試用期間とは?解雇や退職などのトラブルについても詳しく解説!

試用期間とは?解雇や退職などのトラブルについても詳しく解説!
目次

試用期間の仕組みを理解してミスマッチを回避したい!

企業では、労働者を雇用形態に関係なく新規採用する際、試用期間を呼ばれる一定期間が設けられています。これは、企業側が労働者に実際に実務を行ってもらうことで、本採用するか判断するための期間であり、労働者の実務に対するミスマッチがないか検討する期間でもあります。

試用期間における仕組みを理解し、試用期間中の給与、各種社会保険などを確認していきながら、試用期間の大切さを紹介していきます。企業と労働者双方のミスマッチがないような働き方を目指していきましょう。

試用期間とは?

試用期間の言葉の意味

試用期間とは、企業が新規採用した労働者の勤務態度や適性などを、実際に実務を行ってもらうことで評価し、本採用するか判断するための期間のことです。正社員・パート・アルバイトなど雇用形態に関係なく、人材を新規で雇い入れる場合に用いられます。

試用期間中の労働契約

試用期間中の労働契約は、解約権保留付労働契約に該当します。この労働契約の特徴は、労働契約締結と同時に雇用効力が確定、企業側は労働契約解除権を保留している状態、という2点にあります。

企業側は、試用期間中に該当する労働者が企業の基準に対して不適合と認定された場合、保留されていた解約権を行使することができます。

正社員以外の試用期間の扱い

試用期間は正社員のみが対象となるわけではありません。アルバイト、パート、契約社員など雇用形態に関係なく試用期間を設定することが可能です。

企業は、雇用形態に関係なく試用期間を設ける場合、就業規則などに制度内容を盛り込み、新規採用者に向けて、試用期間があることを事前に伝えておきましょう。

研修期間との違い

試用期間と混同されやすい言葉に、研修期間があります。違いとしては、試用期間は採用に関わるお試し期間、研修期間は、業務遂行のための勉強期間と、内容が異なりますので注意しましょう。

試用期間の目的と日数

企業が試用期間を設ける目的

企業側は、採用活動のなかで面接や適性検査を行いながら労働者を確保していきます。しかし、短期間の採用活動のなかで採用した労働者の適性を正確に見極めることは簡単ではありません。そうした労働者の適性を見極めるために、採用後に一定期間を試用期間として設定されています。

試用期間の日数に制限はない

試用期間については、法律など基準となる明確な長さは定められていません。そのため、各企業側の裁量に任せる部分が大きく、企業独自で設定しています。

ただし、労働者の適性を判断するために必要な合理的時間を超えると判断されるような長期間の設定は問題となります。そのように長期間にわたる試用期間を企業が設定した場合、民法の公序良俗違反に該当されるとみなされ、試用期間が認められない可能性がありますので覚えておきましょう。

一般的な試用期間の長さ

試用期間の長さは、1ケ月~6ケ月程度を設定している企業が多いです。長くても1年が限度とされています。仮に、試用期間が1年を超えた場合、民法の公序良俗違反に該当する可能性がありますので確認が必要です。

一方的な試用期間の延長は認められない

試用期間の延長については、延長に関する客観的な合理性や当該労働者の同意を得るなど条件が必要になるなど一方的に延長することは認められていません。

また、試用期間を繰り返し延長することも認められていませんので、就業規則にや労働契約書には試用期間延長に関する文言を加えるなど配慮が求められています。

就業規則や労働契約書への書き方は?

