出向とは?意味や給与の支払い者・派遣との違いもリサーチ!

出向とは?意味や給与の支払い者・派遣との違いもリサーチ!
目次

出向の意味や目的などを詳しく解説!

企業における雇用契約の中で、出向に関する意味や主な種類について解説します。この制度を利用するメリットやデメリット、また、派遣などとの違いについてもまとめました。企業を発展させるために重要な制度なので、目的をしっかりと理解し、社員に意味を伝えて有効活用していきましょう。

出向とは?

雇用契約を維持したまま別の企業へ異動すること

最初にこの制度の意味から確認しましょう。出向は「雇用契約を維持したまま異動する」ことを意味します。また、別の言葉では「企業間人事異動」ともいわれており、雇用関係は維持したまま別の企業で働く形です。この状態から自社に戻ることは「帰任」と言います。

派遣との違い

出向と似た意味を持つ言葉は様々存在します。それぞれとの違いを確認し、目的を間違わないようにしましょう。たとえば、派遣も似た言葉ですが役割は大きな違いがあります。

大きな違いとして、派遣は派遣元会社と雇用を結んでおり、出向先とは雇用関係を結びません。この制度では相手先とも雇用関係になり、二重雇用関係になるのと違う点に注意しましょう。

左遷との違い

左遷の場合は出向や派遣と違い、社員に対する懲罰的な意味合いが強くなります。社員の待遇や地位を降格させる目的でこの制度を行うことがあるのです。注意点として、この左遷目的の出向や派遣が企業の不当な動機や目的が行われている場合は、無効になることに注意しましょう。

ドラマなどでよく左遷という言葉は出てきますが、実際に左遷を行う時に違法行為にならないように気をつける必要があります。

出張との違い

出張は社員と雇用関係を結んだまま、普段とは異なる勤務地に一定期間赴任させることを意味します。出張との違いは新たに雇用関係を結んでいるかがポイントです。

他社応援を行うのが目的となっており、企業グループ内の系列会社に出張することが基本になります。このときに他社の系列会社が指揮命令を行いたい場合は、出張ではなく出向や派遣に該当します。適切な法的手続きが必要になるので、それぞれの違いを把握し、必要な契約書を交わすようにしましょう。

兼務との違い

2つ以上の職務を兼ねる場合は兼務に該当します。出向との違いでは同時に従事する職務数が異なる点を把握しましょう。この制度の場合は兼務と異なり、受け入れ先の指揮命令のもとで、そこの業務のみに従事します。兼務では複数の組織の業務を担当する点が大きな違いです。

自社と派遣先のそれぞれの業務を日によって兼務する場合は兼務出向になります。それぞれと勤務日や勤務時間などに関して契約書を交わすようにしましょう。

異動との違い

出向と異動との違いは、異動が職種や担当業務の変更など全体を意味する言葉で、出向はその1つに該当します。この制度は企業間の人事異動に含まれると覚えておきましょう。

異動では昇格や昇進、転勤や出張など出向や転籍などの人事に該当する言葉です。それぞれ契約書などを確認し、給与の変更なども行われます。

転勤との違い

転勤も意味的には近い言葉ですが正確には異なる言葉です。転勤は同一組織や部署の勤務地が変わる人事です。基本的に転勤する場合は引っ越しを伴うのが一般的になっており、出向とは異動先が同一組織か否かが異なる点になります。

指揮系統が異なる点がポイントになっており、勤怠関連も異なります。また、転勤の場合も社員はよほどのことがない限り断れない点も注意しましょう。

業務委託との違い

一部や一定期間の業務を外注するのは業務委託になります。業務を提供する受注者と発注者は契約書で業務委託契約を結びますが、雇用契約は結ばない点が出向との違いです

業務委託は自社にノウハウが無い部分を外注することで、その仕事を行ってもらえるのが大きなメリットになります。企業を大きくしたり、新しい分野に進出したりする上で業務委託は非常に重要な役割を担ってくれるので活用しましょう。

出向の主な種類

出向の種類①在籍出向

出向は大きく分けて2つの種類が存在します。在籍出向は元の会社に籍を置いたまま、別の企業で勤務を行う形です。この場合、派遣元と派遣先で2つの契約書にサインして二重の労働契約を結びましょう。基本的に一定期間経過後に元にいた会社に戻ることになります。

ちなみにこの派遣されている期間に関する法的な決まりはありません。最初の規定で定めた期間が終わると帰任するのが一般的です。その期間は半年から3年間ほどが一般的になっています。延長だけでなく短縮も可能ですが、そういった決まりに関しては最初の契約書の規定に記載しておきましょう。

