マネジメント・バイアウト(MBO)とは?メリットや実施方法は?

マネジメント・バイアウト(MBO)とは?メリットや実施方法は?
目次

マネジメント・バイアウト(MBO)の仕組みを徹底解説!

マネジメント・バイアウトとは、経営陣や経営に携わっている従業員が株式を買い取り、経営権を取得するM&Aの方法の一つです。本記事では、マネジメント・バイアウトの言葉の意味やメリット、デメリットなどを詳しく解説しています。マネジメント・バイアウトについて興味がある方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

マネジメント・バイアウト(MBO)とは?

マネジメント・バイアウトの言葉の意味

マネジメント・バイアウトは別名MBOと呼ばれており、経営者や経営に関与している従業員が経営支援により、自社株式や一事業部門を買い取り、経営権を取得することを意味しています

親会社が子会社や一事業部門を切り離す時に、第三者ではなく経営者や従業員が株式を取得して、その対価として資金を手に入れます。中小企業では、会社を受け継ぐ後継者がいない時に、マネジメント・バイアウトを活用している例もあります。

マネジメント・バイアウトが増えている背景

マネジメント・バイアウトは1980年代に米国で活発化され、日本には1990年代に少しづつ浸透していきました。日本は、1990年代後半に景気低迷になり、事業構造再編の手段として用いられ、企業は多角化を行い規模を拡大していきます。また、資金効率を向上を目的に、本業とのシナジー効果が薄い事業を分割する動き増えました。

上場廃止との関連性

発行済みのすべての株式を買い取ることが多いマネジメント・バイアウトは、成功した場合その企業は上場廃止になります。最近では、外国人株式の増配の圧力が高まっているため、上場廃止を目的にマネジメント・バイアウトをする企業もあります

企業が上場廃止にすることにより「株価、上場維持のコストを減らすことが可能」「株式からの解放」のメリットがあります。

マネジメント・バイアウト(MBO)の目的

経営体制を見直すため

マネジメント・バイアウトを行う目的の1つ目は、経営体制の見直すためです。企業の一事業部門が本業とのシナジー効果が弱かった場合に、その対策としてマネジメント・バイアウトを行います。MBOで得た資金と経営資源を使って、経営体制を見直すことが可能になります

メリットがない株式公開をやめるため

マネジメント・バイアウトを行う目的の2つ目は、メリットがない株式公開をやめるためです。株式公開とは、自社が所有している株式を上場することを意味しています。株式公開には「資金調達」「知名度の向上」などのメリットがありますが、デメリットもあります。

メリットよりもデメリットの方が大きかった場合、企業にとって損となるため、マネジメント・バイアウトを実行して上場を廃止します

情報公開の厳格化に対抗するため

マネジメント・バイアウトを行う目的の3つ目は、情報公開の厳格化に対抗するためです。会社に投資を行ってくれる株主は、その会社の所有者であるため、経営状態の報告が必要です。企業内の極秘事項などまで、共有する必要があり、情報共有者が多いとどうしても情報漏洩の可能性が高くなります。このような情報漏洩を防ぐことを目的に、マネジメント・バイアウトを実行します。

短期利益を追求する株主から脱却するため

マネジメント・バイアウトを行う目的の4つ目は、短期利益を追求する株主から脱却するためです。短期利益を求める株主は、株価で判断を行う傾向にあるため、リーマンショックなどで株価が暴落するとその会社の業績に関係なく株式を売却されてしまいます

このようなことが起こると、企業の経営者や経営に関与している従業員が株価に左右されてしまい、長期的な経営の計画を立てにくくなってしまいます。記事の後半の企業事例で、短期利益を求める株主から脱却を理由でマネジメント・バイアウトを実施した企業も紹介しています。

マネジメント・バイアウト(MBO)の類型

類型①TOB

マネジメント・バイアウトの類型1つ目に解説するのは、TOB(Take Over Bid)です。ニュースなどでよく登場する言葉なので、聞いたことがある方も多いでしょう。TOBとは、株式公開買付けのことで、買収を考えている会社の株式を株式市場で買い集める手法を意味します

企業の買収や合併、子会社再編のときに利用されることが多く、不特定多数の株主から公募で買付けするにあたり、買い取りの期間や株数、株価を公表しなければいけません。

類型②EBO

マネジメント・バイアウトの類型2つ目に解説するのは、EBO(Employee Buy Out)です。EBOとは、会社で働いている従業員が、自社の株式を取得し買収するM&A手法を意味します。経営者や経営に関与する従業員が買収するMBOとは違い、その主体は従業員となります。

