GRIT(グリット)の意味や育てる方法を知りたい!
突然ですが、GRIT(グリット)という言葉の意味を知っていますか?GRITとは多大な成果を上げた「成功者に共通する力」として、今注目を集めています。GRITは、コツコツ努力することが美徳だとされている日本人に相性が良い概念です。
この記事では、GRITの意味と成功者の共通項である理由、GRITを育てる方法について解説します。
GRIT(グリット)とは?
GRITとは何かについて紹介します。GRITはビジネスで成功を収めたいと思っている方には必須の力だといえるでしょう。まずは言葉の意味や成功との関連性についてしっかり理解しましょう。
GRITの言葉の意味
GRITは「やり抜く力」または「粘る力」という言葉の意味があります。近年、アメリカではこれまでに考えられてきた才能や知性に加えて、成功者に共通する要素として注目されているとのことです。
GRITの提唱者
GRITとはアメリカの心理学者であるアンジェラ・リー・ダックワース(Angela Lee Duckworth)氏によって提唱されました。アンジェラ氏はシカゴの学校で調査したところ、GRITを持つ学生は退学せずに卒業していく確率が高いと分かったのです。
彼女は「才能やIQ(知能指数)ではなく、個人の「やり抜く力」こそが、社会的に成功を収める最も重要な要素である」と発言しています。
GRITを構成する要素
GRITは4つの要素で構成されており、それぞれの頭文字を取ってGRITと呼んでいるのです。それぞれの要素には「Guts(度胸:困難なことに立ち向かう)」「Resilience(復元力:失敗しても諦めずに続ける)」「Initiative(自発性:自分で目標を見据える)」「Tenacity(執念:最後までやり遂げる)」という意味があります。
近年、成功者に共通する要素として「才能」「知性」に加えて、この4つの要素をどう維持していくのか注目を集めているのです。
GRITと成功の関連性
先ほど紹介したとおり、GRITと成功には強い関連性があるとされています。成功するためには才能や知能だけではなく、やり抜く力、すなわりGRITも重要な要素です。
そしてGRITは、適切なトレーニングを実施すれば、後天的に伸ばすことができます。これまでに成果を出すことができなかった人でも、GRITを高めることで成功する確率が高まるので、個人や企業としても喜ばしいことでしょう。
GRITの測定方法
GRITを測定する方法には「グリット・スケール」というものがあります。このグリット・スケールとは、アンジェラ教授がアメリカ陸軍士官学校で実施した調査の中で開発したものです。GRITに関する10項目について、1~5段階評価し、その数字の合計を10で割った数字(グリット・スコア)によりGRITの高さを測定します。
グリット・スコアが高いほどGRITが高い状態となります。このグリット・スコアは、自分のその時の状況や気持ちによって変動するものなので、常に自分のGRIT力を高めることが大切です。
GRIT(グリット)が注目されている背景
GRITが注目されている背景について紹介します。成果主義のジョブ型雇用を導入しているアメリカでは、成功者に対する共通項を探すことに強い意味がありました。そのためアメリカでは、さまざまな研究が行われており、その中でGRITの概念も生まれたのです。
才能と努力のどちらが成功に繋がるかという議論が行われていた
アメリカでは「才能と努力のどちらが成功に繋がるのか」という議論が行われてきました。しかし、この議題は長年に渡って議論され続けてきたのですが、なかなか結論が出なかったのです。
そこに第3の成功因子として提唱された要因が、やり抜く力であるGRITでした。多くの人々はGRITの持つ新たな可能性に惹かれ、GRITは成功要因として注目を集めることになったのです。
IQの高さと成績の不一致
アンジェラ氏は心理学者の前に教師をしていた経歴があります。彼女は教師時代にテストの採点を行う中で「IQの高さと成績が比例しない」という一つの仮説を立てました。
当時はIQが成績に大きく関わっていると考える人が多数を占めていました。しかし、授業で扱う内容は決して難しいものではなく、時間さえかければ誰でも理解できるレベルだったのです。
そこで、努力は無意味ではなく「時間をかけて物事に取り組む」能力の有無が成績に深く関係していることを証明するために、教師から心理学者に転職しました。
GRIT(グリット)の心身への影響
GRITは、心身との関係が深いことが研究で明らかにされています。楽観主義者か悲観主義者なのか、自己肯定感が高いのか低いのかということが、GRITとどのような関係をもっているのか見ていきましょう。
物事を楽観的に捉えやすくなる
GRITを高めれば、物事を楽観的に捉えやすくなります。やり抜く力があれば、何か問題が起こった時でも「何か対処方法があるはずだ」「他にも良い方法がある」と考えられるでしょう。物事に対して前向きな意味を見出すのです。
ビジネスで成功を収めた人に「なぜあなたは成功できたのか」と質問すると、「成功するまでやり続けたのだから成功して当然である」という言葉が返ってくるとのこと。やはり成功するためには前向きにやり抜く力が必須であることが分かります。
逆にGRITが低い人は、問題が起こった時に物事の意味を見出すことができず、すぐ諦める傾向があります。これでは成功から遠のいていく一方でしょう。
自己肯定感を高めて心を健康にする
GRITを高めることによって、自己肯定感が高まり心を健康にします。自己肯定感とは「自分の存在には価値がある」「自分に満足できている」と、自分の価値を肯定できる感覚のことを意味します。
GRITが高ければ、達成という経験を積み重ねることができます。「自分にはできる」という実感が自己肯定感を高め、心を健康にするのです。
GRIT(グリット)が成功者の共通項である理由
GRITが成功者の共通項である理由を解説していきます。アンジェラ氏は以前より成功の要因とされた才能や努力に加え、GRITという新しい要素を加えて研究を実施しました。その結果、さまざまな分野においてもGRITが大きな影響を与えている理由が分かったのです。
