財務管理を活用して企業価値を高めたい!
少子高齢化による市場ニーズの変化で競争が激化している現代社会において、事業のための資金をいかにして調達し運用するかの施策を考え、企業価値を上げていく仕事として財務管理が重要視されています。
財務管理の基本的な情報や仕事内容、円滑な管理方法を理解して健全な企業経営を財務的側面から支え、財務管理を活用した事業で利益を上げ、企業価値を高めましょう。
財務管理とは?
財務管理の言葉の意味
企業が、事業のために必要な資金や資産の調達・運用に関する計画設定や統制活動として経営管理の側面から体系化したものを財務管理と言います。簡単に言うと財務管理とは、資金面から企業の経営や発展をサポートする仕事のことです。
財務管理の内容は資金調達、資産運用を始め資産や資金の構成、会社の合併や買収、企業価値の算定など幅広い分野に及びます。
財務管理の目的
財務管理の一番の目的は、企業に必要な資金や資産を管理することで企業価値を高めることです。企業が成長するためには、事業に必要な資金を集めて健全に運用して事業を行い、事業を通じて得られた収益を基にさらに運用して企業価値を上げることが必要です。
財務管理の仕事の範囲は、買収先の企業価値の算出や資金の運用まで対象に含まれることがあるなど、広範囲に及びます。また、財務管理の重要な役割として資金管理によって倒産を防ぎ、万が一の時に備えた資金を確保しておくこと企業リスクの管理も含まれます。
財務会計との違い
財務管理と似た言葉に財務会計があります。財務会計とは財務諸表を元に企業の会計に関する情報を企業外部の利害関係のある株主や債権者に提供することを目的とする会計のことです。
財務管理は作成された財務指標を核として資金調達や資産運用を行って必要な資金や資産を管理し、事業によって得た利益を元に経営指標をさらに高めるのが目的なため、事業で得た成果を外部に報告することが目的の財務会計とは目的が違うと言えるでしょう。
管理会計との違い
財務管理、財務会計と少しニュアンスが似た言葉に管理会計があります。企業会計の用語である点では同じですが、この管理会計は売り上げを伸ばす施策やコストの削減方法など自社の経営の改善や成長に活かすために作成する社内向けの会計です。
企業の経営者はこの会計を元に自社の現状を可視化し、経営について分析したり、意思決定を行ったりします。 管理会計に作成義務や決まった書式はありませんが、作成しておくと業績の管理がしやすく、成長戦略を打ち出しやすくなります。そのためスピード感をもって経営判断ができるでしょう。
財務管理の業務内容
業務内容①決算書の作成
財務管理の仕事としてまず行わなければならないのが決算書の作成です。決算書は企業の財務状態や業績を1年ごとにまとめて、その企業の活動の成果を報告するために作成される資料です。この決算書により、株主などの利害関係者が出資したお金の使われ方がわかり、会社の経営状態が判断されます。
財務管理では、決算書の中でも財務三表と呼ばれる「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」が会社の財政状態や経営成績の全体像が見るため特に重要です。
また、財務管理での決算書は金融機関が会社の融資を決定する際の与信管理としても重要視されています。財務管理担当者は日々の仕事で発生する伝票や書類を決算前にまとめず少しずつ仕事を行うことが好ましいでしょう。
業務内容②財務分析
財務管理の仕事において決算書の作成ができたらそれを基に企業を分析する財務分析の仕事を行います。財務分析によって経営の問題点や改善点を検証することが可能になるので、経営危機を回避したり、企業の事業や資本の強みや弱みを見つけることができるでしょう。
財務管理において企業の状態を分析する財務分析は以下で解説する収益性・生産性・安全性・成長性の4つの観点から行われます。
ー収益性分析
財務管理における収益性分析とは一口に言うと稼ぐ力です。売上高に対する利益を計算することで、売上総利益を売上高で割って計算して事業の収益性を分析します。
また財務管理において自社の優越性を知るためには、業種ごとの営業利益を売上高で割ったり、経常利益を売り上げで割ることで営業利益率を比較し、業種ごとの必要経費を見直すことができます。