出向の種類②移籍出向

転籍ともいわれるのが移籍出向の形です。この場合は社員を別の会社に籍ごと異動させます。契約書では元の企業との雇用契約を解消することになるので、転職とほぼ同じ状態と考えましょう。移籍出向の場合は契約書をしっかりと確認し、給与や労働時間などをしっかりと確認してください。

このときは受け入れ先の給与水準や労働時間に変更となるため、以前よりも給与が下がる可能性があります。自身が在籍なのか移籍なのか必ず確認するようにしましょう。

出向の主な目的

出向の目的①キャリアを形成するため

社員を出向させる主な目的を確認しましょう。この制度を利用する目的としてキャリア形成があげられます。自社とは違うところで仕事を行うことで、経験を積んで視野を広げることができるのです

そしてこの経験を将来的に自社で活かして活躍してくれる人材が育成できます。この目的で派遣させる場合は20代から30代の若手社員が多くなります。早いうちから派遣をさせて経験を積ませて、幅広い視野を持った人材を育成しましょう。

出向の目的②業績をアップさせるため

経験豊富なリーダー的な人材を出向させることで、グループ会社の経営立て直しを行うのもこの制度の目的です。また、グループ会社の発展や業績アップのためにも派遣を行うことがあります。

この場合は子会社のトップなどに配置することが多く、人事戦略の意味合いも強くなるでしょう。しっかりと実績のある人物を選ばないと、子会社やグループ会社が大きなダメージを被る可能性があります

また、業績不振の会社に配属させることが貧乏くじではなく、期待を受けての配置であることを伝えてください。そして実際に業績アップにつながる結果を残した場合は、そのことに対する評価も行いましょう。

出向の目的③企業間での交流を図るため

企業間での交流を図るためにこの制度利用するのもおすすめです。新しい子会社や取引との交流を深めるために、パイプ役として出向を行いましょう。この場合は様々な人材を出向させることができるので、社内でよく検討した上で人選を行ってください。

この企業間での交流が結果的に太いパイプとなり、新しい商品開発やサービス提供につながっていくことがあります。社員自体にメリットがあるだけでなく、企業間交流で新しい関係性が築ける可能性も覚えておきましょう。

出向の目的④雇用を調整するため

時には給与などの問題から派遣ではなく出向の形で移籍出向を行うこともあります。自社で雇用維持が難しくなり、転籍を目的として出向するのも一つの選択肢です。この場合は契約書でしっかりと受け入れ先で勤務させる社員に説明を行って、トラブルにつながらないようにしましょう。

また、給与だけでなく管理ポスト不足の場合も制度を利用することも検討してください。関連会社で登用することで雇用調整が行えるので、解雇するのではなく派遣させることで対応するのも方法です。

出向のメリット

出向元のメリット

この制度を利用する上でのメリットやデメリットを確認していきましょう。出向を行うメリットとして、所属元は給与に関するメリットがあります。基本的には受け入れ先が給与の一部を負担するため、人件費の節約になるのです

同時に取引先に社員を派遣することで、その実態を知ることができます。場合によっては取引先企業の経営状況によって早めの対応を検討しなければなりません。派遣している社員から実状を教えてもらいましょう。

その上で、派遣した社員が持ち帰る技術や経験を自社に活かしてください。若手社員の能力がアップするきっかけになり、自社だけでは得られなかった知識を身につけてくれます。

出向先のメリット

受け入れる側のメリットは自社にはない能力や経験を持った人物が、リソースを補ってくれる点です。また、そういった人物が新しいイノベーション創出に関わることもあります。能力の高い人材との協力で、自社の社員のポテンシャルを高められるのが大きなメリットです

出向社員のメリット

派遣される社員にとっては、様々な経験ができるのがメリットです。通常では自分が担当する部署に専念するため、視野が狭くなりがちですが、派遣先で普段とは違う経験ができることで知識が技能を身につけられます。

また、技術面だけでなくマネジメントや管理職関係の経験など、今後の自分の役職につながる経験もできるのです。企業によっては受け入れ先で様々な経験をして、復帰後に昇格するパターンを取り入れていることもあります。そういった点も踏まえて前向きに取り組みましょう。

出向のデメリット

出向元のデメリット

デメリットも存在します。このシステムにおける派遣元のでデメリットは就業規則の整備が必要な点です。派遣させる社員の同意が必要であり、そのことに関する契約書などを丁寧に規定する必要があります。

社員が前向きに取り組んでくれる場合はいいのですが、時には職権乱用と受け取られて裁判になることもあるのです。こういったトラブルを未然に防ぐために社会保険労務士などに協力してもらって、しっかりとした規定と契約書を用意しましょう。

