「ジョブ型雇用とは?」
「ジョブ型雇用のメリット・デメリットを知りたい」
「事例を知りたい」
など考えていませんか?
新型コロナウイルスの蔓延によってテレワーク、リモートワークが急速な広がりを見せています。会社では人材確保に向けてさまざまな採用を行っているでしょう。
今まで日本社会に根付いていましたが、年功序列の考え方が通じなくなってきています。そして時代の変化と共に採用・雇用への考え方も大きく変わってきています。
その中の代表的な言葉が「ジョブ型雇用」です。海外ではジョブ型雇用が広く認知されていて、日本でも注目され始めています。
この記事ではジョブ型雇用について解説していきます。事例も解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
ジョブ型雇用とは
ジョブ型雇用とは企業がある特定の職務内容に絞って人材を採用する制度です。仕事に人をつけるという言葉があり、主に欠員が出た人材の職務をすぐに行える即戦力を採用することになります。さらに新規事業で新たに人材が必要なときに、採用するケースもあります。
ジョブ型雇用が日本で注目され始めたきっかけは新型コロナウイルスです。2020年に新型コロナウイルスが蔓延して、出社しなくても働けるようにテレワークやリモートワークなどが普及しました。
実際に社員が働いている姿を見られなくなったため、評価しづらい環境になり判断基準が見直され始めています。また出社が制限されることで、採用がしづらくなったこともあってジョブ型雇用が注目され始めました。
日本経済団体連合会の2020年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果によると、ジョブ型雇用を導入済みまたは導入予定の企業の割合は約52%です。2019年にジョブ型雇用を導入している企業は約11.4%だったのに対して、2020年は25.7%と倍以上に増えています。今後導入する企業が増えていくと考えられるでしょう。
日本ではジョブ型雇用をあまり聞いたことがない方もいるかもしれませんが、欧米では一般的な雇用制度です。
日本の多くの企業はメンバーシップ雇用
メンバーシップ雇用とは日本型雇用とも呼ばれています。主に「新卒一括採用」や「年功序列」のことを指しており、多くの企業で採用している制度です。
日本は新卒一括採用で職種を限定しない総合職として採用します。その後全員が同じ研修を受けてから現場に配属され、転勤や異動、ジョブローテーションを繰り返しながら幅広いスキルを身につけられるのが一般的です。
メンバーシップ型雇用は業務で欠員が出た場合、会社側は辞令を出せば従業員の配置転換ができます。特定の業務に絞った採用をしていないため、配置転換しても雇用が継続されます。
また会社都合での解雇が少なく、従業員は安心して働くことが可能です。長期的に人材を確保することにつながり、社内のチームワークが高まるでしょう。業務を絞らない分、勤続年数が増えるほど帰属意識が高まるのが特徴です。
新卒一括採用は短期間でまとめて行えます。そのため、採用コストの削減が可能です。短期間で優秀な人材を確保できるため、長期的に見れば会社によってメリットになると考えられるでしょう。
しかし、メンバーシップ雇用は業務の成果よりも企業への貢献度で評価されます。実際に働いている姿が確認できないテレワークでは、従業員の評価がしづらいです。
新卒一括採用は海外ではあまり一般的ではありません。特定の分野の業務をこなせる人材が重視される傾向です。
ジョブ型雇用の特徴
ジョブ型雇用は新卒一括採用を行いません。人材を採用するタイミングで、企業側が求める職務を行えるスキル・知識を持った従業員であることが必要です。新卒採用よりも中途採用であることが多い傾向です。
ジョブ型雇用の場合、職務によって採用されます。そのため、職務記述書に記載されていない業務を行う必要はありません。自分の業務のみを行っていれば問題ないのが特徴です。