試用期間を設定する場合、自社の就業規則や労働契約書に試用期間に関する内容をを明記する必要があります。記載する内容としては、試用期間を明記し、延長する場合は「当該労働者の同意を得る」という文言を加えて最大延長期間を記載しましょう。

他にも、試用期間の開始日、試用期間中に一定の条件に該当した労働者に対して、「試用期間中もしくは試用期間終了後に解雇する」などの文言も記載しましょう。

試用期間中の給与の設定方法

平均賃金と最低賃金の比較を行うようにする

企業側は、試用期間中であっても労働者への給与支払い義務は発生します。企業によっては支払う給与を本採用後より低く提示しているケースもありますが、各都道府県労働局が定めた最低賃金を下回ってはいけません。

本採用よりも低い給与を提示する場合は、給与額や試用期間日数を用いて平均賃金を算出します。算出された金額と最低賃金を比較し、算出した金額が最低賃金を下回らなければ、その給与額は法令違反ではありません。このように、試用期間中の賃金と最低賃金は必ず比較を行いましょう。

最低賃金の減額の特例

試用期間中の賃金に関しては、最低賃金を下回らない額を労働者に支払わなくてはなりません。しかし、条件付きで最低賃金減額の特例が、最低賃金法第7条で特例が設けられています。

最低賃金減額の特例を受ける場合は、「減額の特例許可申請書」を労働基準監督署に提出し、許可を得る必要があります。企業は、許可が下りた場合、一定の条件を満たした上で最低賃金より最大20%まで減額が可能となります。

試用期間中に解雇するための条件

解雇するには適切な取り扱いが必要となる

試用期間中であっても、企業と労働者との労働契約は存在しています。試用期間は、一定期間のみの契約解除権が保留されている状態であり、解約権保留付労働契約に該当するため解雇が可能です。

しかし、会社都合による一方的な解雇や本採用拒否は、労使間のトラブルを引き起こす原因になりかねません。解雇するには解雇に至る相応の理由が要求され、内容次第では行政機関からの指導対象になります。そのため、試用期間中の解雇や本採用拒否には、慎重な取り扱いが必要です。

試用期間中の解雇が認められる条件

試用期間中の解雇が認められるには、解雇に至る相応の理由が要求されることを説明しました。試用期間中における解雇が認めらる条件には以下のような事項が挙げられます。

具体例として、勤務態度に大きな問題があった場合、正当な理由なしに遅刻・欠勤を繰り返す、本人が申告した履歴に重大な虚偽が発覚した場合、などが挙げられます。解雇が正当なものであると実証するには、その理由や事実が必要という点を頭にいれておきましょう。

試用期間中の解雇に必要な手続きは?

試用期間中の解雇においても、解雇手続きが必要になります。解雇手続きには、試用期間開始日から14日以内と14日を超えて解雇する手続きが異なります。

試用期間開始日から14日以内の場合、解雇予告なしに該当する労働者を解雇することが可能です。ただし、客観的に合理的な理由が存在する、社会通念上相当と認められる、などの要件が揃っていることが条件になります。

試用期間開始日から14日を超えて企業解雇する場合は、少なくとも30日前に解雇予告をしなくてはいけません。解雇予告をする際は、「何年何月何日」と特定して予告を行います。

30日をカウントする際、会社の休業日、休日・祝日がある場合でも30日間以上延長する必要はりません。解雇予告の日数は1ヶ月前ではなく、30日前と正しく理解しておきましょう。

また、解雇する場合でも企業側は労働者に対して給与を支払わなくてはなりません。解雇予告なしに解雇する場合は、30日分の平均賃金を解雇予告手当として、30日前に解雇予告を行う場合は、解雇までの日数に応じた平均賃金を解雇予告として支払います。

試用期間中に退職する方法と具体例

原則として申し出から2週間後に退職することができる

試用期間中に、労働者側から退職を申し出ることは可能です。ただし、退職を申し出るのは、労働基準法で原則2週間前から、企業によっては希望退職日より1ケ月前までという規定を設けています。辞めたいその日に退職を申し出るなり、即日退職するようなことは避けましょう。

試用期間中でも、企業との労働契約は成立しています。会社で規定されたルールを守った上で、退職の申出をおこないましょう。

賃金は全額支払いとなる

試用期間中に退職したとしても、企業側は労働者へ給与・残業代を全額支払いや各種社会保険への手続きする義務があります。

例えば、社会保険が未加入だったために、被保険者期間が足りずに失業手当が受けられない、将来もらえる厚生年金額が少なくなってしまうなど、労働者側に不利益が生じます。この点については企業側にしっかりと確認をおこないましょう。

