嘱託社員の仕組みを徹底解説!
働き方改革が進む中、日本の少子高齢社会にあわせて嘱託社員の活用が進んでいます。嘱託社員を雇うメリットやデメリット、また他の契約社員などとの違いを確認しましょう。また、嘱託社員の労働条件や給与、社会保険などの待遇面に関してもまとめているので参考にしてください。
嘱託社員とは?
嘱託社員の言葉の意味
嘱託社員というのは「定年退職した人が再び同じ企業に雇い入れられる形で雇用契約を結ぶこと」です。少子高齢社会において定年退職後も必要とされる人材が増えており、嘱託社員は重要な存在になっています。
嘱託社員と正社員の違い
正社員との大きな違いは、契約期間の有無です。正社員は期間の定められていない社員で、定年まで勤務することが前提になっています。ただし、かつてのような終身雇用制度や年功序列制度ではなく、成果主義を導入する企業も増えています。
そのため、終身雇用が必ずしも保障されているとはいえませんが、労働法などで守られた存在です。嘱託社員は非正規雇用のため、有期契約なので契約が更新されない可能性があります。正社員と比べると給与やボーナスなどの面を含めて異なる点が多いので注意しましょう。
嘱託社員と契約社員の違い
契約社員は嘱託社員と同じく非正規雇用です。ただし、嘱託社員は非常勤が多いのに対して契約社員はフルタイムが多くなっています。条件面などでは嘱託社員と契約社員は似ている部分が多く、契約社員の中に嘱託社員が存在すると考えてもよいでしょう。
嘱託社員と派遣社員の違い
派遣社員は契約社員と同じくフルタイム勤務が多いですが、雇用主の違いに注意しましょう。嘱託社員は直接雇用なのに対し、派遣社員は派遣会社に属しています。雇用主の違いによる給与やボーナス、待遇面の違いも生まれるのです。
嘱託社員、契約社員、派遣社員と似ている部分は多いのですが、この微妙な違いが実際に働いている上で大きな影響をもたらします。
嘱託社員と業務委託の違い
嘱託社員や契約社員と異なる雇用形態として、業務委託が存在します。業務委託は会社との雇用関係がなく、委託業務ごとに契約を結ぶ雇用形態です。そのため、委託業務が完了すると契約が終了するのが特徴です。
業務委託は企業側が専門的な分野を行う時に、一から自社で育成するのではなく、スキルを持った人間と契約して業務を委託することになります。自社にノウハウがない部分でも新しい分野や専門的な分野の業務を行えるのがメリットなので、こちらも適宜活用していきましょう。
嘱託とパートの違い
契約社員などとは別にパートの違いも確認しておきましょう。嘱託社員とパートの違いは明確な違いはありませんが、比較的パートの方が労働時間が短い傾向にあります。
嘱託社員の具体例
嘱託社員は2つに分けることができます。定年後に再雇用される形か、特殊なスキルや知識を持った人物に依頼する形で雇用する場合です。
企業を定年退職後に同じ企業に再雇用されるケースが増えており、正規の社員と区別するために嘱託社員と呼ばれています。また、特殊なスキルや知識に該当するのは医師や弁護士などです。専門的な知識がある人に仕事を依頼する場合も嘱託社員に該当するので覚えておきましょう。
嘱託社員として働くメリットとデメリット
メリット①現役時代のキャリアを活かすことができる
嘱託社員として働くメリットやデメリットを解説します。契約社員などとの違いも踏まえながら確認していきましょう。大きなメリットとして、嘱託社員は現役時代のキャリアを継続する形で活かせるのがポイントです。
その要素を支えているのが、退職前に所属していた同じ企業で働く点が関係しています。自分の馴染みがあり、長年働いてきた職場で仕事ができるのは大きなメリットです。一緒に働いていた従業員とも面識があるため、コミュニケーションの面でも働きやすい環境が継続されます。
メリット②正社員ほどの責任がない
多くの嘱託社員は定年前とは異なり、正社員ほどの責任が無いことも注目です。責任は自分に当事者意識を生み、ほどよいプレッシャーを与えてくれます。しかし、ベテランになればなるほど責任が大きくなり、その重圧を苦痛に感じる人も多いでしょう。