例えば隣の部署の人手が足りていないときに、手伝おうとすると契約違反になります。場合によっては隣の部署の仕事を奪うと考えられることもあるので注意が必要です。
ジョブ型雇用ではミスマッチを起こす可能性も考えられます。そのような場合、企業側は従業員を解雇して他の人材を採用することになります。従業員側は退職して別の企業を探すことになるのです。
また人事考課は上級の職務以外では実施しません。昇給・昇格は上位の職務に空きがある場合に、応募して合格する必要があります。
メンバーシップ雇用と違い、業務の成果に対して評価されます。働く姿が見えなくても適切な評価がされるため、テレワーク・リモートワークに向いている制度と言えるでしょう。
ジョブ型雇用のメリット・デメリット
ここまでにジョブ型雇用の特徴を解説してきました。メリット・デメリットを知りたい方も多いのではないでしょうか。
事前にメリット・デメリットを把握することで、導入後の運用がスムーズになります。ぜひ参考にしてみてください。
メリット
ジョブ型雇用のメリットは以下のとおりです。
- 自分のスキルを活用できる
- 生産性を高められる
- 必要な人材を確保しやすい
- 異動・転勤がない
- スキルに応じた報酬を得られる
1つ目は「自分のスキルを活用できる」ことです。ジョブ型雇用は特定の業務ごとに採用されます。契約外の業務を行う必要はないため、自分の持っているスキルを最大限に活用できるのがメリットです。
さらに同じような業務を繰り返すことで専門性が高まります。若いうちから重要なポジションを任される可能性もあるでしょう。
2つ目は「生産性を高められる」ことです。ジョブ型雇用では職務の専門性が身につけられるため、業務効率化を図れます。企業としては採用の段階から即戦力の人材を確できるので、入社後すぐに業務を行えて生産性の向上につなげられるでしょう。
3つ目は「必要な人材を確保しやすい」ことです。ジョブ型雇用は企業が求める人材を適切なタイミングで採用できます。従業員側からすると、自分に合う企業を見つけやすいため、入社前と入社後のミスマッチを防ぐことが可能です。
4つ目は「異動・転勤がない」ことです。ジョブ型雇用は基本的に、契約に定められた業務のみを行います。契約には予め勤務地が決められており、異動・転勤が発生しません。
5つ目は「スキルに応じた報酬が得られる」ことです。基本的に職務・スキルによって報酬が決められています。学歴や経験は関係なく、スキルが高ければ報酬が高くなる仕組みです。
デメリット
デメリットは以下のとおりです。
- チームワークを作りづらい
- 採用の難易度が高まる
- 契約外の業務を依頼できない
- 成果を出さないと評価されない
1つ目は「チームワークを作りづらい」ことです。基本的に業務の成果で評価されるため、スキルを高めることを重視する傾向にあります。
さらに他の企業で好条件の人材募集があった場合、転職する可能性があります。企業の人材が流動的になってしまい、チームワークが強化しづらいです。企業への帰属意識も低下してしまいます。
2つ目は「採用の難易度が高まる」ことです。即戦力の人材を募集するので、条件に合わないと採用が長期化します。なかなか採用できないと社内の業務が滞ることになり、避けなければなりません。
3つ目は「契約外の業務を依頼できない」ことです。ジョブ型雇用では契約外の業務を行うと、契約違反となります。企業と従業員で契約範囲の認識に齟齬があると、トラブルに発展する可能性もあるので注意が必要です。
4つ目は「成果を出さないと評価されない」ことです。ジョブ型雇用は企業が求める職務を行える人材を採用します。そのため評価基準が業務の成果になります。成果が出せないと評価するのが難しく、解雇される可能性があるでしょう。
新卒採用への影響
新型コロナウイルスの影響で新卒採用においてもジョブ型雇用を取り入れる動きがあります。新卒採用の場では、職務経験がない学生が多いので、今まで以上に学歴や専攻、成績などを重視して採用を行うようになるでしょう。
また学生でも実際の仕事を行えるインターンの活用も効果的です。企業が求める基準をクリアした学生がいれば、スカウトする形で採用できます。
