グローバルリーダーの定義や育成ポイントは何か?
社会の多様化やグローバル化に伴い注目されているのが、グローバルリーダーの存在です。グローバルリーダーは地域や国家のレベルを超えて多面的に活躍できるリーダーと定義されます。
国際性と専門性によって新しい時代を切り開くグローバルリーダーの存在は企業の成長に不可欠であり、そのような人材の育成は豊かな社会の実現に貢献します。グローバルリーダー育成の定義やポイントをおさえ、企業の発展に繋がる人材を育ててください。
グローバルリーダーとは?
文化や言語の壁を超えて多様な環境で活躍する人材のこと
グローバルリーダーの定義は、一言でいうと複数の国や地域などの多様な環境の中で文化や言語の壁を越えてリーダーとして活躍できる人材です。
政府は国や地域の垣根を越えてお互いに影響し合うグローバル社会の中で語学のスキルや主体性・責任感があり、異文化への理解を深めながら日本文化をの特徴をしっかりとらえ伝えることができる人材を、グローバル人材と定義づけています。
語学が堪能なグローバル人材の中でも、海外での経験を持ち、コミュニケーション能力があり、グローバル社会で新しい事に挑戦できるチャレンジ精神や適切な判断力があり、言語や文化の違う人達と協働して個々の能力を引き出せる人材がグローバルリーダーと定義されるでしょう。
国際社会において重要性が高まっている
日本経済は少子高齢化など社会情勢の変化に伴い、国内マーケットの需要のみで業績を伸ばすことが困難になっており、ビジネスを拡大するには国際市場へ視野を広げなければならなくなってきました。
海外市場への開拓を進める企業にとって、海外での事業を任せることのできる人材が重要な役割を担います。そのため語学のスキルとともに、コミュニケーション能力や判断能力などのリーダーとしてのスキルも備えているグローバルリーダーのニーズが高まっています。
グローバルリーダーの必要性と求める企業が増えている理由
経済のグローバル化
情報通信技術が進み、資本や労働力の移動が容易になってきた現代、国や地域の壁を越えた経済的な結びつきが深まってきました。
マーケットが国際的に開放されたことにより、国内市場と海外市場の境目がなくなり、人・モノ・情報が多様な環境の中で自由にやり取りされています。
そのようなグローバル化が進んでいる経済において、多種多様な人種・言語・文化の垣根を越えて国際的に活躍できるグローバルリーダーの存在が重要さを増してくるでしょう。
日本の国際競争力の低下
GDP成長率で示されているように、現在の日本社会は目まぐるしい経済のグローバル化の波に乗り遅れてしまい、国際競争力が低下しています。グローバル化の遅れにより伸び悩んでいる日本経済の最大の課題が、国際的に活躍できる人材が不足していることです。
日本企業には終身雇用や年功序列など古い体質の経営が根強く残っています。国際競争力を上げるためには、このような経営体質を見直し、グローバルリーダーの定義を理解したうえで、彼らが活躍できる社会にしていく必要があるでしょう。
求める理由①海外展開の大きな助けになるため
クローバル人材の定義には語学力の他、主体性・積極性・異文化理解・コミュニケーション能力などの要素が含まれています。これらの要素は国や地域を越えたクローバル社会を生き抜くには不可欠です。
海外展開を進めるには、これらの要素を持つグローバル人材の中でビジネスリーダーとしての素質も持つグローバルリーダーが重要な役割を担います。
多種多様な価値観を受け止めることのできるグローバルリーダーの存在は企業と海外の人材との懸け橋となり、海外展開への大きな助けになるでしょう。
求める理由②海外企業との連携が増えているため
国際市場での競争が激化する中で海外展開を進めるためには、海外企業との連携が不可欠です。海外企業と連携体制を構築するためには、高い語学スキルと相手企業のベースとなるその国の文化を理解する能力が必要でしょう。その能力を兼ね備えているのがグローバルリーダーです。
海外企業との懸け橋であるリエゾン活動ができるグローバルリーダーの活躍が国際競争で勝ち抜くために重要な役割を担っていくでしょう。
グローバルリーダーに欠かせないスキル
