経営分析のやり方をマスターしたい!
企業を経営を目指す経営者は、現在の会社の成績や状況をエクセルを活用したグラフや様々な指標、フレームワークやツールを利用して客観的に分析する経営分析をする必要があります。経営分析によって今の会社の強みや問題点を検証し、今後の経営戦略の基本を策定することが可能です。
経営分析を実施することは会社の将来を左右するために大切です。経営分析のセミナーに参加するなどして正しい経営分析の手法の基本をマスターして会社を適切に運営し、業績をアップしてください。
経営分析とは
経営分析の言葉の意味
経営分析とは財務諸表や貸借対照表や損益計算書などの決算書の数値情報を基本にした指標で、エクセルで出したデータをあらゆる角度から会社の収益力や財政状態を分析し、客観的に自社の経営状態を可視化することを指します。
経営分析をするには、主に資金力の分析、収益力の分析、会社の財政状況が安全かどうかの分析、労働力に対する生産性や成長性の分析などが必要です。
経営分析の重要性
経営分析によって自社の運営状態を知ることは、会社を効率よく合理的に経営するために不可欠です。また、経営分析は会社の経営危機の回避や会社の利益の予測にも重要な役割を果たします。
会社の状況をエクセルによる計算書や状況分析に有効なツールやフレームワークを使って分析することで、自社の強みや問題点を明確にすることが可能です。同業他社との比較もでき、その業種での自社の位置づけを把握することができるでしょう。そのため、今後の自社の経営戦略を策定する指標の一つになります。
経営分析と財務分析の違い
経営分析と同様の意味で使われる言葉に財務分析があります。財務分析とは、財務諸表などの数値情報をエクセルなどを基本にした指標で会社の経営状態を把握することです。
経営分析ではエクセルではじき出した決算書などの数字を基本にした分析だけでなく、従業員や取り扱い商品、サービスなどの特徴、業界や取引先・仕入れ先など利害関係者の情報、社会情勢の動向など経営に関わる様々な角度からの分析も行います。
財務分析は財務諸表をエクセルではじきだした数値を指標とする定量的な分析であるのに対し、経営分析は広い視野でのあらゆる指標を基本にする定性的な分析である点が大きな違いと言えるでしょう。
経営分析の手法と見るべき指標【収益性分析】
経営分析の手法の中には企業がどれだけ利益を得る力があるかを測る収益性分析という手法があります。収益はエクセルなどを活用して数値化しやすい情報ですが、一口に収益といっても重視する利益は業種や形態によって違ってきます。基本になる6種類の指標を知って自社にあった指標を活用してください。
総資本経常利益率(ROA)
経営分析の収益性分析の一つに総資本経常利益率(ROA)があります。総資本経常利益率とは会社の事業に対して投資された純資本に対して経営活動によりどれだけの事業利益が得られたかを示す指標のことです。
ROAの数値が高くなればなるほど、企業は効率的に投資された資本を運用できているということになります。一般的に利益率が5%以上だと良好であるとされており、2%以下の場合は改善の必要があるでしょう。
自己資本当期純利益率(ROE)
収益性分析を行う際の手法として自己資本当期純利益率(ROE)があります。自己資本当期純利益率とは自己資本に対して当期純利益の占める割合を示す指標です。
自己資本とはの返済の必要がない資本で株主などから調達した資本金が主になります。当期純利益は売上からあらゆる支出を差し引いた純利益になります。
この数値が高いほど、株主の出資により多くの利益を生み出しているといえるでしょう。ROEが高い企業は株主への配当金が多くなるので、魅力のある企業としてより出資者が増えます。そのため資本金がさらに増え、企業の経営は良い方向へと進むでしょう。
売上高総利益率
経営分析にはどれだけ企業の収益力があるかを知ることが重要です。企業の収益性を計る尺度の一つに売上高総利益率があります。売上高総利益率は売上高から売上原価を引いた総利益が、売上に占める割合のことで一言でいうと企業の粗利益率です。
売上高総利益率は企業の収益性を示す指標として最も利用されます。売上高総利益率を分析することは、経営分析の手法として不可欠な指標であると言えるでしょう。
売上高営業利益率
経営分析の収益性分析には売上高営業利益率という手法もあります。営業利益とは売上総利益からさらに販売管理費を引いた利益のことです。その営業利益の売上高に占める割合が売上高営業利益率になります。
売上高営業利益率が高い企業は本業が上手くいっている企業と言えます。低い企業は販売のためにかかるコストが高いと分析されるので、販売コストの見直しが必要でしょう。