非上場の中小企業で後継者がいない場合、従業員が引き受けるために利用されるケースが多々あります。EBOとMBOはとても似ていて、外部から資金を調達した上で実行に移すことが多い点も同じです。

類型③MBI

マネジメント・バイアウトの類型3つ目に解説するのは、MBI(Management Buy In)です。MBIは企業を買収した投資家が企業に外部から経営陣を送り込むことを意味します。経営陣を送り込むことにより、経営の立て直しを図るとともに、価値を高めることを目指しています。

マネジメント・バイアウトは今の経営者や経営に関わる従業員が経営権を所有する方法であるのに対して、MBIは専門家を迎えることに違いがあります。

類型④IBO

マネジメント・バイアウトの類型4つ目に解説するのは、IBO(インスティテューショナルバイアウト)です。IBOとは、投資家が主導して企業が買収を実行することを意味します。IBOが実施されると、投資家は買収主体となるのですが、買収後の経営にも関わります。

類型⑤BIMBO

マネジメント・バイアウトの類型5つ目に解説するのは、BIMBO(Buy In Management Buy Out)です。BIMBOとは、会社の外部から入る新しい経営陣から、新しい経営手法を学び導入しつつ、今の経営陣と共に買収と経営を行う手法を意味します。

類型⑥LBO

マネジメント・バイアウトの類型6つ目に解説するのは、LBO(Leveraged Buy Out)です。LBOとは、M&Aの形態の一つであり、借入金を使った企業や事業の買収のことを意味しています

一定のキャッシュフローを生み出す企業を、金融機関などから資金調達して買収することで、買い手は資金が少なくても企業や事業の買収を行うことが可能になります。特徴としては、譲受企業が借金を自分で返済するのではなく、譲渡企業の資産、将来見込まれる資産を返済の資源としていることです。

マネジメント・バイアウト(MBO)のメリット

メリット①意思決定が素早くなる

マネジメント・バイアウトを実施するメリット1つ目は、意思決定が素早くなることです。企業では最終的な意思決定を、株主総会を開いて決めます。しかし、株主総会を実施するまでにある程度の期間を有するため、急ぎの要件でも重要な判断を行う際に、時間がかかりすぎてしまいます。

マネジメント・バイアウトを実施している場合は、株主の保有者は経営陣や経営に携わる従業員のため、経営陣内の会議で決めるなど迅速な意思決定が可能になります

メリット②従業員の結束力を高めることができる

マネジメント・バイアウトを実施するメリット2つ目は、従業員の結束力を高めることができることです。マネジメント・バイアウトは、企業のスリム化を目的にしている場合があります。

スリム化されることで会社の規模が縮小することにより、人員や経費の削減といった効率化が促進され、経営陣と従業員の距離が近くなり、社内の結束力を向上することが可能になります。社内の結束力が高まると、コミュニケーションが更にスムーズにとれるようになります。

メリット③スムーズな事業承継に繋がる

マネジメント・バイアウトを実施するメリット3つ目は、スムーズな事業承継に繋がることです。親族ではない人物が事業を継ぐ手法としても有効になります。M&Aと違い、会社の経営方針や事業内容などを良く知る経営者や経営に携わる従業員が後継者になるため、そのまま引き継ぐことが可能になり、事業継承がスムーズに行えます

また、交渉するときも自社の従業員であるため、互いの利益を十分に考慮してM&A交渉をすることができることもメリットです。

メリット④上場廃止による買収リスクを回避することができる

マネジメント・バイアウトを実施するメリット4つ目は、上場廃止による買収リスクを回避することができることです。独立した会社が将来性の高い事業を行っている場合、類型①で解説したTOBなどの手法で、買収を迫られる可能性があります

マネジメント・バイアウトを行っておけば、持っているすべての株式は会社の経営陣が保有することになるため、強引な買収を回避することが可能です。

メリット⑤企業秘密の保持ができる

マネジメント・バイアウトを実施するメリット5つ目は、企業秘密の保持ができることです。マネジメント・バイアウトの目的「情報公開の厳格化に対抗するため」で伝えた通り、会社の所有者は株主になります。そのため、企業の秘密にしたい情報についても共有する必要があり、情報漏洩の可能性が高まります。

マネジメント・バイアウトを実施していれば、株主総会を開いての情報共有を行う意味がないので、企業秘密の保持が実現できます。

マネジメント・バイアウト(MBO)のデメリット

デメリット①少数の既存株主から反対を受ける可能性がある

マネジメント・バイアウトを行うデメリット1つ目は、少数の既存株主から反対を受ける可能性があることです。MBOは、経営者や経営に関わる従業員が株式を買い取り経営権を取得する手法です。既存株主から反対の声があがった場合、それが少数でもMBOを実施することはできません

