感情労働の意味を解説!ストレスへの対策法は何か?
働き方の形は「肉体労働」と「頭脳労働」の2種類が存在します。そして、働き方の多様化が進む中で「感情労働」という概念が新しく登場し、その意味や働く人の悩みに注目が集まっているのです。感情労働のストレス対策や各職種ごとの問題点に注目しましょう。
感情労働とは?
感情労働の言葉の意味
自分の感情をコントロールしながら労働を行うものが「感情労働」になります。顧客とのコミュニケーション場面で自分の感情を抑制することが必要で、時には理不尽なことにも我慢しなければなりません。感情労働以外の労働には肉体労働と頭脳労働があります。
感情労働で求められるもの
感情労働を行う上で必要なことは、目に見える表情や仕草をコントロールして、相手に好まれるような態度を取らなければなりません。そのため、辛いことや悲しいことは見えないようにし、喜びや楽しいといったポジティブな感情を表に出すことが必要になるのです。
企業や従業員における感情労働のメリット
企業や従業員における感情労働のメリットは、人と深いコミュニケーションを取りながら働ける点です。自分の気遣いや心配りによって顧客が満足し、時には心を開いてくれます。感謝の言葉を伝えてくれることや喜んでくれている姿を見ることで、充実感を得られるのが感情労働のメリットです。
肉体労働との違い
感情労働と肉体労働の違いを確認しましょう。肉体労働は肉体を使って報酬を得るのが特徴です。現場で作業を行う作業員などが該当し、その青色の服装から「ブルーカラー」と呼ばれることもあります。
道路工事や家を建築するような建設業、精密機器を作ったり、溶接などを行ったりする製造業が肉体労働に該当します。その他にも農業や林業、水産業なども肉体労働に含まれており、非常に体力を必要とする業界です。
単純な体力やスタミナだけでなく、道具を扱うための知識や経験を必要とするのも忘れてはなりません。特に近年はIT技術の進化によって、テクノロジーに関する知識も必要になりました。また、デスクワークのように長時間机に向かって仕事を行うのも肉体労働と考える意見も存在するのです。
頭脳労働との違い
頭脳労働と感情労働の違いもチェックしてください。頭脳労働の場合は知識や思考力などが重要になります。頭脳を活かして企画や提案を行うのがメインとなっており、その服装の色から「ホワイトカラー」と呼ばれることもあるので覚えておきましょう。
頭脳労働に該当するのは企画や管理、事務、医師や弁護士、研究職などが存在します。実は感情労働はその概念が提唱されるまでは、頭脳労働の一種として扱われていたのです。現在は頭脳だけでなく、特に感情のコントロール対策が必要とされ、新しい概念として感情労働が分類されるようになりました。
感情労働の種類
種類①表層演技
感情労働の種類は大きく分けて2種類存在します。1つは表層演技で、表面的な演技を行って顧客が求める感情を表現することです。このとき、自分の感情にかかわらず笑顔や立ち居振る舞い、声や言葉を使う必要があり、感情労働の難しさを感じさせる部分になります。
実際、サービス業の中には表層演技対策の研修や練習を行うところがあります。感情労働におけるテクニックの一つですが、ストレスの原因にもなるため、担当者の精神的なケア対策を行っていきましょう。
種類②深層演技
真相演技は自分の本当の気持ちも表層演技と同じようにしようとする方法です。本当に心から誠実に対応しようとする意識を持つための方法であり、非常識な顧客に対しても心から笑顔で対応するテクニックになります。
感情労働が求められる職種
職種①客室乗務員
感情労働が求められる職種について解説していきます。各職種が抱える悩みを確認し、後ほど紹介するストレスの対策やケアについて考えていきましょう。
客室乗務員は感情労働が求められる職種です。飛行機内でファーストクラスやビジネスクラスなどの分類が行われていることもあり、中には横柄な乗客も多く、無理な要求に対しても笑顔で対応することが求められます。丁寧な対応を行うためには感情をコントロールしなければなりません。
