情意考課の仕組みを理解して正しく取り入れたい!
人事査定の評価項目の一つである、情意考課について解説します。情意評価とも表現される評価項目ですが、開始ァyが理想とする社員の育成に有効である、と考えられているのです。情意考課の仕組みを理解して、人事査定に取り入れてみましょう。
情意考課とは?
情意考課の言葉の意味
情意というのは「思い」や「気持ち」を表す言葉です。そのため、情意考課というのは「社員の勤務態度や仕事に対する意欲で評価する」ことを意味します。社員の主体性や積極性などがメインの評価基準になるのが特徴です。
業績評価との違い
人事査定の評価項目にはいろいろなものが存在します。それぞれ評価基準も異なっており、会社によってどれをメインにするかも違っているのです。
たとえば、一定期間における社員の業績達成度を評価するものとして業績評価があります。ポイントとして具体的な数値目標があり、それに対してどれぐらい達成してるかで判断されるので、公平な評価が可能なのがメリットです。
しかし、目標を達成するために個人主義に走りやすいのがデメリットです。協調性や連携が弱くなる可能性があるので注意が必要な評価方法になります。
能力評価との違い
能力評価は個人の職務遂行能力を評価する方法です。資格や専門スキルなどを評価するので、社員がキャリアデザインを考える上でもメリットが出る方法です。うまく業績がアップできなかった場合でも、別の面で自己アピールをできる形になります。
ただし、部署の移動や担当の変更などによって、その能力が会社にとってどれぐらいメリットがあるのかを評価しにくいのがデメリットです。評価の公平性を保ちにくく、バランスのとり方が難しい評価方法といえるでしょう。
情意考課の書き方
情意考課の書き方として注意が必要なのは、主観的な要素が入りやすい点です。思い込みによって、一つの評価が全体に対して良く見えてしまう、悪く見えてしまう、というハロー効果が起きやすい点に注意しましょう。
また、自分が目をかけている部下に対して、甘い評価を下しやすいのも書き方の上で気にしなければならない点です。同時に極端な評価を出すと、周囲への影響も大きいので人事査定をする人間の負担は大きいので気をつけてください。
情意考課を導入する場合のメリットとデメリット
メリット①理想の社員を育成することができる
情意考課の意味を理解した上で導入するメリットを確認していきましょう。情意考課を導入することで、会社にとって理想の社員を育成できます。
評価項目に社員の仕事に取り組む姿勢や他の社員との関わり方を設定してください。そうすることで、会社が理想としている社員像を提示できるのです。基準が共有されることで、社員の姿勢を訂正するときの改善点も伝えやすくなるのがメリットになります。
メリット②多角的に社員を評価することができる
多角的に社員を評価したい場合も情意考課がおすすめです。その他の評価方法と異なり、業績などの目に見える部分以外で評価を下すことになります。データで現れない部分を評価できるため、社員をより多角的に見れるからです。
いわゆる縁の下の力持ちのような、目に見える結果ではなく、社員の連携に努めた人物も評価できるのは大きなメリットといえるでしょう。目立たないけれど実は会社にとって大きな意味を持つ存在を評価できるので、そういったタイプの社員のモチベーションもアップします。
メリット③会社全体の連携強化に繋がる
業績評価のように目標が明確なことで積極性がうまれる人事査定では、どうしても個人主義に走りやすく、自己都合的な考えが強くなります。それに対して情意考課であれば、自己都合的な考えを抑止でき、他社員との協力する姿勢が生まれるのです。
会社にとって社員同士の協調性は非常に意味があることなので、情意考課を導入して連帯感を強められるのもメリットになります。
デメリット①主観に左右されやすくなる
情意考課のデメリットも確認してください。先程から少し触れていますが、情意考課はどうしても人事査定を行う人間の主観に左右されやすくなります。明確な数値などで判断するわけではないので、担当者によって甘い・厳しいが不公正になりやすいのです。
デメリット②目標の設定が難しい
