態を導入しています。そうすることで、女性や障害者などの多様な人材を積極的に活用することができるのです。
メリット③長時間労働の是正に繋がる
ワークライフインテグレーションの三つ目のメリットは、長時間労働の是正に繋がることです。ワークライフインテグレーションを実現するためには、時間の使い方がポイントになってきます。
従業員が仕事や家庭・趣味も充実した状態を作り出すために、効率よく成果を出すという意識が生まれることが理想です。このような意識を持つことによって、これまでのような長時間労働や無駄な残業が是正されるようになります。
メリット④仕事と家庭を両立することができる
ワークライフインテグレーションの四つ目のメリットは、仕事と家庭を両立することができることです。ワークライフインテグレーションは、仕事と家庭を一体として捉えるので、どちらかを犠牲にするという発想がありません。
例えば「仕事が忙しいから家族との時間が取れない」「育児などによってキャリアを断念する選択を取る」といったことがなくなります。企業はワークライフインテグレーションを実現するために、リモートワークやフレックス勤務、時短勤務などを採用するといいでしょう。
メリット⑤幸福度が高くなる
ワークライフインテグレーションの五つ目のメリットは、幸福度が高くなることです。ワークライフインテグレーションは仕事と私生活のの充実を目的としています。
仕事にやりがいや向上心を持って取り組み、プライベートも充実して過ごすことで、ストレスがなくなり幸福度が高まるのです。
メリット⑥自己啓発やスキルアップに役立つ
ワークライフインテグレーションの六つ目のメリットは、自己啓発やスキルアップに役立つということです。ワークライフインテグレーションの長所は、プライベートで得た知識や経験を仕事でも生かせることです。
仕事に対しても人生の要素として意欲的に取り組む意識が身に付くので、日々の生活の中でもスキルアップに励むことができます。
ワークライフインテグレーションのデメリット
デメリット①人事評価制度の整備が難しい
ワークライフインテグレーションのデメリットの一つ目は、人事評価制度の整備が困難なことです。前述したとおり、ワークライフインテグレーションを実現するためには、リモートワークやフレックス制度、時短勤務などを採用する必要があります。
働き方が多様化してしまうと、統一の評価基準を設けることが難しいのです。労働形態や職種に合わせて、適正な評価基準を策定する必要があるでしょう。
デメリット②制度の趣旨を理解してもらう必要がある
ワークライフインテグレーションのデメリットの二つ目は、制度の趣旨を理解してもらう必要があることです。ワークライフバランスならともかく、ワークライフインテグレーションはまだ日本企業には浸透していません。
そのため、従業員に対してワークライフインテグレーションの趣旨や目的を正しく理解してもらうためには、社内教育など適切な普及活動が必要になります。
デメリット③マネジメントが難しい
ワークライフインテグレーションのデメリットの三つ目は、マネジメントが難しいことです。ワークライフインテグレーションは仕事とプライベートの垣根がなくなるので、「企業として社員をどこまで管理すればいいのか」という線引きすることが困難になります。
長時間労働や無駄な残業を発生させないために、人事担当者の方は適切な管理制度を設定する必要があるでしょう。
ワークライフインテグレーションの企業事例
企業事例①オリンパス株式会社
ワークライフインテグレーションの企業事例の一つ目は、日本の光学機器・電子機器メーカーであるオリンパス株式会社です。同社ではワークライフインテグレーションの施策として4つの制度を設けました。具体的には「労働時間短縮制度」「在宅勤務制度」「リエントリー制度」「役割フレックス制度」です。
また、女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」では、2016年度からワークライフインテグレーションの実現に向けた取り組みを行っています。
企業事例②日本アイ・ビー・エム株式会社
ワークライフインテグレーションの企業事例の二つ目は、米国テクノロジー企業の最大手のIMB社の日本法人である日本アイ・ビー・エム株式会社です。2012年11月15日に、公益財団法人の日本生産性本部主催で「ワーク・ライフ・バランス・コンファレンス2012」が開催されました。
当時はまだワークライフバランスが主流だった中、日本アイ・ビー・エム株式会社の取締役会長である橋本孝之氏は、ダイバーシティ推進の重要な施策として、ワークライフインテグレーションをあげています。
企業事例③MSD株式会社
ワークライフインテグレーションの企業事例の三つ目は、世界的な製薬会社であるMSD株式会社です。MSD株式会社は、国土交通省が呼びかけしている「ポジティブ・オフ」運動に賛同し、社員が休暇を取得して外出や旅行などを楽しむことを積極的に促進する、ワークライフインテグレーション推進のサポートを行っています。
また、男性の育休取得やイクボス(育児とボスを組み合わせた造語)などの意識改革などを積極的に目指しています。
企業事例④シェアハウス「月島荘」
ワークライフインテグレーションの企業事例の四つ目は、シェアハウス「月島荘」です。月島荘は、ワークライフインテグレーションを実現するのに適した社宅だとして評判を集めています。
すでに複数の企業が契約しており、社員寮として利用しています。通常の社員寮は、同じ会社の社員が社宅として利用しますが、月島荘では異業種・異年代の社会人が集まるように運営しているのです。
ワークライフインテグレーションを実践しよう!
これまで、ワークライフインテグレーションの言葉の意味やメリット・デメリット、企業事例を紹介してきました。ワークライフインテグレーションを採用する企業のメリットは、ダイバーシティを実現することができ、従業員が私生活を充実させること。
それにより、生産性の向上も期待できることです。企業の人事担当者の方は、今回紹介した内容を参考にして、自社の人事評価制度などを見直してみましょう。