インターネットやコミュニケーションツールなどのインフラ環境が整ったことで、場所を問わず働ける時代になりました。パソコン1台で海外に移住して仕事というのも夢ではなくなりました。そこでこの記事では、実際に海外移住しても働きやすいIT職種を解説していきます。
海外移住する前に知っておきたいこと
クラウドサービスの普及によって、場所を問わず働けるようになりました。クラウドはインターネットに接続さえできれば、どこにいてもデータの共有が可能です。
テレワークによって会社に出社しなくても仕事ができるようになりました。さらに取引先とのやり取りも、資料をクラウドにアップロードすれば、簡単に共有でき編集もできます。
またSNSやビジネスチャットなどコミュニケーションツールも普及したことで、会議室にいなくてもスムーズな打ち合わせができるようになりました。
そのためパソコン1台あればどこでも仕事ができることから、海外移住を考えている方もいるでしょう。海外での仕事は、日本と違う部分が多くあるため、刺激になります。
しかし海外で仕事をするためには「ビザ」の取得が必要です。ビザがなければ働くことができません。海外移住する前に、ビザを把握しておくのが重要です。
こちらでは海外移住する前に知っておきたいことを解説します。
- ビザが最大のハードル
- ビザ:アメリカの例
- ビザ:カナダの例
- ビザ:オランダの例
- ビザ:マレーシアの例
それぞれ解説しますので、参考にしてみてください。
ビザが最大のハードル
まずはビザについて、簡単におさらいします。ビザとは入国許可証の役割がある査証と言われています。パスポートが有効であることを証明し、入国しても問題ないのを証明する書類です。
ただしビザは誰でも発行できるものではありません。犯罪歴があったり、身元がわからなかったりする場合は、発行できず入国もできないので注意しましょう。
国によってビザが不要だったり、必要だったりします。ご自身の渡航先の情報を確認するようにしましょう。
ビザの種類は以下のとおりです。
- 外交査証
- 公用査証
- 就業査証
- 一般査証
- 短期滞在査証
- 通過査証
- 特定査証
- 医療滞在査証
上記のとおり全部で8種類あります。仕事が目的で海外移住する場合、就業査証を発行することになります。発行しなければ仕事ができないので忘れないようにしましょう。
通常就業査証の期間は5年・3年・1年・6ヶ月・3ヶ月・15日です。長期間の滞在が目的の方が発行することになります。発行にかかる期間は約2週間〜1ヶ月程度。混雑状況や書類の不備などで前後するため、あくまで目安です。
審査の難易度は高い傾向なので、海外移住するための最大のハードルになるでしょう。
ビザ:アメリカの例
アメリカの就労ビザ(Hビザ)の最初の認可期間は3年です。その後条件が整って問題ないと判断されたら3年延長できます。ただし最長6年を超えると、再申請をするために1年以上アメリカ以外に滞在する必要があるので注意しましょう。
アメリカの就労ビザを取得する条件として、以下が挙げられます。
- 4年制大学以上の学位
- 4年制大学以上の学位に相当する実務経験
大学の1年間が実務経験の3年と同じ扱いをします。高卒の場合は4年分の12年間で、短大卒の場合は2年分の6年間の実務経験が必要です。
またアメリカは世界中から多くの方が、就労ビザの申請を行います。通常よりも期間がかかったり、抽選になったりするでしょう。
ビザ:カナダの例
カナダの就労ビザの有効期間は約1〜2年です。その後期間の延長ができます。申請から発行までは、約2ヶ月程度が目安です。
カナダで就労ビザを取得するには「LMIA」の承認を得る必要があります。LIMAとは「Labor Market Impact Assessment」の略で、カナダが外国人を働かせても雇用市場に悪影響がないかを判断する審査です。
LIMAの審査が完了したら、CIC(カナダ移民局)に就労ビザの申請ができます。無事に完了すれば就労ビザが発行され、仕事ができるようになります。ただし100%審査が通るわけではないので注意しましょう。
カナダの就労ビザを取得するための主な条件は以下のとおりです。
- カナダ人の労働機会を奪わない
- カナダ人では補えない特別・特殊スキルを持っている
- カナダで優遇される職種
- 高いレベルでの就労経験・スキル
上記のようにカナダは国民を大切にする傾向にあります。そのためカナダにとって必要不可欠な人材であることが、審査を通過する基準になるでしょう。
ビザ:オランダの例
オランダの就労ビザの有効期間は通常1年です。特別なケースの場合は、3年になります。さらに承認スポンサーになっている企業であれば、提出書類の一部が免除されます。
オランダの場合、申請からビザの発行まで約90日間かかるでしょう。承認スポンサーの場合は、約2週間が目安です。
普通労働者としてオランダ企業に就労する場合は、特に条件はありません。自営業・フリーランスは、日本国籍を所有しており、過去の犯罪歴や不法滞在がないことが条件になります。
ビザ:マレーシアの例
マレーシアでは短期間の滞在であってもビザを取得する必要があります。雇用パス(一般的な就労ビザ)は場合の有効期限は約1〜5年です。レジデンス・パス(国家重要経済分野に貢献する優秀な外国の人材を対象としたビザ)は、最大10年になります。
マレーシアの就労ビザは、申請から発行まで約1ヶ月です。アメリカ・カナダ・オランダよりも短い期間で発行できるでしょう。
また雇用パスを取得する条件は、年齢が明確にされていないのですが、大卒で3年以上に渡って関係業務の実務経験があることです。
ビザ取得に有利な職種とは
結論から伝えると、ビザ取得に有利な職種はIT関連になります。今後業界が伸びていくと予想されているからです。
経済産業省のIT人材需給に関する調査(概要)によると、年々IT市場は拡大していきます。2030年には約160万人のIT人材が必要になります。しかし、経済産業省の調査では、約45万人のIT人材が不足する予想です。
