カニバリゼーションの意味や解決策を知りたい!
カニバリゼーションとは、市場のなかで自社内で競合してしまい、顧客や売り上げを奪い合う現象をあらわすマーケティング用語です。デメリットとして捉えられがちなカニバリゼーションですが、戦略的に取り入れるケースもあります。この記事では、カニバリゼーションのデメリットや解決策について解説します。
また、カニバリゼーションの戦略的な活用方法や活用事例についても紹介していきます。ぜひ、カニバリゼーションの理解に役立ててください。
カニバリゼーションとは?
ここでは、カニバリゼーションの言葉の意味や、一緒に耳にすることも多い「シナジー効果」や「ドミナント戦略」との関係性について説明します。
カニバリゼーションの言葉の意味
カニバリゼーション(cannibalization)とは、「共食い」を意味する言葉で、自社の製品やサービス同士で顧客を奪い合ってしまう現象を言います。
自社の商品がシェアを獲得している市場に、ターゲットが重なる新商品を投入して、自社の商品同士で売り上げを奪い合ってしまう場合などを指して使われます。
シナジーとの違い
シナジー(synergy)とは、「共同作用」「相乗作用」を意味する言葉です。人や組織などが共同することで単体で得られる以上の効果や機能を高めることをあらわしています。
ビジネスでは、単一の企業だけではなく、複数の企業同士の連携や協業などにより、単独の企業では得られない相乗効果を生み出すことをあらわします。この点が、カニバリゼーションと異なる点です。
しかし、一見すると相反する意味を持つカニバリゼーションとシナジー効果。しかし、市場の中で自社の商品が一定のカニバリゼーションの状態にありながらも、製造工程においてコストカットができ、相乗効果が表れるケースもあります。
ドミナント戦略との関係性
ドミナント戦略とは、ある地域に店舗を集中的に出店し、その地域での店舗の優位性を高める戦略です。
特定の地域に資本を集中的に投下し、その地域でのシェアを支配し、競合他社の参入を妨げることを目的としています。
しかし、綿密な調査に基づいて出店を計画しなければ、自社チェーン同士で顧客を奪い合うカニバリゼーションが起こってしまいます。成功すればメリットの大きいドミナント戦略ですが、出店エリアの選択が非常に重要なポイントです。
カニバリゼーションのデメリット
ここからはカニバリゼーションのデメリット「市場の奪い合い」と「競合他社との競争力の喪失」について、詳しく説明していきます。
デメリット①市場の奪い合いになる
例えば、あるチェーン店がその地域でのシェア拡大を図って、既存の店舗の近隣に新しい店舗をオープンさせたとします。
しかし、ターゲットとするエリアが既存店舗と新店舗で重なっていた場合、自社チェーン同士で顧客の奪い合いとなってしまいます。
こうしてカニバリゼーションが起こると、既存店舗の顧客が流出し、新店舗をオープンさせてもチェーン全体としての売り上げは上がらず、非効率な経営となってしまいます。
デメリット②競合他社との競争力を失ってしまう
カニバリゼーションが起きている非効率な経営を続けていると、自社との争いで経営資源を浪費してしまいます。
その結果、本来は他社との競争に費やすべき競争力を失い、他社にシェアを奪われてしまう可能性もあるのです。
カニバリゼーションの解決策
さまざまなデメリットのあるカニバリゼーションですが、ここからはカニバリゼーションが起こった場合の解決策を解説していきます。
解決策①市場のターゲットを定義する
カニバリゼーションの原因となるのは、ターゲットの重複です。既存の商品と新商品のターゲットが重複してしまうことで、顧客を取り合う現象が起きてしまいます。これを解決するためには、既存商品と重複しない、異なるターゲットを設定することが有効です。
解決策②定期的に組織体制を見直す
カンパニー制を導入している企業は、各事業が独立して業務を進めるため、カニバリゼーションが起こりやすい構造です。
また、各事業が独立して進められるように、それぞれに機能を配置した場合に、重複部分によってコストが増大してしまいます。
