エンプロイアビリティとは?企業が重要視する雇用される能力を解説!

エンプロイアビリティとは?企業が重要視する雇用される能力を解説!
目次

エンプロイアビリティの意味や企業が重要視する能力は何か?

エンプロイアビリティとは「雇用される能力」のこと。従業員一人一人が労働者として個人のスキルアップする他、企業側が雇用契約を継続するために労働者に対してエンプロイアビリティを保証する考え方が広まっています。

そこで今回は、エンプロイアビリティの意味や企業が重要視する能力について詳しく解説します。また、エンプロイアビリティ活用するメリットやデメリット、チェックシートの役割りについてもまとめてみました。

エンプロイアビリティとは?

「雇用され得る能力」を意味する言葉

エンプロイアビリティとは従業員として「雇用される能力」ことで、経済用語の1つです。言い換えると、雇用する側にその従業員を「雇わせたいと思わせる力」のこと。

業務に関わる専門知識や資格があります。資格の他にも、主体的に取り組む姿勢や課題解決能力が高い、その場の状況に順応しやすいことなどがあげられるでしょう。

エンプロイアビリティの要素

エンプロイアビリティの要素は大きく3つに分かれています。1つ目は、雇用後の成果に直結する専門知識や資格です。目に見えやすいというのが特徴で、専門的な知識を学んで取得する資格は一番のエンプロイアビリティと言えるでしょう。

2つ目は協調性や積極性で、これは労働者の働く姿勢のこと。3つ目は、個人の人柄や性格、信念、価値観といった目に見えない部分です。エンプロイアビリティは資格だけなく、社会人として必要不可欠な項目も含まれます。

国際労働機関におけるエンプロイアビリティの定義

国際労働組合は2000年6月の総会で、エンプロイアビリティは一定水準以上の職業の確保及び維持するために必要不可欠な能力と定義しています。

また、質の高い教育や訓練、政策が生み出した主要な成果とみなし、労働者が労働以上へ容易に参入できる能力、 知識や技術なども持っている複合的なものがエンプロイアビリティだという討論結果になりました。

エンプロイメンタビリティの高い企業の特徴

「エンプロイメンタビリティ」とは、エンプロイアビリティ育成に取り組む企業の意識や精神のことです。エンプロイアビリティが高い企業では労働者を現在の即戦力として雇うだけでなく、その将来まで見据えた教育を行っているということ。

そうした企業は労働者や求職者から見てもとても魅力的な企業となります。よって、エンプロイアビリティが高い企業は「雇用する能力が高い企業」となるでしょう。

エンプロイアビリティが日本で注目されている背景

終身雇用の崩壊

エンプロイアビリティが日本で注目されている1つ目の理由が、終身雇用の崩壊です。一度採用した労働者を最後まで雇用し続けるのが当たり前だったので、エンプロイアビリティを重要視しても最初しか価値を発揮しないからです。

しかし、AIなどの技術の普及や発展、社会状況の変化によって失業者が増加。その影響で労働者側の意識の変化や雇用形態の多様化などによって、今の日本は「どの職場でも通用する能力」を求める時代に変わってきています。

転職者の増加

エンプロイアビリティが日本で注目されている2つ目の理由が、転職者の増加です。副業可能な企業が増え、近年ではテレワークなどによる業務の進め方が変わってきました。

このような時代では、エンプロイアビリティが高い人ほどリストラされることが少なく、リストラされたとしてもすぐに転職先が決まる傾向にあります。

人事評価に活用する企業の増加

エンプロイアビリティが日本で注目されている3つ目の理由が、人事評価に活用する企業の増加です。近年ではエンプロイアビリティを人事評価に取り入れようとしている企業が増えてきました。しかし、エンプロイアビリティは職務などの業務内容によって重要視する項目が異なります。

そのため、人事評価の全てにエンプロイアビリティを活用するのは難しいといえるでしょう。その場合は、既存の評価システムの再構築や不足部分を補うような仕組みから始めてみてください。

エンプロイアビリティを取り巻く事情

アメリカにおけるエンプロイアビリティ

1980年代頃のアメリカは企業間の競争力が高まり、今までの長期雇用を前提とした労働契約が難しくなりました。企業は長期雇用を保証しない代わりに外的エンプロイアビリティを支援する体制を1990年代に構築。

その結果、企業側のメリットとして労働者のモラル・モチベーションの向上や優秀な人材の確保、労働者側のメリットとして労働市場での自身の価値の向上、将来への不安の解消が生まれたため、アメリカ労働市場への活性化へ繋がるきっかけになりました。