職種②看護師や介護士
看護師や介護士は感情労働の代表的な職業です。入院患者は精神的に不安定になりやすく、ストレスや精神のケアも必要になります。自分のストレスをぶつける患者もいて、食事を投げつけるような事例もあるのです。
また、職業として感情労働だけでなく、肉体労働、頭脳労働にも該当する職種になっています。専門的な知識や体力を必要としており、看護師や介護士のケアも大きな課題なのです。介護士は給料面でも不満を抱える人が多く、こちらの対策も検討が必要でしょう。
職種③コールセンター
コールセンターも感情労働の代表格かもしれません。コールセンターはクレーム対応がメインになり、電話をかけてくる時点で不満やストレスをぶつけることが目的になっている顧客も多いです。
外注のコールセンターに任せている企業も多く、コールセンター側は平身低頭で謝るしか無い、というのも大きな問題になっています。コールセンター側の精神的なケア対策を行っていかないと、感情労働に対するイメージは悪化する一方でしょう。
職種④教師や講師
かつては教師は絶対に逆らえないような存在でした。生徒が殴られ蹴られるような時代もあったのですが、次第にその関係性は変化し、現在はモンスターペアレントなどの存在もあり、非常に難しい状況に置かれています。
特に子供への指導よりも親のクレーム対応に時間が割かれており、感情労働として精神的なストレスが問題になっているのです。授業の準備だけでなく、部活動や不登校生とへのケア、親との話し合いなど長時間労働の改善が求められています。
職種⑤カウンセラー
カウンセラーは心理的な面をケアしていくだけに、感情労働としてコントロールが重要になっています。相手の立場に立って相談に乗り、深層心理に一緒に立ち向かっていく必要があるでしょう。そのため、多くの場面で感情労働としての苦労を乗り越えなくてはなりません。
職種⑥接客業
多くの接客業は感情労働として感情のコントロールが必要です。ファストフードや居酒屋など、客層の違いによってトラブルの内容も異なってきます。少子高齢化によって接客業も人手不足になっており、企業も人件費削減のために雇用を制限しているところが多いです。
看護師や介護士などの分野も非常に精神的なストレスが強いですが、接客業も無理なサービスを要求されることが増えており、対応しきれない状態になっています。若者よりも高齢者による理不尽なクレーム問題もネットなどで拡散されており、現場の辛さを訴える人が増えました。
感情労働が増えている理由
三次産業化が拡大しているため
そもそも、感情労働が増えている理由はどういったことが関係しているのでしょうか?感情労働が増えている理由として三次産業の拡大が原因と考えられています。つまり、農業や漁業、製造業ではなく、サービス業の増加が感情労働の増加理由なのです。
自然や機械に相手にするのではなく、同じ人間を相手にすることがメインであるため、精神的なストレスや負担が非常に大きいのが三次産業の特徴になります。チェーン方式が一般的になり、多数の三次産業のお店が増加しました。
産業の大分類によると、三次産業は昭和50円頃には全体の5割を超え、平成22年には70%を超えています。このことからも三次産業に携わっている人の多さを想像することができるでしょう。
顧客満足度の競争が激化しているため
少子高齢化は労働者の数だけでなく、購買者の減少にもつながっています。そのため、各業界で顧客の奪い合いが行われており、どのように満足度をアップさせるかが課題になっているのです。
顧客満足度をアップさせるために、感情労働に携わる人員を増やして、サービスを抜け目ない状態にするようになりました。そのため、必然的に感情労働に携わる人が増え、同時に精神的なケアの重要度がアップしています。
感情労働における社会問題
バーンアウト(燃え尽き症候群)
感情労働では感情をコントロールし、抑制しながら働くため、様々な問題が起きています。感情労働に携わる人が増えたこともあり、そのことが社会問題化しており、問題に対して対策が必要になっているのです。
