エフェクチュエーションとは?知っておきたい5つの原則と活用プロセス

エフェクチュエーションとは?知っておきたい5つの原則と活用プロセス
目次

エフェクチュエーションの仕組みを解説!5つの原則は何か?

ビジネスを行う上で様々な理論を参考にする人も多いでしょう。その中で優れた起業家が実践している意思決定プロセスや思考を意味するエフェクチュエーションについて解説します。エフェクチュエーションを身につける上で知っておきたい5つの原則と活用プロセスを参考にしてください。

エフェクチュエーションの意味と企業事例

エフェクチュエーションの言葉の意味

エフェクチュエーションは2008年にインドの経営学者であるサラス・サラスバシーという人物が提唱した理論です。優れた実業家に共通した思考プロセスがあり、それを体系化したものがエフェクチュエーションです。このエフェクチュエーションの企業事例を確認してみましょう。

企業事例①亀田製菓株式会社

米菓や菓子を製造する亀田製菓株式会社の事例は、後ほど紹介するエフェクチュエーションの5つの原則の一つに当てはまります。亀田製菓の代表的な商品である「柿の種」は、三日月型が特徴です。しかし、もともと三日月型で作られたわけではありませんでした。

当初はよくあるタイプの小判型のせんべいだったのです。ところが、型抜きを間違えて三日月型の柿の種を作ってしまった上に、納期が迫っていたため、そのまま出荷することになりました。

やむを得ない事情だったとはいえ、亀田製菓としては不安な部分もあったでしょう。その後、商品を買った消費者から「面白い形で食べやすい」という声が届き、三日月型の柿の種はヒット商品になったのです。このような亀田製菓の事例はエフェクチュエーションに当てはまります。

企業事例②ネスレ日本株式会社

コーヒーが主力商品であるネスレ日本株式会社もエフェクチュエーションが成功した事例です。ネスレはオフィス向けに「ネスカフェアンバサダー」というサービスを提供していました。

コーヒーマシンを貸し出して、アンバサダーが管理人として定期的にカートリッジを発注し、利用者から代金を回収する、というサービスです。ネスレの目的はカートリッジを販売することで稼ぐのが目的でした。このサービスによってコーヒー需要が伸びたことで、新ビジネスとして話題になったのです

当初はマシンを売り込もうとしたものの、自動販売機などの存在から断られていました。そこで、マシン自体は無料で貸し出してカートリッジで利益を出すアイデアを思いついたのです。また、東日本大震災の際にマシンを無料配布したことも、同サービスを思いついたきっかけでした。

エフェクチュエーションが注目されている理由

起業家メソッドが確立され始めたため

エフェクチュエーションが注目されている理由として、起業家メソッドが確立され始めたことが関係しています。メソッドというのは簡単に言うと方法ややり方を意味する言葉です。

時代が進んでいく中で様々な起業家のメソッドが知られるようになり、それをサラス・サラスバシーがエフェクチュエーションとして提唱したことで、より多くの人達がその理論を身につけられるようになりました

目標設定型アプローチの限界が来たため

消費者の価値観の多様化や企業のグローバル化、多角化によって、目標設定型アプローチだけでは難しい時代になりました。競争の激化や商品のライフサイクルが短くなり、市場の未来予測がしにくくなったのです。

そこで、起業家の共通思考である、今あるものから新しいものを想像する問題解決型アプローチが注目されるようになりました。現場の社員だけでなく企業全体で新しいアプローチを学ぶ必要になっており、エフェクチュエーションを採用する会社が増えています。

STPマーケティングの限界が来たため

自社が誰に対してどのような価値を提供するのかを明確にするための「STPマーケティング」というマーケティング手法があります。これはセグメンテーション、ターゲティング、ポジションの3つの頭文字から名付けられました。

