リソース・ベースド・ビュー(RBV)とは?分析や成功させる方法も

リソース・ベースド・ビュー(RBV)とは?分析や成功させる方法も
目次

リソース・ベースド・ビュー(RBV)の仕組みを知りたい!

市場のニーズが急激に変化して競争が激化している現代のビジネス社会を生き抜くために、経営戦略のアプローチの一つであるリソース・ベースド・ビュー(RBV)が注目されています。

リソース・ベースド・ビューはその差別化の根拠を企業が保有する内部資源である経営資源(リソース)に着目する資源依存型戦略理論です。リソース・ベースド・ビュー(RBV)の理論や意味、メリットや仕組みを知り、企業の課題解決に役立ててください。

リソース・ベースド・ビュー(RBV)とは?

リソース・ベースド・ビューの言葉の意味

リソース・ベースド・ビュー(RBV)とは、企業が競争優位性を獲得するために、自社の内部にある経営資源に同業他社に複製や模倣がされにくい付加価値を見出し、それを、活用する経営戦略を立案していくことを意味します。

リソース・ベースド・ビューは英語でresource based viewと表記されるため、省略してRBVともいわれ、アメリカの経営学者であるジェイ・B・バーニー教授によって提唱されました。企業が保有する内部資源である「人的資本」「物的資本」「財務資本」「組織資本」の4つの資源を経営資源と定義しています。

リソース・ベースド・ビュー(RBV)は、設備の構造や技術力に対して特許をとることで他社の差別化を図り、激しい価格競争に巻き込まれずに競争優位性を持続的に確立することが可能な経営戦略です。

コアコンピタンスとの関係性

企業活動において中核となる強みとして競合他社との差別化を図ることを意味するコアコンピタンスは内部の経営資源を求めるリソース・ベースド・ビューの理論に基づいています。

コアコンピタンスは、企業が目標や目的を達成するためのに重要な要素です。そのコアコンピタンスを適切に分析し経営戦略に効果的に活かすことはリソース・ベースド・ビューを考える上で非常に大切であると言えるでしょう。

ケイパビリティとの関連性

同業他社との競争で優位に立てる能力や可能性を意味するケイパビリティもリソース・ベースド・ビューの根幹となる理論です。企業が持つ優れた業務遂行能力、品質保持力、生産性など経営資源に着目したケイパビリティは、リソース・ベースド・ビューに基づいていると言えるでしょう。

ポジショニング・ビューとの違い

経営戦略の理論の一つであるポジショニング・ビューは、他社と違う位置に自社を位置づけて企業を取り巻く外部環境に着目するため、模倣されにくい内部資源に注目するリソース・ベースド・ビューの考えとは異なります

リソース・ベースド・ビューの理論が競争優位性を見いだすのに対し、ポジショニング・ビューは競争を避けるという理論のため、相反する意味を持つ言葉と言えるでしょう。

リソース・ベースド・ビューの企業事例

精密機械などの製造を行い、世界のものづくりを支える企業であるといわれている(株)キーエンスは生産性の高さが強みの企業です。キーエンスではリソース・ベースド・ビューの理論を重視し、企業の経営資源を経済的な価値、希少性、模倣可能性、組織の4つに分離し、それぞれをフレームワークを分析するVRIO活用しました

キーエンスでは経済価値として顧客の課題解決に軸足を置いたソリューション営業の展開をおこない、課題解決まで密着して総合的な提案するといった他にはない希少性を持っています。

また、他社では模倣できない企業文化として根付いた顧客へのソリューションがあり、人材育成や業界内でも有数の高い給与でモチベーションを高めていて、リソース・ベースド・ビューの要素となる経営資源の4つの資源すべてを持っていると言えるでしょう。

リソース・ベースド・ビュー(RBV)の論文を発表した人物

資源依存型経営戦略理論であるリソース・ベースド・ビューの基礎となる論文を発表した人物について解説します。

ペンローズ

リソース・ベースド・ビューの理論は、1959年にアメリカの経済学者で「会社成長の理論」の著者であるエディス・エルーラ・ティルトン・ペンローズによって初めて発表されました。

ペンローズは企業が成長するには、人材や技術などのリソースを活用できるように学ぶことが重要であると示しました

ワーナーフェルト

アメリカの経済学者でマサチューセッツ工科大学教授であったワーナーフェルトは、1984年「企業から資源をとらえる考え方」という論文で企業の収益はリソースの独占によって向上するとしました

