キャリア・ディベロップメントとは?導入のメリットから事例まで解説

キャリア・ディベロップメントとは?導入のメリットから事例まで解説
目次

キャリア・ディベロップメントを企業の発展に活かしたい!

企業が成長する上では従業員の能力やスキルを成長させることが必須です。その中でキャリア・ディベロップメントの考えを導入しましょう。キャリア・ディベロップメントの考えを導入することで得られるメリットや事例について参考にしてください。

キャリア・ディベロップメントとは?

キャリア・ディベロップメントの言葉の意味

キャリア・ディベロップメントは日本語では「キャリア開発」という意味です。企業が求める能力と従業員が目指すキャリアプランをすり合わせて、中長期的な能力開発を行うのが目的になります

後ほど詳しく解説しますが、キャリア・ディベロップメントは自己申告制度や社内FA制度などの人事制度とあわせて実施することが効果的です。その他の人事制度の意味なども確認しながらキャリア・ディベロップメントを行って行きましょう。

数年から10年先までのキャリア目標を描くことが前提

キャリア・ディベロップメントの特徴として、数年から10年先のキャリア目標を描くことが前提です。企業側が一方的に従業員のキャリアを描くのではなく、自分の考えも加えて考える点がポイントになります。そのため従業員の主体性が大きな意味を持つ考え方なので、企業はそれをサポートしましょう。

キャリアデザインとの違い

自身のキャリア開発の考え方にキャリアデザインがあります。こちらの意味はキャリア・ディベロップメントと少し異なっており、その意味の違いも理解しておくことが重要です。

キャリアデザインの場合は、自分の理想とする将来像を想像し、それを実現するために目標設定や計画を立てることを意味します。必ずしも仕事だけがキャリアデザインに含まれるわけでなく、自分の人生全体を考えた上で計画を立てる点が特徴といえるでしょう。

そのためキャリア・ディベロップメントのような中長期的な仕事に関する考え方と、キャリアデザインの両方をうまく組み合わせることでプライベートも仕事でも理想とする自分に近づけるようになります。

キャリア・ディベロップメントの見直しの背景

人事制度の変更と雇用の流動化

時代の変化にあわせて企業もキャリアに対する考え方が変わってきています。企業はグローバル化や多角化を行っており、顧客の価値観も多様化が進んでいるのです。また、従業員も働き方改革によってプライベートとの両立や自分らしさを大切にするようになっています。

こういったことが関係しキャリア・ディベロップメントの見直しが進んでいます。従来は年功序列制度を前提とした考えだったのが、成果主義や役割等級制度を中心とした考えになっているのです

人事制度の変更だけでなく、転職が一般的となったことで雇用の流動化も進んでいます。これらの時代の変化を踏まえて、自社のキャリア・ディベロップメントに対する考え方を見直していきましょう。

キャリア形成に対する不安

終身雇用制度が一般的では無くなった現代において、従業員はキャリア形成に対する不安を抱えています。早期退職を推奨する企業も増えており、一つの企業で定年まで働く計画だけではもしもの場合に対応できない状態になりました。

モチベーションを維持するためや、転職を考える上でもキャリア形成は自分主導で行うことが求められているのです。企業はキャリア形成の意味を改めて考え、従業員をサポートしていくことで離職を防ぐことも必要でしょう。

プロフェッショナル人材の必要性

人材難の現代において柔軟性や汎用性のある従業員がいることは安心感があります。しかし、それだけでは現代社会では競合他社との争いに負けてしまうので、プロフェッショナル人材が必要です。

専門性の高いスキルや知識を持つ人材がいることで、最先端の技術を自社で活かせるようになります。企業がどのようにプロフェッショナル人材を育成するかで、今後の業績も変わってくるでしょう。キャリア・ディベロップメントも現代に合わせた考え方を導入し、育成を行ってください。

国家資格キャリアコンサルタントの登場

2016年に厚生労働省はキャリアコンサルタント国家資格化を行いました。個人のキャリアアップの支援を積極的に推奨しており、国の方針もキャリア・ディベロップメントの見直しにつながっています