嘱託社員として再雇用されると、そういった責任から解放されることで、自分の仕事に集中できるのがメリットです。また、年次有給休暇も申請しやすくなるので、こちらも魅力を感じられる部分です。
メリット③企業によっては良い処遇で働くことができる
嘱託社員は今までの経験や知識を持った有能な人材です。そのため、企業側が良い処遇で嘱託社員になることを依頼する場合があります。重圧を感じない程度の責任を与えられながら、重要な仕事に関わる場合もあり、正社員よりも選択肢が広がる点も把握しておきましょう。
デメリット①契約が更新されないことがある
メリットばかりではなく、デメリットも存在します。契約社員などでもいえることですが、嘱託社員は契約更新されない可能性があるのです。逆に言えば企業によっては65歳以上になっても契約を続けられる可能性もあります。
定年を迎えて再雇用になる以外にも仕事の選択肢は多数しているので、自分が今後もどれぐらい働いていくのか、余生を過ごすのかを考えることが大切です。きっぱりと定年で仕事から離れて、自分の趣味を楽しむ人もよいでしょう。
有期雇用契約では精神的にどこか落ち着かないと考える場合は、嘱託で働かないのも選択肢です。シルバー人材など今までとは違った仕事に関わって、新しいコミュニティに参加するのも楽しいかもしれません。
デメリット②正社員よりも待遇が悪い
嘱託社員は現役時代と同じ年収が保障されるとは限りません。多くの企業は現役時代と比較すると概ね60~70%ほどの待遇で再雇用しています。働けるだけでもありがたい、と感じるのか、給与やボーナスなどが下がることでモチベーションが下がる人もいるでしょう。
待遇に関して企業ごとで様々なので自社がどのような雇用契約を行っているかを、早い段階で確認することが大切です。定年を迎える前から嘱託を検討することで、人生の選択の幅を広げられるので、メリットやデメリットを踏まえながら検討してください。
嘱託社員を雇用する側のメリットとデメリット
メリット①知見や経験を活用することができる
嘱託社員を雇用する側のメリットやデメリットを確認しましょう。先程は嘱託社員になる本人側のメリットやデメリットでしたが、企業側はどうなのでしょうか?
企業にとって新しい人材を育成するのは非常に難しいテーマです。少子高齢社会が関係し、企業は有能な人材を取り合っているような状態で、リクルーターなどを使って少しでも自社に合う人を探しています。そして、雇用のミスマッチを防いで、継続して働いてくれる人材を求めている状態です。
そういった時代の変化において、知識や経験のある人材を継続して雇用できるのが嘱託社員のメリットになります。また、経験豊富な人物がいることで後進を育成することにもつながるでしょう。
メリット②人件費の削減に繋がる
さきほど紹介したデメリットにおいて、正規社員よりも給与が抑えられるので人件費の削減につながります。給与を削減することは簡単なことではないだけに、嘱託社員として高い能力を持った人材を雇用できるのはメリットです。
ただし、人件費として削れるのは基本給与やボーナスなどの一部になっています。後ほど詳しく解説しますが、通勤手当や皆勤手当などの支給格差は違法行為です。逆に住宅手当や扶養手当の支給格差は合法になります。
こういった給与やボーナス、各種手当てなどのどういった部分が削減可能なのかを確認しながら、再雇用を行うのがおすすめです。
デメリット①モチベーションを保つことが難しい
企業側は嘱託社員のモチベーションをどのように保っていくかが課題になります。どうしても給与やボーナスなどの問題があるため、嘱託社員に対して報酬で答えることが難しいのです。
また、現役時代と比べると責任の重い仕事は任せにくいので、仕事に対するモチベーションが下がる嘱託社員もいます。現役時代と比べるとどこかやる気を見られないと感じてしまうこともあるので、それぞれの性格などを踏まえてフォローアップしていくようにしましょう。