市場の細分化や対象、自社の位置取りなどを考えるマーケティング手法ですが、時代の変化により調査に時間と多大な費用がかかるようになったのです。アジャイルのような短い開発期間単位で採用するような方法も登場しており、市場に対してリスクを最小限におさえる理論が求めれています。

現代のような市場スピードが早い時代では、丁寧なマーケティングを行って調査結果が出ても、すでに市場環境が変化していることがあるのです。

エフェクチュエーションは小さく試しながら市場に適合していく手法なので、現代の市場スピードに負けない理論のため注目を集めています。こういった時代背景や市場の変化を参考にエフェクチュエーションのプロセスである、5つの原則を確認していきましょう。

エフェクチュエーションの5つの原則

手中の鳥の原則(Bird in Hand)

エフェクチュエーションのプロセスを理解するために5つの原則を紹介します。どれもユニークな名前ですが、理論を理解する上で参考にしてください。

まずはエフェクチュエーションの手中の鳥の原則から確認しましょう。これは新しい方法ではなく、すでにある方法を使って新しい何かを作る原則のことです。組織内の人材や能力、ノウハウなどを用いて問題を解決するアプローチになっています。

自分のもともと持っているリソースを認識することで、無理をせず新しいことにチャレンジできるのです。エフェクチュエーションを活用するために、自社の人脈や市場に関するデータなども再確認することが必要でしょう。

許容可能な損失の原則(Affordable Loss)

許容可能な素質の原則は損失が生じても致命傷にならないコストを先に設定することを意味します。アジャイル的な方法であり、すばやく短い期間で開発することでリスクを最小限にする形です。

いきなり巨額の投資を行うのは非常にリスクがあり、少額であれば失敗を糧に次のプロセスへと進められるでしょう。利益を元に戦略を決めるのではなく、許容できる損失を計算して行動するのがポイントになります。

クレイジーキルトの原則(Crazy-Quilt)

クレイジーキルトは、不定形の布をパズルのように縫い付けたキルトのことです。そして、エフェクチュエーションにおけるクレイジーキルトの原則は消費者や競合他社、協力企業などの全てをパートナーと考えて、ゴールを目指す考えになります。対立ではなく、巻き込むような形で新しい事業を生み出しましょう。

レモネードの原則(Lemonade)

レモネードの原則は先ほど紹介した亀田製菓の事例のことです。英語圏において「人生が酸っぱいレモンを与えるなら、砂糖を入れてレモネードを作れ」という格言があり、この言葉が由来になっています。

質が悪かったり酸っぱすぎるレモンを廃棄するのではなく、工夫を凝らすことで新しいものを生み出せるのです。亀田製菓の場合もたまたま不良品として出来た三日月型の柿の種が、消費者に気に入られました。

ネガティブな出来事が起きても、それをプラスに転じることがエフェクチュエーションにおいて重要です。失敗を成功につなげるということを意識しましょう。

飛行機の中のパイロットの原則(Pilot-in-the-plane)

エフェクチュエーションにおける飛行機の中のパイロットの原則は、まさに飛行機を操縦しているパイロットをイメージしてください。パイロットは飛行しながら常に数値や飛行状況を把握しています。そして、天候の変化などにあわせて臨機応変に行動する点がエフェクチュエーションの原則と関係しているのです。

ビジネスをする上では様々な状況変化が起きて、そのトラブルに対応することが求められます。技術革新などによって市場や外部環境が大きく変化することもあるでしょう。そういったものに対する適応能力がエフェクチュエーションに求められています。

エフェクチュエーションとコーゼーションの違い

コーゼーションとは?

