アサーションとは?効果やメリット・トレーニング方法を解説!

アサーションとは?効果やメリット・トレーニング方法を解説!
目次

アサーションの意味やトレーニング方法を知りたい!

自分の考えていることを主張することは、相互理解のためにも重要です。そんな自己主張に関係するアサーションについて学びましょう。アサーションを身につける効果やメリット、そしてトレーニング方法をまとめました。イエスマンになりすぎている人は、ぜひ参考にしてください。

アサーションとは?

アサーションの言葉の意味

アサーションは「主張」や「断言」を意味する言葉です。コミュニケーションにおけるアサーションは「自分と相手を大切にし、双方の意見を大事にする」ことを意味します。つまり、一方的に自己主張するだけでなく、相手の意見も聞く思いやりが必要になるのです。

アサーションの歴史

歴史的には1950年代に心理療法の中でアサーションの考えが提唱されるようになりました。このときは「自己主張」としてアサーションは定義されており、そこから精神医学や医学用語として注目されたのです。

その後、1970年代に入ると黒人差別による公民権運動が起きました。以前とは意味が少し異なり、抑圧されてきた人や立場が弱い人が相手と対等な立場を獲得するために声を挙げる能力、という意味になりました

医療におけるアサーション

様々な場面で使われるようになったアサーションですが、医療の場面でも使われています。これは医療がチームで治療を行っていることが関係しているのです。

たとえば、手術を行うときに執刀を行うのは医者ですが、それをサポートする看護師たちが存在します。誰も医者に意見をいえないような状態では治療ミスや円滑なコミュニケーションができない状態になるでしょう。そうならないためにも、医療の現場でも必要な能力です。

コミュニケーションにおけるアサーション

こういった時代の変化によってアサーションは相互理解が重要になっています。そのため、コミュニケーションにおけるアサーションは「自分と相手の双方を大切にする」ことが重要視されているのです。双方を大切にすることによって生まれる円滑さが、相互理解を高めます。

人事評価におけるアサーション

人事評価においてもアサーションの効果が注目されています。アサーションの方法を理解していれば、上司と部下が率直な発言を行えるため、対等な信頼関係を築くことができるのです。一方的な評価ではなく、その理由を理解するためのコミュニケーションが取れるでしょう。

アサーションが注目されている理由

人間関係の改善に有効な施策が求められているため

ビジネスにおいてアサーションのやり方や方法、効果が注目を集めている理由はなぜなのでしょうか?社員の価値観が多様化し、仕事もプライベートも両立したい人が増えました。上司の一方的な要求を我慢するのではなく、転職することで環境を変える方を選ぶ人も増加しています。

つまり、我慢をするぐらいなら別を探す、という考えが増えたことが関係しているのです。終身雇用制度が揺らいでいる中で一つの企業に固執するのではなく、自分にあった会社に務め直す人が増えました。それだけに企業は退職防止のためにアサーションを重要視するようになったのです。

メンタルヘルス対策が求められているため

先程の人間関係の改善としてアサーションの効果が注目を集めているだけでなく、メンタルヘルス対策にも意味があると考えられています。

メンタルヘルスの原因として本人の性格だけでなく、職場の人間関係が大きな影響を及ぼしているのです。トレーニングを通してアサーションのやり方を学ぶことで、精神的に強くなれるのもメリットになります。自分の好不調を口にしやすくなるのも、この技術の効果といえるでしょう。

ハラスメント対策が求められているため

メンタルヘルス対策とあわせて重要なのがハラスメントです。近年はセクハラだけでなく、パワハラやモラハラなども社会的な問題として取り上げられるようになりました。

アサーションの効果によって信頼関係が構築されれば、間違ったコミュニケーションの取り方は減少するでしょう。上司による攻撃的なコミュニケーションを自覚させるためにも、アサーションの正しい方法を学ぶことは大きなメリットがあります。