また、今までの考え方が外部環境の分析に偏っていると指摘し、企業は他社が模倣できない資源を保持する資源獲得障壁を築くことが重要であると説明し、これがリソース・ベースド・ビュー理論の基礎となっています。

ジェイ・B・バニー

「企業戦略論 競争優位の構築と持続」や 「経営資源に基づく戦略論(RBV)」の著者であるアメリカの経済学者ジェイ・B・バニー は、1986年に論文でリソースの独占化によって競合優位性が獲得できると発表しました。

彼は、企業が持つ経営資源を重視するリソース・ベースド・ビューの考えによって、他社が模倣できない技術や人材などの強みを活かして同業他社より優位に立つことができ、収益をアップするとしています。

インゲルマン・ディエリックスとカレン・クール

インゲルマン・ディエリックス とカレン・クールは1989年にマネジメント・サイエンスにワーナーフェルトやバニーが着目したリソースの独占に対しリソースの模倣困難性について発表しました。

リソース・ベースド・ビュー理論の基礎である内部の経営資源に着目する点では同じですが、独占ができても模倣されてはその価値が下がってしまうので、模倣が難しいものである必要性を説き、リソースの組み合わせに着目しました

リソースの組み合わせとして、企業が時間をかけて組み合わせた蓄積経験の独自性、因果関係が曖昧な因果曖昧性、複雑な人間関係や社会関係による社会複雑性の条件を持つとき同業他社は模倣が困難であると説明しています。

リソース・ベースド・ビュー(RBV)の分析方法

分析方法①VRIO分析を活用する

先述のバーニー氏は、リソース・ベースド・ビュー(RBV)の分析方法としてVRIO分析を考案・提唱しました。VRIO分析は企業の内部にある経営資源に注目するフレームで経営資源を4つの視点から評価して自社の競争優位性を分析するフレームワークです。VRIO分析の4つの要素を解説していきましょう。

経済価値(Value)

企業の経営資源が組織や顧客、社会全体にどれくらいの価値を見い出しているかを問うことで経営資源の評価を問う指標です。その経営資源が持っている能力が外部環境の影響を受けずにいられるかで競争優位性を判断できます。この経済価値は4つの要素の中で最も重視される視点です。

希少性(Rarity)

市場において自社の経営資源をどれだけコントロールできるか、その商品やサービスの優位性のレベルを判断し希少価値の高さを評価する指標が希少性です。他社の製品との違いを把握することによって希少性を高め、顧客を自社に誘導することが可能になります。

希少性は商品やサービスだけに留まらず、企業が蓄積した経験によるソリューションなども希少性の高い経営資源となります。経営資源の希少価値を見つけることで顧客の満足度を高めて購買意欲をアップし、競争優位性を獲得できるでしょう。

模倣困難性(Inimitability)

リソース・ベースド・ビューを進めていくためのVRIO分析をする際、重要なのが模倣の難易度を示す模倣困難性です。独自のリソースが持続的な競争優位性を獲得するためには、真似することが困難である必要があります

リソース・ベースド・ビューの理論による模倣困難性の検証は、商品・サービスの開発力、製造の技術力や特許、社会的な複雑性、因果関係の不透明性、独自の営業手法、企業の社風や歴史に着目して判断するとよいでしょう。

組織(Organization)

リソース・ベースド・ビューの理論を実行するうえで分析する4つの要素の中で、他の3つの要素を持続的な性質に変える視点が組織です

リソース・ベースド・ビューを進めるには、組織を構成する人材である従業員の理解と協力が必要不可欠と言えます。そのためには競争優位性を維持するための意識改革や組織制度、経営方針、人材育成を徹底し、人材を定説にコントロールすることが重要でしょう。

分析方法②VRIO分析以外のフレームワークを活用する

リソース・ベースド・ビューの分析において、VRIO分析は非常に有効なフレームワークですが、リソースの社会的価値の評価基準の決定や分析対象として設定する競合企業の見極めが困難であるというデメリットがあります。

そのため、リソース・ベースド・ビューをより効果的に分析するためには、自社の強みや弱みなどから経営戦略や事業計画の現状分析を行うSWOT分析や顧客、競合、自社の3つの視点からマーケティング環境を把握し分析する3C分析といったフレームワークも活用するとよいでしょう。