意思決定のプロセスとしてエフェクチュエーションに近いコーゼーション、というものがあります。このコーゼーションは目的からの逆算で意思決定をする手法です

コーゼーションでは「未来は予測可能」、「目的が必ずあり、目的から逆算して考える」というのが軸になっています。そのため、コーゼーションは従来型の経営学やマーケティング理論の基本といえるでしょう。

コーゼーションのメリット

コーゼーションのメリットは目的ありきの考え方のため、意思決定がぶれない点が重要です。トップダウン方式であり、目的に向かって戦略を決めて、戦術に押し込んでいく形で進みます。歴史ある手法のため、抵抗感が少ないのもメリットです。

コーゼーションのデメリット

デメリットとして、予測可能だと思っていた未来から大きく逸脱した場合です。エフェクチュエーションの紹介でも触れたように、現代のビジネスはマーケティングや未来予知が難しい時代になっています。仮設が外れた際のダメージは大きいので注意が必要です

また、大企業になればなるほど最初に設定した目的や目標を変更しにくいのがデメリットでしょう。このような目的がボトルネック化する点もコーゼーションのデメリットなので、エフェクチュエーションとうまく区別して取り入れましょう。

エフェクチュエーションとコーゼーションの違い

エフェクチュエーションとコーゼーションの違いは「手段ありき」か「目的ありき」かです。エフェクチュエーションもコーゼーションもそれぞれメリットがあるので、うまく使いこなすのが理想です。エフェクチュエーションは特に新規事業に効果を発揮するので参考にしてください。

エフェクチュエーションの活用プロセス

活用プロセス①競争戦略の見直しを行う

エフェクチュエーションの活用プロセスを確認しましょう。エフェクチュエーションは現場から経営陣まで利用できる起業家メソッドです。そのため、従来の競争戦略の見直しとしてエフェクチュエーションを活用するのがおすすめです。

エフェクチュエーションの特徴として、行動を重視した問題解決型アプローチを重視している点が挙げられます。従来型の理論であれば競合他社は、どうしてもライバル的な存在でした。

従来型に対してエフェクチュエーションの場合は、競合他社を敵対視したり否定的に見たりするのではなく、パートナー関係として考えます。そういったパートナーシップによって、業界全体でマーケティングに取り組み、購買欲を盛り上げていく戦略を取れるようになるのです。

活用プロセス②現場レベルでの行動規範を提示する

優れた起業家のメソッドを取り入れることは、現場レベルでの行動規範にもなります。新しい発想やアイデアが生まれやすい組織を構築できるので、積極的に取り入れましょう。

活用プロセス③課題解決能力の向上に活用する

エフェクチュエーションを取り入れると社員の課題解決力が向上します。エフェクチュエーションでは課題解決型のアプローチが軸になっているので、当事者意識を持って問題解決に取り組む能力が身に付くのです

エフェクチュエーションにおける日本企業の問題と解決策

意思決定者と行動する人が別という問題がある

エフェクチュエーションを導入する上で、日本企業の問題と解決策を確認しておきましょう。エフェクチュエーションは大企業になればなるほど、意思決定する人と行動する人が別になります。このポイントを把握し、経営者や意思決定者は現場に降りて行動することが重要です

「権限を下に委譲する」というのが解決策になる

意思決定者と行動する人が別になりやすいデメリットを解決するために、権限を下に委譲することも検討しましょう。しかし、エフェクチュエーションの5つの原則の1つである「許容可能な損失」の原則を守ることが必要です。

どうしても権限を委譲する際に「必ず結果を出せ」と無理な要求を行う人が出てきます。エフェクチュエーションでは、成果がでなくても、その課程や結果などを学習機会として考えて糧にするのです。成果主義になると、コーゼーションの考えから抜けきれていない状態になります。

この点を忘れないようにエフェクチュエーションを活用し、マーケティングを行っていきましょう。エフェクチュエーションは旧態依然な日本企業のあり方を大きく変えてくれる可能性を秘めているのです。

エフェクチュエーションの理論を積極的に活用しよう!

エフェクチュエーションの理論について解説しました。エフェクチュエーションは起業家のメソッドを参考にしており、手段からアプローチする考え方です。エフェクチュエーションを取り入れて、変化の激しい現代社会でビジネスを成功させましょう。

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