ヨーロッパにおけるエンプロイアビリティ

ヨーロッパ諸国は急速な発展を遂げた日本とアメリカに対して危機感を覚え、教育訓練体制の模索が始まりました。EUヨーロッパ連合に加盟する国々が国境を越えて労働のために移動ができることを重視し、ヨーロッパという地域内で通用する能力を基準化する政策が促進。

エンプロイアビリティがヨーロッパでも注目されるようになり、1998年に失業者への教育支援策や就労体験の実施、税制・職業訓練のシステムなどの改定が行われ、ヨーロッパ労働市場の活性化へ繋がるきっかけになりました。

エンプロイアビリティの分類

分類①絶対的なエンプロイアビリティ

絶対的なエンプロイアビリティとは、安定して仕事を獲得できる能力のことです。例えば、医師や弁護士、税理士などの国家資格を必要とする職業の場合、大学や専門学校などで技術や知識を習得し、難易度の高い国家資格に合格しなければなりません。

このような資格を必要とする専門性の高い職業は、どの時代・どの国でも仕事を得ることができるため、国家資格は絶対的なエンプロイアビリティといえます。

分類②相対的なエンプロイアビリティ

相対的なエンプロイアビリティとは、資格を持っていても職業ごとに求められる能力を持った労働者が、雇われる人たちの中で順位付けがされることです。変わり続ける時代や国の労働市場を考え、常に必要とされている能力を習得・向上させる必要があります。

分類③内的エンプロイアビリティ

内的エンプロイアビリティとは、所属しているグループ内で評価され雇用され続ける能力のことです。例えば、内的エンプロイアビリティが不足している人は、企業の業績悪化などによってリストラの候補者にあがってしまいます。

しかし、内的エンプロイアビリティが高い人は、企業の業績に関わらず雇用され続けることができます。内的エンプロイアビリティを向上させるには、その企業内でしか通用しない商品情報や開発技術などの専門性の高い知識を習得することが重要です。

分類④外的エンプロイアビリティ

外的エンプロイアビリティとは、どの企業でも同等以上の条件や処遇で転職できる能力のことです。転職するのがあまり良くないとされていた日本ですが、近年では転職によって企業同士の競争力の向上や経済の活性化に繋がることがわかりました。

よって転職する人が増えており、今後も外的エンプロイアビリティは重要と言えます。この外的エンプロイアビリティを向上させるには、他の企業でも通用する知識や経験、スキルなどを高めると良いでしょう。

分類⑤日本型エンプロイアビリティ

日本型エンプロイアビリティとは、外的エンプロイアビリティと内的エンプロイアビリティを併せ持った能力のことです。両方のエンプロイアビリティを併せ持つことで、限られた職業での力の発揮や新しいことにチャレンジするといった労働者の確保が期待できます。

エンプロイアビリティのメリットとデメリット

メリット①人材の流動化や社会経済の活性化に繋がる

1つ目のメリットは、人材の流動化や社会経済の活性化に繋がることです。エンプロイアビリティが高い労働者は、みな労働意欲が高い傾向にあります。優秀な人材の場合、ヘッドハンティングや転職といった機会にがあるかもしれません。

ですが、そうした能力の高い労働者がいることは個人の能力だけでなく、周りの労働者の生産性を向上させることがわかってきました。企業が従業員のエンプロイアビリティを高めるということは、人材の流動化や企業の業績アップにも繋がります。

メリット②雇用のミスマッチが解消される

2つ目のメリットは、雇用のミスマッチの解消です。一般職員・中間管理職・経営幹部と大きく3つのグループに分類し、それぞれに必要な能力をエンプロイアビリティによって評価ポイントを明記し、それらに沿って評価することで明確な人事評価になります。

人事評価の曖昧さがなくなり、労働者の雇用に対するミスマッチが解消されることでしょう。これらによって、企業の離職率を下げることが可能です。

メリット③自主的な自己開発の取り組みに繋がる

3つ目のメリットは、自主的な自己開発の取り組みの向上です。「雇われる能力を身に付けることで、雇用の安定に繋がる」ということを知れば、目の前の仕事だけに集中していた労働者がより意欲的にスキルアップに取り組むようになるでしょう。

労働者がスキルアップすることで、業務の生産性向上や会社としての利益アップにも繋がるのもメリットの1つといえます。

メリット④将来への不安が解消される

4つ目のメリットは、労働者が抱える将来への不安の解消です。いつ終身雇用が崩壊して転職しなければならない状況に陥るのか分からない現代社会では、働きながら自分の価値を高められる就業先は労働者にとって、非常に魅力的な環境といえます。

「転職に備えられる」という動機から、労働者がその企業に定着するかもしれません。こうして現在雇用していてる労働者の定着度を向上させるのも、エンプロイアビリティのメリットです。

