行動科学を企業の人材育成に役立てたい！
近年、人間の行動を学問的に研究してその法則性を解明していく行動科学という学問が、ビジネス界において目標設定や人材マネジメント、マーケティングなど様々な分野で役に立つとして注目を集めています。
現在の日本社会は少子高齢化による人手不足が課題となっているため、自ら考え行動する能動的な従業員の育成が企業の成長に非常に重要です。行動科学の意味や活かし方を学ぶことで自身や部下のモチベーションを高めるなど企業の人材育成に役立て、ビジネスに応用しましょう。
行動科学とは？
行動科学の言葉の意味
行動科学とは人間の行動を科学的に研究し、行動を決定する要因に関する考え方を体系化していく学問です。職場においては、部下のマネジメントにおいて行動科学マネジメントという形で活用されています。
労働力不足が問題となっている現在の日本社会では、自発的に行動する生産性の高い社員の育成が必要不可欠です。そこで、人間の行動を研究してその法則性を見つける行動科学が社員の育成に役立つとして注目され始めました。
行動科学は幅広い分野で応用が可能
行動科学は人間の行動が社会にどのような影響を及ぼすかを研究する学問でもあるので、ビジネスの様々な分野で応用ができます。例えば、マーケティングでは消費者の行動をリサーチし消費者心理を利用した商品を販売することに行動科学で学ぶ学問が活かせるでしょう。
行動科学を学ぶことは人材育成のみならず社員のマネジメントや組織運営、マーケティングなど幅広い分野で活かすことが可能であるとしてビジネス界で重要な役割を担っています。
行動科学を応用できる場面
先述のように行動科学は人間の行動を徹底的に研究し学ぶ学問のため、企業として応用できる場面と個人として応用できる場面があります。企業として活用できる場面は主体的な人材の育成やマネジメント、組織運営、マーケティング調査、商品・サービス開発などです。
個人として生かせる場面は、ルーティーンなど行動の習慣化や減らすべき行動の改善などです。個人の行動改善は、仕事にも影響します。そのため様々な視点での個人の行動科学の理解は、ビジネスにも応用できると言えるでしょう。
行動科学と心理学の違い
行動科学は人間の行動を科学的に研究し、様々な人間の心理に基づく行動を観察・実験して意思決定のメカニズムを解明して体系化する学問です。そのため人間の心の動きを学び人間心理を分析する心理学は行動科学の学問のうちの一つと言えます。
行動科学は心理学の他、脳科学、情報科学、精神医学、認知科学など幅広い範囲の知識が必要です。また、行動科学は人間の行動そのものよりも、人間と社会の関係に強い関心を持っています。人間と社会の関係は非常に複雑なため行動科学は社会学や経済学、政治学、マーケティング学を学ぶことも重要と言えるでしょう。
行動科学が活かせる場面【企業】
組織や人のマネジメントの場面
ビジネスにおいて行動科学が最も活かせるとして注目されているのが、組織や人のマネジメントの場面です。行動に焦点を当てる行動科学がどのようにマネジメントに活用されているか紹介します。
活用場面①営業成績の振るわない部下に対して使う
行動科学を活用したマネジメントでは、部下の営業成績が振るわない時、上司は部下の行動を細かく分解して行動のレパートリーを検証し、結果に結びつく行動を洗い出すことで不振の原因が何であるかを分析します。
これにより、部下の行動規範を示すことができると共にそれぞれの行動の評価・振り返りができるので、結果に直結するフィードバックが可能になるでしょう。
またビジネスにおいて、成果は行動の積み重ねによって生まれます。そのため、結果のみに着目するのではなくそのプロセスを変えることで結果を変えていく行動科学の手法は、従業員のモチベーションを高め、人材マネジメントに活かされると言えるでしょう。
活用場面②従来の取り組みやマネジメントに融合する
行動科学を活かしたマネジメントは、従来の育成方法や取り組みが無駄にならないようにマネジメントできます。そのため、企業の社風や文化と融合して使用することができ、企業の上層部にも抵抗なく受け入れられるでしょう。
マーケティングの場面
マーケティングの分野においても行動科学をいかしたマネジメントは活かせます。売上を伸ばすためには、より多くの商品を購入してもらうことが必要です。商品を購入してもらうためには、消費者の購入心理をマーケティングすることが必要不可欠でしょう。
現在のマーケティング学では、消費者の行動を細かく分析して購買行動を研究すると共に購買する時の思考や感情、市場に与える影響まで理由づけすることが大切とされています。消費者の行動が社会を動かす原動力となるため、マーケティングにおける行動科学を学ぶことはビジネスにおいて非常に重要といえるでしょう。
目標管理の場面
自立した知識労働者であるナレッジワーカーが目標達成のために自己管理をする目標管理は企業と個人の満足を双方に調和してもたらし同時に達成できるため、行動科学と共通点がある手法とされています。
また、目標管理において経営陣は従業員一人一人に対して目標を設定しており、個人の自立した行動を重視しています。一方、行動科学では人間の主体性を重んじているため、能動的な行動を促すという点で共通点があると言えるでしょう。
また先述のように上司は行動科学を用いたマネジメントを行うことで、部下の行動レパートリーを定量的に評価し助言することが可能です。この評価や助言は目標管理との相性も良いと言えるでしょう。
人材育成の場面
行動科学は人間の行動を研究し体系化するため、自発的に行動する優秀な人材の育成に効果のある手法と言われています。
また、躓いた社員には行動レパートリーを提示し自分の行動をフィードバックして把握させることも重要です。このフィールドバックにより、主体的に考え行動する自立した人材を育成できます。
提示した行動レパートリーが継続できないこともある
