マイスター制度の意味や日本での導入事例を紹介!
日本は技術大国と言われるほど、他国がマネできないような技術力を持っています。しかし、そういった技術を持つ人達を守り、新しい世代に引き継いでいくことも重要です。また、高い技術力を持った人を評価することも重要になります。
そういった技術を持つ人を評価するために、マイスター制度を取り入れましょう。マイスター制度の意味や日本での導入事例を紹介するので参考にしてください。
マイスター制度とは?
ドイツ発祥の職業教育制度のこと
マイスター制度はドイツ発祥の制度です。また、ドイツ以外にオーストリアやベルギー、スイスにも同様の制度が存在しています。ドイツには約170のマイスター資格が存在しているのです。
この制度は「稀有なる技術や技能の継承に特化した職業教育制度」を意味します。マイスターには「名人」や「巨匠」という意味があり、熟練した職人をイメージすると良いでしょう。
受験資格を得るには?
ドイツのマイスター制度の受験資格は非常に難しい道のりになっています。見習工として修行をしながら専門知識や技術を学び、熟練工の試験を受けるのが1つ目の関門です。試験を合格後に専門の高等職業学校でフルタイムで2年、パートタイムで3年から4年の教育を受けます。
この期間を経て、やっとマイスター試験の受験資格を受けられるのです。厳しい修行や勉強期間を経て受験して得られる資格だけに、その価値も非常に高いものになります。日本でもこのシステムを参考に制度が設けられているので参考にしてください。
日本におけるマイスター制度の広がり
全技連マイスターの創設
日本でもドイツのマイスター制度を参考に熟練工の技術を証明する資格制度が作られました。いくつかのマイスター制度が存在しており、全技連マイスター制度がその代表です。
平成15年に創設された資格制度で社団法人全国技能士会連合会が運営しています。こちらの資格では特級、1級または単一等級の技能士であることや、実務経験が20年以上あることが求められる資格です。また、年齢は45歳以上65歳以下であることも注意しましょう。
このような規定からも名誉資格ではなく、実際に次の世代に自分の技術を受け継ぐ意思がある人が求められています。技能振興系のイベントへの協力なども必要であり、5年毎の更新手続きも必要です。
ものづくりマイスター制度の創設
全技連マイスターが創設されてから10年後に、ものづくりマイスター制度ができました。こちらは厚生労働省の管轄となっています。全技連マイスターが61職種なのに対し、ものづくりマイスター制度は111種類が該当するのが大きな違いです。
これは、建設業と製造業などが含まれていることが関係しており、条件も大きく緩和されています。実務経験は15年以上、年齢などは除外されているので比較的身近な資格といえるでしょう。
知識人というイメージの定着
上記の2つの制度が認知されるようになり、マイスター制度に対する受け取られ方も変わりました。本来は技術の継承を目的とした制度でしたが、マイスターが「プロフェッショナル」という受け取られ方をするようになり、知識人としてのイメージが定着したのです。
そういったことを踏まえて地方自治体や民間団体が町おこしなどの目的で、独自のマイスター制度を導入しています。こういったこともありドイツの事例とは少し異なり、日本のマイスター制度は知識人や専門家を評価する側面もあることを覚えておきましょう。
上記2つのマイスター制度とその他の制度が違うことも重要なポイントです。企業の能力を証明するために独自の制度を導入していることもあるので参考にしてください。
マイスター制度のメリット
メリット①後継者候補の育成に繋がる
日本でも導入する企業が増えているマイスター制度ですが、そのメリットを確認しましょう。日本は技術力の高い職人が多くいますが、少しずつそれを引き継ぐ人が減っています。職種が多様化し、若者の選択肢が増えたことが大きな理由でしょう。
企業にとって自社の高い技術力を持った職人の技を、次の世代に引き継ぐことは重要です。マニュアル化しにくい要素を継承していく上で、こういった制度は効果が高いので製造業や建設業などは導入を検討してください。
メリット②細かな技術や作業のコツなどが伝授しやすい