海外の事例
ジョブ型雇用のメリット・デメリットを解説しましたが、事例を知りたい方も多いのではないでしょうか。
こちらではジョブ型雇用の事例を解説していきます。
- アメリカの事例
- ドイツの事例
- 日本(富士通)の事例
それぞれ解説していくので、参考にしてみてください。
アメリカの事例
アメリカには新卒一括採用はありません。学生でもジョブ型雇用の対象になり、専門性・知識が求められます。
企業の職務に空きが発生した場合、職務記述書をもとに採用活動を行うのが一般的です。そのため、学生時代からインターンシップに参加して、職務経験を積む方が多いです。
さらに日本のメンバーシップ雇用のようにマナー研修はありません。入社当日から業務を行うことになり、職務がなくなると解雇となります。
日本では社内で幅広い業務を行うことで、キャリアアップにつなげます。しかしアメリカでキャリアアップをするなら、転職をする必要があるのです。
ドイツの事例
ドイツでもアメリカと同様にジョブ型雇用を採用しています。ドイツの場合はアメリカと違って、ジョブ型と職能型を合わせたイメージです。職能型とは日本の雇用制度と同様に人を評価対象にして給与を決める制度です。
ドイツでは高校の段階で「現場技能系」か「知識労働系」を選択することになります。現場技能系を選択した方は「デュアルシステム」と呼ばれる若年者を対象にした、座学と企業実習が合わさった人材育成プログラムを受けます。
学校を卒業するときには、企業で働けるスキル・知識を保有しており、即戦力として採用が可能です。
知識労働系は大学に進学してインターンを経験します。インターンは半年間程度行うのが一般的で、成果を出せれば正規雇用につながります。
ドイツのジョブ型雇用でキャリアアップを目指す場合、まずは社内の異動が検討されるのが特徴です。その後、転職が検討されます。また職務がなくなっても異動になることが多いです。
日本(富士通)の事例
日本の会社である富士通も2020年4月に課長以上の幹部社員1万5,000人以上を対象にして、ジョブ型雇用が開始されました。人よりも職責の大きさや重要性をもとに報酬が決められます。会社として大きい職責に挑戦する人材を増やすことが目的です。
報酬の支払いは「FUJITSU Level」という統一された仕組みで格付けされています。一般社員については労働組合との話し合いを行なって、数年後の導入を計画しています。
今回は富士通の事例を紹介しましたが、今後日本の企業においてもジョブ型雇用が普及していくと考えられるでしょう。
企業は人事戦略合理化の時代
従業員の働き方は新型コロナウイルスの影響で変わりつつあります。会社に出社して働くのが一般的でしたが、テレワーク・リモートワークの普及によって場所を問わず仕事ができるようになりました。
テレワーク・リモートワークは、ワークライフバランスの向上につなげられます。育児や介護と仕事を両立できる環境になりました。
そこで人事戦略の見直しが必要になります。従業員の姿が見えない環境でも適切な評価をしたり、優秀な人材を確保したりが重要になるでしょう。
またテレワーク・リモートワークなどは、コミュニケーション回数の減少につながる可能性があります。新たなツールや制度の導入などを行なって、生産性を向上させる施策も検討していく必要があります。
個人に問われる「自己責任」とキャリアアップの可能性
ジョブ型雇用は成果で従業員を評価するのが特徴です。成果を出せれば仕事の進め方をある程度自分で決められます。ただし成果が出せないと、解雇になる可能性があるので注意が必要です。
さらにスキルアップも自分で行う必要があります。必要なスキル・知識を自ら取得して仕事に活用しましょう。
またジョブ型雇用のキャリアアップは、上位の職務が空いていなければできません。場合によっては時間がかかることも。身につけた専門性をもとに、他社の人材募集に応募してキャリアアップを目指すのが重要です。
ジョブ型雇用はメンバーシップ雇用と違って、専門性を高められるためキャリアアップしやすいでしょう。