「全部取得条項付種類株式型」や「株式交換型」を利用した対処方法が挙げられますが、できるだけ既存株主が妥協できる金額で買収するのがいいでしょう。

デメリット②経営の監視機能が減少する

マネジメント・バイアウトを行うデメリット2つ目は、経営の監視機能が減少することです。株式会社は、株主総会を開き、情報の共有をするとともに、経営を株主が監視しています。マネジメント・バイアウトを実施すると、株主がいなくなるため、監視機能が低くなる可能性が高くなります。また、監視機能が減少すると、経営方針が偏ってしまう可能性も高くなるので、注意しましょう。

デメリット③買収後に債務が残る

マネジメント・バイアウトを行うデメリット3つ目は、買収後に債務が残ることです。マネジメント・バイアウトは、金融機関やファンドから資金を調達する場合が多いため、今後利益を上げて借りた資金を返していく必要があります

このデメリットを解消するために、今後の債務状況をよく考えて、資金調達や株価を交渉するようにするといいでしょう。

デメリット④資金調達の選択肢が狭くなる

マネジメント・バイアウトを行うデメリット4つ目は、資金調達の選択肢が狭くなることです。経営を行っていく上で必要になる資金調達ですが、ほとんどが負債になる借入金や株式からの資金調達になります。マネジメント・バイアウトを実施すると、上場廃止となるため、株式からの資金調達が不可能になります。

マネジメント・バイアウトを実施する前に自分の企業の価値や、負債コストを考えた上で、慎重に行うようにしましょう。

デメリット⑤売り上げの減少に繋がることがある

マネジメント・バイアウトを行うデメリット4つ目は、売り上げの減少に繋がることがあることです。マネジメント・バイアウトを実施して、グループ内から離脱した場合、事業規模が小さくなります。事業規模が小さくなると、売り上げの減少にも繋がります。

マネジメント・バイアウトを実施する前に、グループ内離脱による資金繰り悪化についての対策を考えておきましょう。

マネジメント・バイアウト(MBO)の実施方法

実施方法①企業価値を算出する

マネジメント・バイアウトの実施方法の1つ目に解説するのは、企業価値の算出です。企業価値とは、全体的な企業の価値を意味する言葉です。マネジメント・バイアウトで取得した株式の株式価格(株価)は、この企業価値によって算出されます

企業価値の算出方法は主に3種類あり、「コストアプローチ」「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」です。この3種類の詳しい内容、意味などは次に詳しく説明します。

コストアプローチ

コストアプローチとは、ネットアセットアプローチとも呼ばれており、対象企業の純資産をもとに企業価値(株価)を算出する手法を意味します。コストアプローチの方法は「薄価純資産額法」と「時価純資産額法」の2つがあります。

薄価純資産額法は、会計上の純資産額に基づいて1株当たりの純資産額を算出する方法です。客観法に優れている算出方法であり、企業価値の評価に使用される頻度は少ないです。時価純資産額法は、評価時点において資産の時価合計額から、企業価値を算出する方法になります。取引時の時価で企業価値(株価)を求めることが可能です。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、比較対象となる企業、業界を参考に企業価値(株価)を算出する手法を意味します。マーケットアプローチは「類似会社比準法」と「類似取引方法」の2つが用いられます。

類似会社比準法は、マネジメント・バイアウトの対象企業と似ている上場企業を選び、債務状況を比較して企業価値を算出する方法になります。類似取引方法は、マネジメント・バイアウトの対象企業と似ている企業のM&Aの過去の取引例をもとに、企業価値(株価)を算出する方法です。

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、対象企業の将来予測される利益予想やキャッシュ・フロー予想に考慮して、企業価値(株価)を算出する方法を意味します。インカムアプローチは「DCF法」と「配当還元法」の2つが代表的に用いられます。

DCF法は、対象企業が将来に生み出す価値をフリーキャッシュフローで推計して、現在価値に割り引いて企業価値(株価)を算出する方法です。配当還元法は、過去2年間の配当金を10%で割戻して、非上場企業の株かを求める方法になります。

実施方法②新会社を設立する

マネジメント・バイアウトの実施方法2つ目に解説するのは、新会社を設立することです。まず、マネジメント・バイアウトを行うために、株式買取のための受け皿となる新しい会社が必要になります。新会社を設立した後、事業売却により事業を譲り受けて、手続きは終わりになります。

実施方法③資金調達を行う

マネジメント・バイアウトの実施方法3つ目に解説するのは、資金調達を行うことです。記事内で何度も資金調達について伝えてきましたが、現株主から自社株を買取するためには、多額の資金が必要となります。次に、借入金を利用する場合の資金調達方法を紹介します。