出向先のデメリット

受け入れる側のデメリットは、その社員のために一定のポストを用意する必要がある点です。また、給与に関する取り決めも重要です。しっかりとした地位に見合った給与を用意する必要があり、ポスト調整を行っておきましょう。

また、受け入れる社員の能力が必ずしも高いとは限りません。特に雇用調整の意味で派遣されてきた社員は、元の会社で何らかのトラブルを抱えていた可能性もあるのです。転籍の場合、有能な人材であればメリットは大きいですが、即戦力でないと余剰人員になる点もデメリットになります。

出向社員のデメリット

派遣される社員にとってのデメリットは、自身の職種や業種の変化などに対応できることが求められる点です。勤務地の変化による通勤時間の増加、勤務時間の変化などに慣れるまでの時間が必要になります。特に人間関係の変化はメリットにもデメリットにもなる点なので注意しましょう

こういった環境面での違いに悩む例は多く、慣習や意思決定法など一から覚え直す必要があるので柔軟さが求められます。若手社員として出向く場合は対応しやすいですが、リーダー役として派遣される場合は人間関係の構築を成功させることが重要な課題です。

出向の命令を出す時のポイント

就業規則を整備して出向協定を交わす

様々なメリットがある仕組みですが、出向の命令を出す時に重要なポイントがあります。大事なことは就業規則の整備を行うことです。

就業規則において社外勤務をさせることがある旨を規定しておきましょう。その中で社外勤務の定義や出向期間、出向先での労働条件や地位を規定してください。この規定をしっかりと定めておけば、包括的同意とみなされて個別的同意がなくても命令を出せます。

自社だけでなく派遣先とも協定を交わす必要があり、個別の労働条件や業務内容を決めておきましょう。契約書に給与や労働条件を記載して、お互いの考えに齟齬が無いようにしてください。

権利の乱用になりえないかどうか検討する

就業規則で規定が設定されていても、その命令を拒否できる場合があります。これは転籍の場合で社員の個別的同意が必要です。転籍の意味でも紹介した通り、労働者の契約条件が転籍先に移転するため負担が大きことが関係しています。

通常の在籍たままでの派遣に関してもトラブルになった事例は存在します。規則で規定されているとはいえ、一方的な命令にならないように、その意味や目的をしっかりと社員に説明して行うことが理想的です。

出向社員の各種保険と給与の支払いについて

健康保険や厚生年金保険は窓口企業が負担する

契約に関する中では出向する社員の各種保険や給与に関するルールを確認しておきましょう。このことに関して明確な定めがないので、どちらが支払うのか話し合いなどを経て契約書を作成することになります。

健康保険や厚生年金保険は窓口企業が負担するのが一般的です。この窓口企業というのは直接給与を支払う側のことです。直接子宮は受け入れ先が間接支給は元の企業を意味します。

雇用保険は出向先が負担する

雇用保険は直接給付の場合は受け入れ先が負担してください。間接支給は実質的な支払額が多いほうが負担するのが一般的になっています。トラブルが発生しないよう、契約書を作成する際に忘れないように取り決めを行っておきましょう。

労災保険も出向先が負担する

労災保険に関しても受け入れ先が負担しましょう。これは労働契約法に規定されており、実際に労務提供を受ける側が支払うことになっています。

給与の支払いには明確な定めがない

給与の支払いに関しては明確な規定がありません。ただし、元の勤務先が支払うことが多くなっています。健康保険や社会保険を出向元のまま維持することなどが関係しており、この流れでもともとの勤務先が支払っています。

ちなみに業務提供に基づく給与負担額には、消費税がかかりません。給与の支払い方には色々なパターンがありますが、本制度のような場合は出向者に対して給与を支給した形として、分担分に消費税支払いの義務は生じません。

残業代は出向元の規定によって決まる

残業を行った場合の時間外手当は出向元の規定によって決まります。賃金労働契約の規定の中で出向元企業との雇用契約内容を優先させる、という前提があるためです

ただし、実際に支払う中では労働提供は派遣先で行われるため、契約書の中で取り決めをわかりやすく行っておくことをおすすめします。複雑になりやすいため、賃金に関する仕組みは一つずつ確認した上で最終確認を忘れないようにしてください。

