毎日職場と家の往復だけで、本当に心地よく過ごせる自分の居場所がない。
そんなライフスタイルに異を唱えるのが「サードプレイス」という考え方です。
仕事をしていると忙しかったり、上司から怒られたりして精神的・肉体的にストレスを感じます。家と職場の往復ばかりだと、生活の変化がないので、気分転換がしづらいと感じる方もいるでしょう。
そんな悩みは、新たな居場所を見つけることで解決するかもしれません。
「サードプレイス」とは自宅でも職場でもない、とびきり居心地の良い第三の場所です。1980年代にアメリカの社会学者によって提唱され、近年スターバックスがこの言葉を使ったことによって世界中に広まった概念です。
コロナ禍以降、政府からの外出自粛やテレワーク推奨の発表によって、自宅で過ごす時間が増えました。友人や職場の人とコミュニケーションを取る機会が減ったことで、個人の孤立が加速しています。
その結果、自殺者の数が増加しています。
人間にとって心から安らげる時間がどれだけ重要なのか、またそれが叶うのは場所なのか、改めて考える時がきています。
そこで、この記事ではサードプレイスを詳しく解説していきます。特徴や効果なども解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
サードプレイスとは何か
サードプレイスとはファーストプレイス(家)やセカンドプレイス(職場や学校)でない、第三の場所を意味しています。ストレスを受けづらく、自分にとって落ち着けて気分転換ができる場所です。
カフェやバー、カラオケなど自分にとって落ち着ける場所であれば、どこでもサードプレイスになります。
定義は明確に決まっていませんが、それぞれの場所の違いは以下のとおりです。
ファーストプレイス(第一の場所) | 生活をする場所。 睡眠、食事、入浴など人の生命や健康を維持するのに必要です。 |
セカンドプレイス(第二の場所) | 自宅以外に長時間いる場所。 主に職場や学校など 経済活動や学習をするのに必要です。 |
サードプレイス(第三の場所) | 自ら進んで行く場所。 主にカフェやバー、カラオケ、映画館など人によってさまざま。 趣味や気分転換をするための場所で、義務や必要性に縛られません。 |
人はファーストプレイスとセカンドプレイスさえあれば、生活できます。無理にサードプレイスを見つける必要はありませんが、自宅と職場の往復だけだとリラックスしづらいでしょう。そのため、サードプレイスが注目されつつあります。
また都心部では近所付き合いが少なく、隣に住んでいる方の顔や名前を知らないことがほとんどでしょう。よって孤独を感じやすくなります。
サードプレイスがあれば、共通の趣味を持った仲間を作るのも可能です。家と職場を往復する生活に、潤いを与えてくれる役割があります。
歴史的背景
サードプレイスが注目されている背景には、現代人が晒されている仕事や家庭などのストレスが挙げられます。
特に日本の労働環境は低賃金で長時間働くことが多く、自殺や過労死の事例は世界トップクラスです。
会社からの指示にNoと言えない人も多い日本人。自分では気づかないうちにストレスを抱え込みすぎてしまいます。都心部になるほどコミュニティへの参加もしづらいので、ストレス発散ができないまま生活をする方もいるでしょう。
そのため、少しでもストレスを発散して、自分らしくいられる場所を作ろうと、日本の中でもサードプレイスが注目されています。
アメリカの社会学者が1989年に提唱
サードプレイスという考え方は、1989年にアメリカの社会学者であるレイ・オルデンバーグが提唱しました。当時のアメリカは自動車に依存した生活をしていて、家と職場を往復するだけの生活でした。
レイ・オルデンバーグはストレス社会を生き抜く方法として、サードプレイスが必要と考えています。
レイ・オルデンバーグは以下の条件がある場がサードプレイスに適しているとしました。
- 無料もしくは安価である
- 食事や飲料の提供がある
- アクセスしやすい場所にある
- 習慣的に集まりやすい
- 居心地が良い
特徴
サードプレイスの特徴は以下の8つがあります。
- 中立性
- 平等性
- 会話が中心にある
- 設備がよくアクセスしやすい
- 常連や会員の存在がある
- 控えめな態度と姿勢
- 機嫌が良くなる
- 第二の家
1つ目は「中立性」です。サードプレイスは自らの意思で訪れるので、義務感から来るものではありません。
2つ目は「平等性」です。参加者の上下関係はなく、自由に行動できる場所になります。
3つ目は「会話が中心にある」ことです。サードプレイスは仕事と違って、会議やプレゼンテーションのような真剣さは求められません。参加者同士で楽しめるように会話をするのが重要です。遊びゴコロを持って、冗談を言える会話に意味があります。
4つ目は「設備がよくアクセスしやすい」ことです。サードプレイスは来るものを拒んではいけません。誰でも気軽に参加できるのが好ましいです。バス停や駅の近くなどアクセスしやすい場所にあると、参加者が増えやすくなります。
さらに誰もが入りやすい設備である必要があります。入り口が開放的で中が見えるような造りだと、参加者が増えやすいです。
5つ目は「常連や会員の存在がある」ことです。サードプレイスには常連や会員の存在が欠かせません。常連や会員がいることで、雰囲気が魅力的になります。ただし、新しい参加者もいる必要があります。常連や会員が新しい参加者を迎え入れてくれる雰囲気であれば、さらに魅力的な場所になるでしょう。
