コーポレートファイナンスの意味や評価方法を知りたい!
少子高齢化による市場の変化やテクノロジーの進化や人手不足によるコストの上昇により、企業が継続して経営を存続することが非常に困難になってきました。
このような状況下で企業価値の最大化によって資金利用の効率化を図るコーポレートファイナンスが注目されています。コーポレートファイナンスの意味や評価方法を理解し、学べる本で勉強して仕事に役立てることで、企業価値を高めて競争社会を生き抜いていきましょう。
コーポレートファイナンスとは?
企業にまつわる財務活動であるコーポレートファイナンスは、企業経営が正常に機能するために非常に重要です。その意味を理解することで企業価値を上げ、資金利用を効率的に行い、仕事に役立てましょう。
企業側におけるコーポレートファイナンスの言葉の意味
企業側におけるコーポレートファイナンスは、企業価値の最大化を目的に、いかに企業が仕事をするための資金を金融市場から調達し、その資金を事業に投資し返済をするかの活動を意味します。
企業価値の最大化を図るために必要な仕事は、調達した資金で最大の利益を得るためにはどのように投資するとよいかを分析し、実行することです。その仕事が企業にとってのコーポレートファイナンスの意味でしょう。
金融機関側におけるコーポレートファイナンスの言葉の意味
金融機関側におけるコーポレートファイナンスは、ある企業に対してその企業の信用に基づいて企業価値を判断し、企業の信用力を担保に融資を行うことを意味します。
そのため、企業の特定の事業だけに資金を準備し融資する「プロジェクト・ファイナンス」や企業の特定の資産だけを引当てとする「アセット・ファイナンス」とは少し意味が違ってきます。
コーポレートファイナンスの目的
金融市場で資金を調達し、調達した資金を企業にとって最も価値のある活用をし、経営を安定させることがコーポレートファイナンスの重要な目的です。
企業にとっての価値を意味する企業価値を最大化することは、コーポレートファイナンスの概念であると同時に企業の売却や買収を意味するM&Aの場面でも活用されます。
コーポレートファイナンスのメリット
コーポレートファイナンスのメリットは、借り入れを行う企業の信用力が担保となるので、比較的審査が通過しやすい点です。
コーポレートファイナンスを実施すると、投資できる資金が増え、業績をアップできるのでさらに企業価値を上げることができます。
そのような仕事ができるコーポレートファイナンスを効率よく活用して、企業価値を高め、安定した経営に結び付けていきましょう。
コーポレートファイナンスのデメリット
コーポレートファイナンスは企業の信用力を担保に借入を行うため、借入できる金額はあまり多くはありません。
また、もし借入をした企業が返済できなくなった場合、企業の財産が担保となるため、企業の財産を取り上げられてしまいます。そのデメリットを防ぐためには、あまり多くのコーポレートファイナンスを実施するのは避けた方が良いでしょう。
プロジェクトファイナンスとの違い
コーポレートファイナンスと似た意味の言葉にプロジェクトファイナンスがあります。プロジェクトファイナンスは企業が行うプロジェクトのうちの一つの事業に対して投資・出資・融資を行う財務活動を意味します。そのため、企業全体に対して活動をするコーポレートファイナンスとは意味が違ってくるでしょう。
また、プロジェクトファイナンスは一つの事業の収益性などが融資の担保ですが、コーポレートファイナンスは企業価値が融資の担保である点も違います。
コーポレートファイナンスにおける企業価値の算定方法
コーポレートファイナンスを実施するには、その企業価値を算定しなければ融資を受ける担保になりません。そもそもコーポレートファイナンスにおける企業価値とは、企業全体の経済的な価値を意味し、企業に将来発生する現金の現在価値を指します。その算定方法を知ることで、価値を最大化するコーポレートファイナンスの戦略を考察する参考になるでしょう。
資金調達源泉別の視点に立って算定する場合
コーポレートファイナンスにおける企業価値の算定方法の一つが、資金の調達の源泉である株主や債権者別の視点での実践的な算定方法です。この方法でのコーポレートファイナンスのおいての企業価値は、株主に帰属する株式価値と金融機関からの借入である負債価値を合算したものです。