ー生産性分析
「ひと・かね・もの」の経営資源を元に得られた利益を付加価値といい、財務管理において売上高に対して付加価値の大きさを分析するのが生産性分析です。
例えば労働生産性の場合、付加価値額を平均従業員数で割ることにより一人あたりの売上総利益がわかり、従業員の仕事がいかに効率よく行われているかを示す指標とされます。
ー安全性分析
財務管理において融資や投資をする際にその企業が支払い能力があり安全な会社であるかを判断する指標となるのが安全性分析です。売り上げが好調であっても、売り上げたお金を回収できていない会社は安心して取引できる会社ではありません。
財務管理において、貸借対照表の負債の部にある流動資産が少ないと現金化できるお金が不足しているので経費や仕入れ代金の支払いが困難になり、安全な企業とはいえないでしょう。安全性分析は貸借対照表の流動資産、流動負債、純資産などの比率から判断すると良いです。
ー成長性分析
財務管理でこれまでの企業の成長やこれからの将来性を分析するのが、成長性分析です。代表的な指標は、売上高や経常利益が前期と比べてどのくらい伸びているかを示す増収率や増益率でしょう。
しかし、本当の意味での成長性分析は、商品開発力、設備投資など幅広く分析して、今後も設備投資によってさらに売上げを伸ばすサイクルが作れているかどうか、成長性を感じられるかどうかを判断するのが成長性分析と言えます。
業務内容③資金管理
財務管理において企業経営を左右すると言われるほど重要な業務が資金管理です。企業が業務で必要な資金を準備し、それを管理することを資金管理と言います。
資金管理では、事業の運転資金などの企業が短期的に必要な資金である短期資金と設備投資や関係先への出資などの長期資金それぞれのに対して、多種多様な手段の中から最適な方法を考えて将来の収入や支出の資金計画を立て、それに従って資金の確保である資金統制を行います。
企業が適切な資金管理を行い安定した経営を行うためには、財務管理担当者が資金運用法や資金繰り表などの表を作って資金の流れと残高を把握することが必要不可欠でしょう。
業務内容④利益管理
財務管理のひとつである利益管理とは、企業の目標である利益の追求のために計画的に収入と支出のバランスを管理することを指します。
財務管理における利益管理は経営ビジョンや経営方針に沿って利益を達成するための計画を立てる利益計画と、その計画と比較して実績との差異分析を行い業績アップのために従業員のモチベーションを上げる指揮監督を行う利益統制から成り立っています。企業の利益を増やすためには、適切な利益管理が必要不可欠と言えるでしょう。
財務管理における予算管理の種類
企業が業績目標を達成するためには、事前に売上や経費を予測し予算を策定することが重要です。財務管理における主な予算管理は、売上予算、原価予算、経費予算、利益予算などです。それぞれの内容について説明します。
予算管理の種類①売上予算
過去の実績データや企業の経営計画に基づいて立てた今期の目標が売上予算です。過去の売上を前提にしてプラスアルファとなる目標数値を理想とし、前年の売上実績を参考に算出します。
財務管理において売上は「商品の販売単価×販売数」で算出されるため、売上予算を立てるには販売数の予測が重要です。販売数は市場のニーズなど外部要因の影響を受けるので、定期的な見直しが必要でしょう。
予算管理の種類②原価予算
売上予算を達成するために必要な商品の仕入や材料費などあらゆる原価の見積もりを原価予算と言い、できるだけ生産計画と同時期に予算を立てるとよいでしょう。
原価予算における原価は、販売業やサービス業の場合、収益を出すためにかかった商品の仕入や人件費などの合計金額、製造業の場合は製造に必要な原材料費や部品の仕入れなどの合計金額を指します。
原価予算も売上予算同様、外部要因に左右されるので、社会の動向にあわせて定期的な分析や調整が必要です。
予算管理の種類③経費予算
事業所の家賃や従業員の給料など企業が継続して活動していくために必要な費用の予算を経費予算と言います。経費予算は売上と比例しない経費であり、1年間で必要となる経費の合計です。
