役割等級制度のメリットやデメリットを解説!
近年、年功序列の雇用制度に代わって注目されている役割等級制度。しかし、導入するには、制度の仕組みや、メリット・デメリットをしっかりと理解することが大切です。
この記事では、役割等級制度の言葉の意味や、職務等級制度との違いなどを詳しく解説します。また、役割等級制度のメリット・デメリットや、実際の企業の導入事例なども紹介しますので、役割等級制度の理解に役立ててください。
役割等級制度とは?
近年、導入する企業も増えている役割等級制度とは、いったいどのような制度なのでしょうか?ここでは、役割等級制度の言葉の意味や、職務等級制度との違いについて解説していきます。
役割等級制度の言葉の意味
役割等級制度とは、勤続年数や役職にかかわらずに社員に役割を設定し、その成果に応じて等級や序列を決定する制度です。
ミッショングレード制とも呼ばれ、役割に対して成果を出せば、評価や昇給を得ることができます。しかし一方で、役割に対して成果が出ていないと企業に判断されれば、評価が下がり、降給する可能性もあることが特徴です。
職務等級制度との違い
職務等級制度とは、担当する職務の内容によって等級を決定する制度です。同じ職務であれば、誰が担当しても同じ賃金となり、年齢や学歴などは考慮されません。
導入するには、職務内容を職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)などによって、明確に定義することが必要です。
職務内容が明確に定義されているため、分業化の進むアメリカや海外では一般的な制度ですが、厳格な分業が難しい日本では馴染みにくい制度といえます。
職務等級制度が職務によって等級を決めるのに対して、役割等級制度は、役割に対して等級を決定します。
このため、役割等級制度の方が、職務内容をゆるやかに定義でき、日本の企業に馴染みやすいとされています。
役割等級制度のメリット
実際に役割等級制度を導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、役割等級制度がもたらすメリットについて、項目ごとに解説していきます。
メリット①目標設定が明確になる
役割等級制度では、従業員の役割を明確に設定できるため、従業員それぞれの目標設定も容易になります。
役割が明確になることで、自らが判断できる職務が増え、主体性を持って業務に取り組みやすくなります。
メリット②人件費を抑えることができる
かつて多くの企業で取り入れられていた職能資格制度では、勤続年数によって等級が上がる仕組みでした。このため、従業員の年齢が上がるにつれて人件費が増大していきます。
役割等級制度では、年齢や勤続年数にかかわらず、設定された役割への成果によって等級が決まります。このため、成果が上がらなければ昇給もせず、成果が出ない場合は降給の対象にもなるため、人件費を抑えることができます。
メリット③社員のモチベーションの向上に役立つ
役割等級制度によって自らの役割を明確に把握し、職務が遂行しやすくなると、従業員が主体性を持って業務に取り組みやすくなります。
また、役割等級制度では、学歴や勤続年数に関係なく、役割に対して公平に評価されるため、社員のモチベーションの向上に役立ちます。
役割等級制度のデメリット
メリットを多くもたらしてくれる役割等級制度ですが、デメリットがない訳ではありません。ここでは、役割等級制度のデメリットを解説します。
デメリット①高い運用実績が必要となる
役割等級制度のデメリットは、導入を受け入れるだけの企業の文化や風土がなければ、運用が難しいということです。
また、配置転換などで職務が変わって等級が下がると、降格や降給が生じてしまうため、役割の設定についても適切な定義が求められます。
デメリット②社員から不満が生じることがある
役割等級制度は、従業員に対して役割を明確に設定できることで、経営陣の目指す目標も伝えやすい制度です。
しかし、今までのキャリアや勤続年数は考慮されないため、降格や降給となる社員からは不満が生じる可能性もあります。役割の設定には、人事部が主導し、経営陣と現場の双方で十分なすり合わせを行うことが不可欠です。
デメリット③不当な人件費削減に繋がる恐れがある
これまでの年功序列の雇用制度によって人件費が高騰する中で、役割等級制度が不当な人件費削減の手段とされてしまう恐れがあります。
役割等級制度の導入によって降格や降給の対象となる従業員には、十分に納得できる理由を示すなど、丁寧な対応が必要です。
役割等級制度の企業事例
ここからは、企業の競争力を高めるために、実際に役割等級制度を導入している企業の事例を紹介します。
企業事例①サントリーホールディングス株式会社
サントリーホールディングス株式会社では、成長・発展ステージでは職能資格制度、マネージャー相当職では役割等級制度と、両制度を併用しています。
入社後、経験を積み重ねていく段階では、職能資格制度によって、職務遂行能力を評価する仕組みを採用しています。
一方で、部下を持つマネージャー相当職の考課では、担うべき役割をどれだけ果たしたかという、役割等級制度が取り入れられています。このように、従来の職能資格制度と役割等級制度を併用して導入するケースもあります。
企業事例②キヤノン株式会社
キヤノン株式会社は、役割等級制度を日本で初めて本格的に導入した企業です。年功序列を撤廃し、公平・公正な人事の実現のため、役割等級制度を導入しています。
役割等級によって基本給を定め、1年間の業績・プロセス・行動によって年収が決定される制度です。賞与には、個人の成績だけではなく、会社の業績が反映されます。
役割等級制度は、国内だけではなく、アジアの生産会社にも導入され、欧米のグループ会社では、従来から役割に基づいた賃金制度が導入されています。
企業事例③株式会社クボタ
株式会社クボタでは、役割と職務が異なるエキスパート職・スタッフ職・テクニカル職という3つのコースを設け、それぞれのコースに応じた人材育成・活躍推進・処遇を行っています。
それぞれの職務に5~11の等級が設けられ井、業務貢献度等に基づいて進級が判断されます。従業員の能力・意欲に基づいて、コースを変更することも可能となっています。
役割等級制度の仕組みを理解しておこう!
役割等級制度の仕組みや職務等級制度との違いについて解説しました。従業員の役割を明確にし、役割に対して公正な評価にもつながり、メリットの多い役割等級制度。しかし、導入については、役割の設定のために経営陣と現場との綿密なすり合わせが必要。
企業内で十分なコミュニケーションをとったうえで、自社の企業風土や文化に本当に合っているのかの見極めが大切です。