また日本だけの問題ではなく、世界でも同じことが言えるでしょう。例えばカナダの場合、永住権審査システムにエントリーする職種の上位3つがIT関連です。上から順番に「ソフトウェアエンジニア・ソフトウェアデザイナー」「情報システムアナリスト・コンサルタント」「プログラマー・デベロッパー」になります。
特に世界共通のプログラミング言語を使うエンジニアやプログラマーは、非常に需要が高い傾向です。どの国で働いても、作業内容があまり変わらず、即戦力として採用できるからです。
そのため、IT人材はビザ取得に有利な職種と言えます。海外移住を検討している方は、IT系の職種で経験を積むようにしましょう。
参考:Express Entry Year-End Report 2019
IT系の職種がビザ取得に有利な理由
ビザの取得に有利な職種は、Webやシステム系のエンジニアが多いです。需要が高く、自分のスキルを活かせるからです。
こちらではIT系の職種ごとに、ビザ取得に有利な理由を解説します。
- プログラマー
- ソフトウェアエンジニア
- Webデザイナー
- Webエンジニア
- Webデベロッパー
- Webマスター
- グラフィックデザイナー
一つひとつ解説しますので、海外移住に活用してみてください。
プログラマー
プログラマーとはプログラミング言語を用いて、コンピューターを動かすためのシステムやソフトウェアを作ります。WebエンジニアやWebデベロッパーと違って、バックエンドを担当することになるでしょう。
一口にプログラマーと言っても種類が多くあります。
種類以下のとおりです。
- Webプログラマー
- アプリケーションプログラマー
- ゲームプログラマー
- 組み込み系のシステムプログラマー
- 汎用系のシステムプログラマー
仕事内容によって異なりますが「Java」や「C#」など、さまざまなプログラミング言語を使用します。
今後のIT業界ではAIが普及していくと考えられています。特にAIは専門性が高い分野なので、プログラムを書ける方が少ない傾向です。プログラマーはITの専門性が高いため、ビザの取得に有利になるでしょう。
ソフトウェアエンジニア
ソフトウェアエンジニアは、ソフトウェアの設計・開発を行う職種です。身近なものだとスマートフォンのアプリケーションや、自動車を制御するソフトウェアが当てはまります。
設計をもとにプログラムを書くプログラマーと違って、設計から開発まで全体的に関わるでしょう。さらにプロジェクトの管理を行うこともあり、業務の幅が広がります。
IT業界ではモノのインターネット(IoT)が普及しており、身近な機械にもソフトウェアを導入するようになりました。例えば気配を感知して自動で点灯するライトや、室内の気温をもとに自動で温度を調整するエアコンなど、さまざまな場面で活用されています。今後の需要が高くなると予想されるでしょう。
またソフトウェアエンジニアは、前章で解説したカナダのエクスプレスエントリーで、永住権審査システムへの申請が最も多い職種です。世界中で需要が高いことから、ビザを取得に有利です。
Webデザイナー
WebデザイナーはWebサイトのデザインを制作したり、コーディングしたりします。主にサイト周りを担当することになるでしょう。
Webサイトが作られている構造は世界共通です。そのため細かい部分の設定はありますが、言語を変えれば大枠は制作できるでしょう。
また総務省の通信利用動向調査報告書(企業編)によると、約9割の企業がホームページを開設しています。企業は自社のホームページを持っていることが当たり前と言えます。Webデザイナーの需要は、今後増えていくでしょう。
日本だけでなく海外でも同じことが言えるので、ビザの取得が有利になります。
Webエンジニア
WebエンジニアはWeb上で動作するアプリケーションやサービスを開発する職種です。主に設計から開発を行います。さらに保守や運用を行うこともあるでしょう。
経済産業省のIT人材需給に関する調査(概要)にあるとおり、2030年までにIT人材の需要は拡大します。Webエンジニアのスキルも需要が高く、仕事は増えていくでしょう。
また海外でもWeb系に強いスキルは重宝されます。そのためビザの取得に有利で、海外移住しても問題ありません。
設計から運用・保守まで一貫してできると、より業務の幅が広がります。
Webデベロッパー
Webデベロッパーは、デザイナーが制作したデザインをもとに、サイトをコーディング(Web上で見えるようにする)する職種です。さらにWebアプリケーションの開発も行います。
Webデザイナーとの違いは、コーディングをメインで行うことです。サイトやアプリケーションを実際に使えるようにするのが役割。
使用する言語は主に、HTML・CSS・PHPなどです。
Web系のスキルは、国内や海外での需要が高くなっているため、ビザ取得に有利に働くでしょう。
Webマスター
WebマスターはWebサイトの運営と管理を行う職種です。明確に仕事内容が決められておらず、会社によって任せられる範囲が異なります。
基本的な業務はサイト内の古くなった情報の更新・メンテナンス・修正などです。大企業のサイトだと、外部業者のマネジメント行うことも。
マネジメント経験は非常に重要です。Webデザイナーやエンジニアでマネジメントを経験することは、ほとんどありません。そのため実績としてアピールが可能です。
今後のIT業界拡大の中で、Web知識だけでなくマネジメントスキルがアピールできれば、海外でも重宝されるでしょう。
グラフィックデザイナー
グラフィックデザイナーはWebデザイナーと似ていると思われがちです。しかし、Webサイトのデザインは行いません。新聞や雑誌の広告やチラシなど印刷物に対して、デザインを行う職種です。
場所を問わず働けるため、海外移住したい方も多いでしょう。
購買意欲をかき立てるデザインを作る必要があり、高いスキルが求められます。また常に流行を取り入れる意識が必要です。それらを実現できるスキルがあれば、海外でも求められる人材になれるでしょう。