キャリア・ディベロップメントを導入するメリット

メリット①従業員エンゲージメントの向上に繋がる

キャリア・ディベロップメントの意味を踏まえて、その考えを導入するメリットを確認しましょう。キャリア・ディベロップメントを導入することで、従業員エンゲージメントの向上につながります。

従業員エンゲージメントとは、従業員の企業への理解や信頼を意味する言葉です。従業員エンゲージメントが高い状態だと、従業員は会社への貢献意欲が高くなります。そのため従業員エンゲージメントは「愛社精神」という意味で使われる言葉です。

企業と従業員の信頼関係が強い状態になることで、一致団結して業績アップに取り組めるようになります。特に若手社員の従業員エンゲージメントをアップさせることで、企業としてエネルギー溢れる人材が早期から活躍できるので大きなメリットがあるといえるでしょう。

メリット②離職率の低下に繋がる

キャリア・ディベロップメントを導入して従業員エンゲージメントが向上すると、愛社精神が高まり、離職率の低下につながります。従業員は自分の将来を具体的に描くことができると「企業と一緒に自分の目標を実現したい」という気持ちを抱けるようになります

人材難の現代において離職率が下がることは大きなメリットです。ハイパフォーマーな従業員が長く働いてくれるようにキャリア・ディベロップメントを積極的に導入してください。

メリット③従業員の主体性を育成することができる

自分から積極的に動く従業員は企業に大きな利益をもたらします。こういった従業員の主体性を育成する意味でもキャリア・ディベロップメントの導入はおすすめです。

キャリア・ディベロップメントでは従業員が主体的にキャリア形成に携わるため、自分の考えを持った人材を育成できます。また、企業もキャリア形成を積極的にサポートしてくれるため、従業員のモチベーションも維持できるでしょう。

メリット④人材管理がしやすくなる

キャリア・ディベロップメントを導入するメリットとして、人材管理がしやすくなる点が挙げられます。キャリア・ディベロップメントでは、従業員の現在のキャリアや能力を見える化し、今後の育成計画がより効率的に立てられるのです。

ITやAI技術が進化したことで、人材データの見える化が重要になっています。見える化が進むことで人材管理がしやすくなるので、チーム結成や人材配置の時にもメリットになるでしょう。プロジェクトを成功に導くためにも、人材管理の効率化は重要な課題といえます。

キャリア・ディベロップメントを導入するデメリット

デメリット①優秀な人材の流動に障害を生じさせる

メリットの多いキャリア・ディベロップメントですが、導入することで発生するデメリットも確認してください。導入のデメリットを事前に把握しておくことで、キャリア・ディベロップメントをより良い形で有効活用できます。

キャリア・ディベロップメントを導入すると、優秀な人材の流動に障害を生じさせる可能性があるのです。現代社会では新卒重視ではなく、能力のある人材なら条件に関わらず採用する傾向があります。このような状況下において、従業員は一つの企業に最初から最後まで勤務するとは限りません

そのため、キャリア・ディベロップメントのように中長期的なキャリア開発はうまく機能しないことがあるのです。雇用の流動性を考えながら、キャリア・ディベロップメントをうまく活用することが求められています。

デメリット②人事評価制度との整合性が取りにくい

キャリア・ディベロップメントを導入する際は、人事評価制度との整合性に注意しましょう。キャリア・ディベロップメントはやや古い時代の様式であるため、現代的な人事評価制度とマッチしないことがあります。

そのため、従来型のキャリア・ディベロップメントを導入するのではなく、現代的な人事評価制度とリンクさせながら、従業員にもわかりやすいようにシステムを運用しましょう

デメリット③グローバル人事への親和性が低い

現代企業の多くがグローバル化や多角化を行っており、日本的な人事システムから切り替えを行っています。同様にキャリア・ディベロップメントもグローバル化を進めて、全世界で共通で使用できるものにしましょう。こういった改善が行われないとグローバル人事への親和性が低いものになります。

デメリット④AI導入による配置転換に対応しにくい

キャリア・ディベロップメントを導入するデメリットとして、AI導入による配置転換に対応しにくい点が挙げられます。さきほど見える化で触れたように、現代社会ではAI技術による人事評価制度が進んでいます。