具体的な数字が設定されないため、目標設定が難しくなります。数値目標などがあればそこに向かってスキルアップや実績を積んでいけばいいのですが、情意考課の場合は「どうすれば評価が上がるのか分かりにくい」と感じる人が多くなるので、評価状況を分かりやすくしましょう。
情意考課を取り入れる時の基準
基準①周囲への感謝の気持ち
情意考課が具体的な数字を設定できない点を考慮しながら、どのような評価基準を導入すればいいのか参考にしてください。また、これらの基準はそれぞれの会社の求める人材にあわせて判断することが大切です。公平感を大切にして人事担当者が判断することが求められます。
基準の一つとして周囲への感謝の気持があるかが重要です。会社で働く上で部下や仲間に対する感謝の気持を持って接しているか確認しましょう。上下関係なく周囲への感謝の気持ちを持っていることは、自分の周りをしっかりと見れている証拠です。
基準②積極性の有無
仕事に対する積極性も情意考課の大切な基準です。結果はどうであれ、自分から積極的に動いて目標を達成しようとする積極性があるかどうかを判断しましょう。特に新しいことや初めてのことに取り組むときは、誰もが躊躇してしまいます。
そういった中でその人物が積極性を持って取り組めていれば良い評価を与えてください。また、積極的に取り組むときに周囲との関係性や結果を想定しながら動けているかもポイントです。短期的なものだけでなく、長期的に取り組めている場合も積極性の有無の中で評価しましょう。
基準③地域貢献に携わっている
会社を運営していく上で、自分たちが地域の一員であることを認識することが求められます。企業がボランティアに関わったり、地域のイベントに参加するのは重要なことです。そういった地域貢献に携わっているかも情意考課の項目になります。
ボランティアの中でも積極性や特技などを活かした活動の姿を確認できます。企業もこれらの活動を支援してあげることで、より積極的に地域貢献に携わることができるのです。
基準④責任性の有無
自分が担当したことを最後までやり遂げる責任性の有無も情意考課の評価基準です。物事に対する当事者意識を持つ人物であり、最後まで責任感を持って行動しているかを評価しましょう。他人任せにせず、自分で対応することが重要です。
この情意考課で高い評価が得られる人物は、会社としてもより責任のある重要な仕事を任せられる人物といえます。本人の自信にもつながりますし、情意考課の評価基準の中でも注視したいポイントになるでしょう。
基準⑤周囲への気配りができる
周囲への気配りや思いやりのある人物か判断してください。企業に属して働く人間はどんな仕事も一人では進められません。周囲への気配りや思いやりがある人物でなくては、いずれ孤立し、チーム全体の雰囲気も損なうことにつながります。
自分の仕事をこなすだけでなく、周囲の状況を確認して困っている人を助けてあげられる人間性か判断してください。周囲に気配りができるということは精神的にもゆとりがあり、広い視野を持っていることの証です。
こういった気配りを持つ人間がいることで、チームも会社の雰囲気も良くなっていくでしょう。部下の気持ちを和らげられるコメントをいえるような優しさがあれば、離職率も下がって会社の結束力や愛社精神にもつながっていきます。
基準⑥規律性の有無
社会人として会社に属している人として規律性が求められます。規律性は身だしなみや時間管理、TPOに合わせた行動ができるかが基準です。プライベートは別として、会社の一員として求められる身だしなみやコメントなどができるかが求められます。
基本的な言葉遣いはもちろんですが、一緒に働く仲間に不快感を与えない規律性が重要です。気をつけたい点は規律性をどのように設定するかです。ある人にとっては普通でも、別の人にとっては不快感を与える言動が存在します。そういったものを判定するための基準設定は難しいでしょう。
そのため、情意考課の判断基準の中ではどうしても主観が入りやすい項目になります。企業として求める規律性を話し合い、できる限り主観性が強くならないように注意して設定するのが大切です。
基準⑦協調性の有無
