モチベーション理論(動機づけ理論)とは?10種類の概要と活用例

モチベーション理論(動機づけ理論)とは?10種類の概要と活用例
目次

モチベーション理論(動機づけ理論)の種類や活用事例を解説!

モチベーションという言葉は「やる気を出す」という意味で使う人が多いでしょう。企業では従業員のモチベーションを向上させるために、モチベーション理論(動機づけ理論)を用いて、仕事上での従業員のやる気を引き出すために様々な手法を活用しています。

そこで、モチベーション理論の意味や、効果はもちろん、実際に利用されているモチベーション理論の紹介、活用例などを紹介していきます。モチベーション理論は、仕事だけでなく、勉強や自己啓発を行う際にも効果を得られる有効な手法です。

モチベーション理論を理解して、自分が何か向上させたいと思う動機づけを見つけてみましょう。動機づけけを見つけることが出来れば、自分自身が目指す目標達成のために、努力を重ねていくことができますのでおすすめです。

モチベーション理論の意味と効果

モチベーション理論の言葉の意味

モチベーションは、「やる気」や「意欲」などという、「何かをやろうとする気持ち」を指すときに用いられる言葉です。 人が何かを欲求するものや目標に対して獲得・実現に向けての方向づけや行動することを指します。

モチベーション理論は、そういった欲求に対して、人が何に動機づけられることによってやる気や行動力が高まるのかを研究した理論をモチベーション理論(動機づけ理論)と呼んでいます。

「動機づけ」における2つの方向

モチベーションには、自分自身の感情などによる心の動きが行動へと繋げる「動因(ドライブ)」から動機づけされる「内発的動機づけ」と、報酬など外から向けられた「誘因(インセンティブ)」によって行動づけされる「外発動機づけ」の二つの動機づけがあります。

この二つは、動機づけのためのアプローチ方法は異なります。しかし、モチベーションをアップさせるという目的については同じです。

モチベーション理論の効果

各企業の人材部門・人事部門において、職場環境における従業員のモチベーションをいかに向上させるかは、常に重要な課題です。そういったやる気を引き出すために活用するのがモチベーション理論といえるでしょう。

モチベーション理論は、人の心理的傾向に基づいた理論であるため、職場や職種に関係なく効果が得やすいこと、本人の満足度を積み重ねていくことで高いレベルが求めやすいこと、一過性の効果ではなく、積み上げ式で継続的な効果が得やすいとされています。

このように、モチベーション理論は、多少の差があるものの、万人に共通するものと言えます。付け加えれば、基本的に人の欲求には際限がありません。人の成長に合わせて継続的に実践することで更なる効果が期待できる手法といえます。

モチベーション理論の種類①マズローの5段階欲求説

マズローの5段階欲求説とは?

モチベーション理論研究に多大な影響をもたらしたのが、エルトン・メイヨ―のホーソン実験と呼ばれる実験結果が導きだした人間関係論といわれています。メイヨーの人間関係論は、多くの研究者に引き継がれていきました。

その研究者の一人がアブラハム・マズローで、人間性心理学の生みの親ともいわれています。1970年に亡くなるまでに100編以上の研究論文を発表するなど精力的に研究を行っていました。

マズローが提唱したモチベーション理論は「5段階欲求説」と呼ばれ、ピラミッド状に構成された5つの欲求を下から段階的に満たしていくことで最高位の自己実現に近づいていくといく理論です。

この5段階欲求説は、モチベーション理論だけでなく、マーケティングなど多くの分野で用いられている理論で、5つの段階に分けられた欲求を段階的に満たしていくことでモチベーションをアップすると述べています。

マズローの5段階欲求説の概要

マズローが提唱する理論の根底には、「人は自己実現のために絶えず成長する生き物である。」という考えがあります。この考えを軸に、目標達成のためには、人の欲求を実現させるまで段階的に満たしていくという流れを踏んでいます。

ピラミッド状に構成された欲求は、下から順に、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求という、5つの欲求で構成されると考えられました。