分析方法③トップマネジメントによる組織改革を行う

リソース・ベースド・ビューの理論における経営資源の中で特に人的資本や組織資本は、持続的に経営資源の価値を高めるために重要です。

トップマネジメントが人的資本や組織資本を適切にコントロールしてリソース・ベースド・ビューを進めるためには、経営陣の意識改革や経営方針の策定、自社の社会的価値を適切に評価するための明確な判断基準の設定をする必要があるでしょう

そして従業員にそれを伝えるとともに、労働環境の整備を行うなどトップマネジメントによる組織改革が意味のあるリソース・ベースド・ビューを行うための重要な鍵を握ると言えます。

リソース・ベースド・ビュー(RBV)を成功させる方法

経営資源の模倣難易度を測定する

リソース・ベースド・ビューを成功させるためには、VRIO分析の4つの要素のうちの模倣困難性を特に重視する必要があります。

市場のニーズの変化が激しく、テクノロジーの発展が急速に進む現代社会において、経営資源を競合他社に模倣されずに継続的に優位性を保つことは非常に重要です。そのため、リソースの模倣難易度を正確に測定し困難性を高めることは、リソース・ベースド・ビューを成功するために意味のある戦略と言えるでしょう。

ケイパビリティが代替される可能性を分析する

技術革新やM&Aがめまぐるしい勢いで進んでいる現在、同業他社よりも優位に立っていた能力や技術が比較的容易に真似できるようになってきました。特にAI技術の台頭により、ブランド力で勝っていた大企業のシェアが新興企業に取って代わられようとしています。

リソース・ベースド・ビューを成功させるためには、常に新しいテクノロジーやライバル商品などをチェックし、自社のケイパビリティが代替される可能性がないかを検証する必要があるでしょう。

そして模倣困難性を高めるための投資コストを分析し、このまま維持するべきか撤退して他の模倣困難な商品の開発をするかの見極めをすることも重要です。

ケイパビリティの有効期間を想定する

リソース・ベースド・ビューを成功させるためには、長期的なケイパビリティの維持が重要です。しかし、それにも限界があるためケイパビリティの有効期間を想定しておき、有効期間が切れる前に新しくケイパビリティやコアコンピタンスになるような経営資源を探しておくことも必要でしょう。

ケイパビリティはリソース・ベースド・ビューを成功するために必要不可欠ですが、あまりそれに依存してしまうと、代替できる商品やサービスの脅威への対応が的確にできなくなり、競争優位性の意味を失ってしまいます。

そのため経営資源の価値の有効時間を想定しておき、ケイパビリティによる優位性がなくなった時に時間や費用をあまりかけずに代替できる商品を開発しておくことも重要でしょう。

経済価値がどの提供先に恩恵を与えているかを明確にする

企業が活動を行うことで影響を受ける取引先や株主などのステークホルダーや社会に対しての貢献度が、企業が持つ経営資源の経済価値となりますが、リソース・ベースド・ビューにおける経済価値は見極めが困難です。

日頃から自社の競争優位性がもたらす経済価値がどの提供先に恩恵を与えているかを明確にしておくことで、経営資源の経済価値を見いだすことができ、リソース・ベースド・ビューを成功に導くでしょう

リソース・ベースド・ビュー(RBV)の課題

課題①同義反復の性質がある

リソース・ベースド・ビュー(RBV)の定義は、企業の資産に価値があり、模倣が困難で希少なリソースによって競争優位性を獲得することです。しかし、これは言い換えると価値があり希少な内部資産を持つ企業は価値があって希少な戦略を行う力を持っているということになり、同義反復になります

リソース・ベースド・ビューの定義は同義反復の性質であるため反証ができず、科学的な論理命題として意味がないという課題があります。

課題②部分均衡の性質がある

リソース・ベースド・ビュー(RBV)の理論で重要な希少性やニーズは国や時代によって違いがあります。そのため価値がある経営資産は市場によって大きく左右されてしまい、部分均衡の性質があるがリソース・ベースド・ビューの考えにはその側面での考慮が十分にされていない課題があると言えるでしょう。

