ホーソン効果とは?ピグマリオン効果との違いや活かす方法・具体例も

ホーソン効果とは?ピグマリオン効果との違いや活かす方法・具体例も

ホーソン効果の意味や活用法を知りたい!

仕事をするにあって欠かせない生産性や結果。どうすれば生産性や結果が良い方向にいくのか悩んでいるときに効果が期待できるのが、ホーソン効果です。行動心理学でよく使われるホーソン効果ですが、どのような意味をもち、どのようにホーソン効果を活用したらいいのでしょうか?

そこで本記事では、ホーソン効果の意味や発見された経緯などをまとめました。また、ホーソン効果と似た意味を持つピグマリオン効果やプラセボ効果との違いも説明します。ホーソン効果を活用した具体例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

ホーソン効果とは?

注目されることで力を発揮する現象

ホーソン効果とは、注目されることで相手の期待に応えようと力を発揮する現象のこと。ホーソン効果と似た意味を持つピグマリオン効果がありますが、どちらも人の行動に影響を及ぼす行動心理学の1つです。

ホーソン効果の特徴である他人からの注目は、自分自身の行動や意識の変化に大きく影響し、最終的な結果の変化にも繋がると考えられています。

ホーソン効果の内容

「特別に優遇された」「自分に関心が集まっている」と感じたとき、誰しもがその特別扱いや関心に応えようとして頑張ろうとする心理学的効果がホーソン効果です。ホーソン効果の具体例を挙げると、「成績が良くて表彰された」「職場で自分だけ上司からよく声をかけられる」「親が授業を見に来た」などがあります。

ホーソン効果が発見された経緯

ホーソン効果は、約100年ほど前にアメリカのウェスタン・エレクトリック社ホーソン工場で行われた実験によって発見。そもそもホーソン工場では離職率が高く、悩んでいた社長が「生産性の向上には何が関係するのか」というのを目的に実施。

ホーソン工場での実験でホーソン効果が見つかったことから、工場の名前を取り「ホーソン効果」と名付けられました。

ホーソン効果の実験内容

実験内容①照明実験

ホーソン効果における照明実験では、労働環境がどのように生産性に影響するのかを調べました。「照明が暗いと生産性が低下、明るいと向上」という仮説を元に、それぞれの環境で生産性を測ります。

結果、「照明が暗くても生産性には影響がない」ということが分かりました。実験中、作業しやすい明るい場所や手元の見えにくい暗い場所ともに生産性が向上。よって、「労働条件は生産性に関係ない」という結果になりました。

実験内容②組み立て実験

ホーソン効果を調べるための2つ目の実験は、組み立て実験です。この実験では、労働条件や待遇の影響が生産性に関わるのかを調べます。組み立て実験では、ランダムで選んだ女性6人に継電器のリレーを実施。

「物理的な労働条件が悪くなるほど生産性は低下し、良いと向上する」という仮説の元、部屋の温度を変化させるなどの労働条件を変えながら生産性を測ります。実験後、「労働条件が変わっても生産性は変わらず、むしろ向上している」という結果になりました。

実験内容③面談実験

ホーソン効果の3つ目実験は、面談実験です。この実験では、個人の感情が生産性に影響するのかを調べるために、従業員約2万人全員との面談で仕事に対する思いなどを聞き取りしました。結果、聞き取りをしただけで従業員の生産性が向上。

面談をすると、「従業員の労働意欲は労働条件や賃金よりも、職場の人間関係や仕事に対する思いが関係する」ということが判明しました。

実験内容④バンク配線作業実験

ホーソン効果の4つ目の実験は、バンク配線作業実験です。この実験では、従業員を職種ごとにグループ分けして共同作業した結果から、人間関係がどのように生産性に影響するのかを調査します。

結果、「常に100%の力を発揮しているのではなく、周りの状況や場面に応じて労働量の変化がある」ということが判明しました。また、上司と従業員の間で良いコミュニケーションが取れている方がミスや欠陥が少ないことも判明。生産性の違いは、働き方の意識の違いによるものという結果になりました。

実験から導き出された考え

これらのホーソン効果の実験から「生産性の向上には労働条件は関係ない」「生産性を向上させるのは、職場の人間関係や仕事に対する思いなどの感情的な部分」「良いコミュニケーションを築いている方がミスが減って精度が高まる」「作業環境ではなく、人間関係が生産性に影響する」という考えが導き出されました。

ホーソン効果とピグマリオン効果との関連性

ピグマリオン効果とは?

