インセンティブ制度とインセンティブ設計の仕組みを知りたい!
従業員のモチベーションを上げる方法として、インセンティブ制度の導入を行いましょう。インセンティブ制度を導入するために重要なインセンティブ設計と合わせて解説します。健全な競争や優秀な人材を活用したい企業は、ぜひ参考にしてください。
インセンティブ制度とは?
インセンティブ制度の言葉の意味
インセンティブ制度は、企業が従業員のモチベーションを上げるために刺激を与える仕組みです。インセンティブは刺激を意味する言葉になります。刺激として与えられるものは金銭や表彰など様々な形で行われるので、そういった内容の例も含めて参考にしてください。
インセンティブ制度に向いている職種
本制度が適しているのは営業職系です。不動産業界や保険業界などの企業に導入されている事例が多く、ノルマや目標を設定する職種に向いています。契約件数や売上金額に応じてインセンティブが支払われるのが一般的です。
このように向いている職種は営業職ですが、活用の仕方によってどの仕事にもインセンティブは導入できます。顧客と接する仕事や人事系、またフリーランスで数をこなす仕事に対しても依頼者側がインセンティブを設定することがあるのです。
ボーナスとの違い
ボーナスとの意味の違いを確認しましょう。インセンティブとボーナスの共通点は、基本給以外の一時金として支給される点です。異なる点は、ボーナスは企業の業績に応じて社員全員に、インセンティブは個人の成績に応じて社員個人に支払われるという点を覚えておきましょう。
歩合制との違い
歩合給の場合は成果に対する歩合のみ支払われる完全歩合制と比較してください。この完全歩合制の場合は、成果に対する歩合のみ支給されますが、インセンティブの場合は基本給にプラスで支払われるものになります。
完全歩合制の場合はリスクが大きいものの、成果に対する報酬は大きくなるのが特徴です。逆にインセンティブはリスクは少ないですが、成果に対する報酬は少なくなります。この意味の違いを把握した上で、制度をうまく活用してください。
インセンティブ制度のメリット
メリット①従業員のモチベーションが上がる
インセンティブ制度を導入するメリットは、従業員のモチベーションが上がる点です。自分が出した結果に対して報酬が出ることは、目標達成に対してより積極的になります。インセンティブによって「もう少し頑張れば報酬が出る」というのは、やる気につながるでしょう。
また、こういった考えを持つ従業員が増えることで、全体にやる気の連鎖が起きます。結果的に業績向上につながるため、企業もインセンティブを継続することができるのです。また、金銭だけがインセンティブではないので、表彰や評価などをもらえることもモチベーションアップにつながります。
メリット②目標が明確になる
仕事をやるなかで、自分の目標を定めるのが難しい人もいるでしょう。給与アップなどの金銭的な面をやる気につなげている従業員も多くいます。そういった中でインセンティブが設定されると、これが目標となって積極的に仕事に取り組める事例が多いです。
「今月は新規契約を○○件達成した人にインセンティブを行います」と設定されると、それが明確な目標になります。目標を達成するうためのアイデアやツールの採用など、効率的に業務を行う方法を検討するなど、今までとは違った角度から結果を出そうとする社員も現れるでしょう。
メリット③健全な競争が生まれる
健全な競争が生まれるのも大きなメリットです。インセンティブを導入することで、自然と企業内で従業員間の競争が生まれます。お互いのやる気が相乗効果を生み、切磋琢磨して取り組んでくれるのです。
また、個人にインセンティブを出す形だけでなく、チームに出す方法もよいでしょう。チーム全体で協力をして結果を出すことにチャレンジするようになるので、この形の導入も検討してください。
メリット④優秀な人材を採用することができる
本制度を積極的にアピールすることで、優秀な人材獲得につながります。どのようなインセンティブを行っているかを外にアピールすることで、魅力を感じる応募者を集めやすくなるのです。