AIはデータ分析や解析に大きく貢献するシステムであり、短時間で膨大な処理を行ってくれるのがメリットです。人材配置も自動で行ってくれるのですが、この点がキャリア・ディベロップメントの中長期的な戦略と噛み合わないことがあるので注意しましょう

キャリア・ディベロップメントの導入手順

導入手順①面談の実施と適性の把握を行う

キャリア・ディベロップメントの導入手順を解説します。先程紹介したメリットやデメリットのことも考えながら、導入を行っていきましょう。

まずは、面談の実施と適正の把握を行ってください。これは企業が従業員に求めるニーズと従業員個人のキャリア形成の希望をすり合わせるためです。従業員が望んでいる職種や職務が適しているかを検討することも必要になります。

適正テストの実施や関係者のヒアリングを行って情報収集を行ってください。従業員が自分の希望を話しやすい雰囲気作りを行うことが求められます。

導入手順②企業と従業員双方のニーズを照合する

面談から得られたデータを元に企業と従業員の双方のニーズを照合しましょう。従業員が望んでいても企業として経営資源を割ける内容になっているかは別です。できる限り従業員の希望を叶えることは大切ですが、企業としての未来像もしっかりと伝えるようにしましょう

導入手順③キャリアが向上しやすい環境を整備する

従業員の希望を把握したらキャリア・ディベロップメントを行いやすいように環境を整備してください。キャリア・ディベロップメントは中長期的な目標として行われるため、しっかりと企業がサポートすることが重要です。

キャリア・ディベロップメントをサポートする方法として、自己申告制度や社内FA精度を活用しましょう。キャリア・ディベロップメントを行いやすい環境整備を行うことは、従業員の愛社精神を高める効果もあります。

導入手順④配属と教育を実施する

適切な準備が出来たら、経営戦略に応じて人材を配置しましょう。上司や先輩が教育を行い、一定期間で評価を行うことが大切です。あわせて面談も行ってキャリア・ディベロップメントを継続してサポートしてください。

導入手順⑤定期的なチェックや軌道修正を行う

中長期的な計画で行うキャリア・ディベロップメントでは、定期的なチェックと軌道修正が重要な役割を持ちます。現在は商品やサービスのライフサイクルが早く、技術革新によって様々な変化が起きるので、キャリア・ディベロップメントも柔軟に軌道修正を行いましょう。

キャリア・ディベロップメントと併用すべき制度や施策

自己申告制度

キャリア・ディベロップメントの効果を高め、デメリットを軽減するために併用すべき制度や施策を紹介します。まずは、自己申告制度を導入しましょう。自己申告制度は従業員が自分の関わった業績に関して自己評価を行う方法です

また、自己評価を行うと同時に希望する職種や職務を企業側に自己申告するのも特徴になります。従業員の主観的な考えや客観的な意見を収集し、キャリア・ディベロップメントとの相性が良い制度です。この制度を基盤としてキャリア・ディベロップメントをより良いものにしましょう。

社内FA制度

社内FA制度は野球のFA制度のように、自ら希望する部署や職務などに自分を売り込む制度です。この制度は年功序列制度ではなく、成果主義や年俸制との相性が良い制度になります。異動や転籍をして自分の可能性を広げられる点はキャリア・ディベロップメントにもつながるでしょう。

キャリア・ディベロップメントと共通する特徴として、社内FA制度は従業員が数年から10年ほど先のキャリア開発を後押しする点です。自分の実績や能力をアピールして売り込めるのは、モチベーションアップにつながります。企業としては新規事業立ち上げの人材を選ぶ際に活用してください。

ジョブローテーション

ジョブローテーションはその名前の通り、仕事の役割をローテーションする制度です。数年単位で部署異動を行って、キャリアップを目指すのが目的になります

従業員の適正を実際に現場で確認する方法であり、向いていないと思っていた部署で才能を開花することがあるのも注目点です。デメリットとしては、指導や研修に時間やコストがかかることと、専門性の高いスペシャリストが育成しにくい点が挙げられます。