ピグマリオン効果はホーソン効果と似ていて、他の人からの期待を受けることで勉強や作業などの成果を出すことができる効果です。主に教育現場で使われていますが、現在ではホーソン効果のように、ピグマリオン効果を心理学的に応用して日常生活や職場でも使われています。

ピグマリオン効果の内容

ピグマリオン効果とは、アメリカの教育心理学者であるロバート・ローゼンタールによって発見された効果です。 ピグマリオン効果の他に、教師期待効果やローゼンタール効果とも呼ばれています。

ピグマリオン効果の具体例としては、「”成績が上がる生徒”と教師に教えて指導させると”生徒の成績が本当に上がった”」ということです。これは、「教師が期待のこもった目で生徒を見たから」「生徒も自分が期待されていることを意識した」から成績が上がったと考えられています。

ホーソン効果とピグマリオン効果の共通点

ホーソン効果とピグマリオン効果は、「期待されている」という心理が結果に良い影響を及ぼすことが共通点です。 ホーソン効果は、周りから期待されるとモチベーションアップに繋がって、通常よりも良いパフォーマンスができることを意味します。

一方、ピグマリオン効果は指導する側の期待によって、指導される側が通常よりも良いパフォーマンスができることを意味するので、「期待されている」という心理になって良い結果になるというのが共通点です。

ホーソン効果とピグマリオン効果との違い

ホーソン効果とピグマリオン効果の違いは、「期待する側」の違いです。ホーソン効果は上下関係などがなく、ピグマリオン効果は教える側と教えられる側がいて成り立ちます。

具体例としては、「職場の同僚から期待されて良い結果を残せた」というのはホーソン効果、「教師から期待されて良い結果が出た」「上司から期待された部下が良い結果が出た」というのがピグマリオン効果です。

ホーソン効果とその他の心理学との違い

プラセボ効果との違い

プラセボ効果はホーソン効果に似ている効果の心理学です。プラセボ効果は偽薬効果やプラシーボ効果とも呼ばれており、具体例では「”本当の薬”だと思って”偽薬”を飲んだら症状が改善した」「”お酒”だと思って”アルコールのない飲料”を飲んだら酔っぱらった」などがあります。

一方で、プラセボ効果によって副作用が出ることもあり、暗示や自然治癒力が関係しているのがプラセボ効果といえるでしょう。また、プラセボ効果は痛みや不眠、下痢などに影響を及ぼすとされており、プラセボ効果の実験では偽薬を飲ませた人の約30%に鎮痛効果があったとされています。

思い込むという点ではホーソン効果とプラセボ効果は似ていますが、違いとしては自ら期待を信じ込むのがホーソン効果に対して、プラセボ効果は相手に信じ込ませる部分が大きな違いです。

ゴーレム効果との違い

ゴーレム効果は、ピグマリオン効果やホーソン効果の逆の意味を持つ心理学です。具体例では、「あなたは頭が悪い」とネガティブな期待を受けた人は成績が下がってしまう、上司から「なんでこんなこともできないのか」と叱責され続けることで生産性が落ちてしまうなどがあります。

ホーソン効果は期待されることで成績や生産性が上がることを意味しますが、ゴーレム効果ではネガティブな期待によって、ネガティブな成果を出しやすくなるのがホーソン効果との大きな違いです。

ホーソン効果をモチベーション向上に活かす方法

仕事の軌道修正のアドバイスをする

部下に期待して任せておいた仕事の進捗を常に上司が気にかけておき、たまに軌道修正のアドバイスをすることでホーソン効果が働きます。細かく進捗確認をしてあげることで、部下は上司に見守られている安心感と期待に応えようと、ホーソン効果であるモチベーションアップに繋がることでしょう。

ただし、一方的に意見を押し付けてしまうとモチベーションが下がってしまう原因になりかねないので注意が必要です。また、期待して任せた仕事が最後まで成し遂げられたときには、労いの言葉をかけてあげるようにしましょう。労いの言葉をかけてあげることまでやると、ホーソン効果が良い方向に働きます。