この最下位の段にある生理的の欲求を満たされると次の段である安全欲求を満たしていくという手順を踏んでいくことで、最高位にある自己実現欲求を満たす効果があるというのがマズローの5段階欲求説の考え方です。

マズローの5段階欲求説の活用例

マズローの欲求5段階説は、非常にシンプルな理論で、人の欲求は全員同じものではなく、置かれた環境によって様々に変化するフレームワークであるということにあります。

例えば、入社したばかりの新入社員と、数年間の実績を積んだ中堅社員、管理職として業務に携わる人材では、モチベーションを向上させる動因と誘因は、それぞれのキャリアで異なります。更に、それぞれが目指すライフスタイルによっても求める内容が変化するでしょう。

そこで、社員の仕事に対してのやる気を引き出すため、モチベーションを向上させる環境づくりを一律で行ってはいけません。社員それぞれの環境や経歴、立場などを考慮し、満たすべき欲求を見極めて動因と誘因を構築していくことでモチベーションアップの効果が狙えます。

モチベーション理論の種類②ハーズバーグの二要因理論

ハーズバーグの二要因理論とは?

仮説をベースに考えられたモチベーション理論が多いなかで、 アメリカ、ピッツバーグで200人の技術者と経理担当者を対象にして行われた実証実験から生まれたのが、フレデリック・ハーズバーグの「二要因理論」です。

実験の内容は、被験者に対して「仕事上、どんなことに対して幸福または満足を得たか」「仕事上、どんなことに対して不幸や不満を得たか」という2点について質問を行うという極めてシンプルな実験でした。

この実験結果から、「仕事の内容からもたらされる満足感」と「仕事の環境からもたらされる不満の二つの要因」がモチベーションを決定付けると主張しています。

ハーズバーグの二要因理論の概要

ハーズバーグの二要因精理論では、2つの要因が仕事のモチベーションへと繋がっていくと考えられています。一つ目は、仕事の内容に関する「動機づけ要因」と呼ばれるもの、もう一つは、不満をもたらす要因とされる「衛生要因」です。

この動機づけ要因は、仕事においての達成感や承認される仕事そのものなど、仕事において満足感を覚えることを指します。また、仮にこれらの満足感が欠けていたとしても、それは職務上の不満足に繋がらないという結論も導いています。

二要因理論において、モチベーションに対し不満に繋がる要因は、会社の政策と管理方式、管理方法、給与、対人関係などの衛生要因とされている職務環境における低次の基本的な欲求が満たないことが、仕事上の不満に繋がると述べています。

ハーズバーグの二要因理論の活用例

実際の人事戦略で二要因理論活用を活用させる場合、報酬などによるインセンティブなどの動機づけで刺激を行っても、従業員の満足度を高める効果がないと仮定します。そこで、従業員の満足度を上げるために、衛生要因とされる、企業内の制度面・環境面を重視し、整備を行います。

例えば、プロジェクトチーム内の仕事に関する目標・情報などを積極的に共有したり、仕事での達成感を味わえるような目標設定、仕事上で目指したい自己実現を発表する場を設けるなど、内発的動機を刺激するような戦略を考えることで効果を得られるでしょう。

モチベーション理論の種類③マクレガーのX理論・Y理論

マクレガーのX理論・Y理論とは?

最初に紹介したマズローの「要求5段階説」は、モチベーション理論を研究する多くの研究者に多大な影響を与えました。このマズローの思想を経営組織の観点から進化させたといわれているのが、アメリカの心理学・経営学者のダグラス・マクレガーです。

マクレガー自身の著書である「企業の人間的側面」(1960年)で、仕事嫌いで怠け者な部分をX・自己実現をしたいという部分をY、というように分けて捉え、それぞれに対する管理者の行動様式を「X理論・Y理論」として提唱しました。

マクレガーのX理論・Y理論の概要

「X理論・Y理論」でマクレガーは、もずろーの要求5段階説を基本として、経営組織の観点から、人のネガティブな部分を「X」、ポジティブな部分「Y」と名付け、管理者は、XとYそれぞれに該当する人材へ適した対応を行うことを提唱しています。