「仕事をする時にインセンティブがあるほうがやる気が出る」と考えている人物が集まり、目標を積極的に達成する人材が揃います。従業員の意思や特性を把握しやすくなり、チームメンバーの設定も定まるでしょう。
メリット⑤評価と給与の公平性が担保される
評価と給与の公平性の担保にもつながります。日本では長く年功序列制度や終身雇用制度がメインでした。若くて結果を出しても、それが給与や報酬につながりにくいシステムになっており、モチベーションが下がる原因になっています。
また、年齢を重ねてやる気が下がった社員に対して、年次や役職に応じて報酬を支払わなければなりませんでした。そこにインセンティブの制度を導入することで、評価や給与の公平性が担保できるようになります。ベテランでも結果を出せない人は評価が低くなる、というのが明確になるのです。
若手社員からすれば結果を出せば年齢に関係なく報酬が出るので、積極的に自分をアピールしながら目標達成に邁進してくれるでしょう。結果的に若手従業員のキャリアプランの形成にも大きく影響し、優秀な人材が自社を支えてくれるようになります。
インセンティブ制度のデメリット
デメリット①協力体制が弱まることがある
インセンティブ制度は導入の仕方を間違えるとデメリットが発生します。例えば、協力体制が弱まる可能性があるのです。その理由は個人に設定されたインセンティブによって、個人プレイに走る従業員が出ることが関係しています。
評価基準や目標設定を決める際に、人間関係の悪化やチームワークが乱れないようにしてください。過剰なライバル意識を持つ従業員がいる場合は、面談などを通してインセンティブの本来の目的や意味を理解するように説明しましょう。
デメリット②長期的な視点が持ちにくい
多くのインセンティブは短期間の目標になります。そのため、この制度を続けていると中長期的な視点が持ちにくくなるのです。企業として先を見据えた長期戦略を設定しても、従業員が短期的なインセンティブの達成に意識を集中するのを気をつけなければなりません。
そのため、長期的な視点を持たせる制度や施策を導入することで、インセンティブのデメリットを改善することができます。
デメリット③安定志向の従業員が入社しにくい
安定志向の従業員が入社しにくくなるので、このデメリットは要注意です。インセンティブを達成できるかできないかによって、自身の給与は大きく変動します。例えば住宅ローンなどの借り入れや子どもの教育資金などの準備に対して、計画が難しくなるのです。
特に家庭を持った従業員にとってインセンティブはポジティブなものではなく、ネガティブな重荷になる可能性があります。安定志向の従業員にとって、インセンティブ以外の選択肢を用意することも検討しなければなりません。
デメリット④収入格差や評価基準に対する不満がたまる
デメリットとして収入格差や評価基準に不満がたまることが挙げられます。本制度ではどのような評価基準に設定するかが難しく、全従業員に納得してもらえないかもしれません。目に見える形で成果を出すのが苦手な従業員にとって、不満を感じさせてしまうのです。
評価基準を定期的に見直すことや、面談などを通して数値以外の部分でも従業員の成果を汲み取ってあげる必要があります。目標の設定の仕方を工夫することで、様々な従業員が結果を出しやすいようにしましょう。
デメリット⑤ノウハウの共有や蓄積が難しい
本制度はどのようにノウハウを共有し、企業として蓄積していくかが課題です。インセンティブ制度をうまく活用している従業員の中には、「ノウハウを明かしたくない」と考える人も出てきます。個人の結果はアップしても、それが全体に波及しないと業績向上につながりません。
従業員の協力体制を作ることや、良い結果を出した人間によるノウハウの発表会を設定するのがおすすめです。健全な競争を支えながら、協力体制を強靭なものにしていくことで、インセンティブ制度はメリットの大きなものになります。
効果的なインセンティブ設計の流れ
インセンティブ制度の導入目的を明確にする
インセンティブ導入のために必要なインセンティブ設計を行いましょう。インセンティブ設計によって、ステップを踏みながら従業員に制度の意味や目的を理解させられます。
