従業員満足度(ES)とは?向上させるためのポイントと企業の成功事例

従業員満足度(ES)とは?向上させるためのポイントと企業の成功事例
目次

従業員満足度(ES)を向上させて仕事の生産性を高めたい!

労働人口の減少による人手不足と市場のニーズの変化によって競争が激化している現代社会において、離職率を下げ優秀な人材を確保することが重要な課題となっています。そこで関心が集められているのが従業員満足度であるESの向上です。

従業員満足度を向上させるためのポイントや成功事例を知って従業員の不満を解消してモチベーションをアップし、仕事の生産性を高めて競争社会を生き抜いてください。

従業員満足度(ES)とは?

従業員満足度の言葉の意味

職場環境や福利厚生、働き甲斐、社内の人間関係などについて従業員の満足度を表す指標が従業員満足度です。従業員満足度は英語でEmployee Satisfactionと表記されるため、略称でESとも呼ばれます。

従業員満足度の概念は、1920年代にアメリカの管理学者ロバート・ホポックが提唱したのが最初と言われています。その後、従業員満足度を向上させることが企業の生産性や業績アップに対してどのように影響するか、顧客満足度とどのような関係があるかが研究されました。

その結果、従業員満足度は現代ビジネスにおいて企業の経営やマネジメントに欠かせない指標として注目されています。

従業員満足度が注目されている背景

現代社会は少子高齢化の影響で労働人口が減少し、人手不足が深刻な社会問題となっています。また、働く人材の考え方が変化し、従来の終身雇用の働き方から優秀な人材は転職をしてキャリアアップしていく働き方に変わってきました。

近年、日本政府は働きかた改革に取り組んでおり、その一環として「多様な人材が働きやすい環境づくり」と「ワーク・ライフ・バランス」を企業に対し推進しています。このような背景の中、企業は優秀な人材を確保するための従業員満足度向上に注目し始めました。

従業員満足度(ES)を左右する要素

要素①企業ビジョンへの共感

従業員が自分の仕事にやりがいを感じモチベーションを上げるためには、自分が働く会社の企業ビジョンに共感している状態であることが重要です。従業員が企業ビジョンに共感していると、会社に対して誇りや信頼感を持つことができ、自発的に企業に貢献しようと考えます。

企業ビジョンへの共感は企業の一方的な強制だと不満が溜まります。丁寧な説明によって従業員が主体的に共感する必要があるため、従業員満足度を高めるためには従業員がどれくらいビジョンに共感しているか定期的にヒアリングをして不満がないか調査することも大切です。

要素②マネジメントへの納得感

従業員満足度を高めるために重要な要素が、上司のマネジメントへの納得感です。部下の意見や考えをしっかりと聞いて不満を解消し透明性の高い評価をし、成果に対し賞賛するマネジメントを行う上司がいる組織の従業員満足度は高くなります。

また、従業員が承認感を得るためには上司が「権限委譲」することも従業員満足度を高めるために有効です。権限委譲により、従業員は能動的に仕事に取り組むようになります。また、マネジメント層は業務の負荷を軽減することができるので、マネジメントに集中することができるでしょう。

要素③自身の仕事が会社や社会に与える影響

自分の仕事が会社や社会に貢献していると感じると仕事へのモチベーションが上がり、従業員満足度が向上します。そのため従業員同士のコミュニケーションを大切にし、職場内でお互いの貢献を伝え合える職場環境を構築することが重要と言えるでしょう。

また経営陣や管理者層から従業員に対して貢献や影響について評価し、表彰するなど積極的に発信していくことも重要です。

要素④職場内での人間関係

仕事にやりがいを感じ、満足して働くためには職場内での人間関係が重要です。職場の人間関係に不安や不満を感じながら仕事をすることは、従業員にとって大きなストレスとなり、モチベーションの低下に繋がります。

従業員満足度を高めるためには、良好な人間関係が構築できる環境づくりが不可欠ですしょう。マネジメント層は定期的に面接をし、従業員一人一人が不満のない人間関係が築けているかをチェックする必要があります。

要素⑤快適な職場環境

従業員満足度で一番注目されるのは、福利厚生や就業規則の整備ですが経営陣の視点での施策の立案では、従業員には不満な場合もあるでしょう。従業員が快適と感じる職場環境を整えるためには、個々のニーズを捉えワーク・ライフバランスが取れているかをしっかりと検証して整備することが必要です

また、従業員一人一人が自分の考えや意見を主張できる環境であることも重要でしょう。従業員満足度を上げるためにマネジメント層は組織のメンバーが思ったことを話せる風通しの良い職場を作るように心がけることが大切です。