売上高経常利益率
売上高経常利益率も収益性分析の手法の1つとなります。経常利益とは企業が通常の事業全体から経常的に生じる利益のことで、売上高経常利益率は売上高に対する経常利益の割合です。
経営分析で売上高経常利益率が低いと解析された場合は、収益を得るための事業のシステムに問題があるので、見直しが必要でしょう。
売上高販管費率
収益性分析の手法の中には売上高販管費率という指標もあります。販管費とは事業を行う上で生じる販売費や一般管理費などの費用のことで、この指標は「費用」に着眼して分析する指標です。
売上高における販管費は低いほど収益力があります。売上高販管費率が高い場合は販管費の見直しが必要でしょう。
経営分析の手法と見るべき指標【安全性分析】
経営分析の重要性の1つが会社の現在の状態を知ることです。そのためには会社の財政の健全性を分析する必要があります。そのような会社の安定性を数値情報で測定する経営分析の手法が安全性分析です。
流動比率
1年以内に返済しなければいけない負債に対して1年以内に現金化できる流動資産がどれだけあるかを表す指標を流動比率と言います。流動比率は安全性を測る安全性分析の手法の一つで流動比率が高い会社は短期的には安全な会社です。
流動比率が200%を超える会社は優良と判断されます。100%を下回る場合は新たな資金調達の必要性があるでしょう。
当座比率
経営分析の安全性分析の手法には当座資産で会社の安全性を測る当座比率という手法もあります。当座資産とは、1年以内に現金化できる流動資産のうち、換金性の高い現金・預金・受取手形・売掛金を指します。
会社の棚卸資産は現金化できる保証がありません。棚卸資産を含まない当座比率のほうが流動比率よりもさらに厳密に会社の短期安全性を測定できるといえるでしょう。
固定比率
経営分析には長期的な安全性を分析する手法もあります。返済の必要性がない自己資本に対して会社の固定資産がどれだけあるかの割合を示す固定比率がその1つです。
固定比率は高いほど安全性が低くなります。固定比率が100%を超えた場合は自己資本を上回る借金があることを示すので、改善の必要があると判断されます。ただし、長期的に返済する固定負債など加味すべき判断材料が複数あり、すぐに安全性に問題があるとは限らないので注意しましょう。
固定長期連合率
固定比率は自己資本に対しての指標でしたが、固定長期連合率自己資本に固定負債を足して固定資産の割合を測る指標です。
固定長期連合率も高いほど安全性が低く、100%を超えた場合の危険度は固定比率よりも高いです。流動比率が小さく固定長期連合率が高い場合は、設備投資を見直して固定資産を減らしたり、株主を募って自己資本を増やすなどの経営改善が必要でしょう。
自己資本比率
資本調達の視点から中長期的な経営分析をする手法に自己資本比率があります。自己資本比率とは返済不要の自己資本が純資産に負債を含めた総資本の何%の割合を示すかを表した数値です。
自己資本比率が高いほど他人資本の影響を受けにくくなり、安定した経営が行えます。自己資本比率が40%よりも低い場合は、純資産を増加させるか増資を行って経営改善をする必要があるでしょう。
負債比率
会社経営の安全性を表す指標には負債比率という手法もあります。自身で調達した自己資本に対して他人資本である負債がどの程度あるかの割合を示す比率のことです。
負債は返済義務があり利息が伴うので、リスクの大きい資本です。そのため負債比率が高いと会社の安全性は低くなります。しかし、投資によって収益が見込める場合は自己資本だけでは限界があるので、負債比率を高める戦略が必要でしょう。
経営分析を有効に活用するには、安全性ばかりにとらわれず、状況に応じた攻めと守りの経営戦略をすることが大切です。
経営分析の手法と見るべき指標【効率性分析】
経営分析には、事業に投じた資本をより効率的に活用して売上や利益を得るかをエクセルなどを活用して検証する効率性分析も必要です。効率性分析では、基本的には投資した資金が売上げとして戻ってくるまでのサイクルである「回転」と呼ばれる指標で分析します。
総資本回転率
経営分析の効率性の分析の手法には会社の持っている総資本によってどれだけ売上げを生み出したかの運用効率を客観的に把握するための総資本回転率という指標があります。
基本的には1年の売上高を総資本の期中平均値で除して計算します。回転率が大きいほど資金の動きが活発であり、資本を有効に使って効率的に売上を生み出しているといえるでしょう。
固定資産回転率
会社が保有する固定資産をどれくらい有効に利用して売上をあげているかを示す指標である固定資産回転率も効率性分析の手法の一つです。少ない固定資産で効率的に売上をあげていると回転率は高くなります。