デメリット②辞職のリスクがある
嘱託社員の中には定年後に再雇用されていることで、「いつ辞めてもいい」と考える人がでてきます。それは自分の子供が独り立ちすることや、ローンの完済、余生の過ごし方など、自分の時間を大事にする考えが生まれるからです。
すぐに代理が見つかるような担当なら良いですが、重要な仕事を任せているのにいきなり退職を申し出られると困ることもあります。もちろん、嘱託社員もいい加減な気持ちで仕事を続けると決断したわけではないでしょうが、辞職を防ぐように対策を取る必要があるのです。
特に自分が再雇用ということもあり、以前よりも疎外感を感じることがあります。重要な立場を任されていたリーダー的な存在の時とは異なり、チームを引っ張っていく立場ではないこともあるでしょう。
そういった状態に対して企業がフォローアップし、どのような理由で再雇用したかを伝えてください。現役社員が問題にぶつかって困っているときに力を発揮させたり、スーパーサブのように適宜活躍させたりすることで、立場が変わってもモチベーションを維持させ、辞職を防ぎやすくなります。
定年後に再雇用される嘱託社員とは?
正規の社員とは労働契約の内容が大きく異なる
嘱託社員は定年後に再雇用されて同じ企業に所属するか、定年を超えた年齢で新規採用された社員の2つの形があります。その中で定年後に再雇用される嘱託社員に注目しましょう。
正規の社員とは労働契約の面で内容が大きく異なるため、実際に嘱託社員を検討している人や企業は異なる点に注意してください。
65歳まで雇用の機会を与える義務がある
重要なポイントとして高齢者雇用安定法が関係します。これは一部の業種を除くすべての企業が対象で、従業員のうち希望者は原則65歳まで雇用の機会を与えなければなりません。
これは少子高齢社会が影響し、高齢者の雇用機会を増やす必要があったからです。以前までの60歳で定年を迎えても、まだまだ現役バリバリという人も多くいます。そういった人たちが継続して働いてくれることは企業にもメリットが多くあります。
不合理な労働条件は禁止されている
注意点として再雇用する嘱託社員は、正規社員と比較して不合理な労働条件で契約することは禁止されています。これは雇用契約の多くが1年ごとの更新制をとっているからです。
自分が「再雇用された嘱託社員だからわがままは言えない」とは考えずに、法律で決められたルールを守った雇用条件にしてもらわなければなりません。企業側もそういったルールを守った上で嘱託社員を雇用しましょう。
公務員の嘱託職員とは?
地方公務員法における嘱託職員の定義
近年は公務員の嘱託職員も増えています。地方公務員には一般職や特別職などの様々な種別があるのです。また、そのそれぞれに正規社員、臨時的任用職員、再任用職員、任期付短時間勤務職員、非常勤職員に分かれます。
地方公務員法における嘱託職員は、非常勤職員に定義されます。雇用期間に関して3年程度を限度にする、という条件もあります。このあたりは一般企業と少し異なるので注意してください。
臨時的任用職員との違い
嘱託職員の類似として臨時的任用職員があります。嘱託職員は3年程度、常勤職員より短時間勤務が基本です。臨時的任用職員の場合は、一時的に正規の社員が欠けた場合、臨時の職を設置されて雇用されることになります。この違いも確認しておきましょう。
嘱託社員の労働条件
法律上で明確な基準は定められていない
法律上で嘱託社員の労働条件は明確な基準が定められていない点に気をつけてください。このことが影響するのは給与やボーナスに関する点です。
給与やボーナスなどの額や各種手当、退職金や福利厚生は企業がそれぞれ定めます。嘱託社員で働く上では給与やボーナスがどのような額になっているか確認した上で再雇用を決断することも必要です。基本的には以前より給与やボーナスが下がるので、事前に確認しましょう。
有給休暇は入社後6カ月で発生する