キャリア面談

キャリア面談は従業員と上司が中長期的なキャリア形成に関して話し合い、その実現に向けて成長を促すための面談です。上司は面談で従業員に様々な気づきを促し、自身の課題を明確化することが役割になります。単純な解決策を与えるよりも、自己実現のサポートを行うことがおすすめです。

キャリア・ディベロップメントを支えるための基本になる考えなので、従業員一人ひとりにの考えを知るためにもあわせて導入してください。

キャリア・ディベロップメントで活用できるツールや助成金

ジョブ・カード

キャリア・ディベロップメントで活用できるツールや助成金についても確認しましょう。ジョブカードは厚生労働省が推奨しているツールです。履歴書や職務経歴書に近いかたちですが、正社員経験の少ない人におすすめのツールになっています。

職務経歴や学習歴、職業訓練の経験や免許・資格などをまとめて記したものです。キャリア・ディベロップメントを行う上で、自分のスキルアップをサポートしてくれるツールとして活用しましょう。

キャリアアンカー

自分の中長期的な活動を考える中でキャリア・アンカーは重要な要素です。キャリア・アンカーは自分のキャリアを選択する際に、最も大切にしていて犠牲に出来ない価値観や欲求を意味する言葉になります

キャリア・アンカーを明確にすることで、企業としてもキャリア・ディベロップメントをサポートしやすくなるのです。また、自分のキャリア・アンカーを明確にするための診断テストも用意されているので、キャリア・ディベロップメントを決める時に活用してください。

人材開発支援助成金

助成金では人材開発支援助成金があります。企業が研修を実施し、国が定める要件を満たす場合に助成金が支払われるので、従業員のキャリア・ディベロップメントをサポートするために活用しましょう

キャリアアップ助成金

非正規雇用者に対してはキャリアアップ助成金がおすすめです。これは有期のパートタイマーや契約従業員に対してキャリアアップをサポートするものになります。この制度では対象者が正規雇用に転換された場合に支給されるのが注意点です。

基本的に処遇改善の取り組みとセットになっているので、単純に非正規雇用者に対して助成金が支払われるわけではありません。正社員化や処遇改善によって得られるので、助成金を前提に行う場合は注意して活用してください。

キャリア・ディベロップメントの導入事例

導入事例①キッコーマン株式会社

キャリア・ディベロップメントの導入事例を解説します。調味料製品の製造や販売を行っているキッコーマン株式会社もキャリア・ディベロップメントを導入しました。面談を中心にジョブローテーションや教育研修制度を活用し、自己申告制度も行っています

導入事例②明治安田生命保険相互会社

明治安田生命保険相互会社では、従業員の自主性と気付きに重点を置いたキャリア・ディベロップメントを導入しました。従業員それぞれにあった教育研修制度を実施しており、資格奨励金なども行っているのです

導入事例③株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータでは、高い専門性と変化対応能力を持つ従業員の育成を行っています。社員のキャリアを人材タイプごとに分けているのが特徴で、グローバル人材の育成強化を行っているのも特徴といえるでしょう

導入事例④静岡県

企業だけでなく、県としてもキャリア・ディベロップメントに取り組んでいる場所があります。それが静岡県です。キャリア・ディベロップメントを30、35、40歳の職員に対して行い、自己分析とキャリア開発研修が実施されています。

保守的な考えの多い県政においても、キャリア・ディベロップメントを活用し、役職公募制度や専門コース別公募制度などを導入しました。このような県政においてもキャリア・ディベロップメントは注目されているシステムなので参考にしてください。

キャリア・ディベロップメントを積極的に活用しよう!

キャリア・ディベロップメントを導入するメリットについて解説しました。キャリア・ディベロップメントの意味はキャリア開発として、企業と従業員の巻揚げをすり合わせて、中長期的に行っていく方法です。

従業員をポジティブな気持ちにさせ、離職率を低下させるのが大きなメリットです。主体性を育成し、愛社精神を持てるようになるのもポイントになります。キャリア・ディベロップメントを現代的なシステムに見直しながら、ツールや制度を活用して導入していきましょう!

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