退職理由の具体例①入社前のイメージと違う

労働者が、社風や社内の雰囲気を入社前に把握するは難しく、実際に職場で勤めてみなければわからない面も多数あります。時間を費やせば、環境に馴染んでいけるかもしれませんが、入社前とのイメージが大きくかけ離れていた場合には、退職の意志を伝えてもいいでしょう。

退職理由の具体例②業務との不一致

仕事内容については、入社前に採用担当者から説明があることが殆どですが、実際に入社して業務を開始してみないと、わからない点もあります。想像していたものと、実際の業務内容が大きく乖離していた場合、そのギャップを埋めることが難しい場合もあります。

そんな仕事に対するギャップを埋めるのが困難と感じた場合は、ストレートすぎる表現を避け、実際にその仕事をしている人に配慮しながら退職の意志を伝えてみましょう。

試用期間に関するトラブル事例

トラブル事例①突然の解雇通告

企業側は、試用期間中に正当な理由がない限り解雇は出来ません。仮に、採用者が想像していたより業務処理能力が低かったという理由では解雇ができません。解雇するには、解雇に値する相応の理由が必要になります。

更に、突然の解雇通知は原則認められていませんので、不当な扱いを受けたとして労働者側は行政機関へ相談しにいきましょう。ただし、これは試用期間が始まってから14日を超えてからの労働者に該当します。14日以内の解雇であれば、予告なしに解雇できますので注意が必要です。

トラブル事例②社会保険に加入させてもらえない

試用期間中でも、長期雇用を前提としての採用されています。そのため、企業は採用した労働者一人一人に雇用・健康・労災・厚生年金など各種社会保険の加入手続きを行う必要があります。

しかし、2ケ月以内の臨時雇用者や季節労働者、船員保険の被保険者など、社会保険加入が適用除外になる場合があります。労働者側は、採用の際に社会保険の加入について確認しておきましょう。

また、労災保険に関しては雇用の期間や雇用形態に関係なく加入が義務付けられています。こちらも併せて確認が必要です。

他にも、企業は6ケ月間の継続勤務、全労働日の8割以上の出勤、という要件を満たした労働者には休暇を付与しなくてはなりません。この 6ケ月間の継続勤務には、試用期間も含まれます。実際に有給休暇が付与される場合に、試用期間も含まれて算出されているかを確認してください。

トラブル事例③企業側の都合で試用期間を延長された

試用期間延長については、延長する場合があるという就業規則や雇用契約書に定められていること、延長理由に合理性があること、延長期間は当初の期間を含めて概ね1年以内であること、などの条件が必要になります。

更に、企業側の都合や曖昧な理由で延長試用期間の延長を行うことはみとめられません。試用期間延長には、企業と労働者の双方が同意しなければ延長は認められませんので、覚えておきましょう。

トラブル事例④試用期間終了後に本採用を拒否された

試用期間終了後に本採用を拒否されることは、解雇に該当します。解雇の場合、企業側は正当な理由が必要となる上、解雇予告を行わなくてはいけません。「本採用は見送ります」というような、会社側に選択権があるような表現をしても法的には認められないというをこと理解しておきましょう。

試用期間を運用するには適切な対応が必須!

試用期間は、企業と労働者のミスマッチを避けるために設けられた期間です。しかし、双方での労働契約が成立しているため、企業側は給与・残業代の支払いや各種社会保険の加入手続きを行う必要があります。

また、労働者側も、試用期間を活用して職場環境が自分に合うか確認しながら、給与の支払いや各種社会保険の手続きが適切に行われているのかしっかり確認を行わなくてはいけません。双方が試用期間の意味をしっかりと理解し、適切な対応を行うことで良好な関係を築いていきましょう。

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