固定資産回転率が低いと固定資産に対して売上が少ないので効率が悪いことを示します。回転率を上げるには、無駄な固定資産がないか検証し、必要に応じて売却するなどの改善をする必要があるでしょう。
棚卸資産回転率
棚卸資産回転率は基本的には1年間の売上高を棚卸資産で除することで求められる棚卸資産の回転効率を示す指標です。これにより棚卸資産の販売スピードが明確になります。
ただし、棚卸資産回転率は高くても低くてもリスクがある指標です。高すぎる場合は需要増加に対応できなくなり、低すぎると余剰商品が発生してしまいます。棚卸資産回転率は経営分析の中のひとつの目安とし、状況に応じて他の分析と併用して活用するとよいでしょう。
売上債権回転率
売掛金や受取手形などの売上債権に占める売上高の割合を計算することによって、売上債権を回収する速さを表す指標が売上債権回転率です。回転率が高いほど売上債権回収までの期間が短くなります。
売上債権の回収が効率的に行われているかで経営の効率性を分析できます。通常の営業において売上債権の割合が高いと現金が足りなくなり黒字倒産の恐れもあります。売上債権回転率が低い場合は、できるだけ高くなるように取引相手との交渉が必要でしょう。
仕入債務回転率
経営の効率性を分析する指標には自社の仕入費用に関する未払金である仕入れ債務の支払いの視点から分析する手法もあります。それが仕入債務回転率です。
仕入債務回転率は高ければ良いというわけではありません。売上債権回転率とのバランスを考えて債券を現金化し、効率よく資金繰りをすることが大切でしょう。
経営分析の手法と見るべき指標【生産性分析】
経営分析には企業が投入した経営資源の成果や生み出した付加価値をエクセルなどを活用して分析する生産性分析という手法があります。生産性分析は会社が事業を行うことで影響を受ける利害関係者すべての立場から見た企業の効率性を測る指標です。
労働生産性
生産性の経営分析の手法には、労働者一人当たり又は一時間当たりで生み出すことができる成果を数値で表した労働生産性があります。労働生産性は付加価値額を労働者の人数で割った数値なので従業員一人当たりまたは一時間あたりの付加価値と言えるでしょう。
労働生産性が高いほど効率が良いということです。最近の働き方改革で労働生産性の低い会社ほど労働時間が長いと指摘されています。労働生産性を上げるには、労働者のモチベーションを上げるための労働環境の見直しが必要でしょう。
労働分配率
労働分配率も生産性分析の指標の一つです。労働分配率とは付加価値といわれる売上総利益に占める人件費の比率です。労働分配率は人件費の支払い額が適正であるかどうかの分析に役立ちます。
労働分配率が低いと効率は良くなりますが、従業員から不満が高まります。労働分配率は会社の規模や業種によって違ってくるので同業他社と比較して分析すると良いでしょう。
資本生産性
生産性分析の手法には保有している土地や設備などの資本が効率的に付加価値を生み出しているかの指標である資本生産性もあります。資本生産性は付加価値額を総資本で除することで算出できる数値です。
この指標が高いほど投じた資本が有効な付加価値を生み出していることを示しており、設備投資が効率的に行われていることになるでしょう。
経営分析の手法と見るべき指標【成長性分析】
経営分析には企業がどれだけ成長したかと、発展する見込みがあるかで成長性を分析する必要があります。そのような成長性分析は前期比による指標で検証できますが、その際市場全体の成長度合いとの比較も重要です。
また急激な成長は売上の増加に人材や設備の投資が間に合わないこともあり、注意しなければなりません。エクセルなどを活用して収益性と安定性のバランスを検証しつつ、成長戦略を考慮するのが望ましいでしょう。
総資産増加率
総資産が前期と比較してどれだけ増えたかの割合を示す総資産増加率は成長性分析の指標の一つです。当期総資産から前期総資産を引いて前期総資産で割ることで算出できます。
総資産増加率が上昇していれば総資産は増加していますが、総資産が増加していても利益が増加していない場合もあり、一概に成長しているとは限りません。会社の成長性を把握するには、多角的に分析することが大切でしょう。
売上高増加率
売上高増加率は当期の売上高が前期の売上高と比較してどれだけ増加したかの増加率を表す指標です。当期売上高から前期売上高を引いて前期売上高で割ることにより算出できます。増加率が高いほど成長性が高いと推測されますが、1年だけでは判断が付きにくいので長期的な試算が必要です。
売上高増加率は企業の勢いを示しているので、新しいベンチャー企業ほど大きくなります。そのため、自社の形態や市場の成長率を考慮して経営分析をしましょう。