GRITが高いほど厳しいトレーニングに耐えられるため
まずは、GRITが高いほど厳しいトレーニングに耐えられるという理由があります。米国陸軍士官学校の中でも特に厳しいトレーニングを実施している学校に調査依頼をし、厳しい訓練に耐え抜くことができる士官候補生を予測しました。その結果、高校時代の成績や適性試験で高いスコアを出していた士官候補生が中途退学してしまう割合が高かったという事実が判明したのです。
記憶力にも大きな影響を与えるため
GRITは記憶力にも大きな影響を与えるという理由もあります。ナショナル・スペリング・ビーという単語のスペルの正確さを競う大会があり、そこでどのような出場者が最後まで大会を勝ち抜けるかという予測をしました。結果、グリット・スコアが高い人ほど勝ち残った生徒が多くいたのです。
指導力や教育力にも影響を与えるため
GRITが成功者の共通項である理由として、指導力や教育力にも影響を与えるという理由があります。教育現場では新人教師の中で誰が生徒の持つ学力をより多く引き出すことができるのかという予測を行いました。
その結果、教師が持っている知識や経験と生徒の成績は必ずしも比例しないことが分かりました。そして、グリット・スコアの高い新人教師ほど生徒の成績を伸ばすことができたのです。指導力や教育力においてもGRITが関わっていることが明らかとなりました。
GRITが高いほど営業力やコミュニケーション力が高いため
GRITが成功者の共通項である理由として、 GRITが高いほど営業力やコミュニケーション力も高いという理由があります。この研究では各民間企業でどのようなビジネスマンがトップセールスを記録したのかを予測しました。
この調査の結果、グリット・スコアと営業成績が比例していたことが分かったのです。このようにして、さまざまな研究結果からGRITが成功者に必要な力だという理由が示されています。
GRIT(グリット)を育てる方法
GRITを育てる方法を紹介します。ビジネスにおいて社員のGRITを育てることは重要なので、ぜひ今回する紹介する育て方を参考にして人材育成をしていきましょう。
グロース・マインドセットを活用する
グロース・マインドセットは「成長マインドセット」「しなやかなマインドセット」とも呼ばれており、自分の才能や能力は努力によって向上できるという考え方を意味します。成長マインドセットを身につければ、「やればできる」という前向きな考え方によって社員の可能性は広がり、自分のスキルに更なる磨きがかかってくるでしょう。
自分には才能や能力がないからといって諦めてはいけません。社員の新しい挑戦に対して正当に評価する人事評価制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
興味心を沸かせる
ビジネスにおいて興味心は重要な要素です。興味があるものに対して人は情熱を持ち、結果も表れやすくなります。
実際のビジネスの現場では社員に対して業務内容に興味心を沸かせることによって、モチベーションの向上に繋がっていくでしょう。社員同士でアイデアを出しやすいような労働環境を構築することが重要です。
日々の努力を怠らない
GRITのやり抜く力とは継続力を意味します。ただし、継続力は簡単に身につくものではありません。自分で決めた一つひとつの物事を習慣化できた実績によって継続力はつくものです。
「人に会う時は笑顔を絶やさない」「提出前は必ずチェックシートで確認する」など、日々の業務で実践できそうなことを継続して実行してみましょう。
慢心しないようにする
才能がある人ほど慢心しやすいので注意しましょう。なぜなら、才能がある人間は努力を必要としなくても課題を解決できてしまうからです。
ただし、自力ではどうしようもない状況に陥った時には、そのまま挫折してしまいます。GRITを育てるためには慢心せず、常に目標に向かって努力し続ける必要があるのです。
現実的な目標を設定する
グリットを育てたいならば、現実的な目標を設定するよう心掛けましょう。現実的な目標を設定する際のポイントは、中期的な期間でより具体的な目標を設定することです。
ビジネスにおいて長期的な計画を立てることは重要なのですが、あまりにも長期的な目標を設定してしまうと挫折してしまう原因になります。また、抽象的な目標を立てると具体的な計画に落とし込めません。具体的な計画があると社員もやるべきことが明確になるので、モチベーションを維持しながら目標を達成できます。
社会に対する貢献意識を持つようにする
グリット・スコアの高い人ほど自分の仕事に対して責任感を持ち、社会にとって有意義なことをしているという自覚があります。そのためGRITを育てたいならば、社会に対する貢献意識を持つようにしましょう。
自分の仕事が誰かの役に立っていると自覚することで、社会の一員として自分の価値を再認識できます。そうすると、社員の自己肯定感も上がり積極的に仕事に取り組んでくれるでしょう。
希望を持って最後までやり抜くようにする
希望を持つことで最後まで物事をやり抜くことができます。ビジネスには障害や困難がつきものであり、その困難を乗り越えることによってGRITが身につくのです。たとえ失敗してしまったとしても、その経験を生かして次こそ成功することができるでしょう。
日本の閉鎖的なビジネス環境では、失敗することに恐怖感を抱く社員がたくさんいます。伽藍の世界なので一度失敗すると落ちてしまった評判を取り返すことが難しいのです。いち早く欧米諸国の企業のようにジョブ型雇用を採用し、積極的に挑戦できるビジネス環境が整えられるとより良いでしょう。
GRIT(グリット)の意味を覚えておこう!
これまでGRITの意味と成功者の共通項である理由、GRITを育てる方法を紹介してきました。社会的に成功するためには、才能や努力の他に「やり抜く力」も重要な要素として挙げられます。
そしてGRITは後天的にトレーニングすれば身につけられるので、ぜひ日々の仕事をする際にトレーニングを実施してみましょう。自分の働く意味が「社会に対して貢献しているのだ」と認識することがポイントになります。