従業員満足度(ES)を向上させるメリット

メリット①生産性の向上に繋がる

従業員が高いモチベーションを持って仕事をすると、業務の生産性が上がります。モチベーションアップのために効果的なのが従業員満足度の向上です。

従業員満足度が高い状態の時、従業員は主体的に仕事に取り組むため生産性が高まります。また、モチベーションの高い従業員が多い企業は社内コミュニケーションも活発で、意見交換によってイノベーションも起きやすいため、業績も向上するでしょう。

メリット②顧客満足度の向上に繋がる

従業員満足度の高い従業員は、自分の仕事に誇りを持っています。そのため自分の生み出す商品に対しより深く理解するように努め、こだわりを持って高い価値を届けようとするでしょう。

また、顧客は従業員満足度の高い従業員が自信を持って行うサービスに対し、好感を持ちます。従業員満足度の向上は、商品価値の面からもサービス面からも顧客満足度の向上に繋がると言えるでしょう

メリット③離職率の低下に役立つ

従業員満足度(ES)の高い企業の従業員は、経営ビジョンに共感しているので会社への不満が少なく帰属意識が高い状態にあります。そのため、他社からのオファーがあっても、会社の職場環境や働き甲斐を重要視してこのまま働き続けたいという気持ちが強く、離職を踏みとどまることができるでしょう。

メリット④採用力アップや採用コストの削減に役立つ

SNSの普及が進む現在、企業の従業員満足度を知りやすい時代になっています。従業員の書き込みで職場の雰囲気や従業員の働き甲斐を直に感じることができるため、ポジティブな書き込みが多い企業は従業員満足度が高いと判断され、求職者が注目し採用力がアップするでしょう。そのため、採用コストをかけずに多くの求職者を集めることが可能です。

また、従業員満足度が高い企業は離職率が低く優秀な人材の流出を防げるため、採用コストの削減にも役立つでしょう。

従業員満足(ES)が高い企業の従業員の特徴

特徴①当事者意識が強い

従業員満足度(ES)が高い従業員は、自分が仕事をする企業に対してそのメンバーの一人であるという当事者意識が強く、自分の仕事に責任感と使命感を持っているため企業のために主体的に行動しようとします

従業員満足度が高い企業は、自発的に積極的に業務にかかわる従業員が多いため、従業員同士がお互いに刺激しあいます。そのため、新しいアイデアが創出され、、イノベーションが起こりやすい環境となり、成長し続けるでしょう。

特徴②経営理念や企業ビジョンを理解している

従業員満足度(ES)の高い企業の従業員は、経営理念や企業ビジョンを理解し、共感しています。そのため、従業員同士が同じ目標に向かって真剣に仕事に取り組むため、組織に一体感が生まれるでしょう。

経営陣が経営理念や企業ビジョンを明確にすることにより、従業員一人一人の従業員満足度がアップし生産性の向上に繋がります。

特徴③コミュニケーションが活発

従業員満足度(ES)の高い企業は従業員一人一人が自分の意見を発信しやすい環境にあるため、従業員のコミュニケーションが活発になります。そのため、有意義な意見交換や業務の改善が可能になり、企業の業績も上がるでしょう。

また、コミュニケーションが活発になると、従業員同士がお互いにフォローし合うようになります。その結果、従業員満足度の高い企業は大きなミスやトラブルを未然に防ぐことができ、安定した経営が可能になるでしょう。

従業員満足度(ES)が低い企業の従業員の特徴

特徴①目の前の仕事にしか関心がない

従業員満足度(ES)が低いと、企業ビジョンや経営理念に関心がないため目標がなく、目の前の与えられた仕事のみを片付けるだけの業務になってしまいます。そのため、視野が狭くなってしまい、目まぐるしく変化している社会に対応できなくなり、企業の成長の妨げになってしまいます。

また、従業員満足度が低く受動的に仕事をしていると、企業の改善に対し自分の負担が増えるとの不満ばかりが増えてしまい、生産性は下がり、最悪の場合は離職へと結びついてしまうでしょう。

特徴②業務改善に消極的になりやすい

市場競争が激化している現代社会で安定した経営を維持していくには、常に業務の見直しが必要です。しかし、現状維持を望む従業員満足度が低い従業員は、業務改善に対して消極的になりがちでしょう

従業員満足度の低い従業員は、惰性で働いているため効率が下がり不満を改善しようとはせず、責任転嫁ばかりになってしまいます。そのため生産性は下がっていき、企業の業績もダウンしてしまうでしょう。