アサーションの効果とメリット

ビジネスにおける効果とメリット

アサーションの効果とメリットを確認しましょう。アサーションを取り入れることでビジネスにおいて、上司や部下、顧客や協力企業との関係をより良くできます。企業ごとで価値観が異なっていても、アサーションの正しい方法によって対等な意見交換ができるのです

もちろん、自社内の人間関係も上下関係なく意見交換ができれば、様々なアイデアが生まれて風通しもよくなります。ストレスフリーな職場は退職率も下がり、愛社精神を持って働いてくれるでしょう。

日常生活における効果とメリット

日常生活でもアサーションによるコミュニケーション方法を意識してください。家族や友人との会話でもアサーションのやり方によって、円滑なコミュニケーションが取れるようになります。

無理な頼み事や誘いを断りたいときに、適切な自己主張を行うことがおすすめです。相手の意見に流されるやり方ではなく、相手の考えも尊重しながら自分の意見を言う方法が求められます。相手側も事情を汲み取ってくれるようになるので、トラブルが起きにくくなるのです。

アサーションの種類

種類①アグレッシブタイプ

アサーションには3つの種類が存在します。それぞれの方法やメリットを把握して、求めている効果を得られるようにしましょう。アグレッシブタイプから確認してください。

アグレッシブというのは「攻撃的」という意味のある言葉で、自己主張が強いタイプです。自分の言いたいことをズバズバ言うタイプで、強引に要求を押し通す傾向があります

積極的に自分の意見を言えるメリットがありますが、相手の気持ちや意見を無視する傾向があるでしょう。同時に言動が粗野になりやすく、相手からすれば敵意を向けられてると感じることも珍しくありません。

ビジネスの場面ではこういったやり方はハラスメントと受け取られることがあるので注意が必要です。特に弱い立場の人間に対してアグレッシブタイプなコミュニケーション方法は、トラブルの原因になりやすいので気をつけましょう。

種類②ノンアサーティブタイプ

逆のタイプはノンアサーティブタイプになります。アグレッシブが攻撃的な自己主張なのに対して、こちらは非主張タイプです。自分の意見を口にできずに溜め込んでしまうため、相手の要求をそのまま受け入れることが多くなります。

ビジネスにおいては相手の要求ばかりを受け入れる状態です。取引先ばかりが有利な条件で契約が進められるため、企業としては利益を失います。また、社員とのコミュニケーション方法でも「何を考えているかわからない」と思われて孤立する可能性があるのです。

優柔不断や曖昧な人物と受け取られることがあるので、後ほど紹介するトレーニングを通して、コミュニケーションのやり方を改善するほうが自分のためにもメリットが出てきます。

種類③アサーティブタイプ

アクティブとノンアサーティブの中間のタイプがアサーティブです。自分の意見もアピールしながら、相手の考えも尊重するバランス型になります。ビジネスの場面においても、しっかりと相手との関係を良好に保ちながら、自社の考えを伝えることができるのでおすすめです。

タイプの違いによる自己表現の例

たとえば、スーパーで買い物をしてレジで並んでいるときを例にしてみましょう。自分が先に並んでいたのに別の人が横入りした際にどういった態度を取るかで、どのアサーションタイプかがわかります。

横入りした人に対して相手を叱りつけるような人はアグレッシブタイプですし、内心腹を立てながらも我慢してしまう人はノンアサーティブタイプです。

そして、相手に先に並んでいたことを伝えて、後ろに並んでもらうように言えるのがアサーティブタイプになります。このように自己主張の仕方が変わることで、トラブルが大きくなりにくいことが確認できるでしょう。アサーションのやり方をトレーニングして、円滑な交流を行ってください。

アサーションの土台となる「アサーティブ・マインド」の項目

①誠実であること

アサーションの土台となるアサーティブ・マインドをチェックしましょう。これはアサーションの考え方や基本になる項目です。この土台をしっかりと意識してトレーニング方法に取り組んでください。

アサーションを身につける上で大切なことは、自分に対しても他人に対しても誠実であることです。自分の感情に嘘をつかずに正直な姿勢でいることで、相手も同様な態度を取ってくれるようになります。疑う気持ちをおさえて、相手を信じることも必要です。