技術力の高い職人の技を丁寧に引き継ぐことができます。実際に目の前でその技を見て学ぶことは、技術を引き継ぐ上で重要な要素です。文字では伝わらない部分を身体を動かして、身につけていけるような仕組みを導入していきましょう。
メリット③モチベーションが上がる
自分の能力を評価されることは大きなモチベーションアップにつながります。マイスター制度で資格を獲得できれば、若手に積極的に技術を引き継ぐ気持ちも生まれるでしょう。段階的にそういった資格を取得できるように企業がフォローしていくことも大切です。
マイスター制度のデメリット
デメリット①技能の選別が必要になる
日本で注目を集めているマイスター制度ですがデメリットも存在します。この制度において選別の難しさが課題となっており、管理業務の負担が問題になっているのです。
どういった技能をマイスターとして認めるかを精査しないと、企業にとってあまりメリットのないものになったり、希少価値がないものを含めるとコストだけが増します。
デメリット②イノベーションが生まれにくい
伝統を受け継ぐことにこだわりすぎると、イノベーションが生まれにくくなります。革新的な技術を生むことにも資源を投資しないと、プロダクトライフサイクルの問題が起きます。プロダクトライフサイクルは商品が生産され成長し、いずれ衰退期が来る流れのことです。
技術を守り継承していくだけでは、ユーザーの一部から飽きや刺激が失われていきます。日本の伝統を守りながらも、そこから新しいアイデアを生み出す努力も続けましょう。
デメリット③モチベーションが低下する恐れもある
ドラマなどでもよく見るシーンですが、伝統を守る後継者に選ばれることを必ずしも喜ぶ人ばかりではありません。そういったものに指名されることで自分の可能性を制限された、と感じてしまうからです。
役割を固定される可能性があり、他の業務に携わりにくい雰囲気になることで不満を感じることもあるでしょう。マイスターとして資格制度を導入する場合、そういった枠組みに本人が入りたい、という意思があるか確認してください。無理に枠で囲ってしまってモチベーションを下げないように気をつけましょう。
日本企業におけるマイスター制度の導入事例
導入事例①株式会社NTTドコモ
日本企業の中でマイスター制度を導入した事例を確認しましょう。ドイツで生まれた制度ですが、日本でも活用されています。
通信大手の株式会社NTTドコモは、スタッフスキルの資格として制度を導入しました。接客のスキルも一つの能力として評価し、グランマイスター資格やフロントスペシャリスト資格、というものを設定しています。顧客に対して丁寧な接客と最良な選択肢を提案できる人に与えられる資格です。
導入事例②キヤノン株式会社
事務機器や映像機器、デジタルマルチメディア機機などの製造を行っているキャノン株式会社は、多能工者に対する評価制度を導入しています。
資格は3級からS級まで存在しており、S級に関しては2016年度の段階で71人になっており厳しい認定基準となっています。人材育成に力を入れており、一つずつのステップアップを行って企業を代表するような職人に選ばれるシステムなので、高いモチベーションを維持できるのです。
導入事例③株式会社サカイ引越センター
大手貨物輸送運輸業者である株式会社サカイ引越センターもマイスター制度を導入している日本企業です。荷物をただ運ぶだけでなく、丁寧に傷をつけないように作業できる作業員を評価するようになりました。
顧客に対するマナーや応対力も重要になっており、実践研修と技術講習から試験を受ける仕組みが作られています。そういったマイスター制度に合格した作業員は、顧客に安心感を与える存在になるのがポイントです。
マイスター制度を導入してライバル他社との差別化を図ろう!
マイスター制度の意味やメリット、デメリットについて解説しました。ドイツ発祥のマイスター制度は日本で独自の進化を遂げて、様々な企業に導入されています。技術を持つ人を保護し、後進を育成するために重要な制度になっています。
同時にマイスター制度を導入する上では、該当者をフォローしていくことや、本人の意思も尊重するようにしましょう。マイスター制度を導入して、競合他社に負けないスペシャリストを守っていきましょう!