財務管理における経費予算は市場の動向に左右されにくいので、比較的予算と実績の管理がしやすく、経費削減などで経費を合理化して収益アップを図ることができるでしょう。
予算管理の種類④利益予算
利益とは売上から原価と経費を差し引いた数値のことであるため、利益予算は企業の最終的な目標である利益アップを見積もる将来の経営計画に重要な予算です。
売上予算が達成できなくても利益予算が達成できることがあるため、財務管理では売上予算・原価予算・経費予算それぞれを考慮しながら算定します。ただし、企業の問題の究明や改善はそれぞれ個別に洗い出すことが重要でしょう。
財務管理の円滑な管理方法
管理方法①各部署と連携する
財務管理でまず初めに行う業務である決算書の作成には、売上予想や取引の仕分け、材料費の原価など様々な部署でのデータが必要不可欠です。そのため、財務管理を円滑に行うには、各部門・部署との連携が大切でしょう。
財務管理に誤りがあると企業の経営に大きな影響をおよぼすため、できれば年単位でなく月単位など小まめに連携を取り、各部署と良好な関係を気付いておくとよいでしょう。
企業の財務管理部門は、経営戦略を策定する際に冷静な判断を下す重要な役割を担っています。そのため、日頃から社内の各部署の情報を収集しておくことも大切でしょう。
管理方法②適切なリスク管理を行う
円滑な経営を行うには、状況に応じた適切なリスク管理が必要不可欠です。特に、財務管理におけるリスク管理がスムーズに行われていないと、資金調達が滞ったことによる黒字倒産や災害時の資金不足などを生み出してしまいます。
健全な状態に財務管理をし、将来にむけて適切な投資や予算を示唆することは、企業が成長するために非常に重要でしょう。
管理方法③システムを活用する
効率的な財務管理を行うためには、財務管理やそのプロセスを自動化するソフトウェアなどのシステムを活用することがお勧めです。
システムの導入には費用がかかりますが、財務情報を一元的に管理できるので、正確な情報分析や情報集約が可能になり、将来的には人件費を削減できます。また財務管理を可視化できるので、経営陣の素早い意思決定にも活用できるでしょう。
自社にとって適切なシステムを選択し運用することは、円滑な財務管理や健全な経営に必要不可欠といえるでしょう。
財務管理の課題
財務政策における課題
財務管理は財務政策を軸に適切に運営することが重要です。財務政策は、資金調達の方法や株主への利益還元など企業が抱える制約のもとで最善の資金調達や資産運用を行い、企業価値を高めることが目的です。
そのため、個別事業のような狭い範囲での財務管理とは違い、調達のバランスを考慮して資金調達を行ったり、科学的なエコロジーを導入して情報処理システムを構築するなどマクロ的なお金の管理が必要でしょう。
財務計画における課題
企業が健全に活動するための資本の調達と運用に関する計画である財務計画は、財務管理の主要な部分です。財務計画は資金収支計画である現金の出納と保管を行う実体的な財務活動と、資本の源泉面と運用面から資本需給の適合関係を考える総合的な財務活動に分けられます。
また、設備投資などの長期財務計画と現金の出納・保管をする短期財務計画に分けることもできます。財務管理を活用した意思決定を行う場合、長期財務計画は不安定なため慎重に行う必要があるでしょう。
内部統制における課題
財務管理を行うには、企業の事業目的や経営目標に対し、それを達成するために必要なルールや仕組みを整え、適切に運営する内部統制を用いることも大切です。
内部統制の評価や監督の基準は従業員が業務中に遂行するプロセスとして明確に定義し、企業内で統一することが必要でしょう。社内の不正を防止するためにも内部統制を組織全体で意思を統一した内部統制を確立することは財務管理の重要な課題です。
財務管理の仕組みや活用の仕方を理解しておこう!
企業間競争が激しくなり企業価値を高めることが必要不可欠となっている現代社会において、事業に必要な資金を調達し、それを運用して企業の経営を資金面から支える財務管理は非常に重要視されています。
財務管理の仕組みや活用の仕方を理解することによって、バランスのとれた収支で利益を追求し、業績をアップして企業を成長させていきましょう。