こうしたことを防ぐために、定期的に組織体制を見直し、非効率な経営になっていないかチェックすることがカニバリゼーションの解決に有効です。
カニバリゼーションの戦略的な活用の仕方
非効率な経営など、マイナス面で使われることの多いカニバリゼーションですが、戦略的に活用されるケースもあります。ここでは、戦略的なカニバリゼーションの活用方法を解説します。
自社ブランドのシェア拡大を狙う
自社ブランドのシェア拡大を狙ったカニバリゼーションの活用方法には、自社グループ内で、販売店同士に競わせる方法があります。
同じ地域の販売店の競争を促して売り上げの増大につなげ、地域シェア拡大も実現しているのです。
また、ドミナント戦略を使って自社ブランドシェアを拡大する方法もあります。特定にお地域に集中して出店することで、その地域でのシェアを獲得し、物流などのコストも効率化できます。
こうして、あえてカニバリゼーションを起こすことによって自社内の競争力を高めて、全体の優位性を高めるという戦略もあるのです。
競争による品質やサービス向上を狙う
経営の効率化という面からみると、自社内で商品を競合させないことは重要です。しかし、競う機会がないという事は、一方で、いろいろな意見を取り入れ、イノベーションを起こす機会も少なくなってしまいます。
こうしたことから、カニバリゼーションを起こして競わせることで、商品の品質やサービスなどの向上につなげる戦略もあります。
カニバリゼーションの活用事例
ここからは、戦略的カニバリゼーション活用事例の代表例ともいえる、コンビニエンスストア、トヨタ自動車、大手小売店の3例を紹介します。
活用事例①コンビニのドミナント戦略
ドミナント戦略を活用している代表的な例として、よく目にするものに、コンビニエンスストアの出店スタイルがあります。よく、同じ企業のコンビニがすぐ近くに店舗を構えているのを見かけることがあると思います。これは、特定の地域に集中して出店を行うことで、流通やプロモーションなどを効率的に行うことができるためです。
すぐ近くに自社の店舗があることで、ある程度のカニバリゼーションは許容しつつも、地域におけるシェアの獲得や、コストの効率化で優位性を高めるという戦略なのです。
活用事例②トヨタ自動車のマーチャンダイジング
カニバリゼーション状態でのマーチャンダイジング(商品計画)戦略は、GM(ゼネラルモーターズ)のアルフレッド・スローンが考案した戦略です。この戦略は、低価格帯から高級車まで多彩なラインナップを揃え、あえてそれぞれが少しづつグレードや価格帯が重なるように設定しています。
そうすることで、自社のラインナップ間や販売店同士で競わせ、自社の競争力をより強固なものにするという戦略です。この戦略を強く取り入れているのがトヨタで、車種と販売店をカニバリゼーション状態にすることで、その地域内での競争力を強固なものにしているのです。
活用事例③大手小売店によるプライベートブランドの販売
近年、イオンやセブンイレブンなどの大手小売店が、プライベートブランド(PB)を販売するケースが増えてきました。これまでは、メーカーが販売している一般的な商品(ナショナルブランド/NB)を仕入れて販売するのが一般的でした。
しかし、現在では、同じアイテムでNBとPBを並べて扱っているケースも多くあります。PBはNBより価格設定を抑えるなどして、売り上げを伸ばしています。大手小売店にとっては利益率の高いPBですが、小売店に製造のノウハウがなく、NBのメーカーに製造を依頼するケースもあります。
メーカー側では、大手小売店からまとまった受注は見込めるものの、店舗の中で自社のNBとPBのカニバリゼーションが起こることになり、難しい選択を迫られています。
カニバリゼーションの意味を理解しておこう!
カニバリゼーションについて、言葉の意味や解決策、関連する語句などについて解説しました。また、実際の活用事例を紹介し、戦略的な活用方法なども説明しました。
マイナス要素として捉えられがちなカニバリゼーションも、戦略的に取り入れることで競争力の強化につなげることができます。ぜひ、この記事を参考に、カニバリゼーションの意味を正しく理解して、自社の優位性向上に役立ててください。