センスメイキングの意味や具体的なプロセスを解説
ビジネスを行う上で想定外の出来事や不確実性な事象が発生します。そういった出来事に対して迅速に対応できる能力があれば、トラブルの影響を最小限に抑えることができるのです。そのために、センスメイキングについて学び、活用していきましょう。
センスメイキングとは?
センスメイキングの言葉の意味
センスメイキングは「想定外な出来事などに対して意味づけを行うことで、状況を好転させる循環プロセス」を意味します。もともとは組織心理学者のカール・ワイクが生み出したもので、戦略コンサルティング企業の創業者であるクリスチャン・マスビアウなども活用した理論です。
クリスチャン・マスビアウは自著の「センスメイキング」において、この言葉の定義を「本当に重要なものを見極めること」としています。ソリューションメイキングのように問題を解決する力だけでなく、意味付けを行い、重要なものを見極めることを目的にした理論として参考にしてください。
「腹落ちの理論」とも呼ばれている
別名として「腹落ちの理論」とも呼ばれています。これは早稲田大学ビジネススクールの入山章栄が自著の「世界標準の経営理論」で表現した形です。センスメイキングを日本風の表現として「納得」が近いものとしており、さらに平たい表現で「腹落ち」と表現しました。
センスメイキングの要素
センスメイキングには7つの要素が存在します。アイデンティティの構築、回顧の振り返り、イナクトメント、社会性、進行中のプロセス、抽出されたものは全体の一部でしかない、正確さよりも説得性です。
イナクトメントというのは「環境に行動をもって働きかけること」を意味する言葉で、行動や行為のプロセスに該当します。センスメイキングは自分の所属する組織のアイデンティティにもとづいて規定され、過去の検証をしながら行っていきます。
継続する進行中の概念やセンスメイキングで抽出した個人の認識は、全体の一部でしか無いことを認識しておくことも必要です。そして、センスメイキングにおいては正確さよりも説得性が重要な要素になるので確認していきましょう。
センスメイキングの具体例
センスメイキングの具体例として、ある過去の出来事が代表的なものとして挙げられます。その出来事はハンガリーの軍隊が雪山で演習を行っていたときのことです。
アルプス山脈で演習を行っていたハンガリーの軍隊は猛吹雪のため、非常に危険な状態に陥っていました。そのとき、隊員の一人がポケットの中に一枚の地図を発見し、それを元に無事に下山することができたのです。下山できた隊員たちは驚きの事実を知ります。
隊員たちが見ていた地図はアルプス山脈ではなく、ピレネー山脈の地図だったのです。つまり、隊員たちはまったく無関係の地図を頼りに下山していました。
これは地図の正確さではなく、地図を見つけたことによって「これで下山できる」というセンスメイキングが起き、ある種の勘違いから危機を乗り越えた具体例なのです。さきほどの要素にあった、正確さよりも説得性がまさにこの事例に当てはまります。
センスメイキングとOODAループの関係性
OODAは観察、情勢判断、意思決定、実行の4つのプロセスの頭文字です。このOODAのループは様々な環境変化に対して、臨機応変な対応を可能にするフレームワークになります。
センスメイキングとOODAグループの情勢判断や意思決定が共通点であり、ベストな選択肢を検討して協力を得られるようにする点が一致しているのです。
センスメイキングが注目されている背景
IT技術の発展
センスメイキングが注目されている背景を確認していきましょう。重要なポイントとしてIT技術の発展が関係しています。IT技術によって様々な技術革新が起きており、従来の経営戦略は通用しなくなりました。
商品のライフサイクルのスピードは早まっており、マーケティングも予想しにくく、ユーザの価値観も多様化しています。そういった中で企業はセンスメイキングによって、急な状況の変化に対応することが求められているのです。
不確実性の高い時代の到来
近年の世界情勢は様々な問題を抱えています。経済面では米中の貿易摩擦に始まり、新型コロナウイルスも大きな影響を与えています。こういったマーケティングなどが不透明で不確実性の高い時代において、予測不能な出来事にセンスメイキングは効果を発揮します。