②対等であること

どういった関係性であれ、相手のことを下に見るような感情はよくありません。自分と相手を対等だと考えて、敬う気持ちが必要です。人によって態度を変えるような状態では正しいアサーションを持つことはできません。

相手のことを下に見るような人間は、どこかで自分も同じ扱いを受けてしまうでしょう。先程の誠実な態度と同じく、相手の尊重して認めることが求められます。

③率直であること

自分に正直でいられると、その意見や主張をまっすぐに伝えられるようになるのです。率直であるためには、自分の意見を主張するだけでなく、相手の意見にも耳を傾けることが必要になります。傲慢さを控えて、一緒に良い結論を導きたい、という考えを持つことがおすすめです。

④自己責任

必ずしも話し合いがうまくいくとは限りません。相手を尊重しながら自分の意見を伝えても、理想通りの反応が返ってこないこともあるでしょう。そういったときも相手のせいにするのではなく、自分がより考えを相手にうまく伝えられるようにトレーニングを繰り返してください。

また、どういった結果になっても相手のせいにせず、自分で結果をきっちりと受け止める自己責任の心を忘れないようにしましょう

アサーショントレーニングのやり方

アサーショントレーニングとは?

アサーションを身につけるためにはトレーニングも必要です。最初からうまく相手のことを尊重しながら自己主張を行える人もいますが、なかなか得意じゃない人もいます。いくつかのポイントに注目しながらアサーショントレーニングを行ってください。

大事なことは「相手の目線に立つ」という考え方です。自分本位で物事を考えるのではなく、「この人ならどう考えるだろう」という気持ちを持つことがアサーションを成功に導きます。

やり方①I(アイ)メッセージ

トレーニングのやり方を確認しましょう。まずはIメッセージを意識します。自分を主語にして相手に伝えるトレーニングです。「私は○○だと思います」という言い方することで、相手を責めるような状態を防ぎます。あなたではなく、私を主語にすることがポイントです。

やり方②気持ちや状況をはっきりと伝える

次に自分の気持や状況をはっきりと伝えましょう。相手からすれば私が考えていることは言わないと伝わりません。そのため「○○してくれると嬉しいです」、「○○したいので手伝ってくれませんか?」と伝えましょう。

大切なことはどういった状況や理由で、助けなどを求めているのかを伝えることです。また、上司などに頼むときに下手に出過ぎると伝えたいことがぼやけてしまうので、正直に明確に伝えてください。ここでも、自分と相手は対等であるというアサーションの考え方が役立ちます。

やり方③前向きな言葉や態度を見せる

仕事をしているときに、逆に何かを手助けを求められることがあるでしょう。しかし、自分の仕事が立て込んでいて協力できないときがあります。こういったときに前向きな言葉や態度で示すことがアサーションにおいて必要です。

このとき最初から「無理です」と突っぱねるのではなく、自分の状況を相手に伝えて代替案を出すとよいでしょう。曖昧な返事や無理に請け負うと、何でもすぐに助けてくれる人と思われてしまうのです。

代替案を出すときは相手に分かりやすく伝えて、前向きな言葉や態度で対応しましょう。頼み事をされたのなら「午前中はどうしても手を離せない仕事があるので、午後からなら手伝えます」という返答がおすすめです。アサーションによって、双方の考えを尊重した対応ができるようになります。

やり方④素直な気持ちを伝える

日本人は謙遜する文化が根付いていますが、ときには素直に喜びの感情を出すのも重要です。上司が自分の仕事の成果を褒めてくれたときに、素直に喜びを伝えてください。謙遜しすぎると、褒めてくれた上司の気持ちを受け取っていない形になるからです。

喜びの気持ちを伝えることで褒めた側も自分のことのように嬉しくなりますし、前向きな感情表現は好意的に受け止めてもらえます。同時に、そういった上司の賞賛に対してお礼を伝えることで、より効果的にアサーションがうまくいくようになるでしょう。