マクレガーのX理論・Y理論の活用例

X要素が強い人材であれば、アメとムチのように、懲罰や賃金アップなどを活用してモチベーションをコントロールすることを勧めています。

Y要素強い人材であれば、自己実現を目指そうという気質があるため、どこまで自分でコントロールできるかが仕事へのモチベーションを左右させるポイントとなります。

そこで、企業は管理者として従業員との協力関係を構築すること、各従業員が望む目標と企業の目標が一致するように焦点を合わせて行くと更に効果が得られるでしょう。

モチベーション理論の種類④期待理論

期待理論とは?

現代のモチベーション理論は、学術的な研究だけでなく、ビジネスへの転用としても重要視されています。そして、更に具体性を増していることが、近年のモチベーション理論における傾向です。

現代のモチベーション研究の代表的な理論の一つとしてあげられる「期待理論」は、基礎をビクター・H・ブルーム、精緻化をレイマン・ポーターとエドワード・ローラー三世、広めたのがステファン・ロビンスであると考えられている理論です。

モチベーションの向上を図る側とモチベーションの向上を求められる側の関係が重要視されていることから、モチベーションそのものにおける理論としてだけでなく、リーダーシップ理論や組織マネジメント理論としても活用することができます。

期待理論の概要

ロビンスが広めた期待理論の考え方では、「人の行動は、その行動が定められた報酬に繋がるという期待と、達成させる成果が本人にとってどれだけ魅力的であるかによって決定される」というものがあります。

これは、「努力」×「成果」×「魅力」の3つの変数の掛け算で左右するとさており、この3つの変数が単独に左右するのではなく、3つが掛け合わさることで高いモチベーション効果を可能にすると述べています。

期待理論の活用例

企業が期待理論を、従業員に対して活用させていくには、各自の担当範囲を明確にすることで、何のための仕事なのか、何に結びつく仕事であるか、担当者としてどのようなメリット・報酬が得られるかを伝えるなど、動機づけを明確に伝えていきます。

そうすることで、仕事にはどういった魅力があるのか、そのために上げていく成果や努力する目的が明確になることで、従業員のモチベーションを上げる効果に繋げる手法です。

モチベーション理論の種類⑤目標設定理論

目標設定理論とは?

モチベーション理論に関する研究は、人の欲求・行動の動機など、人材の心の分析に着目したものが殆どです。そのため、人のやる気を引き出すメカニズムについて主力を注ぐ傾向にありました。

そのような中、エドウィン・ロックとゲイリー・レイサムは、1984年に「目標設定理論」というモチベーション理論を発表しています。この理論は、定めた目標の内容によって従業員のモチベーションが左右されることを論じており、現在の職場では当たり前のように活用されています。

目標設定理論の概要

目標設定理論では、単純に目標を設定するだけではモチベーションの向上効果はなく、自己効力感をいかに高めるかに対して目標設定する内容になっています。この目標設定には、目標の困難度・目標の具体性・目標の需要・フィードバックの4つ要件が定義されています。

この4つの要件は、目標を達成することができるか、どれくらいの期間で達成できるか、目標に対して積極的に関われるか、モチベーションを持続することができるかなどが明確です。

これらの要件に関する内容や数字を明確にすることで、困難であるものの達成可能な目標を立てることが動機づけになり、より自己達成感を発揮させる効果があると説明しています。

目標設定理論の活用例

目標設定をすることで、従業員を管理していく手法は、多くの企業が導入しているモチベーション向上施策として浸透している手法の一つといっても過言ではありません。この目標設定をモチベーション施策として効果的に遂行するためには、先ほど紹介した4つの要件が必須になります。

要件である、目標の困難度・目標の具体性・目標の需要・フィードバックの4つをしっかりと設定することで、従業員は目標に向かって仕事を行うことができるため、業績を上げるために大きな効果が得られる可能性が高くなります。

しかし、このモチベーション理論を活用するに当たり、注意が必要な点があります。それは、企業が毎期ごとに目標設定を行っているため、目標設定が形骸化してしまうことです。目標設定が形骸化すると、動機づけの根拠も弱くなり、モチベーションの低下に繋がりかねません。

そこで、人事部門としては、定期的に各部門で設定されている目標設定をチェックすることで、従業員のモチベーションを下げないように配慮する必要していきましょう。

モチベーション理論の種類⑥マクレランドの欲求理論

マクレランドの欲求理論とは?