特徴③ネガティブな思考に陥りやすい

従業員満足度(ES)が低い企業は、労働環境が悪いため思考がネガティブに陥りやすい傾向にあります。風通しの良い労働環境では、コミュニケーションが活発になるため相乗的にポジティブな思考になりますが、自分の意見が通らない環境にいると、次第に自分に自信がなくなってくるため、すべてのことに対し不満と考えてしまうでしょう。

職場のコミュニケーションが減ると、ミスやトラブルの発見が遅れ、大問題に発展することもあります。そのため、従業員満足度が低い企業は安定した経営が難しくなり、さらに職場の雰囲気が悪くなるという負のスパイラルに陥ってしまいます。

従業員満足度(ES)を向上させるためのポイント

ポイント①企業理念の共有と浸透を心掛ける

従業員満足度を向上させるためには、従業員に取り組む仕事の方向性を指し示す企業理念を共有してもらい浸透させることが重要です。企業理念の共有は組織に一体感を生み出し、従業員の仕事に対するモチベーションをアップします

企業理念を共有させるために、経営陣は企業理念を言い続け浸透するように心掛ける必要があるでしょう。従業員に熱意をもって企業理念を語りかけたり、冊子で明確にまとめたものを配布することで、企業理念が浸透し従業員満足度を高めることが出来ます。

ポイント②ワーク・ライフ・バランスを実現する

テクノロジーが進化し市場のニーズが急激に変化している現在の日本社会では、働き方に対する考え方も変化してきています。最近は、高度成長期の長時間労働が良しとされていた働き方の企業よりも、短時間で効率よく働く働き方ができる従業員満足度の高い企業を選ぶ人が増える傾向です。

また、テレワークやフレックスタイム制など働く時間や場所も選べる時代になってきました。これからの時代は、仕事とプライベートの両方の充実が実現できる施策を導入してワーク・ライフ・バランスを重視している企業が、従業員満足度の高い企業として人気の企業となるでしょう

ポイント③労働条件や労働環境に不満がないかを見直す

従業員が労働条件や労働環境に不満があると、従業員満足度が下がり離職に繋がりかねません。そのため優秀な人材を確保するためには、定期的に従業員一人一人に面接をし、仕事内容に見合った不満のない納得のいく労働条件であるかを確認して、従業員満足度を向上させることが必要不可欠です。

また、労働時間や職場の快適さも調査し、労働環境を整備することも従業員満足度を高めて生産性を上げるために重要でしょう。

ポイント④人事評価制度を見直す

従業員満足度を向上するためには、従業員が納得する透明性の高い明確な人事評価制度とそれに見合う報酬が必要です

従来の日本企業では、年齢によって給料が上がる年功序列や男女不平等な評価制度が主流でしたが、近年のグローバル化や人手不足による人材確保の観点から、ジェンダー平等が唱えられ成果報酬の企業が増えてきました。

また、評価指標もコンピテンシー評価や360度評価、目標管理制度など様々な指標があるので、自社に合った方法を検証し、従業員満足度が高まる人事評価を行いましょう。

ポイント⑤福利厚生を整備する

ブラック企業と呼ばれる福利厚生が整っていない企業が社会問題になっている昨今、福利厚生の充実度が仕事選びのポイントになってきました。そのため福利厚生を整備して従業員満足度を高めることが、優秀な人材確保には重要な役割を果たします。

各種手当てや補助、リフレッシュや育児などの休暇制度、財産形成の支援や企業年金制度など従業員の健康や生活を守り、将来の老後の資金を支援する施策を整備することで、従業員は安心して仕事に集中でき、従業員満足度が向上して仕事の効率が上がり、業績もアップするでしょう。

ポイント⑥従業員の意見を積極的に取り入れる

従業員満足度を高めるためには、一人一人が企業や社会のために働いているという参画意識を持つことが重要です。そのため経営陣やマネジメント層は従業員の意見を積極的に取り入れ、良いアイデアを出した従業員にはインセンティブを出すなどして従業員満足度を上げることも大切でしょう。

ポイント⑦目標の数値化と具現化を行う

漠然とした目標を掲げても、なかなかモチベーションの向上には繋がりません。できるだけ目標は数値化し、具現化すると評価が明確化しやすくなり、従業員のやる気もアップします。透明性が高い正当な評価を受けることにより、従業員満足度は高まり、離職率を下げることができるでしょう。

