エンパワーメントの意味や利点は何か?
ビジネスに役立つ理論としてエンパワーメントというものがあります。会社の従業員や組織全体のパフォーマンスを高めることに役立つ考え方なので、さらに成長できる企業にするために参考にしてください。
特に近年の顧客のニーズの細分化においてエンパワーメントは非常に大きな関わりがあります。そういった顧客の期待に答えるためにもエンパワーメントを積極的に取り入れていきましょう。エンパワーメントの意味やビジネスに役立つ重要性、利点などを紹介します。
エンパワーメントとは?
個人や集団の潜在能力を発揮させる考え方
エンパワーメントというのは「権限や力を与える」という意味を持ちます。そのため「権限を与える」という意味で使われることがあり、個人や集団の潜在能力を発揮させる考え方としてビジネスに取り入れられるようになりました。
どんなに能力を持っている社員がいても、その力を発揮できる場や権限が無ければ宝の持ち腐れです。そういった能力を引き出しやすくすることがエンパワーメントの大きな目的なので、積極的に活用してください。
企業や人事領域における意味
エンパワーメントは企業や人事領域における意味として「能力開花」や「権限委譲」の役割があります。特定の人物だけが権限を保持し続けるわけではなく、部下やグループが能力を発揮できるように権限を持たせることに大きな意味があるのです。
エンパワーメントの発端
そもそもエンパワーメントの発端とはどういったものだったのでしょうか?この言葉が登場したのは中世に遡ることになります。中世カトリックにおいて、カトリック教会の法皇が王様や諸侯の代表に権力を授けることをエンパワーメントと表現していました。
当時はカトリック教会の権限が非常に強く、法律などの権限などは法皇に許可を受ける必要があったのです。その後、ブラジルの教育思想家が子どもたちの能力を開花させるための方法として取り入れていきました。
教育におけるエンパワーメントの概念
現在、教育におけるエンパワーメントは子どもたちが本来持っている力を信じて、それを引き出すことに意味があるとされています。ただ教えるだけではなく、子どもたちそれぞれの個性を尊重し、持っている能力を引き出して生きていく上で自立したものに成長させていくことにつながるのです。
保健医療福祉におけるエンパワーメントの概念
近年は少子高齢化が進み、介護や福祉の現場でもエンパワーメントの概念が重要視されています。つい利用者のことを心配するあまり、介護する側がすべてを代わりにやってあげてしまうことがあるでしょう。
しかし、エンパワーメントは利用者が自分自身の持っている力を使って自己選択し、自分で決定する力をサポートすることが重要です。保健医療福祉ではエンパワーメントの概念をそういった自己選択に結びつけています。
エンパワーメント情報学というプログラムの誕生
ITの世界も成長スピードは凄まじく、日常生活の様々な場面で役立てられています。こういった情報学においてエンパワーメントは、人の機能を補完し、強調するために利用されているのです。
特に介護現場などで役立つと考えられているロボットスーツやVRは、エンパワーメントの補完や機能を拡張する考えが関わっています。
ビジネスに役立つエンパワーメントの重要性や利点
業務スピードや生産性の向上に繋がる
ビジネスにおいてエンパワーメントが役立つ場面を解説します。どのような使い方をすればエンパワーメントの効果が発揮できるのかチェックしていきましょう。
仕事をしているときにトラブルや何かを決断するタイミングがあります。そのときに、上司の指示や判断を仰ぐことは必ずしも必要ないことでしょう。エンパワーメントによって部下に権限を与えておけば、自分で判断し、何よりも迅速に対応できるメリットが生まれます。
業務スピードや生産性の向上ができれば、時間の使い方も大きく変わってくるでしょう。本当に必要なことを相談するような関係性が構築でき、上司も時間を別の使い方に利用できるメリットがあるのです。
顧客満足度の向上に繋がる
迅速に判断できることはトラブルを解決する時間も短縮できます。たとえば顧客からクレームがあっても、対応した社員が問題解決の方法を自分で考え、できる限り早く応対できれば不満を最小限に抑えられるでしょう。
仕事への責任感が増す
エンパワーメントには仕事への責任感が増すという意味もあります。自分に権限が与えられることはやる気にもつながり、積極的に課題攻略にアプローチしていくようになります。
このようにエンパワーメントのうまい使い方ができると、社員は自分で考える能力を身に着けて責任感を身に着けます。何よりも仕事に対して当事者意識を持つことはリーダーシップが芽生え、会社を支えていく存在に成長するきっかけになるのです。
仕事へのモチベーションが上がる
仕事を任されることは責任感が増し、同時に自分が信頼されていることを実感できるタイミングです。自分の意志を尊重してもらえる場面も増え、意見が採用されればモチベーションが上がります。
マネージメント能力の向上にも繋がる
仕事が任されることでリーダーシップも生まれるようになり、チームを率いる存在になります。そうすると今度は全体のマネージメント能力が身に付くようになるでしょう。
今度は指導する側にまわることで、改めて気づくことも多くなります。リーダーシップの形も様々でどのように部下に対してエンパワーメントを使っていくかを考えましょう。エンパワーメントを使い方によって、社員のリーダーシップや自主性が身に付くのは大きなメリットです。
エンパワーメントの主なリスク
組織の方向性や目的にズレが生じる
使い方によってリーダーシップなどを育てられるエンパワーメントですが、リスクも存在します。エンパワーメントによって権限が与えられた人物が、個人的な考えで独断専行する危険性があるのです。
基本的な組織の方向性や目的を理解できていない人物が間違ったリーダーシップを発揮して、仕事にアプローチしていくことは大きなトラブルの原因になるでしょう。部署ごとがぶつかり合うような状態にならないように、方向性や目的は常に再確認してください。
