育休明けには育児短時間勤務制度を活用しよう!メリットと利用方法

育休明けには育児短時間勤務制度を活用しよう!メリットと利用方法
目次

育休明けの時短勤務に育児短時間勤務制度を活用するには?

育児休暇は、子供を産んでからおおよそ1年までの休暇です。育休明けに働こうと思ったとき、保育園の送り迎えの時間や小さな子供への負担、育児と仕事の両立などを考えて短時間での勤務を希望する人が多くいます。短時間で働きたいという方がまず知っておきたいのが、育児短時間勤務制度のことです。

そこで本記事では、育児短時間勤務制度についてや対象者、制度を利用するときの注意点、いつまでの期間に利用できるのかなどをまとめました。また、短時間制度を導入するメリットや導入事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

育児短時間勤務制度とは?

3歳未満の子供を養育する労働者が利用できる制度のこと

育児短時間勤務制度とは、2009年の育児・介護休業法の改正により企業に導入が義務付けられた、3歳未満の子供を養育する労働者が利用できる制度のことです。この制度を利用することで、1日の所定就労時間を原則6時間までにできます。

また、男性従業員であっても育児短時間勤務を利用することが可能です。育児と仕事を両立していく上で、育休明けに働こうと考えている労働者が抱える体力面や精神面での不安を緩和するために整えられました。

「3歳未満の子供を養育する」という言葉の意味

「3歳未満の子供」という言葉の中には、「3歳の誕生日の前日まで」という意味があります。これは実子のみならず、法改正によって養子縁組の里親に委託されている子供も対象です。育休明けに働こうと思っても、子どもがまだ3歳未満であれば対象となる可能性があります。

また、「養育する」という言葉の中には、「同居して監護(監督保護)をする」という意味が含まれており、病気などの理由で一時的に一緒に住んでいなくても「養育している」と判断が可能です。

育児短時間勤務制度の利用状況

育児短時間勤務制度が施行されて以降、2015年には57.8%、2017年には66.4%の企業が導入を進めています。また、実際に育児短時間勤務を利用している割合は2015年で女性が29.2%、男性が0.5%と決して多いとは言えない数字です。

育児短時間勤務の利用者が少ない原因として、「育休明けなのに職場の人に迷惑でないか」「給料の減少が心配」「今後のキャリアに響きそう」といった不安から利用を躊躇してしまう人が多いようです。ですが、育休明けだからこそ、体力面や精神面のことを考えて行動すると良いでしょう。

育児短時間勤務が利用できる期間

育児短時間勤務は「子供が3歳に達する誕生日の前日まで」利用することが可能です。なお、適用期間は会社側が決めるのではなく、労働者が申し出た期間の適用が望ましいと指針では示されています。

そのため、育休明けから「小学校就学が始まるまで」「小学校卒業まで」「小学校卒業後も利用可能」と最長利用期間がいつまでなのかは企業によって異なっているのが特徴です。

また、3歳以降小学校就学前の期間に関しては「事業主の努力義務」としていて、短時間での就労や時差出勤などの対応に努めなければなりません。時短勤務の利用を考えている人は会社の最長利用期間がいつまでなのかをしっかりと確認し、今後の生活のことを考えておくことが大切です。

短時間正社員制度との違い

育児短時間勤務制度と短時間正社員制度の違いは、対象者が育児以外の目的でも利用できるのかどうか、法的義務があるかどうかです。法的義務がある育児短時間勤務制度に対し、短時間正社員制度は法的義務はありません。

制度の導入も企業の任意になっています。そのため、育児短時間勤務制度と間違われやすくなっているのが特徴です。

育児をするための育児短時間勤務とは異なり、短時間正社員は育児に関わらず介護などを理由に時短で働きたい労働者や、キャリアアップを目指すパートタイム労働者などのさまざまな労働者が利用できます。