休暇に関する点も重要です。嘱託社員の有給休暇は入社後6ヶ月で発生します。週の所定労働日数が4日以上、労働時間が30時間以上になることが条件です。
ちなみに、再雇用でも勤続年数は通算し、年休を繰り越すのパターンが多く見られます。ただし、退職から再雇用までの間に相当期間がある場合は、労働関係が断絶していると認められることがあるのです。この場合は、上記のような条件で有給休暇が入社後6ヶ月で発生することになります。
有給休暇における比例付与の条件
嘱託社員の有給休暇の付与条件はさきほどの2つですが、比例付与が存在します。これはもしどちらの条件を満たしていなくても、週の所定労働日数が4日以下、労働時間が30時間未満の2つの条件に該当した場合、正規社員よりも少ない日数が比例付与されます。
比例付与の計算は10日×週所定労働日数÷5.2です。少し計算が難しいですが、嘱託社員でもちゃんと有給休暇をもらえるので忘れないように利用しましょう。
嘱託社員へのボーナス支給の有無
ボーナスも重要な給与に関わる点です。嘱託社員のボーナス有無は労働契約の内容が関係します。これは企業が提示した労働契約の内容にボーナスの支給があるか確認してください。
もし、ボーナスの支給がある場合は正規社員の基本給などを基準に額が決められることが多いです。正規社員と同等の額をもらえませんが、その基準の何%かがボーナスとして支払われます。平均の相場は年間で30万円程度になっているので、ボーナスの有無を含めてチェックすることがおすすめです。
嘱託社員の退職金
嘱託社員の注意点として退職金の問題があります。実は嘱託社員の場合は正規社員などと異なり、必ずしも退職金が払われるとは限りません。
就業規則や労働契約に関する書類を確認して、自分が所属する企業が嘱託社員の退職金についてどのように規定しているかを確認しておきましょう。何かと立場的にボーナスや退職金に関して出ないのが当たり前、と考えてしまうことがありますが、ちゃんと支給してくれる企業も多いのです。
その他では残業代についても支給されるのが基本です。ただし、管理監督者の場合は残業代が出ないこともあるので注意しましょう。年金は段階的に支給年齢が引き上げられるので、この点も把握しておくことが求められます。
嘱託社員の給料や待遇
嘱託社員の給与体系や平均給与
給与体系や平均給与について解説します。嘱託社員は企業にとってコスト削減のメリットもあるため、基本的には正規社員よりも給与が低い傾向があるのです。一般的には正規の頃と比較すると6~7割ほどになっています。
また、企業によっては現役時代の人事評価などを加味して給与を決めることもあるのです。平均給与は平成30年の情報によると約21万円になっており、正規社員の約32万と比較しても6~7割程度になっていました。
とはいえ、契約期間中は倒産などの特別な事例ではない限り、途中解雇されることなく勤務できます。給与やボーナスの変化が気になるかもしれませんが、年齢を重ねても働き続けられるのは大きなメリットです。
正社員との賃金格差は合法とされている
こういった給料や待遇に関して法律的には問題がないのか気になる人もいるでしょう。正規社員と嘱託社員の賃金格差に関しては、合理的な範囲で差をつけることは禁止されていません。
もちろん、不合理に低い賃金は禁止されています。これはどちらも労働契約第20条に規定されている部分です。この合理的な範囲に関してはいろいろと考えがありますが、さきほどのように6~7割程度が基準になっています。
通勤手当や皆勤手当の支給格差は違法になる
賃金格差は合法ですが、通勤手当や皆勤手当の支給格差は違法になります。この違いに関して注意する必要があるでしょう。正規社員に支払っている通勤手当や皆勤手当は、嘱託社員であっても支給する必要があり、実際に裁判でも不支給は違法と判断されました。
住宅手当や扶養手当の支給格差は合法になる
通勤手当や皆勤手当の支給格差は違法ですが、住宅手当や扶養手当の支給格差は合法です。このように手当の趣旨によって合法か違法かが異なっており、嘱託社員になる場合はしっかりと自分で確認することが求められます。