賞与や退職金についても出向元の規定によって決まる

賞与や退職金については、先程と同じく出向元の規定によって決まります。しかし、場合によっては賞与などを受け入れ先が全額支払うのが難しい場合があるのです。

この場合、受け入れ先が相当分の賞与を負担し、残りを元の勤務先が補填する必要があります。また、退職金は出向期間も勤続年数に含めて計算しましょう。

社員の出向に必要な契約書類

契約書類①出向契約書

社員にこの制度を利用する際は必要な契約書類がいくつか存在します。社員を派遣することを承諾するための出向契約書が必要不可欠です。

企業間の合意のために必要で、それぞれの署名も行ってください。必要な項目は当事者に関する情報、期間、期間中の元の所属先での扱い、服務規律、給与や賞与、社会保険、交通費の負担などです。こういった部分をしっかりと契約書に記しましょう。

契約書類②覚書

細かな条項を記したものが覚書になります。この覚書においては、業務にあたる労働場所や内容、諸費用などを記載しましょう。こちらも、それぞれの署名欄が必要になります。

労働条件には休憩や時間外労働、休日労働などについて記載することになります。また、覚書には両者の窓口担当者についてもしっかりと明記してください。ここまでは企業間で交わす契約書類です。

契約書類③出向辞令書

出向元企業と社員感で交わす契約書類に、出向辞令書があります。この書類では当該社員が出向する旨が明記され、本人に直接渡してください。また、就業規則に基づいていることを記載する必要があるので「就業規則○条により」という文言を忘れないようにしましょう

その他には開始日から終了日までの期間や派遣先の企業名も記載します。前述したように社員の同意が必要ですが、就業規則などの規定で包括的に同意を得ている場合は、個別の同意を得ることなく命令を出すことも可能です。

しかし、トラブルを避けるためにも社員と面談などを行った上で命令を出すほうがおすすめになります。個別の事情に配慮した上で、この制度を活用することが両者にとってもメリットが大きくなるでしょう。

契約書類④出向通知書兼同意書

話し合いを行って同意を得られたら、出向通知書兼同意書を作成しましょう。ここには相手先の情報や待遇を具体的に明記し、社員の同意を得ることになります

この契約書には相手先企業の名称、代表者名、社員の署名欄が必要です。その他にも労働条件や派遣先での所属なども記す必要があります。

出向社員を受け入れる時のポイント

賃金規程を事前に取り決めておく

受け入れ側も様々な準備が必要になります。まずは賃金規定をしっかりと行っておきましょう。元の企業と受け入れ側で協議を行い、事前に取り決めておく必要があります。多くの企業でそれぞれの給与条件が異なるため、その差額分などをどちらが負担するか賃金規定で取り決めてください

労働条件通知書を交付する

労働契約時に企業が社員に交付する労働条件通知書が必要になります。ここには契約期間や就業場所、給与などの労働条件を記載してください。この労働条件通知書は労働基準法に定められた義務であり、必ず必要になります

受け入れ先は必ず労働条件通知書を作成して交付する必要があり、必要不可欠な書類です。イメージとしては受け入れ先が元の企業の代わりに、こういった通知書を交付すると考えてもよいでしょう。

出向を活用する時の注意点

注意点①健康診断の費用は出向先が負担する

基本的な出向の意味や目的を解説しましたが、この制度を活用する上でいくつかの注意点が存在します。いくつかの経費などに関する費用はどちらが負担するのかで、トラブルが起きやすい問題です。

たとえば、健康診断の費用は受け入れ先が負担しましょう。これは労働契約法による規定が関係しています。労働契約法において「企業は社員の安全に配慮しなければならない」と定められており、社員に年1回の健康診断実施義務があるのです

派遣されている社員は受け入れ先に従事している形になるので、使用者としての義務を負います。こういった決まりや意味から受け入れ先が費用を負担する義務が発生するので覚えておきましょう。

注意点②有給休暇の日数は就業規則に従ってカウントする

社員にとって有給休暇は重要な権利です。今回の制度の場合は企業間の人事異動という意味があるので、元の所属先と受け入れ先で勤務が継続していると考えましょう

そのため、元の企業で得た有給休暇日数は受け入れ先の企業の就業規則に従って取得してください。しかし、有給を取得する場合は受け入れ先の就業規則に従う必要があり、元と受け入れ先で差が生じることがあります。このときは金銭で買い取るか手当として処理することも重要です。

注意点③出向前提で採用するとトラブルに発展することがある

たとえば採用して間もない社員を子会社に派遣する場合があります。この行為自体は雇用時の労働条件通知書に明記していれば問題のない行為です。しかし、子会社に派遣することを前提に採用するのは、事前にそのことを採用する際に伝えておくほうが良いでしょう。

実際に雇用後にいきなり子会社で働くことになると、社員としても気持ちがうまく整理できないことがあります。派遣する前に直接面談などを行って、会社側の目的や受け入れ先で仕事をする意味を理解させることが重要です。トラブルにならないためにもアフターケアも行ってください。