従業員満足度(ES)の向上に成功した企業事例

企業事例①株式会社ラクーン

ネット上の流通サービスや決済・保証事業を手がける株式会社ラクーンでは、従業員満足度の向上のため通勤時間に着目しました。長距離通勤の疲れによるモチベーションの低下を防ぐため近距離通勤支援制度を導入し、会社から3キロ以内に住む従業員に手当を支給したため、従業員のワーク・ライフ・バランスは改善し、従業員満足度はアップしたそうです。

また現在の社長が在任中は会社の移転をしないと宣言し、引っ越しなどの心配をせずに安心して働けるように環境を整えて従業員満足度の向上に努めています。

企業事例②株式会社カウネット

オフィス用品通販サービス企業の株式会社カウネットでは、従業員満足度の向上は社会や企業の業績への参画意識が結びついていると考え、リフレッシュスペースをショールームに改築し、従業員に自社製品をよく知ってもらうことに努めました。

その結果、積極的に商品の開発や改善に意見を出す従業員が増え、2017年に実施したアンケートでは90%以上の社員が自社の商品が見た目も使い勝手も良くなったと回答し、従業員満足度もアップしています。

企業事例③ジャトコ株式会社

自動車用変速機など自動車部品の開発や製造で世界トップシェアを誇るジャトコ株式会社では、会議のスリム化によって会議面積の削減を図りました。

経営陣から改革を行うことによって現場でも働き方を見直すようになり、職場環境が改善し従業員満足度が向上した事例です

企業事例④株式会社オリエンタルランド

ディズ二ーリゾートを運営する株式会社オリエンタルランドは、「自由でみずみずしい発想を原動力にすばらしい夢と感動、人としての喜びそしてやすらぎを提供します」という企業使命を掲げて従業員教育をし、従業員満足度を上げるための施策を行っています。

その一つがファイブスターカード制度で、すばらしい行動をした従業員(キャスト)には5つ星カードを渡して評価するとともに、ファイブスターカードを受け取った従業員限定でキャスト同士がお互いを称え合ったり、交流を図ることができるプログラムが用意し、キャストは目的意識を高めやりがいを感じられ従業員満足度が向上しました。

企業事例⑤株式会社Speee

IT産業の中核を担う企業であるSpeeeでは、従業員の健康と快適な職場環境を考え、各フロアに仮眠・集中スペースを設置してお昼寝を公認しました。

その結果、従業員満足度が高まったため社員のモチベーションが上がり、集中力がアップしたため生産性も向上しました。

企業事例⑥ANAエアポートサービス株式会社

空港でのお客様サービスなどを行うANAエアポートサービスでは、24時間シフトで働く従業員が多いため、従業員満足度を上げるために食環境のサポートに取り組みました

従業員が好きなお総菜を選んで食べられるプチ社食サービスを導入し、社内でバランスの取れた健康的な食事ができる環境を整備しました。

従業員満足度で重視される食環境の充実に着目し、勤務体系のマイナス点を補うことで従業員満足度を向上させることができた事例と言えるでしょう。

企業事例⑦株式会社ルミネ

不動産賃貸業やeコマース事業を展開するルミネでは、従業員満足度向上によって優秀な人材の離職を防ぎ人材不足を解消できるとして様々な施策を実施しました。

例えば、従業員の休憩スペースにマッサージ機やソファを設置してくつろげるようにし働きやすい環境作りをするとともに、ショッピングセンター内にスタッフの声ボックスを設置して従業員の声を反映させて信頼度を高め従業員満足度を上げました。

また現場に出る前に研修期間を設けて、基本的なスキルを身につけ企業理念や社内ルールを覚えて安心して仕事に取り組めるようにし、従業員満足度を高めています。

企業事例⑧株式会社ディー・エヌ・エー

ゲーム事業やスポーツ事業など様々な事業を展開するDeNAは、本人と異動先の部署との合意があれば人事や現在の部署の許可なく移動が可能な「シェイクハンズ制度」を導入しました。

やりたい仕事ができる環境を整えて従業員のモチベーションを上げ、従業員満足度の向上に努めている事例でしょう。

従業員満足度(ES)は組織のモチベーションアップに不可欠

労働人口が減少し経営資源の一つである人手の確保が難しい昨今、優秀な人材を集めて少ない人手で生産性をアップすることが重要視されてきました。

生産性を上げるためには従業員満足度であるESの向上は、組織全体に活気を与えモチベーションをアップするため不可欠な要素です。定期的な働く環境の見直しに努めて従業員満足度を高め、業績を伸ばしていきましょう。

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