他の基準とあわせて協調性について判断しましょう。企業が求めている協調性の持ち主か、周囲との歩調をあわせられる人物かを判断します。どれだけ能力が高い人物でも協調性が無いとチームとして、バランスの取れていない集団になってしまうからです。
そのままの状態を放置すると独善的になり、次第に他の社員は一緒に働くことを嫌うでしょう。全員で一つの目標に向かっていける協調性があれば絆が深まり、予測不能なトラブルが発生しても対処することができます。グローバル化や多角化が進む現代において、協調性のある人材を評価しましょう。
情意考課を導入する時のポイント
ポイント①ハロー効果に注意する
情意考課を導入するときのポイントや注意点を解説します。明確な数値目標などが設定できない人事査定なので、注意して導入してください。
まずは、情意考課を導入する上でハロー効果に気をつけましょう。ハロー効果は自分の思い込みによって評価の基準が変わってしまうことを意味します。一つの基準が他の評価にも影響をもたらすため、情意考課で気をつけたい点です。
一度評価を出した後に、改めて気持ちをリセットして確認し直すことが求められます。極端に良い点や悪い点が他の部分にも影響をもたらしていないか、冷静に判断しましょう。
ポイント②寛大化傾向が強くならないようにする
情意考課で起きやすい特徴として寛大化傾向が存在します。これは誰に対しても甘い評価をしてしまうことを意味する言葉です。
協調性や積極性などを見ていると、自然と社員に対して気持ちが寄りすぎることがあります。良い評価は付けやすいけど、悪い評価は付けにくい、という考えが影響して甘い判断を取ってしまうのです。寛大化傾向が起きないようにするためには自分に対して厳しさを持つことが求められます。
また、情意考課をする際に相手の業務状況をちゃんと把握していない場合も、寛大化傾向になりやすいです。情意考課を行う上でしっかりと評価者の業務状況を調査しましょう。
ポイント③中心化傾向の心理が働かないようにする
寛大化傾向だけでなく、中心化傾向にも注意が必要です。これは情意考課などの評価を下す際に、標準値に近い評価に偏ってしまうことを意味します。
言い方を変えると当たり障りのない評価を下してしまうことです。評価する側が標準から外れる判断は避けたい、という心情が働きやすく、せっかく成果を残した者に対しても過小評価を下すことがあります。この中心化傾向は日本人が陥りやすい心理状況と考えられているので注意してください。
ポイント④多面的に評価する
情意考課を行う上で多面評価を意識しましょう。多面評価は複数の人がそれぞれの立場から一人の人を評価する方法です。情意考課が主観的になりやすいデメリットを複数の立場から評価することで和らげる効果があります。
特に直属の上司が情意考課を行うと先程のハロー効果などが発生しやすいため、他の立場の人の意見を取り入れることがおすすめです。評価される側にとってもいろいろな立場の人が自分を見てくれる安心感があります。評価までの時間がかかりますが、情意考課を効果的に行う方法です。
ポイント⑤ステップアップを意識する
人事査定を行う上で、評価された側にとって今後につながるものであることがベストになります。評価された項目を確認し、社員が課題を意識してステップアップできるようにしましょう。情意考課後に面談などを行ってフォローアップすれば、より評価される側も自分の課題を理解しやすくなります。
また、評価の書き方も気をつけましょう。相手にとって向上心を持てるような書き方にしてあげることで、今後の成長を促せます。目標を持てるようなコメントとあわせて会社にとって、より良い人材になってくれるよう情意考課を有効活用してください。
情意考課を人事に活かそう!
情意考課の意味や導入する上でのポイントを解説しました。主観的になりやすいデメリットがありますが、社員の実績以外の面で評価してあげられることがメリットです。社員の積極性や協調性など、チームや会社全体の連携や絆を強化できる部分もポイントになります。
業績評価や能力評価などと組み合わせて情意考課を取り入れるのがおすすめです。企業が求める有能な人材を育成するために情意考課を活用していきましょう!