利益増加率
企業の成長度合いを測るには、費用増加の影響も加味している利益増加率で経営分析するとより正確に成長率が判断できます。
利益増加率は当期利益から前期利益を引いて前期利益で割ると算出できます。売上増加率と利益増加率がともに上昇している場合は理想的な経営状態ですが、売上増加率より利益増加率が少ない場合はコストの見直しが必要です。
従業員増加率
成長性の経営分析には従業員の増加によって企業規模の拡大を分析する従業員増加率という指標もあります。基本的には従業員の増加は、企業が成長している事を示しますが、設備投資によって人件費を減らしている場合もあるので、一概に従業員の減少が成長率の低下ではないので注意しましょう。
経営分析を行う時のポイント
事業の経営を行うためには、会社の現状を把握するための経営分析が不可欠です。ただ、一口に経営分析といってもやり方を間違っていては効果が発揮できません。経営分析を効果的に役立てるためのポイントを紹介します。
正確な財務諸表を活用する
経営分析は貸借対照表や損益計算書などの財務諸表のデータに基づいて、エクセルなどを活用してさまざまな視点から多角的に自社の状態を知り、客観的に分析をしていきます。
そのため基本になる財務諸表の数値は正確でなければ正しい分析ができません。間違った数値で分析すると、経営判断を誤ってしまう場合もあります。正確な財務諸表を活用して経営の分析を行うように心がけましょう。
自社の事業に合う指標を選ぶ
前述のように、経営分析には様々な観点から分析できる複数の指標があります。会社の規模や業種によって着目すべきポイントや採用すべき手法は異なるでしょう。
例えば設備投資や労働力と売上が密接に関わってくる製造業では、固定比率や負債比率、労働分配率、棚卸資産回転率による分析が重要です。。人材確保が重要なIT業では労働生産性による分析を利用するのが良いでしょう。
経営分析を正しく行うためには、どの指標が現在の自社に合っているかを見極め、選択していくことが重要です。そして、エクセルなどを活用した分析結果を基に現状を認識し、自社の強みや今後の改善点を見極め、経営戦略を策定していくことで経営分析を実施した価値が見いだされるでしょう。
経営分析におすすめのツール
会社を経営していく上で正確な経営の分析は欠かせませんが、資料が膨大であったり、やり方も様々でかなりハードな行為です。また、目まぐるしく変化している現代社会で、スピードも求められます。
コンサルタントに頼むのも一つの方法ですが、費用がかなりかさんでしまうでしょう。そこで注目されているのが、経営分析ツールです。経営分析ツールを利用すれば、日常的に分析が可能ですので、是非活用してみて下さい。
弥生会計オンライン
クラウド会計ソフトである弥生会計オンラインは初心者でも使える経営分析ツールです。手間のかかる財務諸表を簡単に作成ができ、グラフレポートによって確認できるので、いつでも経営状況の把握が可能になります。クラウドサービスのため、いつでもどこでも使用できるので便利です。
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サポートが充実していると人気のオンライン会計ソフトがfreeeです。登録ボタンを押すだけで仕分け可能な機能や決算書作成機能など経営レポートの作成に便利な多種多様な機能が用意されているので、中小企業や初めて企業する人にも使いやすいツールでしょう。
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財務・会計・業績などの様々な経営資源データを視覚的に分析・計画できるSAP Analytics Cloud(SAC)も経営分析ツールの一つです 。SACはビジネス向けソフトウェア開発を手掛けるSAP社が提供しているクラウドサービスです。
SAP Analytics Cloud上で構築されたSaaS型の経営分析ツールでビジネスインテリジェンス、予算・計画、予測分析などを一つにまとめます。エクセルや基幹システムのデータを取りこむことで経営状況をスピーディに分析できるツールです。
経営分析の基本を身につけてビジネスに活用しよう!
人口の減少や急激なIT化などで社会情勢が大きく変化している現代社会において、経営の維持や業績アップは非常に難しい状況です。エクセルなどを活用して会社の現状を様々な観点から分析する経営分析は、経営の効率化や問題点の分析、今後の経営戦略の策定に非常に重要な役割を果たします。
ツールを活用するなどして経営分析の基本をしっかり身につけ、課題を解決して業務を効率化し、良好なビジネスの遂行に活用しましょう。