そのため、育休明けに短く働きたいと考えている人でも、周りに迷惑かどうかを気にせず利用しやすい制度です。

育児短時間勤務制度を導入するメリット

企業側のメリット

育児短時間勤務を導入するにあたって、育休明け早々の利用によって「他の社員への負担」「時短勤務でどこまでの仕事ができるのか」など懸念を持つ企業があることでしょう。

ですが、育児短時間勤務制度を導入する企業側のメリットは、個人・会社全体の業務の効率化や生産性アップや能力の高い人材の確保、企業のイメージアップなどがあります。

また、育休明けにいきなり通常業務を任せてしまうよりも、時短勤務のほうが育休明けすぐに働く従業員の負担が少なくなり、離職率も下がる可能性があります。

利用者側のメリット

制度を利用するにあたって、「育休明けで時短勤務は周囲に迷惑かけるかもしれない」「迷惑かけるのなら辞めたほうがいい」と不安を抱える従業員の方もいることでしょう。

ですが、育児短時間勤務制度を利用するメリットは、安定した収入の確保やキャリアを維持できること、無理なく育児と仕事の両立ができるなどがあります。

「育休も取得したのに、育休明けで短時間勤務はさらに周囲に迷惑をかける」などと考えず、仕事で活躍できることを考えましょう。

育児短時間勤務制度の対象者

育児短時間勤務制度の対象となる条件

男性や女性に関わらず対象者です。その他の条件として、1日の所定労働時間が6時間以下や日々雇用される労働者ではないこと、労使協定による適用除外者ではないなどがあります。

また、契約社員や公務員、アルバイト・パートの従業員も条件が揃っていれば適用対象です。アルバイトやパートの場合、1日の所定労働時間が6時間以下でないかどうかが重要になります。

男女問わず幅広く対象になっているので、育休明けに働くことが心配な方は育児短時間勤務を利用することは周囲に迷惑になると考えず、家族や会社に相談して聞いてみると良いでしょう。

労使協定により適用が除外される労働者とは?

労使提供とは、企業と労働者の間で結ばれる協定のことです。この労使協定によって企業側で育児短時間勤務の適用除外とされる労働者の条件は、継続した雇用期間が1年未満や週の所定労働数が2日以下などがあります。

しかし、育児短時間勤務制度を利用できない労働者には、適切な対応や代替措置を講じなければならないので注意が必要です。

適用が難しい業務に従事する労働者への対応

適用が難しい業務に従事する労働者について、企業はフレックスタイム制の導入や始業・就業時間の繰り上げ・繰り下げなどの時差出勤、事業所内保育園の設置などを講じなければなりません。

また、労働者から時短の希望があった場合、双方の合意の上で時短が可能な業務への一時的な配置替えをすることができます。

その場合は、短時間勤務終了後のトラブルを防ぐために育休明け前にしっかりと話し合い、短時間勤務はいつまでにするのか、配置替えはいつまでなのか、終了後の配置はどうするのかなどを決めておくと良いでしょう。

短時間勤務制度の対象外となる従業員への代替措置

育児短時間勤務を利用できない労働者に対し、短時間勤務に変わる措置を取らなければならないと義務付けられています。(育児・介護休業法の第23条第2項)代替措置として認められるものには、育児休業に準じた措置やフレックスタイム制、時差出勤などの制度です。

時差出勤が可能になれば、出勤前に子供を保育園に送ることができます。また、通勤ラッシュの時間を避けて出社できるので、通勤時の負担軽減にも繋がるでしょう。

育休明けすぐに通常業務を任せるよりも、働き方の選択肢を増やすなどの企業側の配慮によって、従業員の定着率アップにも繋がる可能性があります。

育児短時間勤務制度を利用する時の流れ

育児短時間勤務の申請を受ける

育休明けの育児短時間勤務開始日までに「育児短時間勤務申請書」を提出します。育児短時間勤務の取得は1ヵ月以上1年以下の期間で申請可能です。提出の締め切り日は基本的に育児短時間勤務開始日の約1ヵ月前までが多いですが、期限がいつまでなのかは企業ごとに決めることができます。

もし申請を考えている方は、事前に提出期限がいつまでなのかを会社に確認しておくといいでしょう。また、申請する場合は育休明け前、なるべく早く提出するようにしてください。

短時間勤務の期間を通知する

申請書にて決定した時短勤務の期間はいつまでなのか、就労時間は何時から何時までなのかなどの詳細を通知します。育休明けに時短勤務をする上で、変動する給与や社会保険料などの説明を忘れずに行いましょう。時短で働きたいと考えている労働者は、疑問点などを聞いておくと安心して仕事の準備ができます。

短時間勤務を取得する従業員と期間を社内に周知する

時短で働く人がいる場合、業務に支障が出ないように仕事内容などの調整をし、時短で働く人について他の従業員にいつまでの期間が対象なのかを周知します。もし、従業員が育休明けすぐに時短で働く場合、復帰日も同時に通知してください。

また、他の従業員の理解を得るために育児短時間勤務の制度についても併せて周知し、迷惑をかける可能性があると説明することで、育休明けに時短で働く人が復帰した後も業務を続けやすくなります。