従業員によっては、行動レパートリーを提示しても継続できない場合もあります。そのような時には報奨であるインセンティブを付与して意図的に刺激を与えるのが効果的です。
人は行動を評価されることで、その行動を定着させようとします。そのためインセンティブで評価することによって、良い行動を習慣化させることは非常に効果的です。ただしインセンティブの持続性を高めるためには、短期的に付与することが重要でしょう。
行動科学が活かせる場面【個人】
個人の行動にも行動科学が活かせる場面があります。特に有能な人間の行動に必要とされる「習慣化」をコントロールするために、行動科学は有効でしょう。
不足行動を増やしたい場面
個人において行動科学が活かせる場面は、今の自分に不足している部分を補う不足行動を得たいときです。この自分に足りない部分を補う不足行動を増やすためには、成し遂げるのに効果的な3つのコツがあるので解説します。
不足行動を得るためのコツ①行動が継続できるように工夫する
自分に不足している部分を補う不足行動は、肉体的にも精神的にもつらいことが多く、諦めてしまうことが多くあります。諦めないようにするには、快適な場所を確保したり好みの音楽を聴きながら不足行動をするなど、行動が継続できるように工夫することがおすすめです。
不足行動を得るためのコツ②ご褒美を設定する
不足行動を増やすために最も短期間で効果が得られるのが、ご褒美の設定です。不足行動を持続させるためには遠い目標だと躊躇してしまうことがあります。
短時間で達成できる目標に、目に見えるご褒美を設置することで行動を起こしやすくなり、不足行動を得ることができるでしょう。
不足行動を得るためのコツ③身の周りの環境を整える
不足行動を得ることは非常に困難なため、挫折してしまうことがあります。挫折を防いで不足行動を増やすには、小さなことでもよいので取り掛かりやすい方法で身の周りの環境を整えることが効果的でしょう。
過剰行動を減らしたい場面
自分の行動の中で過剰であると認識した行動を過剰行動と言い、それを減らしたい場面でも行動科学は効果的です。過剰行動を減らすためにも不足行動を増やすときと同様3つのコツがあります。
まず1つ目は、過剰行動を減らすために誘惑を徹底的に断ち切り、排除するように工夫します。2つ目は罰則であるペナルティを設定することです。3つ目には達成が困難な環境の整備をします。
行動科学を学ぶことができる教育機関
近年注目の行動科学は、大学や大学院などの教育機関で専門的に学ぶことができます。また行動科学を学ぶことにより、心理学会認定心理士の資格の取得も可能です。代表的な教育機関を紹介しましょう。
教育機関①千葉大学文学部行動科学コース
千葉大学文学部人文学科には、人間の意識や心の動き、人間特有の言語、人間の知性や社会的・文化的特性、生物としての特性など幅広い視点から人間の行動の本質に迫ることを目指す行動科学コースがあります。
行動科学コースでは、哲学専修、認知情報科学専修、心理学専修、社会学専修、文化人類学専修の5つの専修で行動科学を学ぶことができます。
教育機関②東京未来大学モチベーション行動科学部
「モチベーション」を核に心理・コミュニケーション、経営、教育の3つの領域から科学的に学ぶ学部として日本で初めて設立されたのが東京未来大学モチベーション行動科学部です。
行動科学の理論とアクティブラーニングなどの実践のサイクルを通して、モチベーションマネジメントを学ぶことができるので、ポジティブな人間関係作りやチーム作りができるでしょう。
公認モチベーション・マネージャーや日本心理学会認定心理士や社会調査士などの資格が取得でき通信教育も実施しているので、社会人でも自由に学ぶことができる環境が整っています。
教育機関③東北大学大学院文学研究科
東北大学大学院文学研究科では、人間の行動や社会について問題提起をし、人間と社会を統一的に研究することによってその問題を解決していきます。
行動科学を数理・計量的方法で学ぶことができるので、修了後は即戦力として活躍できる人材として、企業から注目を集めるでしょう。
行動科学を学ぶことができる本
行動科学は、教育機関に通わなくても書籍で学ぶこともできるので、おすすめの書籍を紹介します。
行動科学で人生を変える
アメリカのビジネス界では以前から行動科学マネジメントが実践されていました。その行動科学マネジメントを学び、日本人に適したものにアレンジしたのが著者である石田淳氏です。
本書では、目標を達成できる人とそうでない人の違いを説明し、科学的に研究して個人の行動改善のやり方である行動科学セルフマネジメントを紹介しています。
行動科学マネジメントは科学的に検証した方法なので、いつ、誰が、どこでやっても同じ効果が得られます。行動をコントロールする方法を身に付けることなので、継続が可能であると述べられています。
行動科学で人生がみるみる変わる！「結果」が出る習慣術
著者は、アメリカのビジネス界で大きな成果を上げるとして注目を集めていた人間の行動原理に基づいたマネジメントを日本人向けに独自の方法でアレンジをした行動科学マネジメントの第一人者、石田淳氏です。
行動を変えるには良い習慣を付けることが大切ですが、それを単なる目標とするだけでは実現が困難です。本書では、良い習慣付けを実現させるために必要な段階を科学的手法で細分化し、目標達成が可能になるような行動コントロールのコツやチェックシートの作り方など具体的な方法を伝授しています。
また、仕事や人間関係、日常生活のそれぞれに活きる良い習慣の付け方を実例で紹介し、行動の積み重ねにより人生を変えることができると述べています。
行動科学をビジネスに応用しよう！
人の普遍的な行動を研究して体系化する行動科学は、科学的な分析のため個人の価値観に左右されることがない手法として、人材マネジメントやマーケティングなど様々なビジネスの分野に応用できるとして注目されています。
行動科学をマーケティングに活かすと共に、従業員のモチベーションを上げ、人材を育成して企業の業績アップに繋げてください。
