自己効力感とは?自己肯定感との違いや高める方法を詳しく解説!

自己効力感とは?自己肯定感との違いや高める方法を詳しく解説!
目次

自己効力感の意味や高める方法を知りたい!

自己効力感とは、心理学において何らかの課題に遭遇したときに「自分は対処できる」と自分の可能性を認知していることを意味します。言い換えると、自分の能力を信じる気持ちです。

自己効力感を高めると、自分に自信を持つことができるので、様々なことに挑戦できたり、困難に立ち向かうことが可能になります。そのため、人材育成には自己効力感を高めることが大変重要です。

自己効力感の理論や意味、似た意味の自己肯定感との違いを認識し、自己効力感を高めていきましょう。

自己効力感とは?

自己効力感の言葉の意味

自己効力感という言葉は心理学の理論の一つです。英語ではセルフ・エフィカシーと呼ばれ、その意味は予測される状況において自分が必要な行動を上手く遂行できると、自分に対して自信や確信を持てることを指しています。

人間は「きっとできる」と考えることによって、物事に前向きに取り組むことができます。自分の可能性を信じる気持ちによって、おかれた状況下で適切な行動を選択し遂行することができるでしょう。

自己効力感と社会的認知理論の提唱者

自己効力感はカナダの認知心理学者でスタンフォード大学教授のアルバート・バンデューラが社会的認知理論の中で定義した心理学用語です。

アルバート・バンデューラは、恐怖症を克服した複数の人々を調査した際、彼らが自分を信じることができるようになることで極めて困難な恐怖症という病を克服したという共通点を見出しました。

自己効力感の重要性

自己効力感の高い人は失敗をしても立ち直ることができ、困難にぶつかっても立ち向かって現状を打破する能力や様々なことに挑戦する意欲を持ちます

自己効力感を高めると目標を達成するための行動ができ、周囲から「仕事ができる人」として高い評価を得ることができます。そこから、信頼関係を構築することができるでしょう。

また自分ができると思える目標を明確にし、行動変容にチャレンジする前向きな考え方を引き出すため、ビジネスはもちろんのこと、看護の分野でも重要視されています。

自己肯定感との違い

自己効力感と似た意味の言葉に自己肯定感があります。自己肯定感とは自身の存在や価値を肯定できる力を意味する言葉です。そのため、自分を信じて行動に移す力を意味する自己効力感とは少し違ってきます。

自己肯定感が高い人は、できなくてもありのままの自分を受け入れる人ですが、自己効力感が高い人は自分はできると信じることのできる人とです。

自己効力感は、理論的に自分に乗り越えられる力があるという「認識」を意味するのに対し、自己肯定感は自分の存在を肯定する「感情」を意味するので、ビジネスにおいては自己効力感の方が重要と言えるでしょう。

自己効力感が高い人の特徴

自己効力感が高い人は「自分にはできる」という自信に満ちたポジティブな感覚を持っているので、困難に立ち向かったり、様々なことにチャレンジができます

また、自己効力感が高い人は自分が周りから必要とされていると感じているので、周囲の人と上手くコミュニケーションを取る事ができます。そのため、自己肯定感が高い人は様々な場面で良い結果を生み出すことが多いでしょう。

自己効力感が低い人の特徴

自己効力感が低い人は「自分には上手くできないだろう」という失敗を恐れるネガティブな感覚を持っているので、なかなか行動を起こすことができず、やるべきことが後回しになってしまいます。

自己効力感が低い人は発言もネガティブなので、周りの人が敬遠してしまいます。また、自分に自信がないため、理論的な意見が多く、他人に対して攻撃的です。そのため、コミュニケーションが取りづらくなってしまうでしょう。

自己効力感のメリットとデメリット

自己効力感のメリット

自己効力感を高める一番のメリットは、自分への自信があるため目標達成に必要な行動に踏み出せすことができ、目標を達成できる可能性が高まることです。

一度目標達成ができるとさらなる自信につながり、また次の目標に挑戦できます。結果、ポジティブな行動サイクルができ、「失敗を乗り越えられる」という自分に対する信頼感も生まれます。

また、自己効力感を高めると少し失敗しても立ち直りのスピードが速くなります。そのため、失敗をひきずって無駄な時間を使うことがなく、次は成功しようと学び、活かそうとする行動変容へと繋がります。