注意点④海外へ出向させる場合は各種手続きが必要になる

企業のグローバル化が進んでいますが、社員を海外に送る場合は手続きが複雑になります。特に重要なのがビザ申請です。海外で仕事をする上で必ず必要になるので手続きを忘れないようにしましょう。

の就労ビザを申請する際は、申請書類以外に推薦状なども必要です。赴任する国によって必要な書類は変わってくるので、渡航先の大使館に問い合わせるのがよいでしょう。パスポート取得や帯同する家族の健康保険手続きも必要になります。

こういった申請や手続きのフォローを一覧で提示し、海外に行くことをフォローできる仕組み作りも行いましょう。また、近年問題になっている新型コロナウイルスのようなものが発生すると就労ビザがおりにくいことがあります。

すでに現地で勤務している場合、自由に帰国できないことがあり不安な状況ですごさなければなりません。こういった場合は社員の精神的なケアを勤務元が行ってあげてください。

注意点⑤出向先の都合で出向社員を解雇することはできない

注意点として受け入れ先の都合で、出向してきた社員を解雇できるかどうかです。基本的な労務に関しては受け入れ先の就業規則に従うことになりますが、解雇に関しては異なってきます。

基本的に解雇をしたい場合は元の企業の就業規則に従ってください。つまり受け入れ先の都合で解雇はできないのです。明らかに業務に影響を与える、無断欠席が相次ぐ、といった状態になったら両社の間で話し合いを行ってください。

その上で派遣先の企業が適切な措置を講じることになります。また、勤務している本人が「帰任したい」と要求した場合は応じるべきなのでしょうか?この場合は契約書の中で決まっている契約期間や目的、そしてその帰任理由から総合的に判断します。

はっきりと期間が決まっていない場合は適宜話し合いの上で、帰任に関する可否を検討しましょう。すでに必要不可欠な人材になっている場合は、契約延長などの話し合いを行ってください。

出向における主な企業事例

企業事例①パナソニック株式会社

実際に出向を使って成功している主な企業事例を紹介します。様々な電子機器を販売しているパナソニックは、2016年からベンチャー企業に社員を派遣して学ばせています。日本を代表する企業から新しい分野にチャレンジしているベンチャー企業に赴くことは、相当な決断が必要だったでしょう。

パナソニックがメリットと考えた点は、リソースに関する部分です。パナソニックは大企業ということもあり豊富な社内リソースが存在します。この潤沢なリソースをどのように活用するかが主な仕事になりますが、ベンチャー企業では限られた中で結果を残すことが求められるのです。

つまり、リソースを増やすために0から1を生み出す仕事を経験することになります。この経験を通して社員は新事業の立ち上げに関するノウハウを取得し、それを自社に持ち帰って企業を成長させてくれる存在になりました

また、大企業で勤務するのと異なり、それぞれの課題に対して全員が当事者になれる点もポイントです。事業全体を見渡せる視野の広い人材育成に役立ちました。その他にも異業種で経験することによる専門性を身に着け、自社の課題解決に役立つ人材も獲得できたのです。

企業事例②株式会社スマイルズ

株式会社スマイルズは三菱商事株式会社の外食サービス事業ユニットに所属していた人物が、2000年に社内ベンチャーとして立ち上げた企業です。

この企業を立ち上げた遠山正道氏は、三菱商事から日本ケンタッキーフライドチキンに出向し、スープ専門店「Soup Stock Tokyo」を企画した人物になります。自身の経験から株式会社スマイルズでも交換留職という形で、一定期間、企業間で社員を入れ替えて他業務を経験させるスタイルを取っているのです

これは他業種も経験したい、という社員の気持ちを受け止めてより多くの企業と連携するようになりました。そのため、現在は博報堂ケトル、フローレンス、星野リゾート、鍋島文化村など自分がやりたいと思うことを経験できる仕組みが完成されているのが魅力です。

出向制度を人材交流や業績の立て直しなどに活かそう!

出向制度について解説しました。この制度を利用することで社員は自社では経験できないような、他業種や他業界の仕事を経験することができます。メリットも多い制度ですが、給与などの労働条件などはしっかりと両社間で確認し、どちらが支払うのか取り決めてを行ってください。

また、実際に働くことになる社員の気持ちを汲み取ることも大切です。契約上は命令として行える制度ですが、面談やアフターケアを行って、受け入れ先で前向きに取り組めるように配慮してください。出向制度を利用して、自社の可能性をさらに高めていきましょう!

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