アサーショントレーニングの実践例

実践例①上司からの無理な依頼を上手に断る場合

さきほどのアサーショントレーニングを行いながら、実践に使える具体例を確認してください。まずは、上司からの無理な依頼を上手に断る場合の方法です。

ビジネスの中では上司から無理な要求や依頼をされることは少なくありません。アサーションを行えずに、手一杯の状態で仕事を受けてもさらに自分を追い込んでしまうだけです。最終的には身体的にも精神的にも追い込まれて退職を決断する例も多くあります。

こういったことを割けるためにもアサーショントレーニングを行って、上司からの無理な依頼を上手に断りましょう。まずは、さきほど紹介したアサーションの種類を思い出して、アグレッシブやノンアサーティブな対応を思い浮かべってください。

「これは私の担当ではないので無理です」や「わ、わかりました」という風な対応では、相手に自分の考えは伝わりません。突っぱねるのも印象はよくありませんし、言われるがまま受け入れるのも適切な対応とはいえないでしょう。

そこでアサーションの自己主張を取り入れると対応が異なります。「今は○○の書類を作成中で時間に余裕がありません。終わってからなら対応できますが、それでも可能でしょうか?」という風に上手に断ってみてください。

早急に対応すべき仕事であれば上司も他の人に頼むでしょう。急ぎでなく、あなたに頼みたい仕事であれば改めて依頼してくることが想定できます。自分の主張を行いながら相手の気持ちに配慮した対応のトレーニングをしましょう。

実践例②人に褒められた場合

人に褒められた場合は「ありがとうございます。みなさんの協力や指導のおかげです。次もがんばります」という形がおすすめです。褒められたことに対して素直に喜びを表現し、相手の気持ちも汲んだ返答ができています。アサーションの自己主張や相手を対等に扱うことができた事例です。

こういったトレーニングや実践経験を積むことで、コミュニケーション能力が上達します。今までなかなか自分の意見を言えなかった人や、相手を怒らせるような対応をしていた人も改善することが可能です。相手の立場に立ってコミュニケーションを取れるようになりましょう。

アサーションが学べる本

アサーション入門

アサーションが学べる本について紹介します。「アサーション入門」は統合的心理療法研究所の所長である平木典子の著作で、具体的な例を用いて基本を解説した本です。自分も相手も大切にする自己表現方法を学ぶ上で参考にしましょう

マンガでやさしくわかるアサーション

「マンガでやわしくわかるアサーション」は、その名の通りマンガで分かりやすく解説しています。こちらも先程の平木典子の著作となっており、初心者はこちらのほうが学びやすいかもしれません。活字メインよりも短時間で基本的な部分を学びたい人におすすめです

アサーティブ 「自己主張」の技術

ビジネスにおける人間関係の悩みを軸に解説しているのが、大串亜由美の「 アサーティブ 「自己主張」の技術 」です。話をしていて「いつも相手を怒らせてしまう」、「言いたいことが言えない」という悩みを抱えている人は本著を参考にしてください。

相手に「Yes」をもらうことだけでなく、「No」と言われても握手をできるようなアサーションのやり方が解説されています。ビジネスにおけるコミュニケーションを学びなおしたい人に最適です。

アサーション・トレーニング 自分らしい感情表現

日本・精神技術研究所の認定トレーナーである土沼雅子の著作である「アサーション・トレーニング 自分らしい感情表現」では、感情の意味やメカニズムが理解できます。

自己表現が苦手な人におすすめで、適切な感情表現ができているか確認できる内容になっているのです。シリーズになっており、2021年8月現在で合計3冊刊行されています。

アサーションスキルを身に付けてビジネスに役立てよう!

アサーションの効果やトレーニング方法について解説しました。自分の考えを主張すると同時に、相手の考えも尊重するのがポイントです。このスキルを身につけて、お互いが気持ちよくコミュニケーションや交渉を行いましょう!

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