また、自己効力感が高い人は様々な場面において意欲的な行動をとれるため、仕事のパフォーマンスが上がります。また、周囲から尊敬され、信頼されるのでコミュニケーションを上手く取ることができます。

自己効力感のデメリット

自己効力感の低い人の最大のデメリットは思考のネガティブ化です。ネガティブな感情で行動意欲が減退するため、行動が後回しになり、良い結果を生み出すことが困難になります。

良い結果が生まれないとさらにネガティブになり行動意欲が低下するという負のスパイラルに陥ってしまいます。

自己効力感が低く自信がない人は心が狭くなるので、他人に攻撃的になってしまいます。また、ネガティブな思考では周囲とのコミュニケーションが取りづらくなり、信頼関係も築きにくくなるでしょう。そのため、職場の雰囲気が悪くなり、生産性が下がってしまいます。

自己効力感の要素

自己効力感の高い行動に導くためには、自己効力感を決定づける意識的要因があります。主な要因である結果予期と効力予期について解説します。

結果予期

結果予期は、学んだ知識や過去の体験、人から見聞きした事項などにより、ある行動をとった時の結果を予測し、成功するための行動を推測して自己効力感を高める要素です。

ビジネスにおける具体例

ビジネスにおいて自己効力感を高めるには具体的にどのようにすればよいかを紹介します。

若手部下が新しいプロジェクトの提案を思いつかず悩んでいる時には、まず部下の抱えている問題を黙って聴き、共感します。そのうえで、部下自身に問題を整理させ、本人の経験を基に解決策を見つけるようにアドバイスをします。

また、採用活動に悩んでいる社員には、自分が利用しているSNSや知り合いなどを紹介して、勉強するきっかけを与え、自分の経験を踏まえた使用方法を押し付けないようにあくまで参考として説明し、それらを基に部下が自分なりに良い方法を取捨選択するように促します。

このように部下が自分の経験から成功体験に導くきっかけを与え自信を持たせることで、部下の自己効力感を高めます。

効力予期

効力予期とは、これまでの経験に基づいた予測ではなく、自分が良い結果を生み出すことができると確信することによって、自己効力感を高める要素を意味します

結果予期をした場合の効力予期の具体例

先ほどと同じく 新しいプロジェクトの提案を思いつかず悩んでいる若手社員の例で効力予期の具体例を紹介します。

上司は抱えている問題を整理させた後、整理した内容に合った自分の経験を話したり情報収集をさせたりし、抱えている問題の本質を引き出して、実行できると確信させます。

また、採用に悩んでいる社員には自分の就職活動の経験を思い出させて求職者の立場に立った採用方法を計画させることにより、上手く採用ができると確信をもたせることができるでしょう。

結果予期をしなかった場合の効力予期の具体例

結果予期をしない場合は、経験や学習には基づかないが部下を励ましたり一緒に解決策を見出すという共感により、部下が自分にはできると確信を持ち、自己効力感を高めるという例があります。

自己効力感のタイプ

自己肯定感と同様に自己の能力や価値を信じる自己効力感には、3つのタイプがあります。

タイプ① 自己統制的自己効力感

自己の行動を制御することにより自分に能力があると認識し、前向きに行動を起こす自己効力感を自己統制的自己効力感と言います。

ビジネスシーンで自分の気持ちをコントロールしなければならない場面に遭遇した時、自分の気持ちをポジティブな感情になるようにコントロールして仕事に取り組むことができると良い結果に繋がります。

自己統制的自己効力感を持っている人は、自分の行動を制御したり切り替えたりすることにより、成長していくことができるでしょう。

タイプ②社会的自己効力感

社会生活を行うには様々な人と関わりを持ちます。そのような対人関係において効力を発揮するのが社会的自己効力感です。

社会的自己効力感は社会性が発達する乳児期から児童期の経験において育まれます。この能力が高い人は共感力があり、思いやりの気持ちを持っているので、良好な人間関係を築くことができるでしょう。