コーポレートファイナンスにおいて株式価値とは、企業の発行済株式総数に取引時価をかけたものになります。つまりこの株式価値が株式を売買するときの売買価格のベースになります。
企業の投資内容の視点に立って算定する場合
コーポレートファイナンスにおけるもう一つの企業価値の算定方法は、企業の投資内容の視点での算定方法です。
この方法でのコーポレートファイナンスの企業価値は事業の将来的な収益価値である事業価値と現金・預金・有価証券などの金融資産を足したものになります。
コーポレートファイナンスにおける事業価値とは、対象となる企業が将来生み出すであろう現金や預金の流れを現在価値ベースで表したもので、株式時価総額+純有利子負債で算出できます。
2つの算定方法の使い方
上記の2つのコーポレートファイナンスにおける企業価値の算定方法は、株式を上場しているかどうかによって使い分けます。資金の調達源泉別の視点での算定方法は、主に株価をベースに株式価値の算定が容易で、負債価値も借入額を利用できる上場企業で使われます。
上場していない企業の場合は株式価値の算定が難しいので、企業の投資内容の視点に立って算定する方法を使うと良いでしょう。
コーポレートファイナンスにおける事業価値の算定方法
先述のように、コーポレートファイナンスにおける企業価値を企業の投資内容の視点に立って算定するためには事業価値を算定しなければなりません。その算定方法を紹介します。
DCF法を活用する
コーポレートファイナンスにおける事業価値を算定するには、DCF法を活用します。DCF法とは「割引キャッシュフロー」を意味し、事業が将来生み出すであろうと期待して出した価値から現在価値との違いを考慮して一定の割引率で割り引くことにより企業価値を算出する方法です。
DCF法を活用することにより、将来予測される事業価値が現在の価値でどのくらいの価値があるのかの判別が可能になります。そのため、コーポレートファイナンスにおける企業価値を企業の投資内容の視点に立って算定する 際に投資するべき対象をより明確にできるでしょう。
「将来価値」や「現在価値」とは?
コーポレートファイナンスにおける事業価値の算定にDCF法を活用する際、お金には時間価値があるとする「将来価値」や「現在価値」の考え方に基づきます。
「将来価値」の意味は、現在保有しているものについて将来の貨幣価値がいくらになるかを算出した金額です。「現在価値」は将来獲得することができるお金の現時点の価値に計算し直した金額を意味します。
DCF法を活用した事業価値の算定方法
DCF法では、将来に生み出すと予想される現金の流出入であるフリーキャッシュフローの総額を将来価値として、現在価値に換算するために一定の割引率で割り引いてコーポレートファイナンスにおける事業価値を算出します。
この割引率は、一般的に借入にかかるコストと株式での調達にかかるコストを加重平均した加重平均資本コストで割り引く方法が用いられます。
コーポレートファイナンスにおける株式価値の算定方法
株主価値とは企業価値から有利子負債や将来資金が流出するキャッシュアウト、余剰現預金を引いたものを意味します。コーポレートファイナンスにおける株式価値の算定方法を紹介します。
時価純資産法を活用する
コーポレートファイナンスにおける株式価値の算定方法の一つが企業が保有している資産の時価総額から負債の時価総額を差し引いて算出する時価純資産法です。
企業が作成している貸借対照表を基に、資産の時価評価および簿記に記載されていない負債の計上などの調整を行って現在時点の時価額に置き直し、会社を売りに出したとき現時点ではいくらの価値になるかを算出します。
時価純資産法は、過去に生み出された純資産を基準として企業を評価するので、将来性などは考慮せず、個人の主観が入りにくい手法です。そのため、コーポレートファイナンスにおける株式価値の算出によく用いられます。
類似会社比準法を活用する
コーポレートファイナンスにおける株式価値の算出方法には、類似した事業を行っているいくつかの株式公開企業の株価を基準として、評価対象企業の企業価値を算定する類似会社比準法という手法もあります。
上場企業の純利益、純資産を基に平均倍率を算出し、評価対象企業の純利益や純資産にその倍率をかけてそれぞれの結果の平均が株式価値の推定値です。
コーポレートファイナンスでの資金調達方法