課題③リソースを組み合わせて活用する力を無視している

リソース・ベースド・ビューは単純な因果関係として経営資産に模倣困難な独自性と希少価値があれば競争優位性を持つとしています。しかし、現実のビジネスではリソースの組み合わせによって活用の仕方は様々で、どのようなリソースを選択し、組み合わせて活かしていくかが最も重要な意味を持ちます。

そのため、リソース・ベースド・ビューの考え方はリソースを組み合わせて効果を発揮させる企業の力を無視しているとして、課題がある理論であると言われています。

課題④フレームワークが貧弱

経営理論を考察するにはフレームワークが非常に重要です。しかし、リソース・ベースド・ビューの分析で用いられるVRIO分析は経営資産を経済価値、希少性、模倣困難性、組織の4つの要素で評価するだけであって、業績をアップへの経営戦略としては、内容に乏しいという課題があります

課題⑤メッセージ性が弱い

リソース・ベースド・ビュー(RBV)の課題の一つがメッセージ性の弱さです。リソース・ベースド・ビューは、企業は経済価値があり希少性が高く模倣困難な経営資産を持つことが重要であるということを意味していますが、具体性のない理論となっています。そのため、経営者にあまり重要性が届いていないという課題があります。

資産の経済価値や希少性を高める方法や模倣困難なリソースにするためにはどのような戦略が必要かなど、具体的な施策まで踏み込むことによって、リソース・ベースド・ビューは意味のある理論になるでしょう

リソース・ベースド・ビュー(RBV)の理論が学べる本

顧客の価値観が多様化し、市場の変化がめまぐるしい現在のビジネスにおいて、効果的とされる経営戦略であるリソース・ベースド・ビュー(RBV)の理論が学べる本を紹介します。

資源ベースの経営戦略論

バーニーが提唱したリソース・ベースド・ビューの理論をわかりやすく説明するとともに、企業の競争優位性を分析する「企業戦略トライアングル」や新しいフレームワークである「価値創造ゾーン」を使って企業戦略の本質を説いているビジネス書です。

解説が図式や事例などを使っているのでリソース・ベースド・ビューの基礎知識を得たい初心者の人にもわかりやすく、ビジネス書が苦手な方でも読みやすい書籍でしょう。

企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続

リソースの独占化によって競合優位性が獲得できると発表したリソース・ベースド・ビューの理論の生みの親であるアメリカの経済学者ジェイ・B・バニーが執筆した書籍です。

競争優位性の確立に焦点をあて、SWOT分析による企業の強み・弱み・機会・脅威に触れつつ、リソース・ベースド・ビューの視点で競争優位性について解説しています

VRIO分析などリソース・ベースド・ビューに活用できるフレームワークの説明や戦略事例についても多く紹介されているため、リソース・ベースド・ビューの基本知識を学びたい人や企業戦略を勉強している経営者に最適です。

競争の戦略

内部資源から競争優位性を確立するリソース・ベースド・ビューの理論とは反対に、外部資源である取引先との交渉や新規参入や代替の脅威から競争優位性を確立するSCPパラダイムの理論を提唱したM.E.ポーターの執筆した書籍です。

ファイブフォース分析などによる外部の代替可能性の高い脅威への分析は、外部環境要因から自社のポジショニングを確立するうえで、非常に重要です。自社のポジショニングを把握したうえでリソース・ベースド・ビューを理解することは、効果的な経営戦略をするために、必要不可欠と言えるでしょう。

事業戦略策定ガイドブックー理論と事例で学ぶ戦略策定の技術

リソース・ベースド・ビューやポジショニング・ビューなど多種多様な企業戦略を事例やケーススタディを使って学ぶことが出来るビジネス書です。

リソース・ベースド・ビューの考えである内部資源に着目し、保有する経営資源を効果的に活かすにはどのようにしたらよいかを考察する際に役立つ書籍でしょう。

リソース・ベースド・ビュー(RBV)の仕組みを覚えよう!

市場のニーズが複雑化し、テクノロジーが急速に進化している現代社会を生き抜くためには、リソース・ベースド・ビューの理論である自社の保有する経営資産の価値を高め、模倣困難な希少性の高い意味のある資源にする必要があります。

リソース・ベースド・ビュー(RBV)の意味や仕組みを覚えて競争優位性を確立し、経営戦略に有効活用して業績アップや持続性のある成長に役立ててください。

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