タイプ③学業的自己効力感

学習を肯定的に捉えらることによって、社会生活に役立てることができる能力を学業的自己効力感といいます。

ビジネスにおいて学習に意欲的な人は自分をさらに向上させ、会社の業績や生産性に貢献することができます。

自己効力感が高い人は高い学力を保持している人が多い傾向にあります。また、学業的自己効力感が高い人は自分の学習に対する満足度が高く、さらに学習をしようとするため人間的に成長することができるでしょう。

自己効力感を高める方法

ビジネスシーンにおいて近年社員の能力を測る尺度の一つとして重要視されているのが自己効力感です。自己効力感を高めることは、自分の価値を高め、自己肯定感を得るためにも大切なので、高める方法を知りましょう。

達成経験を得る

自分自身の成功体験や目標を達成した達成経験は、自分に自信を与え、自己の持つ効力感に対して確信を持てます。そのため自己効力感を高めるためには、何かをやり遂げたという多くの達成経験を得ることが、不可欠と言えるでしょう。

また、何かに失敗した時にも自信の達成経験を思い返し、どのような行動によって成功に繋げることができたかを整理し、良い方法を模索することで失敗を挽回するするきっかけにもなります。

達成経験を積み重ねることで、自分の行動を思い起こして行動と結果を結び付けることが可能になり自己効力感を高めることができるので、ビジネスでも成功できるでしょう。

達成経験を得る時のポイント

目標を達成することで得られる達成経験ですが、簡単に達成できる目標ばかりだと目標達成を安易にとらえてしまい、自己効力感を高めるのではなく自信過剰になってしまいがちなので注意が必要です。

また逆に高すぎる目標設定をすると、失敗体験が増えてしまい、絶望感や劣等感に苛まれてしまいます。自分に適した目標を掲げ達成経験を得ることで、正しい自己効力感を高めることができるでしょう。

代理体験を積む

他人の達成経験や成功体験を見聞したり、他人の言動を観察することによって自分にもできるかもしれないと思い、自己効力感を高めることを代理体験と言います。

代理体験の被観察者は自分と同じくらいの能力と思っている類似性によって自己効力感を確立できる人と自分の方が優れていると思っている優位性によって自己効力感を確立できる人の2種類があります。

代理体験を積むときのポイント

代理体験の達成経験や成功体験はあくまでも他人の経験のため、その自信には根拠がありません。そのため、自分の成功体験と勘違いして自信を持って行動をした結果、失敗してしまい自己効力感が下がってしまうこともあります。

また、自分の実力ではないと気付いた時に高めてきた自己効力感を失ってしまうこともあります。他人の経験に頼るのではなく、できるだけ自分の達成経験を増やしていきましょう。

言語的説得を行う

言語的説得とは、周囲からの励ましの言葉や他人からの高い評価によって自己効力感を高める方法です。周りから認められているという認知は自己肯定感に繋がります。自分が信頼している相手からの励ましや高評価は特に自己肯定感を高めるでしょう。

また、自分が目標達成ができることを他人に言葉で説明することで自信を確立することも、自己効力感を高める言語的説得です。言葉の力は自己効力感を高めるために重要な要素と言えるでしょう。

言語的説得を行う時のポイント

意味のある言語的説得を行うには信頼関係の構築と相手の言語を素直に受け入れる考え方が必要です。そのためには成功体験などで自分の良さを模索し、土台を作ったうえで他人からの励ましや評価で確信を持つことが大切です。

またあまり他人の言葉に惑わされてしまうと、ネガティブな言葉によって自己効力感を下げてしまいがちなので注意しましょう。

生理的情緒的高揚を得る

目標に向かって行動を起こす時、いかにリラックスした状態で落ち着いて向き合えるかは目標達成を目指すうえで重要な課題です。

自分自身が落ち着いていると理論的に認識してメンタル面で安心感を覚えることを生理的情緒的高揚といい、自己効力感を高める方法の一つとされています。体調やメンタル面で自己効力感を高めることは、様々な行動に大きな影響を及ぼすでしょう。

生理的情緒的高揚を得るときのポイント

精神面、体調面での健康をコントロールすることは非常に難しい課題です。そのため、生理的情緒的高揚を得るためには、日常生活で「食生活」「運動」「休養」の習慣をバランスよく取り入れることが大切です。

また、物事には失敗もありえるのだと認識することで、成功しなければならないというプレッシャーから解き放ち、失敗から学ぶこともあるという考え方に変えていくとよいでしょう。