国際社会を牽引するグローバルリーダーには様々な国の人々と協働するために欠かせないスキルや能力が多数あります。どのような能力がを持つ人間がグローバルリーダーにふさわしいかを紹介します。
グローバルリーダーのスキル①学習能力
国際マーケットは急激なIT技術の進化に伴い急速に変化する、予測不能な市場です。そのため、グローバル社会で活躍する人材は、常に勉強をし、新しい知識を増やしていかなければなりません。
また、語学力も英語だけでなく多国語を使えるスキルがあると、グローバル社会でのコミュニケーションの幅が広がります。また、語学だけでなく様々な国の文化を理解する必要もあるでしょう。
常に知識を更新しているグローバルリーダーは、周囲の信頼を得ることができ仲間がついてきます。日々勉強を続ける向上心を持つこともグローバルリーダーには重要でしょう。
グローバルリーダーのスキル②卓越した仕事力
グローバルな社会で活躍するために、グローバルリーダーにはプロフェッショナルな仕事力が必要とされます。
厳しい国際競争の中で成功している企業は、課題解決能力に長けています。そのような企業には情報収集によって課題を設定し、その課題を分析して解決する能力を持ち、不足の事態にも臨機応変に対応した行動ができる人材が必要です。
グローバルリーダーにはその定義を理解し、様々な社会の動向に対応できる決断力と卓越した仕事力が必要でしょう。
グローバルリーダーのスキル③柔軟性
グローバル社会では異文化について理解を深め、多様な価値観を持つことが非常に重要です。様々な国の人々が協働することにより、多角的な視点でのアイデアが生まれ、国際競争力が向上します。
グローバルリーダーには、固定概念にとらわれずお互いの価値観や考え方を柔軟に受け入れ、場合によっては自分の価値観を修正していく柔軟力が必要でしょう。
グローバルリーダーのスキル④信頼を勝ち取る能力
様々な人種の人材が協働するグローバル社会においてグローバルリーダーとしての能力を発揮するには、一緒に働くメンバーとの信頼関係の構築が不可欠です。
団結して業績を上げているチームは、周囲からの信頼を得ることもできます。統率力があり信頼を勝ち取る能力を持つグローバルリーダーは、国際社会に必要な人材と言えるでしょう。
グローバルリーダーのスキル⑤コミュニケーション能力
グローバルリーダーのスキルで最も重要とされるのが、多種多様な人とスムーズにコミュニケーションがとれる能力です。国際社会でのコミュニケーション能力は、語学のスキルはもちろんのこと、様々な国の文化・歴史・風習を理解する能力も不可欠です。
それに加え、価値観の違う相手に柔軟に対応できる能力、相手の話を真摯に受け止める能力、自分の考えを伝える能力、仲間のやる気を向上させる能力など、グローバルリーダーには多様なコミュニケーション能力が必要とされます。
グローバルリーダーのスキル⑥視野の広さ
国際社会で活躍するグローバルリーダーには、自分の価値観にとらわれず様々な目線で物事を判断する、グローバルな視野の広さが必要です。
グローバルリーダーは進出を考えている諸国について、その国の文化をはじめ歴史や風習、現在の情勢、将来性などを多角的な視点で検証する必要があります。そのような視野の広い見解を持つことでグローバルリーダーは成長していくことができるでしょう。
グローバルリーダーのスキル⑦世界に対する好奇心
グローバルリーダーは世界で活躍する人材です。そのため世界に対する知的好奇心を持ち、常にアンテナを張って情報収集をし、学び続けることが不可欠と言えます。
世界情勢の変化に敏感に反応し瞬時に対応していく能力や新しい事を積極的に見つけようとする探求心、複雑な国際社会の未来を予測し挑戦するベンチャーマインドもグローバルリーダーに必要な要素と言えるでしょう。
グローバルリーダーのスキル⑧粘り強い挑戦心
様々な国の人と協働していると、うまくこちらの意向が伝わらないことや予測不可能な状況に陥ることがあります。しかしそのような逆境に立ち向かい、あきらめない粘り強い挑戦心がグローバルリーダーには必要です。
また、グローバル社会には国内では考えられない未知な領域が多く存在します。グローバルリーダーには失敗を恐れず、新しい事に果敢に挑戦するチャレンジ精神も求められるでしょう。
グローバルリーダーを育成する時のポイント