ソリューションメイキングのように世の中の問題を解決するための方法を考えることと同時に、センスメイキングはどのように事象を捉えて行動していくかにつながる考え方なのです。
持続可能な社会への関心の高まり
自然環境や地球環境の保全に対する意識も高まっています。今までと同じような状態では環境を維持・改善することは難しいだけに、従来の枠組みにとらわれないセンスメイキングが注目を集めています。
働き方に関する新しい価値観の誕生
価値観の多様化によって、働き方に対する考えも変化しています。雇用機会の均一化や多様化を進めるダイバーシティの考え方も広まっており、こちらにもセンスメイキングが求められているのです。
どのようにすればみんなが納得する答えを導き出せ、それを実行に移せるのかがセンスメイキングのポイントになります。次の具体的なプロセスを参考にセンスメイキングの理論や意味を再確認して、実践につなげていきましょう。
センスメイキングの具体的なプロセス
具体的なプロセス①感知
センスメイキングの具体的なプロセスを確認していきましょう。まずは感知がポイントになります。企業運営の中で市場のマーケティング情報とは異なる状態になったり、イノベーションによって自社の強みが失われることがあるでしょう。
こういったマーケティングの変化やイノベーションをできるだけ早く感知することで、次のプロセスにつなげることができます。
具体的なプロセス②意味付け
特に重要なプロセスが意味付けです。今まで経験したことないようなマーケティングの変化やイノベーションに対して、センスメイキングすることで組織全体の方向性を合わせることが求められます。
事象に対して関わるメンバーが共通の認識を持ち、足並みを揃えることができれば問題に対応できるからです。リーダーはマーケティングやイノベーションに関する情報を収集し、必要な内容を選択・デザインしてください。そして、メンバーが腹落ちできるような意味付けを行っていきましょう。
センスメイキングの理論として、先入観や固定観念にとらわれないことがポイントになります。ストーリーをデザインし、全員を納得できる意味づけを行ってください。
具体的なプロセス③行動
最終的に行動に移すことでセンスメイキングは効果を発揮します。理論のままで止まるのではなく、実際に実行することで全員の考え方に影響が出るのです。また、そのときに全員が自発的に考えられるようになれば、よりイノベーションにつながるでしょう。
センスメイキングの活用事例
活用事例①組織改革の場面
センスメイキングの理論は様々な活用事例が存在します。たとえば組織改革におけるセンスメイキングの活用事例を確認しましょう。
組織に対するイノベーションを起こすには、全員を納得させられるような高いセンスメイキングが必要です。関係者はしっかりと考え、全体で今後の将来性に対して意味付けを行っていきましょう。その中で新しい価値を生み出させれば、センスメイキングが成功している証です。
活用事例②リーダーシップが必要になる場面
強いリーダーシップは企業やチームを牽引します。自分の考えや価値観を反映させ、納得させることで、組織は結束感のある強い存在になっていくのです。センスメイキングを活用して、リーダーシップを納得させることができれば、大きな課題に対して全員で取り組むことができます。
活用事例③経営戦略を練る場面
経営戦略やマーケティングを行っていく上で、センスメイキングの活用事例に注目が集まっています。戦略を考える上で、メンバーを納得させるストーリーを構築させ、共通認識を持つことが重要です。
イノベーションによって自社の強みが突然奪われることもあります。そんな危機を脱したい状況でこの理論が活きてきます。不確実性の高い時代に対応できるように、意味づけを行って全員が納得して前に進めるようにしましょう。
センスメイキングを学んでイノベーションを起こそう!
意味づけを行って状況を好転させるセンスメイキングの理論について解説しました。新型コロナウイルスの影響もあり、予測できないようなマーケティングの変化や経済情勢の変化が起きています。
その中でそれぞれの企業が本当に重要なものを見極める力が求められているのです。センスメイキングを学び、意味づけを行ってイノベーションを起こしましょう!