アメリカの心理学者マクレランドは、ハーズバーグの二因性理論を基に、人が行動を起こすに当たり、見られる動機を4種類に分類することで、個人差があってもこの4種類の動機によって人が動かされているというモチベーション理論を「欲求理論」として発表しました。

欲求理論では、4種類の動機タイプ分類し、それに応じたリーダーシップ対応の仕方についても併せて述べています。極めて実践的な理論を提唱したとされるモチベーション理論です。

マクレランドの欲求理論の概要

マクレランドの欲求理論は、「達成欲求」「権力欲求」「親和欲求」「回避欲求」の4種類の欲求が動機づけとなり、行動の原動力になるというモチベーション理論です。

達成欲求は、より成果を残したいという向上心を求める欲求です。権力欲求は、他者に影響・コントロールをしたいという欲求を、親和欲求は、周囲の人材と友好的な関係を築きたいという欲求を指します。回避欲求は、仕事上での失敗や困難から逃げようとする欲求をです。

欲求理論は、組織経営や実業という面ではなく、人の心理によって種類分けを行っています。更に実践的な研究を重ねたことで、企業内で実践的に導入しやすい理論として知られています。

マクレランドの欲求理論の活用例

人の行動を4種類の欲求から分類する欲求理論は、フレームワークとしてもシンプルで理解しやすいものです。この実際の企業の職場環境にこの4種類の欲求行動を落とし込むという点では、必ずしもこの4種類のパターンに落とし込めるものではありません。

立場や状況に応じて、主にこの4種類の欲求を中心とした様々な欲求が重なりあうことで、人の行動の原動力決定されていきます。また、欲求のレベルも同様に立場や状況によって変わっていきます。

そこで、欲求理論を動機づけとして有効な効果を得るためには、人の内面にある内発的動機を刺激することです。内発的動機づけにより意欲を引き立てるために、管理者は人の行動を4種類のタイプに分類し、モチベーションを向上させるための明確な行動指針を提示するといいでしょう。

モチベーション理論の種類⑦テイラーの科学的管理法

テイラーの科学的管理法とは?

職場環境におけるモチベーション理論の始まりとされているのが、アメリカのフレデリック・テイラーが1911年に発表した「科学的管理法」からといわれています。テイラーは、この科学的管理法をきっかけに自身が勤めていた工場の職場改善を行いました。

この科学的管理法による職場改善は、仕事の見えるかを図ることで業務効率化を行うという業務管理の基礎を築きました。また、その後テイラーが専門職として歩んでいったコンサルタントという職業を生み出すきっかけにもなっています。

更に、現在ではよく耳にする「見える化」「標準化」「マニュアル化」などの用語はこのテイラーが提唱した科学的管理法から由来しています。現在の業務において、なくてはならないモチベーション理論の一つといえるでしょう。

テイラーの科学的管理法の概要

科学的管理法では、タスクやノルマを指す課業を管理することから始まります。課業管理は、従業員一人一人が行う業務内容を明確に定める基本です。課業管理を行うことで、タスクが明確し、従業員の各業務に要する時間研究や効率的な動きを調べる動作研究を行います。

これらの研究を基に、各業務における作業内容や手順をマニュアル・標準化することで業務の「見える化」を行います。他にも、出来高によって報酬を決定する差別出来高報酬や、職種ごとに専門職を設け責任者とする職能別組織もこの科学的管理法が由来しています。