まず、インセンティブ設計では制度導入の目的を明確にするのが重要です。あいまいな理由では失敗につながるため、インセンティブ設計で自社へのメリットやデメリットを確認しましょう。
従業員ヒアリングを行って制度リスクを洗い出す
実際に目標や目的を達成するために動くのは従業員です。そのため、インセンティブが従業員の望むものなのか確認することが求められます。インセンティブ設計で従業員のインセンティブに対する考えを確認することで、運用の際のリスクを軽減することができるのです。
一部の人間だけで制度導入を進めると、デメリットのところで紹介したようなトラブルが発生しやすくなります。インセンティブ設計を進める中で、従業員全体の考えをヒアリングしましょう。
インセンティブ制度の内容を決める
インセンティブ設計で従業員の考えや姿勢を確認できたら、制度の内容を決めてください。重要なのは報酬を金銭だけにするのではなく、評価的なインセンティブも含めることです。金銭だけが報酬ではないことを理解し、従業員がそれぞれメリットを得られるようにインセンティブ設計を進めてください。
インセンティブ制度の運用を決める
条件や内容を決定したら、どのようなタイミングで反映されるのかを考えましょう。いつからいつまでの成果が対象になるか、という点も含めて検討してください。このようにインセンティブ設計で運用の仕方が決まれば、実行に移せるようになります。
従業員に周知して経過を観察する
インセンティブ設計で決めた内容を実行したら、その後の経過観察を行っていきましょう。また、従業員に制度を周知させることが重要です。
システムを運用しながら、定期的に見直しや改善を行うのもインセンティブ設計のポイントになります。こういった5つのインセンティブ設計の手順を参考に、自社企業に制度を導入してみましょう。
インセンティブ制度の企業事例
企業事例①メルカリ
実際に制度を導入している企業事例を参考にしましょう。フリマアプリを運営するメルカリでは、「mertip(メルチップ)」というピアボーナス制度が導入されています。従業員同士が感謝とともに報酬を送るのがピアボーナスで、お互いの尊重につながるのが特徴です。
企業事例②株式会社ベネフィット・ワン
株式会社ベネフィット・ワンでは、社内ポイント「Blpo」を導入しており、手軽に多様なニーズに合わせたアイテムと交換が可能です。また、サンクスポイント機能を搭載しており、メルカリ同様にコミュニケーション活性が行われています。
また、本システムは損保ジャパン日本興亜保険サービス株式会社や大塚製薬株式会社などに導入されました。こういった大手企業ではポイントによるインセンティブを付与する形が多くあるので参考にしましょう。
企業事例③パーソルプロセス&テクノロジー
パーソルプロセス&テクノロジーはコンサルティング会社です。こちらの企業では残業ゼロの従業員に報酬を与えるインセンティブが行われています。
残業をすることが正しいのではなく、「いかに残業をせずにパフォーマンスを上げられるか」を目標にして、インセンティブ設計が行われた事例です。残業ゼロの従業員は20時間相当の残業代を支払う仕組みになので、働き方改革を進める上でも参考にしてください。
企業事例④リクルートホールディングス
リクルートホールディングスでは、目標を達成した場合だけでなく達成率の高さなどもインセンティブにつなげています。また、金銭だけでなくMVPの表彰など様々なインセンティブを行っているのが特徴です。
細かな設定が従業員それぞれのやる気につながっており、無理な目標ではなく、実現可能なものにつながっているといえるでしょう。
インセンティブ制度やインセンティブ設計を導入しよう!
インセンティブ制度やインセンティブ設計について紹介しました。目標達成などに応じて報酬を与える制度であり、従業員のモチベーションアップや有能な人材を雇用することにつながるシステムです。
インセンティブ設計を丁寧に行い、自社の従業員の考えも取り込んだ上で導入を進めましょう。しっかりとしたインセンティブ設計が行われていれば、多くの従業員にチャンスがある制度になります。従業員のやる気を引き出して、業績を向上できる制度なので導入を進めてみましょう!