生産性が低下してしまうことがある
すべての社員がリーダーシップを身につけられるわけではなく、チームの中心になることが得意なわけではありません。エンパワーメントの使い方によっては、社員を追い込んでしまうことがあります。
積極的に自分から物事をにアプローチしていくタイプもいれば、縁の下の力持ちのように目立たないながらもプロジェクトを支える存在もいるでしょう。そういった人物を無理にエンパワーメントで権限を持たせて判断を任せると、そのことに悩んでしまうのです。
心理的な負担が増え、決断が遅れることで生産性が低下することが懸念されます。誰しもリーダーシップの使い方が得意なわけではないので、エンパワーメントを行使するときに注意してください。
失敗による損失が発生することがある
生産性にも関わることですが、積極的にプログラムや企画にアプローチしていくことで失敗する可能性があります。どのような人物にエンパワーメントを行使するかを判断する側がミスを犯すと、そこから大きな損失につながってしまうのです。
時にはプログラムを任せたあとも状況を見守り、エンパワーメントを取り消す判断も求められます。コーチングを指導したり、定期的に再評価を行うことでプログラムが問題なく進行しているか判断してください。
エンパワーメントの実践方法
実践方法①企業風土を構築する
実際にエンパワーメントを実践する方法を確認しましょう。最初に企業風土を構築、再確認してください。企業全体で基本的理念や方針を確認し、意思統一することが求められます。
実践方法②目標の設定と権限の委譲
プログラムにどのようにアプローチしていくか、という目標設定を行いましょう。場合によっては複数レベルの目標を設定し、より高いものから簡易的なものまでハードルのように設定するのもおすすめです。
成功経験を積むことでリーダーシップが高まります。また、権限の委譲をどのようなタイミングでどの程度を行うかをしっかり検討してください。同時にプログラムに参加している社員にその意味や目的を丁寧に説明しましょう。
実践方法③定期的な確認とプロセスの評価
エンパワーメントを行使した後は、コーチングを行うなど定期的な確認とプロセス評価を行います。相談に乗り、部下の努力を評価する心理的なサポートも重要です。
エンパワーメントを実践する時の注意点
注意点①従業員に実践できるスキルがない
実践するときの注意点もチェックしましょう。エンパワーメントを行使する際は従業員のスキルや知識確認が重要です。そういったものを持ち合わせていない人にエンパワーメントを行使しても、リーダーシップを発揮することはできず、むしろ心理的な負担ばかりが増してしまうのです。
注意点②戦略の理解やルールの明確化が不十分
エンパワーメントで権利を委譲させても、すべての権限を渡すわけではありません。エンパワーメントの意味を説明し、必要なルールを設定するようにしましょう。ルールの明確化が行われていないと、会社の基本方針から大きくそれてトラブルの原因になるので注意してください。
注意点③信頼関係が成り立っていない
信頼関係が成り立っていない状態では、エンパワーメントによるアプローチは行わないほうがよいでしょう。仕事を任せて責任感を持たせる上では、お互いの信頼関係が必須です。
プログラムを任された側が信頼していないと、上司から仕事を押し付けられたように感じることもあります。そのためにもエンパワーメントを行使し、どのように社員が仕事にアプローチしていくか見守りながら時にはサポートしてあげましょう。
仕事に対する評価を定期的に行い、プログラムのプランを一緒に確認することも必要です。最終的な判断は部下が行い、その意志を尊重してあげられる関係性を築きましょう。
エンパワーメントの成功事例
成功事例①スターバックスコーヒー
世界的なコーヒーショップチェーンであるスターバックスは、エンパワーメントの成功事例です。会社が基本方針を設定しますが、それをどのように実践するかは各店舗の判断に任せる形を取り入れました。
接客スタイルに関しても、それぞれのお客さんに合わせて自分たちで考える形になっています。つまり、紋切り型のマニュアルではなく、自分たちで考えて生み出していく方針を採用しているわけです。
自分がお客さんの立場になったときに、どういったサービスをされると嬉しいのかを考える力が身につきます。このようなエンパワーメントの使い方によって、従業員は積極的にお客さんにアプローチできるようになりました。
成功事例②株式会社星野リゾート
株式会社星野リゾートはリゾートホテルや旅館経営を行っている企業です。当初はトップダウン方式で運営を行って成功していました。しかし、企業が成長していく中でその方法が必ずしも正しい結果を生み出さないようになったのです。
会社が退職者にその理由を調査したところ、トップダウン方式に不満を感じている人が多く見られました。そこで、今までのアプローチの仕方ではなく、エンパワーメント方式による運営に変更したのです。
社員の使い方やプログラムへのアプローチの仕方を変更し、立場関係なく自由に話し合いをできる方針に変更しています。その結果、働いている従業員は仕事の目的や目標を明確にできるようになり、積極的に意見を出してより良いサービスを生み出しました。
このような経営プランによって退職率は下がり、質の高い人材が定着するようになったのです。経営者側がトップダウン方式からエンパワーメント方式に切り替えることを決断したことで、大きく成功した事例といえるでしょう。
エンパワーメントを高める適切な使い方をマスターしよう!
エンパワーメントの意味や方法について紹介しました。エンパワーメントの使い方によって、社員は積極的にプログラムにアプローチするようになります。エンパワーメントを使う上では上司のコーチング能力も重要で、部下の評価や心理的なサポートも忘れないようにしてください。
会社の方針や目的をしっかりと理解させて意思統一を行った上で、エンパワーメントを行使していくことをおすすめします。今までの経営プランでうまくいかなかった会社は、自主性を高めるエンパワーメントを積極的に使っていきましょう!