金融機関やファンド

金融機関や投資ファンドなどから、マネジメント・バイアウトの出資金を集める場合は、事業計画書を作成して提出しなければいけません。そして提出した事業計画書を確認して、金融機関は出資や融資可否の審査を行います。さらに、金融機関から協力を得るまでに2か月以上時間がかかります。良きタイミングを逃さないよう注意しましょう。

ビジネスローン

金融機関以外にビジネスローンを利用するのも、一つの手です。ビジネスローンは個人事業主でも利用することが可能なので、中小企業で働く従業員にも有効の方法です。しかし、借入金の限度額が低いため、経営陣や従業員個人の小規模なマネジメント・バイアウトに利用するといいでしょう。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫とは、「一般の金融機関が行う金融を補完すること」を旨としつつ、法律や予算で決まられた範囲で金融機能を発揮している政策金融機関です。一般の金融機関から借入が難しいと言われる中小企業や個人事業主にも融資を行っています。

マネジメント・バイアウト(MBO)を成功させるポイント

ポイント①利益相反防止対策をする

マネジメント・バイアウトを成功させるポイント1つ目は、利益相反防止対策をすることです。利益相反とは、複数いる当事者の利益が、競合または相反することを意味します。上場企業などを非上場化を目的とするならば、特に注意が必要で、経営陣と少数の株主との間で徹底した利益相反防止対策が必要となるでしょう

対策としては、第三者委員会の設定や独立した株式価値算定機関の採用を行うことをおすすめします。これにより、利益相反防止が可能です。

ポイント②対象事業を評価し選択する

マネジメント・バイアウトを成功させるポイント2つ目は、対象事業を評価し選択することです。企業内で複数の事業を行っている場合、利益の大きさ、それを継続できる事業かを評価していく必要があります。さらに、株式の買取に回した資金を今後の利益から回収する必要があるので、評価ポイントに優秀な経営陣がいるかも確認しましょう

ポイント③MBO後の計画を立てておく

マネジメント・バイアウトを成功させるポイント3つ目は、MBO後の計画を立てておくことです。実施して満足するのではなく、その後の活動がとても大切で、意味があります。

上場を廃止した場合は、既存の株主がいなくなる分、素早い意思決定などが可能になります。しかし、デメリットでも伝えた通り「監視機能が低下する」「上場廃止での会社の信用力が低下」などの問題も出てきます。しっかりと計画を立てた上で、行いましょう。

マネジメント・バイアウト(MBO)を実施する時の注意点

注意点①MBOを実施するタイミングが買収側にあること

マネジメント・バイアウトを実施するときの注意点は、実施するタイミングが買収側であることです。まず説明したいのが、株式の買取価格の基準はマネジメント・バイアウトを実施する日の、株価を基準とし決定されるということです。

そのため、会社の内部の事情を把握している経営陣や経営に関与している従業員は、株価の動きを予測できてしまい、株主には不利な時期に、実施されてしまうことがあるので注意しましょう。買収側の時にマネジメント・バイアウトを行うと、このような心配がなくなるため、実施するタイミングは、必ず買収側であることをおすすめします。

注意点②買い取り価格の決定権が買収側にあること

マネジメント・バイアウトを実施するときの注意点2つ目は、買取価格の決定権が買収側にあることです。注意点①で説明した通り、株式の買取価格はマネジメント・バイアウトの実施日の株価を基準としています。ですが、通常は株価にプラスして、プレミアム価格が付いた買取価格で決定します

日本企業は、マネジメント・バイアウトに対するプレミアム価格は、10%から50%です。しかし、この価格は、マネジメント・バイアウトを実施する経営陣によって決定されます。あまりにも価格が低すぎる場合、株主から集団で訴訟される場合もあるので注意しましょう。

マネジメント・バイアウト(MBO)の企業事例

企業事例①ADK

マネジメント・バイアウトを実施した企業事例を紹介します。1つ目に紹介するのは、ADK(アサツーディ・ケイ)です。2017年10月に、ADKがベインキャピタルの傘下に入ることが発表されています。

その内容は、ベインキャピタルがADKに株式公開買い付けを行い、総額にして1300億円もの株価のうち、約9割を取得するものでした。マネジメント・バイアウトを実施後、翌年の3月に上場を廃止したADKは、社名をADKホールディングスと変更し、20年後の再上場を目指しています。