資金調達方法①利用していない資産を売却する
まず考えられるコーポレートファイナンスでの資金の調達方法は、利用価値が低く不要な不動産・有価証券・営業車などを売却して投資に回す方法です。
利用価値が低い資産を持っていても固定コストがかかるだけでメリットはありません。将来を見越してコーポレートファイナンスでの自由に利用できる資産を増やすためにも、利用していない資産は売却して投資を回しましょう。
資金調達方法②融資を受けて投資に回す
コーポレートファイナンスでの資金調達方法には、金融機関から融資を受けて投資に回すという方法があります。
銀行からの融資は信用力や不動産などの担保が必要となりますが、比較的多額の融資が受けられます。主に消費者金融が扱うビジネスローンは審査が早く担保が必要ないのですが、借入できる金額は少額で金利は高めです。自社の状況に合わせて使い分けると良いでしょう。
融資には返済義務が生じます。借りたお金を運用するにはリスクが生じるということを念頭に置いて、融資を受けるようにしましょう。
資金調達方法③株式を発行する
コーポレートファイナンスにおいて返済義務なしで資金を調達する方法は株式の発行です。自社の株式を発行して第三者に購入してもらうことで資金を調達する手法で、比較的自由に投資ができます。ただし、この手法は第三者に自社の株式を購入してもらうため、上場できる規模の企業でないと難しいでしょう。
また、株数に応じて配当を支払う必要があるので一定のコストがかかり、場合によっては経営権を奪われることがあるので気を付ける必要があります。
資金調達方法④社債を発行する
上場できる株式の発行が難しい中小企業がコーポレートファイナンスにおいて資金調達をする手段として、社債を利用する方法があります。社債は企業が投資家から資金調達を目的として発行する債券です。
しかし、大型な社債の発行にはコストがかかり、購入者の募集が困難です。そのため、中小企業でも実践で資金調達がしやすいのが、49人以下の投資家に発行できる少人数私募債です。
少人数私募債は、通常の社債に比べて手続きが簡単で無担保で発行が可能というメリットがありますが、利息の返済義務はあるので、綿密な投資計画のもとに発行するようにしましょう。
資金調達方法⑤ベンチャーキャピタルから出資を受ける
株式上場していない企業がコーポレートファイナンスにおいて資金調達をする手段には、複数の投資家が集まって将来性のある新興企業に出資する団体であるベンチャーキャピタルから出資を受ける方法もあります。
この手法は株式と同じく出資なので返済義務はないのですが、経営への干渉を受けることもあるので、できるだけ信頼関係を構築し事業プランを理解した上で出資してくれるベンチャーキャピタルから資金調達を受けると良いでしょう。
資金調達方法⑥エンジェル投資家から出資を受ける
企業したばかりの企業がコーポレートファイナンスにおいて資金調達をする手法として、資金を供給して企業の成長を応援したいと考えるエンジェル投資家から出資を受ける方法があります。
富裕層の個人投資家であるエンジェル投資家は企業の成長を助けたいという思いとともに、エンジェル税制による節税の目的もあるので、審査があまり厳しくありません。
最近ではFounderなど起業家とエンジェル投資家とのマッチングサイトもあるので実践で活用してみると良いでしょう。
資金調達方法⑦助成金や補助金を活用する
コーポレートファイナンスにおいて資金を調達するには、国や地方公共団体が公募している助成金や補助金を活用する方法もあります。
とくに創業時には助かる方法ですが、使用用途などが限られており、審査が厳しい場合が多いのですが、返済義務の無いものもあるのでチャンスがあれば実践で活用してみましょう。
コーポレートファイナンスでの投資評価の方法
コーポレートファイナンスで企業価値を求める指標には、投資評価による方法もあります。コーポレートファイナンスの意味である企業価値を最大化するための投資をするには、調達した資金をどのように投資すると最大の利益が得られるかを分析して投資を実践する必要があります。
コーポレートファイナンスでの投資をする際には、いくつかの投資に対してその投資によって本当に儲かるのか、いつ投資金額が回収できるのかを比較検討し、最も企業にとって意味のある投資を実践する必要があるでしょう。そのために利用されるコーポレートファイナンスでの投資評価方法を紹介します。