人と接するためには膨大なエネルギーが必要です。楽しく前向きに取り組めているときは良いですが、精神的なプレッシャーやストレスを抱えながら仕事を続けていると、燃え尽き症候群に陥ることがあります。
これはバーンアウトとも表現されますが、この状態になると仕事に対する意欲ややる気が失われてしまうのです。自分の感情をうまくコントロールしながら働いていたものの、何かのきっかけが原因で「何でこんな無茶なことやってるんだろう」と全てに対するやる気が失われます。
燃え尽き症候群は真面目なタイプが陥りやすいです。また、そういった真面目な人が燃え尽き症候群になることで、全体の仕事が円滑にまわっていたのが、一気に支障をきたすようになります。企業としてはいかにバーンアウトが起きないようにするか、精神面の対策を心掛けましょう。
精神疾患の増加
メンタルヘルスの増加も早急に対策が必要です。特に看護師や介護に携わる人の精神的な問題が増加しています。近年は新型コロナウイルスの影響もあり看護師のストレスが増加、介護では少子高齢化による高齢者が増えたことが原因です。
人の命を支えるというだけでもストレスがかかる環境ですが、理不尽な要求に我慢しなければならない状態になっています。介護では認知症の問題も深刻化しており、介護士が暴力を振るわれる問題も起きているのです。そのことで看護師や介護士が精神疾患を患ってしまうのをどう対策していくかが課題になっています。
労働意欲の低下
精神疾患が増加することで、労働意欲の低下にもつながっていきます。また、感情労働の中には低賃金で働かされている人もいて、こちらもやる気が下がる原因になっているのです。
企業側がこういった問題に対して取り組む意思を見せてくれていれば、労働者も働く意欲を取り戻せることもあります。しかし、対策もケアもなければ、次第に労働者は意欲を失って退職を決断するしかなくなるので、企業も積極的に問題改善に取り組みましょう。
感情労働に従事する従業員へのストレス対策法
ストレス対策法①長時間労働を是正する
ストレス対策法として長時間労働の是正を行ってください。看護師や介護士、教師など様々な職種で時間外労働が当たり前になっています。労働環境の見直しを行い、それぞれの働いている環境を可視化しましょう。
適切な労働時間に改善することで、ストレスや疲労を軽減できます。感情をコントロールしなければならない時間を減らしてあげることで、気持ちにゆとりを持てる時間を増やしてください。
ストレス対策法②産業医と連携する
対策として産業医との連携もおすすめです。労働者の健康を守るために必要な存在であり、働き方改革の中で注目されている存在です。特に時間外労働が月80時間を超える状態では、産業医との面接指導が必要になります。
従業員のストレスは他の従業員にも影響を及ぼし、全体のモチベーション低下にも関係するので注意しましょう。先程の労働時間の是正とあわせて、精神的な疲労をケアしていける環境づくりが必要です。産業医とうまく連携し、長時間労働が当たり前ではないように見直しを行ってください。
ストレス対策法③面談を通じて従業員の感情をケアする
感情を吐き出せるような場を作るために、従業員と定期的に面談を行っていきましょう。企業側が従業員に寄り添ってケアを行うことで、感情労働の問題点を改善できます。企業側と従業員側の考えをすり合わせることも必要で、現場の環境を見直すきっかけになるでしょう。
感情労働で起きる問題を未然に防ごう!
感情労働の意味や職種について解説しました。感情労働は感情をコントロールすることが求められる仕事で、客室乗務員や教師、看護師や介護士などの三次産業が該当します。感情労働のストレスをどのように和らげ、改善していくかが早急の課題です。
今後も感情労働に携わる人が増加していくため、企業は長時間労働の是正や面談を通じてのケアに取り組んでください。より良い環境に改善していくことで、感情労働に携わる人が前向きに明るく働けるようになるでしょう。