エンプロイアビリティのデメリット

エンプロイアビリティのデメリットとしては、優秀な人材の流動です。エンプロイアビリティが高まった労働者ほど「魅力的な人材」になり、転職先の幅が広がります。

その結果、「雇ってもらっている」という意識から「自分の意志で働いている」に変わり、より良い条件の企業に転職といったことが起こりかねません。そうならないためにも「ここででしかできないこと」への機会を与えるなどの環境づくりが重要です。

従業員のエンプロイアビリティを高めるポイント

ポイント①十分な教育を行う

従業員のエンプロイアビリティを高めるためには、十分な教育をすることです。多くの企業が「ジョブグレード制度(職務等級制度)」を導入しています。これは、従業員一人一人の個性や能力に合わせた教育をするなど、スペシャリストの育成を前提とした従業員の教育のこと。

エンプロイアビリティを高めるためには転職するだけではありません。その企業にいながら従業員に合ったキャリア形成を育てられる環境が整えられることで、従業員の満足度や能力の向上ができます。

ポイント②リーダーの経験を積ませる

リーダーの経験を積ませるなど、実際に従業員が能力開発をできる機会を与えることで、従業員のエンプロイアビリティを高めることが可能です。そのためにはチェックシートなどを用いり、従業員にスキルや能力向上の必要性などに「気付く機会」を与えなければなりません。

また、時代に合わせた制度や評価の最適化、研修などを行い、常に組織を最新化することが重要です。リーダーの経験を積ませることは従業員にとっても、企業にとっても良い結果を生み出すことができるでしょう。

エンプロイアビリティのチェックシート内容

チェックシート内容①就職基礎能力

就職基礎能力とは基本的に採用時に企業から求められるスキルで、短期間の訓練で向上できる能力のことです。チェックシートにおける就職基礎能力は、責任感・向上心・職業意識や勤労観の3つに分類されます。

責任感と向上心では、社会人に求められる行動を理解しているのか、積極性やスキルアップのための向上心を持っているかです。職業意識や勤労観ではどのような働き方が自分にとって理想かを、チェックシートによって考え直す良い機会になるでしょう。

チェックシート内容②社会人基礎力

チェックシートにある社会人基礎能力では、自らの得意・不得意な能力に気付くことが可能です。チェックシート上では前に踏み出す力・考え抜く力・チームで働く力の3つに分類され、さらに12の能力要素で構成されています。

前に踏み出す力(アクション)

チェックシートの項目にある「前に踏み出す力」の中には、主体性・働きかけ力・実行力の3つがあります。主体性とは物事に進んで取り組む力で、社会人には欠かせない力です。働きかけ力は他人に働きかけて巻き込む力で、他の労働者とのコミュニケーション力が重要になります。

最後の実行力は目標を設定して確実に行動する力のことで、ただ単に作業をこなすだけではなくなります。目標を立てることによって業務の効率化が期待できるでしょう。

考え抜く力(シンキング)

続いてのチェックシートの項目である「考え抜く力」の中には、課題発見力・計画力・創造力の3つがあります。課題発見力とは現状の分析をし、目的や課題を明らかにする力で、中間管理職や経営者たちに欠かせない力です。

計画力とは課題に向けたプロセスを明確にし、準備する力で、チームリーダーには欠かせない力といえます。創造力は新しい価値を生み出す力のことで、商品開発などの分野で役立つでしょう。前に踏み出す力とは少し違って少し専門性が出てきますが、スキルアップを目指す労働者にとって必要不可欠な力です。

チームで働く力(チームワーク)

最後のチェックシートの項目である「チームで働く力の中」には、発信力・傾聴力・柔軟性・状況把握力・規律性・ストレスコントロール力の5つがあります。発信力とは自分の意見を分かりやすく伝える力のことで、傾聴力とは相手の意見を丁寧に聞く力のことです。

柔軟性は意見の違いや立場の違いを理解する力で、状況把握力とは自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力です。これはチームリーダーなどの上の立場の人が重要視される項目で、リーダーや管理職を目指す人は習得したい項目になります。

エンプロイアビリティが高められる環境づくりをしよう!

エンプロイアビリティの意味や企業が重要視する能力について紹介しました。エンプロイアビリティを向上させるということは個人としてのスキルアップだけでなく、企業としての生産性の向上や労働者の定着に繋がります。

また、労働者から見た企業としての魅力アップにも繋がることでしょう。本記事で紹介したチェックシートの内容を参考にして、企業として労働者一人一人のエンプロイアビリティを高められる環境づくりをしてください。

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