テイラーの科学的管理法の活用例

科学的管理法は、多くの企業で導入されているモチベーション理論です。社内における業務の細分化することで内容を把握し、標準化・マニュアル化することが可能になります。その結果、人事評価も公平性が保たれるという効果があります。

近年の人事評価では、動機づけのために自身で自己目標設定を設定し、目標管理型の人事評価システムが主流になりつつあります。しかし、この手法は目標を設定する側・評価する側とも明確に人事規定を把握しているわけではないので、個人の印象で判断・評価が分かれるリスクを持っています。

その反面、科学的管理法では、数値によって人材を管理していくため、より公平・公正な人事評価が行えるというメリットがあります。他のモチベーション理論と一緒に併用して活用していくことで、より良い人事評価へと繋がっていくでしょう。

モチベーション理論の種類⑧メイヨーのホーソン実験

メイヨーのホーソン実験とは?

マズローのモチベーション理論など、数あるモチベーション理論のなかで、人の内面的な欲求から動機づけをおこなうことで、やる気を引き出すモチベーション理論が登場したきっかけになったのが、メイヨーのホーソン実験です。

メイヨーのホーソン実験は、テイラーが提唱した科学的管理法を軸とした仕事における業務効率化による人材管理が主流になっていたものの、製造部門における離職率が高いことが問題化していました。そのような最中、メイヨーは「人間はロボットではなく、感情的な生き物だ」と訴えます。

しかし、科学的管理法で人材管理をせずに、人間関係をもってモチベーションをアップを図るという抽象的な理論をそのまま受け入れる企業はいませんでした。そこで、自身の理論が正しいと証明するために、実際に稼働していた工場で1924年から1932年まで行った実験が、メイヨーのホーソン実験です。

メイヨーのホーソン実験の概要

ホーソン実験は、アメリカ・シカゴにあるウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で行われました。メイヨーは、企業の協力を得たことで、2組のチームに分けて従業員の賃金・休憩時間・室内温度など、細かく条件を分けながら現場での実験・分析を行います。

その結果、作業効率の向上は、環境要因の変動ではなく、実験に参加した従業員たちの連帯感などが変化をもたらしているということでした。

その後、面接実験を行うことで従業員一人一人の不満や根拠のない勘違いが抽出されます。そこで、これらの意見交換会の場を設けることで、従業員たちの満足度を高めることに成功しました。

この結果、メイヨーは生産性を高めるには、数値管理や厳格な管理体制ではなく、職場にいる従業員同士の仲間意識である。という結論を導きだしました。

メイヨーのホーソン実験の活用例

ホーソン実験を、実際の企業における人事戦略でも大きな効果が期待できます。例えば、賃金や賞与などの制度的な面を充実させるのではなく、社内サークルや勉強会を実施など人間関係を構築させるような企画を行うことでモチベーション向上を図ることができます。

他にも、社員同士がモチベーションを高め合うような企業の職場環境づくりを心ががけることで、人事的な施策や報酬制度の変更などを行わずに、モチベーションアップ効果を図ることができるでしょう。

モチベーション理論の種類⑨アージリスの未成熟・成熟理論

アージリスの未成熟・成熟理論とは?

マズローの欲求5段階説には、人間が自己実現のために成長・発展を目指す生き物という考えが根底にあるため、「自己実現論」とも呼ばれています。この自己実現理論を、職場環境に当てはめて研究を進めたのが、アメリカのアージリスです。

アージリスは、未成熟な人材が成長することで次第に成熟していく過程で起こる人間的な変化を、「未成熟・成熟理論」を1970年に発表しました。このモチベーション理論は、企業組織における人材管理に大きな影響を及ぼしています。

アージリスの未成熟・成熟理論の概要

未成熟・成熟理論は、組織内で人が未成熟から成熟の状態へ成長する過程が、人格にどのように影響を及ぼすかについてパーソナリティ分析を行っています。未成熟・成熟理論では、組織内において人の心には7つの次元で変化が起きると述べています。