育成ポイント①次世代リーダーとして育てる
現代の日本経済はIT技術の向上と少子高齢化などに伴う人口減少などでグローバル化を余儀なくされています。そのため、世界で活躍できるグローバルリーダーは会社の将来を左右する存在です。
グローバルリーダー候補向けの研修の実施や教育プログラムの採用、海外ビジネススクールでの学習機会の提供などで能力を向上させる環境を用意し、国際社会で通用するグローバルリーダーを育成することが必要でしょう。
育成ポイント②国際的な環境での業務経験を積ませる
人が成長するためには、知識だけではなく、経験や体験が重要です。グローバルリーダーには、国際的な環境での実務経験が不可欠でしょう。
国際社会で活躍するためには、グローバルな視点で物事を捉える能力が必要です。そのためには若いうちから様々な国の人と触れ合い、現地の文化や風習を肌で感じ、モチベーションを上げることが大切です。
グローバルリーダーを育てるためには、会社をあげて国際的な環境で経験が積めるように人事施策をすることが重要でしょう。
育成ポイント③日本人の人材にこだわらない
グローバルリーダーが日本人でなければいけないという定義はありません。そのため、早急にグローバル化を進めたい会社は、優秀な外国人リーダーの活用を考慮することも戦略の一つとして有効です。
日本人のグローバルリーダーを育てることにより、日本文化の良さと異文化を融合させるメリットもありますが、現在の日本の教育は残念ながら語学が堪能な人材が育ちにくく、違う価値観を認め合う環境に欠けています。
グローバル化を目指すには、外国人のグローバルリーダーを採用し、日本の社員に刺激を与えることも一つの方法でしょう。
育成ポイント④日本でも育成可能であることを認識しておく
先述のように、グローバルリーダーを育成するためには国際的な環境での実務経験が重要です。しかし、国際的な環境に身を置くためには海外に行くことが必須ではありません。
インターネットの普及に伴い、国内にいてもWeb会議システムなどを使って海外と繋がることが可能になりました。また国内にも外国人従業員を採用している会社やサークルなどが増えたため、外国に人と触れ合うことが容易になってきました。
グローバルリーダーを育てるためには、国内においても国際的な交流を深める場を提供することが重要でしょう。
育成ポイント⑤人事が育成の妨げにならにようにする
グローバルリーダーを育てるためには、候補の人材が勉強や経験を積みやすい環境を作ることが重要です。全く海外とかかわりを持たない部署への人事や会社の古い風習に従った従業員育成プログラムに彼らをあてはめないようにする配慮が必要でしょう。
また、グローバルリーダーを目指す人材がそのことを発信しやすいような環境づくりも必要です。国際化を目指す企業の人事部はグローバルリーダーにふさわしい人材を見極め、応援するような体制を創り上げていきましょう。
グローバルリーダーの育成事例
育成事例①ファーストリテイリンググループ
ユニクロやジーユーといったアパレル製造小売業界で業績を伸ばし続けているファーストリテイリンググループでは新卒採用だけではなく学生時代から通年でグローバルリーダーの採用を行っています。
ファーストリテイリンググループでは多種多様な研修制度を設けるとともに、半期に一度自己申告制の「キャリアチャレンジプログラム」を実施し、既存の社員がグローバルリーダーへの可能性を広げることができるキャリアパスの体制を築いています。
育成事例②株式会社ドン・キホーテ
国内最大級のディスカウントストアであるドン・キホーテでも積極的にグローバルリーダーの育成に取り組んでいます。
ドン・キホーテの海外戦略は、店舗形態を日本と同じスタイルではなく、現地の文化や風習、消費への価値観に合わせた店舗形態の実現を目指しているため、グローバルリーダーには新しい形のドン・キホーテをつくり上げていく能力を持つ人材を求めています。
そのため売り場からキャリアアップしていった社員の中で、語学が堪能で新しい商品戦略を見出す力を持つ人材を、グローバルリーダーとして抜擢しています。
育成事例③株式会社LIXIL
建設資材や住宅機器メーカー5社が統合して誕生した株式会社LIXILは、大型海外M&Aを行うなどグローバル化への変革を進めている企業です。