一緒に仕事をするメンバー構成を変える

部下のモチベーションが高い場合は、一緒に仕事するメンバー構成を変えることでホーソン効果を高めやすくなります。上司からの期待に応えようとするピグマリオン効果とは違うホーソン効果は、上司のみならず同じグループ内からの期待にも応えようとします。

よって、ホーソン効果を活用したいときは、定期的にメンバー構成を考えることが重要です。しかし、メンバー構成を変えるにあたって、個人の性格や得意なことなどを上司が把握し、その人やグループに合ったメンバー構成が必要になるので注意しましょう。

定期的にプレゼンの場を設ける

昇格や昇給審査に経営陣へのプレゼンを必須にすることで、ホーソン効果が働きやすくなります。また、定期的にプレゼンの場を設けることで、日常業務をダラダラとこなしているだけの日々に刺激が生まれ、モチベーションの維持や期待された生産性アップに繋がることでしょう。

また、グループ内やチーム内でのプレゼンの場を設けることでもホーソン効果が期待できます。その場合はその場限りの考えではなく、きちんとゴールを見据えた宣言をし、上司は部下の宣言に対してどのくらいできたかをチェックしてあげると良いでしょう。

ディズニーにおけるホーソン効果の具体例

具体例①スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート

ホーソン効果の具体例として、東京ディズニーリゾートではキャスト同士で評価し合い、その評価を元に「スピリット・アワード」を決めて上位者には表彰する制度があります。

これは、予めキャスト全員にカードを配り「素晴らしい」と思った他のキャストにメッセージを書いて渡すことで、「他の人に見られている」「憧れられる自分になりたい」という心理を働かせ、心理学でいう”他者肯定感”を満足させる効果やホーソン効果を期待できるでしょう。

具体例②ファイブスタープログラム

ホーソン効果を活用した2つ目の具体例は、上司が部下を評価する「ファイブスタープログラム」です。上司が部下の働きを見て「良い」と感じたときにカードを渡す仕組みで、カードを貰った従業員はショーに特別に参加できる、限定商品と交換できるなど、特別な特典がホーソン効果を生み出すと考えられています。

社員同士のみならず上司と部下という縦の繋がりを大事にした仕組みを作ることで、よりホーソン効果を生み出すことができ、従業員一人一人のモチベーションアップに繋がって良い環境作りができるでしょう。

具体例③来園者からの目を意識するプログラム

来園者からもたくさんの注目を浴びているのが、ディズニーのキャストです。来園者は「夢の国の住人」のような視線でキャストの行動や対応に期待し、キャストは「お客さんはディズニーのキャストとして期待している」という意識に繋がり、大きなホーソン効果を生み出します。

こうした来園者からの目を意識することでホーソン効果が生まれ、キャスト一人一人の高いモチベーションの維持に繋がっているといえるでしょう。

具体例④他者からの目線を意識づける

ディズニーリゾートではホーソン効果を生み出し、キャスト同士のやる気を引き出して仕事に誇りをもってもらうために「ナイトホージング」という制度を設けています。ナイトホージングとは、閉園後に清掃スタッフがパーク内の全ての床を水洗い・水拭きする作業のこと。

日中働くキャストが帰る頃は、ナイトホージングをしている清掃スタッフの姿を見ます。一生懸命ナイトホージングをする様子見る・見られているという意識が、同じキャスト同士での刺激やホーソン効果によるモチベーションアップに繋がり、心理学的にホーソン効果を生み出すことができるのでしょう。

ホーソン効果を仕事に取り入れよう!

ホーソン効果の意味や心理学的効果などを紹介しました。ホーソン効果は仕事に取り入れることで、従業員のモチベーションアップや生産性アップに繋がります。職場環境も良くなり、離職率低下にも繋がるかもしれません。

また、適材適所にピグマリオン効果も一緒に取り入れることで、より職場環境が改善される可能性があります。そのためにも、ホーソン効果とプラセボ効果の違いやゴーレム効果との違いやそれぞれの意味をしっかりと理解し、紹介した具体例を参考に取り入れるといいでしょう。

職場での環境や従業員のモチベーションに悩んでいる方は、本記事を参考にホーソン効果を活用し、良い職場や従業員の育成に役立ててください!

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