職場復帰後、短時間で働く人は周囲に迷惑をかけるというスタンスよりも、仕事に全力を注ぐスタンスで仕事しましょう。

育児短時間勤務を実施する

全ての準備が整ったら育児短時間勤務を実施します。育休明け後に負担の大きい業務ではないか、育休明け前の通常勤務時間と同じ終業時間になっていないかなど随時確認しましょう。万が一、正しく決められた通りに運用ができていない場合、業務内容や配置などの見直しをします。

社会保険の手続きを行う

育休明けすぐに育児短時間勤務を利用し、給与が下がったときは「育児休業等終了時報酬月額変更届」「養育期間標準報酬月額特例申出書」を作成します。

作成後、提出することで育休明け後の給与額が適用され、社会保険料の減額が可能です。また、書類の提出期限はいつまでなのかを会社に確認しておくと良いでしょう。

育児短時間勤務制度を利用する時の注意点

注意点①育児短時間勤務の延長は企業次第

育児短時間勤務は従業員が希望すれば子供が3歳になるまで利用できますが、時短勤務の期間延長は企業が判断します。実際に期間の延長ができるのかどうかや延長できる期間はいつまでなのかを確認しましょう。育児短時間勤務の「3歳未満まで」の企業が多いのが現状です。

注意点②給与の支払いは企業の任意となっている

働いた分の給与は支払われますが、時短になった分の給与に関して支払うかどうかは企業の任意です。万が一、時短になった分の給与が減給となっていても違反にはなりません。

また、フルタイム労働者と時短労働者が同等の給与をもらっているとすると、他の従業員との公平性が保てなくなるという理由があります。

短時間勤務にした分を減給となれば他の従業員のモチベーションや公平性が保てるようになり、育休明けの従業員が育児短時間勤務を利用しやすくなるでしょう。

注意点③給与総額が減ると社会保険料も減額になる

社会保険料は給与の金額によって変動するため給与の金額が減れば社会保険料も安くなりますが、給与の下がり幅に対して社会保険料の減額はそこまで大幅ではありません。

給与が低くなったのにも関わらず、社会保険料があまり低くならないとなると時短労働者の負担が大きくなってしまいます。そんなときは「育児休暇終了時報酬月額変更届」を提出すれば育休明けの給与額が適用され、社会保険料を安くすることが可能です。

育児短時間勤務制度の導入事例

導入事例①トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車は育児支援制度を積極的に取り入れており、男女問わずライフプランに合わせたキャリア形成を支援している企業です。

そんなトヨタ自動車の育児短時間勤務は育休明けからではなく、出産前から小学校卒業まで利用できます。適用単位は1カ月ごとで、1日の所定労働時間を4時間・6時間・7時間のいずれかから選ぶことが可能です。

導入事例②ソニーグループ株式会社

ソニーでも、男女問わずライフプランに合わせたキャリア形成を支援している企業です。育児短時間勤務も育休明けからではなく、出産前から小学校卒業まで利用できます。

また、実際に育児をしている女性社員とパートナーで仕事と家庭の両立について考える会や、従業員の家族を対象に職場見学などのイベントを開催しており、育児支援制度を利用しやすい雰囲気作りにも力を入れています。

導入事例③全日本空輸株式会社

全日空では短時間勤務の他に、短日数勤務制度や育児・看護休暇などのさまざまな育児支援制度があります。全日空の育児短時間勤務は育休明けから子供が9歳になるまでの期間に、1日の所定労働時間を6時間まで時短が可能。

さらに、労働日数を約5割・約7割・約8割のいずれかから選ぶことができ、1カ月の労働日数を約10~16日程度まで減らすことが可能です。

育休明けの時短勤務に育児短時間勤務制度を活用しよう!

育休明けに利用できる育児短時間勤務制度の条件や利用方法、導入のメリットなどについて紹介しました。育休明けは慣れない育児と仕事で労働者の精神面や体力面で負担が大きくなり、「迷惑をかけてしまった」と退職する労働者が増えています。

育休明けの退職者を減らすために、育児短時間勤務制度を導入・利用すると良いでしょう。「育休明けに育児短時間勤務を利用するのは、周りに迷惑をかける」と考えてしまうのではなく、利用するのであれば仕事中はは全力で業務に取り組む姿勢や配慮が重要です。

育休明けに利用するときは適用される期間がいつまでなのか、提出期限はいつまでなのか、社会保険の減額はどうするのかなどをきちんと確認してください。うまく制度を利用して、働きやすい環境作りを目指しましょう!

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