株式会社LIXILでは、世界中のお客様が快適で豊かな生活ができる製品を提供し続けることを「勝ち」の定義とし、勝つためにはリーダーとして活躍できるグローバルな人材の育成が不可欠だと考えました。そのため職位全階層にリーダーシップを学習する機会を与え、優れたリーダーの育成に努めています。
育成事例④キャノン株式会社
日本を代表し、世界でも有数の光学機器メーカーであるキャノン株式会社では、グローバルリーダーの育成のために独自の海外留学プログラムを用意しています。
現在、アジア地域への海外進出を図るため、中国やインドへ1年半の留学を実施し、現地の文化や風習を理解した市場開拓ができるグローバルリーダーを育成する一方、ヨーロッパへの現地実務体験プログラムなど多様な育成体制を確立しています。
育成事例⑤東京大学
グローバルリーダーの育成は企業だけでなく、大学でも実施されています。大学でのグローバルリーダー育成プログラムはその趣旨に賛同した政府や企業の支援に支えられています。
学部学生の中で選抜された学生を対象に、国内外の様々な分野で創造的役割を果たすリーダーを育成する特別教育プログラムを実施しているのは東京大学です。
プログラムでは、語学力やグローバルな教養の学習をはじめ、学術的な授業、グローバルリーダーとして活躍している人物による講義や対話、グローバル社会に関する研究、海外へのボランティア活動の参加などが用意されています。
育成事例⑥東京工業大学
グローバルリーダーの養成を目的に、東京工業大学では文部科学省の博士課程教育リーディングプログラムに採択されている大学院教育として「グローバルリーダー教育院」を設置しました。
東京工業大学の特長である科学技術分野への強みを活かして、国際的に活躍できるグローバルリーダーを修士・博士課程を5年間の一貫教育で育成します。将来のリーダー育成として授業料は全額免除されます。
育成事例⑦国際教養大学
特化したグローバル教育を実践している大学として近年注目を浴びている大学が国際教養大学です。
国際教養大学では全ての授業を英語で行うことで、TOEFL500点以上の語学力を身につけます。また、入学から1年間は外国人留学生との交流を目的に寮生活が義務付けられ、異文化を理解する能力を身につけます。
国際教養大学では、様々なカリキュラムでこれからのグローバル社会を牽引する人材を育成する支援を行っています。
育成事例⑧東北大学
東北大学には学部学生を対象としたグローバル人材育成プログラムである「東北大学グローバルリーダー育成プログラム」通称TGLプログラムでグローバルリーダーの育成に取り組んでいます。
TGLプログラムは、東北大学の強みである柔軟で強固な「専門基礎力」を土台に、多種多様な分野で活躍できるグローバルな人材を育成するための実践的なプログラムです。
育成事例⑨北海道大学
豊かな人間性と国際を育むために北海道大学では特別教育プログラムを実施するカレッジを設置しました。それが新渡戸カレッジで、その名称は同大学出身で「日本最初の国際人」として活躍し、国際連盟事務次長を務めた教育者、新渡戸稲造に由来します。
新渡戸カレッジは、国際社会で必要な幅広い知識や自主性、協調性、リーダーシップ、日本人としてのアイデンティティなどを学び、多文化交流をする機会を提供することで、グローバルリーダーの育成に取り組んでいる教育機関の一部です。
育成事例⑩ビジネススクール「グロービス」
日本最大のビジネススクール「グロービス」では、企業のグローバル化に合わせて、サンざまな環境で活躍できるグローバルリーダーを育成します。
企業が目標とするグローバル化に成功するためには、このようなビジネススクールでの人材育成も重要になってくるでしょう。
グローバルリーダーの育成は企業のグローバル化に必要不可欠!
人口減少や社会の価値観の変換に伴い、今までの経営では業績の上昇が困難となり、企業の発展のためにはグローバル化が必須となってきました。
国境を越えた世界規模で幅広い交流が進むグローバル社会では、多様な価値観を認め合い、未来を切り開いていく能力を持つグローバルリーダーの存在が重要になってきています。グローバルリーダーの定義を理解し、世界的に活躍できるグローバルリーダーを育てて、国際競争力を付けていきましょう。