評価方法①NVP法(正味現在価値法)
コーポレートファイナンスにおけるNPV法とは、投資によってどれだけの利益を得られるのかを利益額の面から判断し、投資の意思決定をする評価方法です。正味現在価値法と呼ばれ、その投資によって将来生み出すことができるキャッシュフローの現在価値の合計から投資にかかる費用を差し引いて求めます。
コーポレートファイナンスでのNPVがプラスなら、その投資は利益があるので投資すべきと判断され、NPVの値が大きいほど意味のある投資といえるでしょう。
評価方法②IRR法(内部収益率法)
コーポレートファイナンスでのIRR法は投資によって将来生み出されるキャッシュフローの現在価値とその投資に必要な現在価値がちょうど均衡する割引率である内部収益率がいくらかを算定することでその投資の利益率を測る評価方法です。
投資家はこの内部収益率が資金調達に係る金利よりも高い場合はその投資案は利益があると判断し投資を行います。
コーポレートファイナンスが学べる本
昨今の競争社会を生き抜く仕事をするには、より有意義な資金調達ができるコーポレートファイナンスを学ぶ必要があります。コーポレートファイナンスについて学習できる本を紹介しますので、財務分野での実践の経営判断に活かしてください。
グロービスMBAファイナンス
企業の資金調達であるファイナンスは経営の意思決定に重要な役割を果たします。そのファイナンスの理論をコーポレートファイナンスを中心に基礎から分かり易く解説した、リチャード・ステンゲルらグロービス経営大学院が監修した経営学初学者向けの本です。
ファイナンスの概論を実践の仕事での例を使って説明しているので、コーポレートファイナンスを学ぶ入門本として役に立つでしょう。
ファイナンシャルマネージメント
ファイナンスのテキストとしてアメリカの主要大学のMBAで採用されている本です。現代の企業ファイナンスに必須のキャッシュフロー経営やコーポレートファイナンス、資本コストなどの理論と知識を体系的に学べます。
特にキャッシュフローの計算などは実際に仕事をする人の立場にたった説明のため実践で役立ちます。また、章末に問題があるので、コーポレートファイナンスの勉強にお勧めです。
ざっくり分かるファイナンス経営センスを磨くための財務
企業戦略と資本主義に着目したコンサルティングを行っている石野雄一氏が書いた、コーポレートファイナンスについての解説書です。分かり易い言葉と実践例で説明しているのでコーポレートファイナンスについてざっくり体系的に理解したい人にお勧めの本といえます。
コーポレートファイナンスの初歩的な部分であるキャッシュフローやバランスシートの読み方からNPVやWACCなどの専門的な金融用語まで詳しく説明が書かれている本ですのでコーポレートファイナンスを一から学べるでしょう。
企業価値の神秘
コーポレートファイナンスの理論を基本から学びたい人やもう一度基本に戻ってコーポレートファイナンスを学んで仕事に活かしたい人にお勧めのファイナンスについての入門の本です。
実務と学術両方の視点でコーポレートファイナンスに重要な企業価値の概念やNPVやWACCの経験過程などを詳しく説明しているので、企業の経理財務担当者は実践の仕事で役立つでしょう。
コーポレートファイナンスの実践講座
株式や社債の発行の少ない中小企業が一般的に行っているコーポレートファイナンスが実践的に書かれている書籍です。森ビル取締役専務執行役員である堀内勉氏が間接金融が中心である日本特有の金融市場での金利の仕組みや資金調達などの財務活動を実践的な視点で解説しています。
金融機関を通じた必要資金の調達という、最も基本的な財務活動を企業の経営者やコーポレートファイナンスに携わる者に活用しやすいように、一般的なビジネス書には載っていないような専門的コーポレートファイナンの実践例で掲載されています。
コーポレートファイナンスを仕事に役立てよう!
コーポレートファイナンスには、資金調達や投資行動、配当政策や資本政策など、企業を経営したり、企業や事業に対する投融資をおこなったりする上で不可欠な基礎知識が集約されています。
コーポレートファイナンスを学べる本やセミナーなどで、コーポレートファイナンスの意味やコーポレートファイナンスでの企業価値の算定方法や投資の評価方法を理解して有意義な資金調達を行い、仕事に役立てましょう。