システム思考とは?メリットや基本ステップを分かりやすく解説!

システム思考とは?メリットや基本ステップを分かりやすく解説!
目次

システム思考の理論を活用して優れた組織を作り上げる!

近年、進み続けるグローバル化や多様化の波によって、ビジネスシーンは加速度的に複雑さを増しつつあります。複雑化した要素が絡み合う組織の問題を、シンプルに解決するために注目されているのがシステム思考です。

この記事では、システム思考とは何か、そのメリットや基本ステップを解説します。また、システム思考の成功事例や、システム思考が学べる本も紹介していきますので、システム思考の理解に役立ててください。

システム思考とは?

システム思考とは何か、ここではシステム思考の言葉の意味や、システム思考の歴史について解説します。

システム思考の言葉の意味

システム思考とは、対象とする事象をシステムとして捉えることで、全体像を把握して、ものごとを考える手法のことです。各要素を単独で見るのではなく、システムを構成する要素のひとつとして捉え、相互作用や全体にどのように影響するかなどを考察します。

システム思考と似た言葉に、「デザイン思考」がありますが、こちらはモノづくりの場面で使われる言葉で、「ユーザー目線で考える」という考え方をあらわしています。観察・共感、定義、概念化、試作、テストという、5つのプロセスからなっています。

システム思考の歴史

システム思考の歴史をさかのぼると、1956年にマサチューセッツ工科大学のジェイ・フォレスターによって開発された「システムダイナミクス」がもとになっています。

このシステムダイナミクスが「システム思考」として、ビジネス界で広く利用されるようになったのは、ピーターセンゲの「The Fifth Discipline(学習する組織)」の出版がきっかけでした。

この著書は、世界のビジネスシーンに大きな影響を与えました。学習し続けることのできる組織の大切さや、複雑な問題に対処するためのシステム思考について説かれています。

システム思考のメリット

複雑化する世の中で起きる問題の解決方法として注目を集めるシステム思考。ここでは、システム思考のメリットを項目別に解説します。

メリット①問題への対処や解決策を探ることができる

日々、複雑化し、さまざまな要素が絡み合った問題を解決するために、システム思考の利用が有効です。それぞれの要素が複雑に影響しあう問題も、システム思考で全体像からそれぞれの作用を見極め、最適な解決策を探ることができます。

メリット②新しい視点を見出すことができる

システム思考を使って、物事を目の前で起きていることだけでなく全体で捉えることで、視野が広がり、新しい視点を見つけることができます。

物事を俯瞰して全体像を見ることで今まで囚われていた考え方に気づき、それぞれの要素のつながりや相互作用に気づくことができるのです。

メリット③コミュニケーションの促進に繋がる

ビジネスシーンの中で、人との関り方も複雑化し、新たなコミュニケーションツールも次々と現れています。こうした複雑化するコミュニケーションにおいても、メンバーと一致した認識を共有煤ために、システム思考が活用できます。

システム思考の「氷山モデル」を活用した基本ステップ

ここでは、システム思考の基本的な考え方のひとつである「氷山モデル」について解説していきます。氷山モデルとは、目に見える出来事は全体のほんの一部であり、氷山と同じように、その下にもっと大きなものが隠れているという考え方です。

基本ステップ①根本的な原因を探る

氷山モデルは4つの層であらわされ、上から順に「出来事」「パターン」「構造」「メンタルモデル」で構成されています。

ある「出来事」の改善を考えた時に、水面に表れている出来事だけを改善しても、水面下にある土台となる項目も改善しなければ解決につながりません。そこで、次の項目「パターン」に着目します。

基本ステップ②パターンを確認する

ステップ②のパターンとは、ある出来事を引き起こすパターンを考察します。その出来事がどのような行動パターンで起きるのか、その出来事が起こるときにどのようなパターンがあるのかを調べて見極めるのです。

基本ステップ③パターンを引き起こす構造を探る

パターンを見極められたら、次はそのパターンが引き起こされる「構造」について考察していきます。何かの出来事を改善するために、パターンを改善し、パターンを改善するためにパターンのもととなる構造を改善するということです。そして、問題のパターンを引き起こす構造が特定できたら、さらに根本的なメンタルモデルを考察します。

基本ステップ④構造を創り出す関係者を特定する

氷山モデルの最後のステップとなるのが「メンタルモデル」で、この構造を創り出している関係者を特定することをあらわしています。

こうしてステップごとに考察することで、関係者の意識や行動が問題の構造を生み出し、パターンへとつながり、出来事となって表れるという構図を探り出すことができます。

システム思考で活用される氷山モデル以外の手法

システム思考で活用される手法には、氷山モデル以外の手法もあります。ここでは、氷山モデル以外の7つの手法を紹介します。

手法①ループ図

ループ図は、システム思考を可視化するための手法で、氷山モデルもループ図で図式化することができます。ループ図は、それぞれの要素を矢印でサークル状につなぎ、構造を把握する手法です。ループ図によって構造の流れを可視化することで、各要素の因果関係の理解にも役立ちます。

手法②システム原型

システム原型とは、世の中や会社の中で問題を引き起こすシステム構造のことを指しています。自分の利益しか顧みず行動したことが、のちに自分の不利益となるという構造で、これらをいくつかに分類してシステム原型と呼んでいます。

このシステム原型は、ピーター・センゲの 「The Fifth Discipline(学習する組織)」 の中で、10の原型にまとめられています。

「遅れのある調整」「成長の限界」「問題のすり替わり」「外部者への依存」「ずり落ちる目標」「エスカレート」「強者はますます強く」「共有地の悲劇」「うまくいかない解決策」「卵かニワトリか」以上が10の原型です。