6つ目は「控えめな態度と姿勢」です。サードプレイスは家庭的な雰囲気を持っていて、誰でも迎え入れてくれる場所である必要があります。また気軽に会話ができるように、否定的な態度や姿勢はしてはいけません。
7つ目は「機嫌が良くなる」ことです。緊張や否定的な感情を持ち込まれないようにします。参加者が楽しくてポジティブになれる環境であることが好ましいです。
8つ目は「第二の家」です。サードプレイスは多くの方が訪れる場所になります。一緒に過ごすことで参加者同士が温もりを感じます。そして、家族のようなつながりを感じるようになるのです。
中立性
中立性を詳しく解説します。サードプレイスは法律や経済など、さまざまなことから解放されている必要があります。
そして、個人が自由に参加することが可能です。自らの意思で参加しているため、質の高いコミュニケーションが生まれます。
平等性
サードプレイスは職場のような上下関係はありません。全ての参加者が平等で、誰でも自らの意思で行動・発言ができます。子供から老人まで誰もが対等の関係なので、活発な活動が可能です。
サードプレイスの効果
サードプレイスの効果は以下のとおりです。
- リラックスできる
- 新しい学びがある
- 出会いがある
- 孤独を解消できる
1つ目は「リラックスできる」ことです。サードプレイスは自分にとって、居心地が良い場所になります。緊張することがなく、自分らしくいられるでしょう。
さらに、全ての参加者が対等な立場で会話をします。ただ会話を楽しむことが可能です。普段の仕事のストレスを発散させるのに最適な空間でしょう。
2つ目は「新しい学びがある」ことです。サードプレイスでは誰でも参加できるので、普段の生活で関わらないような方と会話ができます。
家と職場の往復だけだと、関わる方が限定されるので、新たな学びや刺激はほとんどありません。サードプレイスで職業や年齢が違う方と会話すれば、自分が知らなかったことを知れるチャンスになります。
3つ目は「出会いがある」ことです。サードプレイスは誰でも参加できるので、新しい方と出会えるきっかけになります。恋人や友人など自分に必要な交友を深められます。
職場と違ってお互いの立場を気にしなくて良いので、深い交友関係を形成することも可能です。
4つ目は「孤独を解消できる」ことです。家と職場の往復では、新たな出会いがないので孤独を感じやすくなります。サードプレイスに行けば、誰かしらいます。自分と同じ目的を持っていることが多いので、仲間を作りやすいです。
サードプレイスに行くほど、多くの方と会えるので孤独を解消できるきっかけにできるでしょう。
具体事例
サードプレイスにはどのような事例があるのでしょうか。
こちらではサードプレイスの具体事例を解説していきます。
- ヨーロッパのカフェ・パブ
- アメリカ:スターバックス
- ヨーロッパと日本の違い
それぞれ参考にしてみてください。
ヨーロッパのカフェ・パブ
ヨーロッパではフランス・イタリアのカフェ、イギリスのパブがサードプレイスの代表事例です。ヨーロッパのカフェやパブには、ゆとりやコミュニティがあるため、参加者の憩いの場であり交流の場になります。
特にパリのカフェでは、テラス席と店の奥にカウンター席を用意しています。テラス席は観光客や時間を気にせずゆっくりしたい方向けです。カウンター席は常連向けで、テラス席や店内よりも安い価格が設定されています。
カウンターは立ち飲みなので、あまり長居はしないものの店主に挨拶したり、気軽に立ち寄れたりするので気分転換ができます。
アメリカ:スターバックス
スターバックスはコーヒーを飲むだけでなく、くつろげる環境も提供しているのです。
スターバックスではお客様の滞在時間の制限がありません。コーヒー1杯で何時間居ても問題ないです。さらにフリーWi-Fiも提供しており、お客様が長時間ゆっくりできる環境が整っています。店内でゲームをしたり、映画を観たりなど、人それぞれの過ごし方が可能です。
またスターバックスは人々がアクセスしやすい場所にあることが多いです。例えば高速道路のサービスエリアや駅、本屋、病院などが挙げられます。店舗は企業らしさを控えたデザインになっており、身近な存在と感じてもらいやすいです。
ヨーロッパと日本の違い
こちらではヨーロッパと日本のサードプレイスの違いを解説していきます。
開放的な都市空間VS閉鎖的なマイスペース
解放的な都市空間なのがヨーロッパで、閉鎖的なマイペースが日本です。
ヨーロッパは店の前に解放的な空間が広がっている傾向にあり、地元の人々が会話しやすいようになっています。カフェは1階に設置されているので、入店しやすいのが特徴です。
一方で日本では閉鎖的なのが好まれて、一人でカフェに訪れることが多く、コミュニケーションが生まれづらいです。場所は1階ではなく2階以上にあることも珍しくなく、店内が見えないようになっています。ヨーロッパと比較して、入店しづらいのが日本の特徴です。
西欧のカフェと日本の喫茶店
西欧のカフェと日本の喫茶店の違いは以下のとおりです。
西欧のカフェ | 日本の喫茶店 | |
カフェ単価 | 100円前後 | 500円 |
公共空間の利用 | 可能 | 不可 |
お客様の意識 | 内向と外向どちらも選択可能 | 内向的 |
西欧のカフェは日本の5分の1の値段で提供しています。頻繁に通ったとしても、それほど費用がかかりません。
また西欧は内向と外向のどちらでも選べるので、他のお客様と交流を取りやすいです。