カウンターオファーを会社の人材確保や技術継承に活用したい!
自社から有能な人材が転職しようとしているときに行う、カウンターオファーという交渉方法について解説します。カウンターオファーを行うメリットやデメリットについて確認しましょう。そして、どのような条件を提示すればいいのか、参考にしてください。
カウンターオファーとは?
カウンターオファーの言葉の意味
まずはカウンターオファーの意味から確認しましょう。カウンターオファーは、有能な従業員が転職や退職を告げた際に、現在所属している企業から行われる引き止め交渉を意味します。
もともとは貿易などに使われていた言葉であり、売り手側の条件に対して買い手側が納得できない場合、買い手側から別の条件を提示することを意味していました。そのため、「反対申し込み」や「逆申し込み」と呼ばれることもあるので覚えておきましょう。
カウンターオファー実施の実態
実際に転職を検討している従業員に対して、カウンターオファー実施の実態はどうなっているのでしょうか?円弱株式会社が運営する転職情報サイトにおいて422人に対してアンケートが行われ、その中でカウンターオファーを受けたことある人は31%でした。
約3割がカウンターオファーを受けたことがあり、何らかの引き止めに関する交渉が行われていたのです。転職希望者に対して企業はそのまま受け入れるのではなく、カウンターオファーを行って引き止め交渉を行っていました。
カウンターオファーの成功率
先程のアンケートで、カウンターオファーを受けたことがある人が転職を取りやめたかどうかについてもアンケートが行われています。その結果は、27%の人が転職を取りやめたことを明かしました。このことから、カウンターオファーの成功率は決して高いとはいえないことが確認できます。
カウンターオファーの目的
目的①人材を確保するため
アンケートの結果から、決してカウンターオファーの成功率は高くないことが分かりましたが、それでも注目を集めている理由は何なのでしょうか?カウンターオファーを行う目的について確認してください。
まず、カウンターオファーの目的は人材を確保するためです。少子高齢社会である日本では、多くの企業が人材を確保するのが難しくなっています。その中で優秀な人材となればさらに難しくなるでしょう。
企業としては成功率が高く無いとしても、引き止められる可能性にかけてカウンターオファーを行っているのです。それだけ自社のことをよく分かっている、有能な人材を引き止めるのは企業の重大なテーマになっています。
目的②社員の定着率を上げて人材を育てるため
転職をするのは自由ですが、企業がそれをあっさりと受け入れていると社員の定着率が下がってしまうのです。そのため、カウンターオファーを行うのは社員の定着率を上げるのが目的になります。
人材を育てるのは時間はもちろんコストもかかるので、そういった転職を防ぐのは重要な理由です。また、定着率が低い企業は求職者からも避けられる理由になるため、カウンターオファーを行って引き止めを行っていきましょう。
カウンターオファーのメリットとデメリット
メリット①新しい人材を探す必要がなくなる
カウンターオファーのメリットとして、新しい人材を探す手間が省ける点が挙げられます。先程も解説したように、少子高齢社会の影響で企業は人材難になっており、なかなか有能な人材を獲得できない状態です。
自社で結果を出している人材が離職すると、それを補えるような人材を獲得するのは容易ではありません。特に管理職やチームリーダーを担っていた人材が離職することは、企業にとって大きな損失になります。こういった理由からカウンターオファーを交渉術として取り入れましょう。
メリット②教育コストを抑えることができる
教育コストを抑えられることもメリットです。新入社員を基本的な仕事をこなせるようにするだけでも、企業は時間と費用がかかります。それが管理職やチームリーダーにまで育った人材であればなおさらです。
転職者が出て、新しい人材が見つかったとしても教育に様々なコストがかかります。こういった理由からカウンターオファーを行う企業も多くいるので参考にしてください。
デメリット①社員が会社に居づらくなることがある
カウンターオファーのデメリットは、元の会社に居づらくなることです。企業側から引き止められて転職を中止したものの、会社を出ようとしたことに変わりはありません。
また、カウンターオファーでは新しく良い条件で雇用関係を結び直すことが多いため、他の従業員から悪い印象を持たれることがあります。極端な言い方をすれば「お金にがめつい人」と思われる可能性があり、人間関係のトラブルが引き起こされるかもしれません。
企業はカウンターオファーを行ったことを広まらないように配慮することや、その後の人間関係を見守る必要があります。アフターケアをしっかりと行って、当事者と面談などを行いましょう。
デメリット②人事配置を新しく考え直す必要がある
条件によって人事配置を新しく考え直す必要があります。カウンターオファーによって、当事者を別部署に異動させることになった場合、既存の社員との配置転換などを行わなければなりません。
このときに異動先との人間関係や相性などを考え、様々な部分で見直しが必要になります。そのため、カウンターオファーで提示する条件は当事者だけでなく、既存の社員のことも考えながら行ってください。
カウンターオファーを受けた時の対処法
転職しようと思った理由を考えてみる
では、カウンターオファーを受ける側の注意点などを確認しましょう。カウンターオファーを受けたときは、自分がなぜ転職をしようと考えたのか改めて見つめ直す必要があります。
給与面の条件が合わない、人間関係のトラブル、さらなるステップアップのためなど色々な理由が考えられるでしょう。そして、企業側が提示したカウンターオファーの条件を確認し、現職に残るほうがメリットになるか検討してください。
カウンターオファーの条件が良くても、自分が転職を考えた理由を解決するものになっていなければ意味がありません。特に人間関係のトラブルは部署を異動するだけでは解決できないことがあるのです。そういった点も含めてカウンターオファーを受けるか考えましょう。