これらのシステム原型に陥らないために、システムの特性を十分に理解し、システム原型を回避するために有効なツールです。

手法③ストック&フロー図

ストック&フロー図のストックとは、ある時点で貯蔵されている量を指しています。フロートは、一定期間内に流れた量を指します。これをダムに貯まった水に例えると、ダムに貯まっている水量がストックで、ダムに流入・ダムから流出する水量がフローとなります。

これらの要素の関係を図であらわしたのがストック&フロー図です。このストック&フロー図とシステム思考を組み合わせることで、構造の流れだけではなく、「蓄積」をあぶりだすことができます。

手法④システムダイナミクスモデル

システムダイナミクスモデルとは、1956年にマサチューセッツ工科大学のジェイ・フォレスターによって開発されたシュミレーション手法です。

この手法は、製品の機能や顧客の特性といった個々の情報は考慮せずに、抽象的にモデリングを行う方法で、長期的な戦略モデリングに使用されることが多くあります。システムダイナミクスでモデリングを行う際には、ストック&フロー図やループ図を用いて因果関係をあらわします。

手法⑤レバレッジポイント

レバレッジポイントとは、「てこの力点」という意味の言葉です。言葉の意味通り、わずかな力でも大きなものを動かすことのできるポイントのことを指しています。

このいわば問題構造のツボともいえるレバレッジポイントですが、そう簡単には見つかりません。レバレッジポイントを見つけだすには、システム全体の構造をよく見て、つながりをたどることが大切だと言われています。

手法⑥ステークホルダー分析

ステークホルダー分析とは、プロジェクトを進行する際に、関わる人をマネジメントするためのフレームワークのひとつです。ステークホルダーとは、利害関係者のことを指しています。決裁者や株主、役員、取引先など、さまざまな利害関係者が存在します。

これらのプロジェクトに関わる人物を分析し、対策や方針を決定していく手法で、新規事業の立ち上げや構造改革などに用いられます。

手法⑦シナリオ分析

シナリオ分析とは、リスク要因を洗い出すために、楽観的・悲観的などの複数の条件で戦略を立てて分析する手法です。それぞれの条件でどれだけ収益や損失が変化するかを検証します。また、各シナリオがどの程度起こり得るかという、確率の考察も大切です。

GEから見るシステム思考の成功事例

ここまで、システム思考のメリットや、さまざまな手法について解説してきました。ここからは、システム思考を取り入れて組織の成長を導いた、GEの成功事例を紹介します。

強力なリーダーが不在でも機能する組織の実現

GEの元CEO、ジャック・ウェルチは、強力なカリスマ性のあるリーダーとして有名な人物です。しかし、自身のカリスマ性で組織の成長を妨げることなく、社員それぞれが考えて行動する文化を育て、組織を活性化させました。

そして、彼の作った「思考」や「考える文化」というシステムを、しっかりと根付かせました。これによって、強力なリーダーが不在となっても機能する組織となることができたのです。

システムの浸透に欠かせない実直な行動

どんなに優れたシステムを構築しても、一朝一夕で組織に浸透させることは困難です。GEのウェルチ氏は、GE流の経営を伝えることがミッションだとして、どんなに忙しくても社員とコミュニケーションをとっていました。

システム思考を組織に浸透させていくためには近道はなく、日々、実直にコミュニケーションを重ねることで浸透させることが重要です。

全体を俯瞰的に見る能力の育成

組織にシステム思考を浸透させることで、社員それぞれが物事を俯瞰的にみる能力を育成することができます。急激に複雑化するビジネスシーンの中で、今までの経営トップだけでの意思決定から、企業全体をシステム思考化すくことが求められているのです。

システム思考が学べる本

ここまでシステム思考のメリットや活用方法について解説してきましたが、ここではシステム思考が学べるおすすめの書籍を紹介します。システム思考の理解に、ぜひ役立ててください。

学習する組織ーシステム思考で未来を創造する

自律的で柔軟に変化しつづける「学習する組織」理論を提唱した、ピーター・M・センゲの著作。この本の出版によって、システム思考がビジネスシーンで注目されることとなり、世界のビジネス戦略に大きな影響を与えたといわれています。

この本では、システム思考で全体を捉えることの大切さや、学習し続けることの意義を、豊富な事例で学ぶことができます。読んだ後にすぐに行動を起こしたくなる、何度も読み返して、組織論のバイブルとしたくなる一冊です。

世界はシステムで動くーいま起きていることの本質をつかむ考え方

「世界がもし100人の村だったら」の原案のコラムを執筆したドネラ・H・メドウズの著作。脳科学者の茂木健一郎氏も推薦する一冊。こちらもシステム思考が語られるうえで、よく話題に出てくる本です。

世界中で起きる複雑な現象を大局的に見つめ、真の解決策を導き出すシステム思考を、著者が分かりやすく解説しています。システム思考の入門書としてもおすすめの一冊です。

入門!システム思考

東京大学人工物工学研究センター客員助教授の耕枝廣淳子、内藤耕共著。一つの視点では解決できない問題を、全体を俯瞰的に見ることで解決法を見つけ出す方法について、分かりやすく説明されています。

「ループ」と「構造」に焦点をあてて、システム思考を解説しています。システム思考の入門書としておすすめの一冊です。

システム思考は企業が抱える課題の解決に欠かせない理論!

企業が抱える課題の解決に欠かせないシステム思考。基本的な考え方である氷山モデルや、その他の手法についても解説しました。急速に進むIT化やグローバル化で、私たちを取り巻く環境はかつてないほどに複雑化が進み、今後ますます加速化することが考えられます。

システム思考を組織に浸透させることは簡単ではありませんが、複雑化するビジネスシーンにおいて、今後、さらに重要性が高まっていくと考えられます。ぜひ、この記事を、システム思考の理解に役立ててください。

ビジネスカテゴリの最新記事