嘱託社員に対する社会保険各種の取り扱い
健康保険の場合
手当に続いて嘱託社員の社会保険各種の取り扱いも確認しましょう。定年後に嘱託社員として再雇用されても、社会保険には加入できるので忘れずに手続きを行ってください。
健康保険の場合は75歳までであれば原則加入できます。ただし、定年退職前と比較して就業時間が減った場合、健康保険の加入対象者から外れることがあるので、こちらは労働契約と照らし合わせて問い合わせしましょう。
介護保険の場合
介護保険の場合は65歳の誕生日前日までであれば、退職前と同様に加入する必要があります。そのため、社会保険と同様に給与から天引きされることを覚えておきましょう。ただし、健康保険の加入対象者などから外れると介護保険料の負担はなくなります。
厚生年金保険の場合
厚生年金保険の場合は、70歳の誕生日前日までであれば加入の義務があるのです。こちらもさきほどと同じく、健康保険の加入対象者から外れるなどの条件によって、加入義務が無くなります。嘱託社員は健康保険を軸に介護保険や厚生年金保険の加入に関して確認を取るのがおすすめです。
雇用保険や労災保険の場合
嘱託社員の雇用保険や労災保険に関しても確認しましょう。この2つは64歳になった年の月まで被保険者となります。そのため、定年前と同様に雇用保険料を給与から天引きされます。
ただし、雇用保険は就業時間を減らした場合や、週の所定労働時間が20時間未満になると対象から外れる点を覚えておきましょう。
労災保険に関しては年齢や労働条件にかかわらず加入対象です。これは労災保険が自身ではなく企業が加入するものであり、給与の天引き対象でないことも関係しています。
これらのことを含めると、嘱託社員は健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険に原則加入することになります。自身の労働契約によって変更される場合があるので、事前にチェックして各種保険の手続きを行ってください。
嘱託社員の契約雇用における無期転換ルール
無期転換ルールとは?
嘱託社員の契約雇用における、無期転換ルールについて把握しておきましょう。無期転換ルールは有期雇用契約が5年を超えて繰り返し更新される場合に適用されます。この状態で当該社員が申し込みをした場合、企業は有期雇用契約を「期間の定めのない雇用契約に転換しなければならない」のです。
このルールが無期転換ルールであり、嘱託社員の場合も関係してくるので確認する必要があります。無期転換ルールは労働者保護の観点から生まれたものであり、契約社員などで働く場合にも覚えておきましょう。
無期転換ルールの特例制度
嘱託社員の場合、無期転換ルールの特例制度が存在します。これは定年まで勤め上げたあとに企業に再雇用されるため、都道府県労働局の認定を受けることを条件に対象外にできる仕組みです。
通常の無期転換ルールとは異なる特例制度ですが、嘱託社員をする上でこの条件に該当する場合は多くなります。次の具体例を参考に嘱託社員として勤務する際は確認を忘れないようにしてください。
無期転換ルールの具体例
無期転換ルールの具体例を確認して、嘱託社員の特例制度がどのように起きるかを確認しましょう。嘱託社員を1年の有期雇用契約で雇用する場合、企業は65歳まで雇用の機会を提供する必要があります。
そのため、企業は65歳まで1年更新で繰り返し有期雇用契約を結ぶことが多くなるのです。しかし、このように65歳まで契約更新を繰り返すと、無期転換ルールに該当するのがポイントになります。つまり、有期雇用契約が通算で5年を超えてしまうのです。
このような嘱託社員が無期転換の申し込みを行うと、企業は雇用期間満了による雇用の終了ができなくなります。そこで、都道府県労働局の認定を受けることで、無期転換ルールの対象外とする特例制度を活用できるのです。