退職を伝えなかった場合も同じ条件を貰えたかどうかを考える
企業側がカウンターオファーを申し出た理由を考えてください。退職を伝えていなかったとしても、同じような条件がもらえるタイミングだったのか検討しましょう。もし、すでに昇給や昇進、異動などが検討されていたタイミングかもしれません。
カウンターオファーの提示内容は、基本的には当事者に好条件を出すため、本来予定していたものではないことが多いです。そのことをよく考えて、転職を伝えていなくても遠からず得られた条件だったのかを考えましょう。
つまり、自分が適切な評価を普段からされているのかを考える必要があるのです。適切な評価をされていないと感じた場合、現在の職場に残っても同様の悩みを抱える可能性があります。
会社に残った後のことを考えてみる
自分が転職や退職を申し出た後に、カウンターオファーを受けて会社に残った後のことを考えましょう。転職の理由にもよりますが、そのまま会社に残ると居づらくなる場合があります。様々な理由を周囲が理解してくれるかが重要になるのです。
現職に留まる上では将来的なキャリアプランも含めて、多くのことを想像し、シミュレーションしなければなりません。カウンターオファーの好条件だけで決断するのではなく、会社に残った後のことをよく考えましょう。
カウンターオファーの交渉成功の秘訣
今以上の給料を提示する
カウンターオファーで交渉を成功させる秘訣は、まずは今以上の給料を提示することがおすすめです。基本給が上がることは社員にとって大きなメリットなので、この部分ははっきりと変化が分かるようにしましょう。
昇進させることを伝える
昇進を提示することも効果があります。自分が中心になってプロジェクトを進めたいようなリーダータイプに効果的です。また、上司との相性が良くない場合に昇進によって解決できることがあります。
希望の部署に異動させる
人間関係のトラブルや自身の担当の適正などから転職を考えている場合、希望の部署に異動させてあげるのがおすすめです。転職希望者に自分が本当にやりたい仕事の内容を聞き、そこに関しての条件提示を行ってください。
仕事環境の改善を伝える
仕事環境の改善も重要です。現在の仕事環境が課題となっている場合、そこが改善されないとカウンターオファーを受け入れてくれないでしょう。どういった点を課題と感じているのかを聞き、改善内容を提示してください。このように希望者の課題を明確に汲み取ることが、成功の秘訣です。
カウンターオファーを行なった後にするべきこと
交渉したことを実行する
カウンターオファーを行った後に実施すべきことを確認してください。必ず行う必要があるのは、交渉した課題は実行しましょう。相手が課題として提示してきた様々な内容を改善することは、最低条件です。
給与や待遇などの課題もしっかりと提示した条件に変更し、相手と確認を取りましょう。こういった交渉したことや課題改善に取り組まない場合、大きな不信感を抱かせることになります。
社員がこの不信感を他の社員に伝えた場合、全体に波及して、会社全体に影響を及ぼすのです。そのことで他の社員も転職を考える可能性もあるので、必ず課題改善と交渉した内容は実行してください。
カウンターオファーを受けた社員への配慮を行う
企業に留まってくれた社員に対して、その後のアフターフォローを忘れないようにしましょう。仕事のモチベーションアップや取り組み方を確認し、面談などを通して不満を改めて確認してください。実際に条件が変更されている点や会社の課題改善への取り組みに関する印象も再確認しましょう。
他の社員への配慮を怠らないようにする
カウンターオファー後は周囲の社員に対する配慮も必要です。同様の悩みを抱えている社員がいないかを調査し、職場環境の課題がある場合は改善を行っていることを告知しましょう。社員の定着率をアップさせる機会として、うまく有効活用してください。
カウンターオファーを活用する時の注意点
注意点①他の社員の便乗や士気の低下を生むことがある
カウンターオファーを活用するときの注意点や課題を紹介します。この交渉方法の問題点として、他の社員の便乗や士気低下を生む可能性に注意してください。
特に便乗して自身も好条件で契約し直そうとする社員が出ないように、組織統率を行い、情報を厳重に管理することが求められます。
注意点②転職希望者との間に溝ができることがある
転職希望者が現在の企業に残ることを決意しても、そのことを知った同僚や上司が今までのように接してくれない可能性があります。こういった人間関係のフォローを疎かにすると、社内全体のモチベーションに影響が出るので注意しましょう。
注意点③モチベーションの低下に繋がる恐れがある
好条件で契約交渉が行えると、そのことに満足してモチベーションが低下することがあります。残ってくれた社員が今まで以上に活躍してくれるように、環境を整えてください。
注意点④長期的な効果が望めないことがある
カウンターオファーが成功した場合、その効果が継続して続くとは限りません。オファーを受けて残った社員が、結果的に退職する例は存在しています。この理由は人間関係のトラブルなどで転職を考えた場合に起きやすいようです。
人間関係や職場環境が理由で転職を検討していた場合は、企業側が積極的に改善に取り組まないと、カウンターオファーが無駄になってしまうかもしれません。この点に注意しながら、実際に交渉を行うメリットがあるのか考えて実施するようにしましょう。
カウンターオファーを活用して優秀な人材の流出を防ごう!
カウンターオファーの意味や受けたときの対処法について解説しました。転職や離職を希望した社員に対して、条件交渉を行って引き止めるのがカウンターオファーです。メリットもデメリットもある方法であり、成功しても効果が長続きしない可能性に注意しましょう。
自社の優秀な人材を流出するのは大きなダメージになります。そういった課題に対処するための交渉方法なので、利用する場合は様々な可能性を検討してください。その後のことや他の社員のことも考えた上で、この交渉術を活用していきましょう!