企業事例②アートコーポレーション株式会社

マネジメント・バイアウトを実施した企業事例2社目は、アートコーポレーション株式会社です。アートコーポレーションは、2011年に金融機関から借入をして、自社株の公開買い付けを実施することを発表しました。2期連続で収入が減少していたアートコーポレーションは、この現状を踏まえてマネジメント・バイアウトを実施して、経営改革を目指し上場を廃止しました。

企業事例③株式会社幻冬舎

マネジメント・バイアウトを実施した企業事例3社目は、株式会社幻冬舎です。2010年に幻冬舎が実施したマネジメント・バイアウトですが、幻冬舎の関連会社であるTKホールディングスを通して、自社株の買い付けを行うと発表し実施されました

当時、新しいジャンルの開拓、紙とデジタルを使った新しいビジネスの構築が求められていたこともあり、上場を保つための資金を事業開拓への資金にまわすために、上場廃止を決定しています。

企業事例④日立工機

マネジメント・バイアウトを実施した企業事例4社目は、日立工機です。日立工機は2017年にマネジメント・バイアウトを実施して、その後工機ホールディングスの傘下に入っています。実施前は、日立製作所が日立工機の親会社でしたが、投資ファンドを通して自社株の公開買い付けを行っています。

株価は1株870円となり、公開買い付けが成立すれば、1株580円の特別配当金を公開買い付けに応募した株主に支払います。株価+特別配当金で株主に支払う株価は1株1450円になります。

企業事例⑤U-NEXT

マネジメント・バイアウトを実施した企業事例5社目は、U-NEXTです。テレビ向け有料映像配信サービス事業、個人向け光回線の販売代理店事業を行っていたUSENが会社分割を行い、U-NEXTが全株式を経営陣による買収を実施して独立した会社となりました

マネジメント・バイアウトを実施した背景には、USENが本業である音楽放送事業に専念すること、さらにテレビ向け有料映像配信サービスが軌道に乗らなかったことが挙げられます。

企業事例⑥ローランド株式会社

マネジメント・バイアウトを実施した事例6社目は、ローランドです。ローランドは、2014年に米投資ファンドと組みマネジメント・バイアウトを実施しました。ローランド株の株式公開買い付けをを行い、その買付価格は、1株1,875円です。

実施した背景には、高価格の電子楽器の販売で、他社との価格競争が激しくなる一方、業績が低迷したことが理由です。経営改革のためMBOを実施し、その後上場を廃止しています。

起業事例⑦ホリプロ

マネジメント・バイアウトを実施した企業事例7社目は、ホリプロです。ホリプロは、創業者の堀威夫氏が代表の青春者で1株1,050円の株式公開買い付けを行い、全株取得を目指しました。1株1,050円の株価は、買付時期の株価より68%上回っています。

ホリプロは、テレビ視聴率の低下を受け業績が低迷しており、短期利益を求める株主から脱却することを目的にマネジメント・バイアウトを実施しています

企業事例⑧ギャガ・コミュニケーションズ

マネジメント・バイアウトを実施した企業事例8社目は、ギャガ・コミュニケーションズです。USENの完全子会社であるギャガ・コミュニケーションズは、映像コンテンツ事業に尽力していましたが、多額の損失を出してしまいました。

再構築策を打ち出していましたが、結果的に本業の有線放送事業を主軸とした事業編成を行い、マネジメント・バイアウトによりギャガの売却を決定しました

企業事例⑨ウェザーニュース

マネジメント・バイアウトを実施した企業事例9社目は、ウェザーニュースです。1986年にアメリカの海洋気象調査会社「オーシャンルーツ」で日本支社長を務めた石橋氏が、陸上部門と航空部門に対して当時では珍しいマネジメント・バイアウトを実施しました

その後、事業は成長して1993年に親会社であるオーシャンルーツを買収し、民間では世界最大の気象会社に成長しました。

企業事例⑩日本風力開発

マネジメント・バイアウトを実施した企業事例10社目は、日本風力開発です。日本風力開発は、2015年に投資ファンドのベインキャピタルを通し、株式公開買い付けを実施しました。1株の買取価格は、買付時期の株価463円を25%上回り、580円でした。

マネジメント・バイアウトを実施した背景には、業績の悪化が深刻となり、ベインキャピタルの下で財務体質の健全化を図る目的です

マネジメント・バイアウト(MBO)の仕組みを覚えておこう!

マネジメント・バイアウトについて、言葉の意味や目的、実施方法や注意点などを紹介しました。マネジメント・バイアウトは、従業員の結束力を高めることができるなどメリットはありますが、買収、売却を行うM&Aの一種のため、リスクについても把握しておく必要があるでしょう。マネジメント・バイアウトを実施する際は、万全な計画を立てた上で行うことをおすすめします。

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