7つの次元は、受動的人格から能動的人格、依存的人格から独立的人格、単純行動から多様行動、浅い興味から深い興味、短期的展望から長期的展望、従属的立場から対等・優越的な立場へ、自己認識の欠如状態から自覚・自己統制する状態へ、それぞれ変化する述べています。

企業の管理者に対しは、人材のパーソナリティの変化が起こることを想定してのマネジメントについての提案をしています。更に、従業員がモチベーションを上げるために、従業員の職務や責任などの権限を拡大させ、より心理的に成功体験をしやすい環境マネジメントを行う必要性を訴えています。

アージリスの未成熟・成熟理論の活用例

未成熟・成熟理論では、人材は作業ロボットではなく、自己実現を目指して成長していく心のエネルギーがあるとしています。そのため、この理論を活用させるためには、組織内における人材モチベーションを高めるためには、従業員の成長に伴うパーソナリティの変化を見定めるといいでしょう。

例えば、新入社員に対しては、ボーナス・賞与などでモチベーションを高める効果がありますが、経営層など上位の立場にある人材は、既に十分な給与を得ているためモチベーションアップの効果は低い可能性があるため、別の手法が必要になってきます。

このように、安易な手法でモチベーションアップを狙うのではなく、各人材の立場や成長過程を見定めることで、従業員一人一人に適した、モチベーションアップの手法を具体的に提案・実行することを重要視することで、企業全体のモチベーションアップを図っていきましょう。

モチベーション理論の種類⑩コンピテンシー理論

コンピテンシー理論とは?

欲求理論を提唱したマクレランドは、もう一つのモチベーション理論を提案しています。それが、コンピテンシー理論です。コンピテンシーとは、コンスタントに高い業績を示している人の行動特性を指します。この行動特性について理論化させたものが、コンピテンシー理論です。

マクレランドは、コンピテンシー理論内でIQ・学歴が高い業績やパフォーマンスと大きく関係しないこと、高い業績・パフォーマンスを発揮している人材は、特有の行動と思考を持っている。という二点を中心に体系化・理論化させました。

コンピテンシー理論の概要

コンピテンシー理論は、内面的な部分からのモチベーションアップを図るのではなく、ハイパフォーマンスを上げるための行動特性がポイントであると述べているモチベーション理論です。他のモチベーション理論と異なり、決まった特性がないということも大きな特徴といえます。

これは、時代や環境の変化、企業の方向性の転換など様々な条件で変化するからです。そこで、コンピテンシー理論を活用させるために、企業にとって、ハイパフォーマンスとなる行動特性を分析し、モデル化させたものを、重合インに周知していくことを推奨しています。

コンピテンシー理論の活用例

コンピテンシー理論を活用させるポイントは大きく2つあります。一点目は、コンピテンシーモデルを従業員に周知させることです。この理論は、現場にいる従業員が理解していないと大きな効果を得るのは難しくなります。ですので、企業にとって好ましい行動特性を周知する必要があります。

2点目は、時代の変化に応じてコンピテンシーモデルを変更させることです。従来ハイパフォーマンスを叩き出していた行動特性も時代の変化によっては非効率になる場合があります。そうすると、せっかく組み立てたコンピテンシーモデルが無意味になるので見直しも必要です。

モチベーション理論(動機づけ理論)を企業の成長に活かそう!

モチベーション理論を活用することは、従業員に仕事の意味を解りやすく伝えることでやる気を起こす原動力となります。そのため、企業を成長させていく人材育成にとって欠かせない重要なものです。

モチベーションを上げるためのアプローチ方法は、モチベーション理論によって少しづつ異なりますが、従業員の仕事に対する動機づけの効果を得るという点ではどの理論も可能といえるでしょう。また、時代の流れに応じてモチベーション理論を変えていくことも一つの手段といえます。

また、自己啓発としても活用することが出来ますので、企業の成長だけでなく、自己啓発として自分に合ったモチベーション理論を模索して活用していきましょう。

ビジネスカテゴリの最新記事