想像的体験をする

「自分にはできる」という自信は成功体験や達成経験、代理体験など、実際の体験によって得る以外に頭で想像して自信をもつという方法もあり、それを想像的体験と言います。

知識に乏しい場合も、想像力によりうまくいくと自分で信じることで自己効力感を高めることができます。

想像的体験をする時のポイント

創造的体験は場合によっては自己暗示や思い込みになってしまい、自己効力感のアップに繋がらないことがあります。

そのため、達成経験や代理体験を優先した上で言語的説得や生理的情緒的高揚の精神的なフォローとして創造的体験を活用すると、相乗効果としてさらに自己効力感を高めることができるでしょう。

自己効力感を測定する方法

自己効力感の程度は人それぞれですが、自己効力感を測る一般的な尺度があるので、自分の自己効力感の程度を知るために活用してください。

一般性セルフ・エフィカシー尺度を活用する

自己効力感を測る尺度として主に活用されるのが、心理学の行動療法分野で用いられている一般性セルフ・エフィカシー尺度、GSESです。

16の質問全てに対して「はい」か「いいえ」で回答することで、一般的な認知的傾向が図れる尺度になり、一つ一つの質問に対して得点範囲が設定されていて、総合得点が高いほど自己効力感が高いとされます。

セルフ・エフィカシー尺度は、個人のパーソナリティを測る尺度としてビジネスにおいて人事に活用されているほか、教育や看護の分野でも活用できるとして、注目されている心理学の尺度です。

測定する時の具体的な項目

一般性セルフ・エフィカシー尺度は、「行動の積極性」「失敗に対する不安」「能力の社会的位置づけ」の三種類のカテゴリーに分類される16項目の要素からなる尺度で、自己効力感の高さを測定します。

「行動の積極性」では、どんなことでも積極的にこなすなど行動に対する要素が自己効力感を測定する尺度です。「失敗に対する不安」は、何かをする時不安になるなど不安に対する要素が自己効力感を測定する尺度です。

「能力の社会的位置づけ」は、世の中に貢献できる力があると思うなど「自己肯定感」に対する要素が自己効力感を測る尺度です。

ビジネスにおいてはこれ以外に専門性のある独自の測定尺度を用意することもあります。これらの測定尺度の活用により、自己効力感が低下している部下を見つけ早めに対処することも、重要な活用方法と言えるでしょう。

自己効力感と看護の関係性

急激に高齢化が進んでいる現代、介護や看護の分野においても自己効力感の理論は非常に重要な考え方とされています。自己効力感と看護・介護との関係性を考えてみましょう。

セルフケア不足看護理論とは

セルフケア不足看護理論とは、医療の現場でセルフケアが可能な段階にありながらセルフケアに踏み出せない患者に自立生活運動を支援することを意味します。リハビリやプライマリケアなどの現場において、よく用いられる理論です。

セルフケア不足看護理論は、アメリカの看護師ドロセア・オレムによって20世紀開発された看護理論でオレム看護理論とも呼ばれます。

看護における自己効力感の具体的な事例

自分自身である動作が可能になっているにもかかわらず、精神的な不安でセルフケアに踏み出せない患者の事例です。

自分自身でその動作ができるかもしれないのでチャレンジしてみようと励まし、自己効力感を高めることにより、リハビリを進めていく勇気を持てるようになりました

看護師や看護学生に与える自己効力感の影響

病気によってネガティブな感情になっている患者さんと接することの多い看護師や看護学生にとって、自己効力感を高めることは非常に重要です。

看護師がポジティブな思考を持っていると、患者さんの気持ちもポジティブな方向に導くことができるので、患者さんとの信頼関係が構築しやすくなります。

また、自己効力感を高めると、困難な課題にもチャレンジしようとするので、看護師自身の能力も向上するでしょう。

自己効力感を高めよう!

自分で自分を信じることによって目標達成を可能にし、様々な困難に立ち向かっていく自己効力感は、ビジネス以外にも教育や看護・介護など社会のあらゆる分野で重要な役割を果たします。

自己肯定感や自己効力感を高めて、ポジティブ思考で自信を持って様々な事に挑戦し、社会に貢献して下さい。また、指導的立場の人は教える人達の自己効力感を高めることで目標達成を可能にできるでしょう。

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