もちろん、一定の条件がありますがその後も嘱託として1年ごとの有期雇用契約を続けるのは問題ありません。嘱託社員として通算5年を超えても、無期転換ルールの無期転換申込権が発生しない場合があることを覚えておきましょう。
嘱託社員の雇い止めと契約解消
嘱託社員は雇い止めがいつ行われるか分からない
雇い止めに関する不安を抱える人も多いかもしれません。その理由は嘱託社員は契約社員などと同じく、有期雇用契約である点が関係しています。嘱託社員は契約社員のように期間満了の都度、契約を更新するため、雇い止めがいつ行われるかわかりません。
実際、この雇い止めに関する訴訟を行った例もあり、現在は一定の基準が生まれました。しかし、雇い止めを完全に解決する方法はないだけに、問題が解消されたとはいえません。実際に嘱託として勤務する際はこのデメリットも考えておく必要があります。
雇用契約を期間途中に解消するのは難しい
こちらも契約社員と共通する部分ですが、嘱託社員を雇用契約の期間途中に契約解消するのは困難と考えられています。基本的に倒産などのやむを得ない事由ではない限り、嘱託社員を雇用契約途中で契約解消することは法律で認められていません。
そのため、契約期間中は安心して働くことに専念しましょう。同時に契約期間が完了し、契約更新をする時期が近づいたら雇い止めの可能性を考える必要があります。こういった部分は嘱託社員も契約社員も辛い部分ですが、しっかりと結果を残していきましょう。
嘱託社員と類似する言葉
嘱託医
様々な嘱託に関する情報を確認しましたが、その言葉に似たものがいくつか存在します。嘱託社員とあわせて類似する言葉をまとめました。
まずは嘱託医から確認しましょう。嘱託医は行政機関や医療機関、介護施設などから委嘱を受けて治療などを行う医師のことです。また、学校や会社などの集団の健康診断などを行う場合も嘱託医にあたります。
また、嘱託医に近いものとして専属産業医、というものが存在しますが、こちらは大企業の一社員と考えましょう。健康管理室などが設置されており、保健師などとチームを組んで業務を進めます。嘱託産業医はアドバイザー的な立場であり、社外的な立場であることを覚えておきましょう。
嘱託保育士
少子高齢社会が進む中で、保育所も人材獲得の問題を抱えています。その中で嘱託保育士と臨時保育士の違いも重要です。嘱託保育士は公立保育園などと嘱託契約を結び、契約社員として仕事をします。
臨時保育士の場合は、公立保育園などで臨時で働く保育士です。臨時保育士が必要になる場面は、正規の保育士がクラスを担当していたものの、病欠や産休などでしばらく仕事をできない場合になります。欠勤している間だけ臨時保育士として働くので、契約期間がやや不透明な点に注意してください。
嘱託登記
不動産の登記の中に、当事者による申請ではなく、官庁や公署による嘱託を嘱託登記といいます。高い専門性が必要な点が特徴です。国や地方公共団体が行う公共工事において、用地の登記が必要なときに嘱託登記が行われます。
文書送付嘱託
文書送付嘱託というのは、民事訴訟手続きの中にある書証の申し出方法の一つになります。裁判所を通じて任意の文書の送付を依頼する精度で、財産分与で金融機関の取引履歴が必要になった場合などに利用する方法です。
文書の所持者に対して所持している文書の提出を裁判所は求めてきます。しかし、文書の種類によっては個人情報保護が関係するため、文書送付委託を行うことで裁判所に採用してもらう必要があるのです。財産分与などで民事訴訟を行う際はこの仕組を覚えておきましょう。
嘱託社員の仕組みを理解しておこう!
非正規雇用の一つである嘱託社員について解説しました。少子高齢社会が進み、少しでも長く働きたい、経験がある人材を継続して雇用したい、という両者の考えから活用されることが増えています。
自分が働いていた企業で再雇用されることはデメリットよりもメリットが大きいかもしれません。給与やボーナスは現役時代とは異なりますが、後進を育成しながら働けることに生きがいを感じる人も多いです。定年前の段階で自分がその後も働くかを考える上で参考にしてください。